悪魔と呼ばれ慣れて   作:ボルメテウスさん

45 / 209
狭い視野

「おっお前!いきなり、何を!」

 

俺の言葉に対して、若い方の騎士はこちらに向かって、怒鳴り込んでくる。

まぁ、いきなり上司、それも王女に向かっての発言ではない事は認める。

けれど。

 

「そのままの意味だ。何よりも、今のままじゃというのは撤回するつもりはない」

 

俺は、それを変える気はない。

すると、最初に冷静になったのは、もう一人の熟練の騎士だと思われる人物だった。

 

「それで、なぜ、そう言い切れるのか、確かな事があるのだな」

「確かな事か、これを言えば、それが確かな事か矛盾になるが。あえて言えば、これまでの常識で考えていたら、これからの事に対応出来ない」

「それは、私自身も分かっています。だから」

「いいや、分かっていない。アイリス様、あんた、自分が最強だと思っていないか」

 

その発言に対して、彼女は身体を震わす。

 

「そんな事は」

「無意識だろうな、それとも王女としての使命感からだろうな。自分が前に出る事で全てが解決出来る。そう考えての今回の騎士団だろう」

「それは」

 

否定する事は出来ないだろう。

実際に、正義感があるだろう。人格的にも優れているのだろう。実力も、ある程度はあるだろう。

だが、それらは脆い物であるのを、俺は知っている。

 

「言っただろ、俺は旅で色々と見たって」

 

そのまま、立ち上がる。

 

「だから、見せてやるよ、今、あんたの支えているのが、どんなに脆いのか」

「・・・分かりました」

 

すると、アイリス女王は立ち上がる。

 

「アイリス様っ」

「私自身も、箱入りではない事を証明する為にも」

「そうか、だったら」

 

そうして、俺は近くにあるナイフを持つ。

 

「俺はこれで相手をする」

「後悔しますよ」

 

それは、俺が舐めていると感じたのだろうか、アイリス女王は睨み付けてきた。

だが、俺はそんな事を気にせずに、そのまま訓練場へと向かう。

そこには、他に誰もいない。

 

「さて、始めようか」

「えぇ」

 

その言葉と共にアイリス女王もまたその手に、剣を握る。

俺もまた、ナイフを、手元でそのまま回していくと、そのままアイリス女王がこちらに近づいてきた。

剣は、そのまま俺に突っ込んで来る。

だが、そのタイミングで、俺はナイフで剣を滑らせるように受け流し、そのまま軽く蹴る。

 

「っ!」

 

その衝撃を受けている間に、俺はアイリス女王の腕に肘打ちをする事で剣を手放される。

そして、ナイフをそのままアイリス女王の首元に。

 

「一体、何が」

 

若い騎士の方は何が起きたのか分からない様子だ。

けれど、熟練の剣士は、確かに見えていたようだ。

 

「ナイフを使い、攻撃を受け流し、そのまま蹴りと打撃を一瞬で行った。まさか、こんなやり方が」

「まぁ、こんな感じですかね」

 

そうして、俺は手元にあるナイフをくるくると回す。

 

「戦い方にしても、剣というのはリーチも長く、攻撃は確かに行いやすい。けれど、剣以外にもこくしたナイフでの戦い方もそうだけど、様々な戦い方がありますね」

「・・・確かに、あの場にいたディケイドという存在は、剣を使っていなかった、ですが」

「常識に囚われたら、駄目ですよ」

 

俺は、そう言った。

 

「あなたが信じる正義も確かに大事だ。けれど、それだけで視野を狭めたら、本当の敵を、守るべき存在を見失ってしまう」

「・・・」

 

それを聞いたアイリス様は、どこか思い当たる節があったようだ。

 

「あの時に現れた巨人を思わせる怪物もそうでした。ですが、最後に現れたディケイドと霧を操る存在。奴らの戦いは、私の常識では考えられない戦いでした」

 

そのディケイドが俺であるのは、言わない。

 

「ツカサ君、私に足りないのを、あなたは知っているんですか」

「さぁな、俺だって、失敗は続いていますから。まぁ、今を変えたいんだったら、少しでも力を貸しますよ」

 

そうしながらも、俺はそれだけ告げる。

 

「では、さっそく鍛錬の続きを」

 

なぜか、鍛練になっているのだが、これは突っ込んだ方が良いのか?

 

「ふむ、私としても気になる所だが、君は一体、どれ程の戦い方が出来るんだ?」

 

そう、尋ねられたら、俺は腕を組む。

 

「・・・基本は格闘。剣も銃も使える。弓やハンマーもある程度は出来るし、槍も。ナイフはさっき見た程度で、数える方が面倒だな」

「君は一体何者なんだい」

 

俺の返答に対して、戸惑いを隠せない若い騎士だが。

 

「通りすがりの旅人ですよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。