「おっお前!いきなり、何を!」
俺の言葉に対して、若い方の騎士はこちらに向かって、怒鳴り込んでくる。
まぁ、いきなり上司、それも王女に向かっての発言ではない事は認める。
けれど。
「そのままの意味だ。何よりも、今のままじゃというのは撤回するつもりはない」
俺は、それを変える気はない。
すると、最初に冷静になったのは、もう一人の熟練の騎士だと思われる人物だった。
「それで、なぜ、そう言い切れるのか、確かな事があるのだな」
「確かな事か、これを言えば、それが確かな事か矛盾になるが。あえて言えば、これまでの常識で考えていたら、これからの事に対応出来ない」
「それは、私自身も分かっています。だから」
「いいや、分かっていない。アイリス様、あんた、自分が最強だと思っていないか」
その発言に対して、彼女は身体を震わす。
「そんな事は」
「無意識だろうな、それとも王女としての使命感からだろうな。自分が前に出る事で全てが解決出来る。そう考えての今回の騎士団だろう」
「それは」
否定する事は出来ないだろう。
実際に、正義感があるだろう。人格的にも優れているのだろう。実力も、ある程度はあるだろう。
だが、それらは脆い物であるのを、俺は知っている。
「言っただろ、俺は旅で色々と見たって」
そのまま、立ち上がる。
「だから、見せてやるよ、今、あんたの支えているのが、どんなに脆いのか」
「・・・分かりました」
すると、アイリス女王は立ち上がる。
「アイリス様っ」
「私自身も、箱入りではない事を証明する為にも」
「そうか、だったら」
そうして、俺は近くにあるナイフを持つ。
「俺はこれで相手をする」
「後悔しますよ」
それは、俺が舐めていると感じたのだろうか、アイリス女王は睨み付けてきた。
だが、俺はそんな事を気にせずに、そのまま訓練場へと向かう。
そこには、他に誰もいない。
「さて、始めようか」
「えぇ」
その言葉と共にアイリス女王もまたその手に、剣を握る。
俺もまた、ナイフを、手元でそのまま回していくと、そのままアイリス女王がこちらに近づいてきた。
剣は、そのまま俺に突っ込んで来る。
だが、そのタイミングで、俺はナイフで剣を滑らせるように受け流し、そのまま軽く蹴る。
「っ!」
その衝撃を受けている間に、俺はアイリス女王の腕に肘打ちをする事で剣を手放される。
そして、ナイフをそのままアイリス女王の首元に。
「一体、何が」
若い騎士の方は何が起きたのか分からない様子だ。
けれど、熟練の剣士は、確かに見えていたようだ。
「ナイフを使い、攻撃を受け流し、そのまま蹴りと打撃を一瞬で行った。まさか、こんなやり方が」
「まぁ、こんな感じですかね」
そうして、俺は手元にあるナイフをくるくると回す。
「戦い方にしても、剣というのはリーチも長く、攻撃は確かに行いやすい。けれど、剣以外にもこくしたナイフでの戦い方もそうだけど、様々な戦い方がありますね」
「・・・確かに、あの場にいたディケイドという存在は、剣を使っていなかった、ですが」
「常識に囚われたら、駄目ですよ」
俺は、そう言った。
「あなたが信じる正義も確かに大事だ。けれど、それだけで視野を狭めたら、本当の敵を、守るべき存在を見失ってしまう」
「・・・」
それを聞いたアイリス様は、どこか思い当たる節があったようだ。
「あの時に現れた巨人を思わせる怪物もそうでした。ですが、最後に現れたディケイドと霧を操る存在。奴らの戦いは、私の常識では考えられない戦いでした」
そのディケイドが俺であるのは、言わない。
「ツカサ君、私に足りないのを、あなたは知っているんですか」
「さぁな、俺だって、失敗は続いていますから。まぁ、今を変えたいんだったら、少しでも力を貸しますよ」
そうしながらも、俺はそれだけ告げる。
「では、さっそく鍛錬の続きを」
なぜか、鍛練になっているのだが、これは突っ込んだ方が良いのか?
「ふむ、私としても気になる所だが、君は一体、どれ程の戦い方が出来るんだ?」
そう、尋ねられたら、俺は腕を組む。
「・・・基本は格闘。剣も銃も使える。弓やハンマーもある程度は出来るし、槍も。ナイフはさっき見た程度で、数える方が面倒だな」
「君は一体何者なんだい」
俺の返答に対して、戸惑いを隠せない若い騎士だが。
「通りすがりの旅人ですよ」