悪魔と呼ばれ慣れて   作:ボルメテウスさん

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甘えたがり

ディエンドこと海東との戦いが終わった後、オーロラカーテンでそのまま宿へと戻る。海東は既に目的が達成出来ていないので、互いに戦う理由はない。その為、俺は宿に戻ってきたんだが。

 

「ぼすぅ!!」

 

「へぼぉ!?」

 

宿へと戻ると同時に、デルタが俺に向かって勢い良く抱き締めてくる。その勢いと共に、壁に思いっきりぶつかってしまう。激突した瞬間、鈍い音が響き渡り、背中にはじんじんとした痛みが広がった。それでも俺はなんとか踏みとどまり、デルタを受け止める。

 

「デルタ、どうしたんだ」

 

涙声と共に突っ込んできたデルタに対して、俺は思わず尋ねる。彼女の肩に手を置き、少し体を離して顔を見ようとするが、デルタはさらに強く抱きついてくる。その様子からは、彼女がどれだけ不安だったのかが伝わってきた。

 

「泥棒野郎を倒せなかったからぁ、ボスがまたいなくなったんじゃないかデルタは心配したんです」

 

そう涙を流しながら俺に思いっきり頭を押しながら、叫ぶ。その言葉に込められた感情の重さが、俺の胸に突き刺さる。デルタの瞳からは大粒の涙が溢れ、その顔は不安と絶望に満ちていた。

 

「大丈夫だ、デルタ。俺はここにいる。どこにも行かないから」

 

そう言いながら、彼女の頭をゆっくりと撫でる。その温かみを感じると、デルタは少し落ち着きを取り戻し始めた。彼女の肩が小刻みに震えているのが伝わってくる。それでも彼女は俺を放そうとはしなかった。

 

「ぼすぅ……」

 

涙声で呟くデルタの声に、俺は再度優しく語りかけた。

 

「心配かけてすまない。でも大丈夫だ、俺はずっとここにいるよ」

 

俺の言葉にデルタは頷き、少しずつ力が緩んでいく。その様子を見ると、俺も少しだけ安心した。

 

「まったく、ワンちゃんは慌てすぎだよ」

 

その声と共に、ゼータが現れた。彼女の表情はどこか呆れたように見えたが、その瞳の奥には心配の色が見えた。彼女はゆっくりと近づいてきて、俺たちの前で立ち止まった。

 

「ゼータか」

 

俺はそう呟いた。彼女の姿を見ると、少しだけ心が軽くなったような気がした。ゼータは肩をすくめて、まるで大したことじゃないと言わんばかりに微笑んだ。

 

「どうしてここに?」

 

俺はゼータに尋ねた。彼女は少し首を傾げて、何か言いたげな表情を浮かべていた。

 

「私も心配だったから」

 

ゼータはそう言って、視線をデルタに向ける。デルタはまだ俺に抱きついており、その瞳はまだ不安で揺れていた。ゼータは優しい眼差しでデルタを見つめながら、そっと近づいてきた。

 

「けど、良かった。私も安心した」

 

彼女の言葉には、本心からの安堵が込められていた。俺はその言葉に少しだけ胸が温かくなった。

 

「・・・来るか?」

 

俺はゼータに尋ねた。彼女の瞳が少し驚いたように開かれる。しかし、その表情はすぐに微笑みへと変わった。

 

「・・・うん」

 

ゼータは頷き、デルタの反対側で俺に寄り添った。彼女の体は柔らかく、猫がこたつで丸くなるように自然に俺に身を寄せた。その瞬間、ゼータの温もりが俺の体に広がり、心の中が静かになった。

 

甘えるように、彼女は俺の肩に頭を乗せた。

 

「なんというか、デカくなったけど、まだ甘えてくるのか」

 

俺は彼女たちの成長を喜びながらも、少し困惑した気持ちを抱えていた。幼少期から知っている彼女たちがこうして甘えてくる姿は、どこか新鮮でありながらも、少し不思議な感覚を覚える。

 

「二人とも、本当に大きくなったな」

 

俺は感慨深げに呟く。彼女たちが子供だった頃の思い出が、鮮明に蘇ってくる。

 

あの頃の俺は死にたがっていた。

 

けれど、今、こうして生きる事も出来たのは、彼女達と出会ったおかげかもしれない。

 

「・・・別に娘として見なくても」

 

「ボスは群れのボスになるですぅ」

 

だが、デルタの声はゼータの静かな呟きに気づく事はなかった。

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