悪魔と呼ばれ慣れて   作:ボルメテウスさん

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月の輝きは

紅の塔。

 

その頂上に立つディケイドのその姿は黄金に輝いていた。

 

この世界の住人が知る事のない、とある世界。

 

キバの世界において、王の証とされる鎧、キバの鎧。

 

その全ての力が解放された黄金の姿。

 

それこそが、今のディケイドの姿であり、キバの本来の姿である黄金のキバ、エンペラーフォーム。

 

異なる世界とはいえ、吸血鬼の王の鎧を身に纏っている彼は、ゆっくりと塔の端へと向かう。

 

塔の下には、吸血鬼が最も力を高める紅の月の影響で、街には吸血鬼の下僕であるグールが人々を襲う。

 

それらを見つめながら、ゆっくりとディケイドはその手にある物を構える。

 

「あれは、バイオリン?」「なぜ」

 

疑問の声。

 

それを余所に、ディケイドはゆっくりと、その演奏を始める。

 

その音はまさに圧倒的だった。

 

彼が持つバイオリンが弦を震わせる音色は、まるで暗闇に差し込む一筋の光のように響き渡る。その音色が夜空に広がると、紅い月が徐々にその色を失い、まるで燃え尽きた炎の灰のように褪せ始める。

 

代わりに、月は金色に輝き始め、その光は街全体を優しく包み込んだ。

 

バイオリンから流れる旋律が風に乗って広がり、その美しい音色が街全体に響き渡る。

 

その音色に触れたグールたちは次第にその暴走が止まる。

 

「これは、暴走が収まっている、これは一体」

 

「吸血鬼には吸血鬼。キバの力を使っただけだ」

 

「キバ、まさかそれも吸血鬼の」

 

「あぁ、そうだ。俺が知っている吸血鬼の中でも、人々と吸血鬼の共存を実現させた王の鎧だ」

 

「っ」

 

その言葉に、誰が反応したのか分からない。

 

けれど、ディケイドは、そのまま。

 

「それで、まだ続けるつもりか、海東」

 

ディケイドの言葉に合わせるように、物陰に隠れていたディエンドが現れる。

 

海東大樹は軽やかに歩いてきたが、その目には真剣さが宿っていた。

 

「止めておくよ、残念ながら僕のお宝はそこにいるお嬢さんの中に入ってしまったからね」

 

そう言いながら、海東の視線はエリザベートの心臓に向けられた。その目には一瞬のためらいが見えたが、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「そうか、だったらさっさと行け」

 

ディケイドの言葉には冷酷さが含まれていた。彼の瞳には許し難い怒りと同時に、戦いを無意味に引き延ばすことは許せないという強い意志が宿っていた。

 

「つれないねぇ、君は僕を殺す気じゃなかったのかい?」

 

海東は挑発的に問いかけるが、その声にはどこか寂しさも感じられた。

 

「確かにあいつらを傷つけようとしたてめぇを許さねぇ」

 

ディケイドは冷ややかな目で海東を睨んだ。その瞳の奥には無限の怒りと決意が燃えていた。

 

「だが、お前がこれ以上戦い続ければ、お前の思惑通りになる気がして気に入らない」

 

ディケイドはゆっくりと深呼吸しながら、その言葉を発した。それは単なる挑発ではなく、自分自身に言い聞かせるような決意表明だった。

 

「それだけか?」

 

海東は一瞬驚いた表情を見せた。彼にとってディケイドの言葉は予想外だったのだろう。しかし、その表情はすぐに冷静さを取り戻し、再び真剣な眼差しを向けた。

 

「ああ、それだけだ」

 

ディケイドの言葉には揺るぎない自信と冷静さが込められていた。彼は自分が選んだ道を貫き通す覚悟を持っていた。

 

「そうか、それは残念」

 

海東はため息をつきながら答えた。彼にも何かしらの思惑があるようだったが、それも今ここで明かすつもりはないようだ。

 

二人の間には微妙な緊張感が漂ったが、やがてその緊張は解けた。海東はゆっくりと後退し、ディケイドは塔の端に立ち続けた。

 

オーロラカーテンがそれぞれの前に現れる。

 

ディケイドと海東は一瞬互いに視線を交わす。

 

その瞳には複雑な感情が渦巻いていた。

 

「じゃあね、また会える日を楽しみにしているよ」

 

海東の声には不敵な笑みが含まれていた。

 

ディケイドは冷ややかな目で彼を見つめ返す。

 

「今度会ったら、容赦なく潰す」

 

その言葉には揺るぎない決意が込められていた。

 

海東は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに笑顔を取り戻す。

 

「それじゃあね、次回も楽しませてもらおうかな」

 

海東がオーロラカーテンの中に姿を消す直前、ディケイドは一言付け加えた。

 

「忘れるな、海東。俺の大切な存在を傷つけたら、容赦しない」

 

オーロラカーテンは徐々に薄れ、二人の姿は完全に消え去った。

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