その日、俺は何時ものように旅の支度を行っていた。
この学園に関して、俺は特にやる事はなく、日頃やる事と言えば、貴族という肩書きに拘る輩からの喧嘩を買って、叩き潰す程度。
後は、どういう訳か一緒にいる機会の多いシドを始めとしたメンバーと一緒にいる程度であった。
ほとんど不良みたいな俺に対して、なぜ一緒にいるのか気になる所ではあるが、さして興味はなかった。
その日もまた、いつも通りに終わると思っていた。
「そう言えば、一つ、気になる事があるわ」
あの時、恋人同士のデートを見て以来、すっかりと本性を露わにした王女様。
そして、俺が旅の支度で疲れ、電車に乗っている時に、彼女から話しかけられた。
「なんだ?」
「あなたは、私の剣に対して、どういう感想を持っているのかしら?」
「感想も何も、俺は剣の腕なんて、見る目があると思うか?」
「さぁね、けど私としてはあなた、とんでもなく面倒な奴だと思うわよ」
「面倒?」
その言葉に、俺は反対に見つめる。
「えぇ、面倒よ。実力だけ見れば、ゼノン先生に勝てそうな勢いなのに、それを自慢する気もない。実力や頭脳は優秀な癖に性格は最悪、態度も最悪というとんでもない逸材ね」
「それは、褒めているのか?」
「勿論、ゼノン先生と比べたら、欠点だらけで大好きよ」
「そこにいる王女様は欠点で判断する奴だから気にするなぁ」
「別に良いさ、俺の欠点は俺自身で知っている。何よりも実力だろうと頭脳だろうと、欲しくて手に入れた訳じゃないから」
「あら、だったら、何故それを手に入れたのか、ぜひ教えて欲しい所ね」
そう、アレクシアが尋ねてきたが。
「地獄にいた。ただそれだけだ」
その一言だけだった。
それに対して、二人は首を傾げた。
「地獄って、何かの表現かしら?」
「表現も何も、そのままの意味だよ」
そう、俺がこれまで巡ってきた世界を、地獄じゃない。
そう断言出来るのだろうか?
あの世界で、誰もが幸せになれたのは、少なくとも、その世界にいた仮面ライダー達。
彼らが、戦ったおかげだ。
だからこそ、仮面ライダーがいなかった世界は、地獄であるのは間違いないだろう。
「過酷な環境に置かれた人間は、自然と力を持つようになる。それだけの話だ」
「そう、その性格も同じようね」
「そうだな、ただまぁ、俺としては王女様にも、シドにも羨ましい所が一つあるな」
「何かしら?美貌かしら、それとも地位かしら?けど、それじゃポチは該当しないわね」
「そうだねぇ」
そのまま、俺は続ける。
「家族がいて、すぐに会える事だ。俺にはな」
俺が元々いた世界の家族は、俺の存在が消えていた。
それは寂しく、辛かった。
だからこそ、求めたのだろう。
都合の良い事にな。
「そう、なら、健闘を祈るわ、あなたの言う子供達に会える事を」
「どうも」
それだけ言い、俺はそのまま駅から出て行く。
未だに買う物があるので、その場所に降りていった。
だが、その翌日、知らせが来る事になった。
アレクシアが攫われたという事を。