その呟きと共に、俺はニューオメガブレードの剣先を向ける。
月光が差し込む狭い部屋の中で、俺の姿は影を深く引き伸ばしていた。ニューオメガブレードの赤い刃が夜空の映し出す。
冷ややかな光が部屋の隅々まで照らし、その輝きは死の予感を孕む。
片腕を失った月旦は、荒い息を吐きながら壁に寄りかかる。その表情は痛みと絶望に歪み、頬には冷や汗が伝っていた。
その目は怒りに燃え、ただひたすらに俺を睨みつけている。
盲目でありながら、鋭敏な聴覚で周囲を把握する彼は、俺の気配を感じ取ろうと必死だった。しかし、片腕を失ったことでその集中力も散漫になり、動揺と焦燥が顔に表れていた。
「・・・まだっだっ」
月旦の口から漏れた言葉は、まるで最後の力を振り絞るように絞り出された。
その視線が俺を捉えると同時に、月旦は何かを口に含んだ。それは彼が握りしめていた小さな瓶から取り出した何かだった。
疑問が頭をよぎる間もなく、月旦の身体が急激に膨れ上がる。
筋肉が隆起し、皮膚が張り詰める音が耳に届く。まるで怪物に変貌するように、その姿が変わり始めた。
「それは」
驚きと警戒の念を込めた声で、俺はその変化を見つめる。
月旦の足下に落ちた物。それは、ディアボロスの雫が入っている容器だった。その液体は赤黒く、不気味な光を放ちながら月光に照らされていた。
「どうしてそんなものを・・・」
呟くように言う俺の言葉は、月旦には届いていないようだった。
それと共に、その身体に赤黒い稲妻が走る。
雷光が彼の全身を包み、その身体が震えるように動いた。
稲妻は彼の体内に吸収され、その力が彼の身体をより強大に変貌させていった。
全身から放たれるエネルギーの波動は、部屋全体を震わせ、空気を圧迫する。
その力の強大さに、俺は一歩後退する。
嫌な予感を感じた俺は、窓の外へと飛び出す。
それと共に、部屋の中にいた月旦の姿は一変。その変貌は劇的で、まるで何か異質な存在へと変化しているようだった。
見覚えはあった。
「・・・素体の状態か」俺は呟くように言った。
月旦が変化した姿。
それは、アマゾンネオの千翼の素体と酷似していた。
6本の腕に、背中から生える無数の触手。それらは、色が赤である事以外は確かにネオアマゾン素体の姿だった。
その異形の存在へと、月旦はまるで新たな生命体に生まれ変わったかのようだ。
「・・・親子だからな」彼の口から漏れた言葉は冷たく響いた。
月旦が変身したアマゾンアルファの変身者である鷹山仁と千翼は親子だ。
それを考えれば、暴走した姿は同じであるのに違いはない。
しかし、その変化には悲劇が潜んでいるようだ。
「あいつらは、そんな力、欲しがっていなかったのにな」俺は呟くように言った。
その言葉には深い皮肉が込められていた。彼らが望んでいたのは平和であり、決してこのような暴力的な力を欲していたわけではない。
皮肉な違い。
それは、彼らにとっては存在して欲しくない力を月旦は手に入れた。
月旦を、このまま放っておけば、この街の人々は殺されていく。
その悲劇的な未来を思い浮かべながら、俺は。
「・・・やろうか」
そう、手には、ケータッチ21を構えていた。