デルタ。
それが、かつてディケイドと共に旅をした少女の一人の今の名だ。
この名になったのは、今、所属しているシャドウガーデンのボスであるシャドウから名付けられた名である。
その事に関して、彼女に不満はなかった。
強い者には従う。
それが彼女の野生の掟だから。
だけど。
『デルタのボスは、ディケイドだけなのです』
それを、今も変わらなかった。
元々、頭の悪かったデルタにとって、ディケイドとの短い旅は、彼女にとって大きな影響を与えていた。
言っている事はほとんど分からず、難しい言葉は分からない。
そんなデルタに対して、ディケイドは、対等に接していた。
だからこそ、湖の向こうで、ディケイドがいなくなった時の事は、今でもトラウマだった。
いなくなってから、ずっと湖の向こう側を見ていた。
いなくなっても、戻ってくる。
その時『龍の戦士』の姿になった時も、戻ってきた。
だからこそ、ずっといた。
『おい、馬鹿犬、まだいたのか』
『雌猫が何の用ですか』
そう、ディケイドと共に旅をしていた時期、一緒にいた子供。
その内の一人であり、今の名はゼータと名乗った子供は、デルタに対して呆れたように迎えに来ていた。
『そんな所にいてもディケイドは戻ってこないよ』
『戻ってくる!だって、ボスは強いから!あんな奴らに連れて行かれない!』
デルタもまた記憶に刻み込まれている。
彼女達が囚われている状態になっても。
自分よりも強いはずの相手を圧倒したディケイドの姿を。
だからこそ、デルタは戻ってくる。
そう信じている。
けれど。
『今のまま、戻ってくると本気で思っているのかい』
『っ』
ゼータからの言葉には心底ムカついた。
眼前にいるゼータも少なくとも同じ気持ちだと、勝手に思っていたから。
すると、ゼータは。
『なんで私達を置いていったのか、分かるかい?』
『それは、そのっ』
『馬鹿犬でも、本能では分かっているだろ、私達が弱いからだよ』
そう、ゼータの言葉にデルタは奥歯を噛み締める。
『ディケイドは、自分を追って、あのハンドレッドの奴らが来ていると思った。だから、私達を守る為に、私達を置いて、この世界から旅立った』
『そんなのっ』
『私だったら、そうする。私だって、守りたい弟がいる。弟を、これからの危険な戦いに巻き込みたくない。大切だけど、弱いから』
それはデルタも知っている。
ゼータの弟は、今、シャドウの領地であるカゲノー領地に住んでいる。
そこでは物珍しさもあるが、元より賢さもあり村人からも頼りにされている。
だからこそ、ゼータはなるべく彼を巻き込みたくないと思っていた。
その経験が、ディケイドの気持ちを理解させた。
『だったら、雌猫は諦めるのかっ』
『諦めるつもりは毛頭ないよ、だからこそ』
それと共にゼータが取り出したのはカード。
そのカードに、デルタは見覚えがあった。
『それって、ボスが使っていた』
『このカードの中にはディケイドが使っていた仮面ライダーの力がある。ハンドレッド達も、これと似たようなシステムを使って、仮面ライダー達の力を使っていた』
仮面ライダー。
それはデルタもまた僅かだが聞いた。
こことは異なる別の世界の戦士達。
『だからこそ、ディケイドに追いつく為には、ハンドレッドから仮面ライダーの力を奪う。奪って、奪って!何時か世界を越える力を手に入れる!その時にっディケイドの傍にいても良いようになる!!』
その言葉に、デルタは少なくとも共感した。
普段は頭の悪いデルタでも、それを理解出来る程に。
ゼータの言葉には重みがあった。
だからこそ。
『だからこそ、デルタ!強くなるぞ!ディケイドの傍にいる為に!強く!けれど、正しさを忘れるな!!』
『正しさ』
『ディケイドの言っていた仮面ライダーと同じようになる。でなければ、ディケイドは私達を敵だと思う!』
『っ』
それだけは絶対に避ける。
だからこそ、デルタは。
『だったら、正しさって、何ですかっ』
『さぁね、けれど、あえて言うならば、弱い奴でも敵じゃないのならば殺すな、そして助けろ。仲間は裏切るな』
『弱い奴は死んで当然だと思うですけど』
『そうだね、けど、ディケイドがそれだったら、私達は見捨てられている。だから』
『っ分かった、ボスのようになるっ!ボスがデルタ達を見捨てなかったようにっ』