揺れる電車の中で、俺は欠伸をしながら外の景色を見ていた。
ここからリンドブルムまでの距離は長く、電車での移動は退屈だ。
「…普段だったら、もっと早く移動できるからなぁ」
護衛という任務がなければ、俺自身はバイクで。
それこそ、オーロラカーテンを使っての移動が出来る。
だが、残念ながら、この場にはシェリーがいる為に、その手段は使えない。
俺達が電車に乗り込むと、イータは眠たい様子と共に、俺の膝の上で寝始めた。
特に気に留める事もなく、俺はそのままイータを寝かせる事にした。
その最中だった。
「…ツカサさんは、どう思いますか」
「んっ、何がだ?」
「お父様が、その私の事を道具のように思っていた事を」
それは、おそらくはシェリーの傷ついている原因だろう。
彼女自身、父親だと思っていた相手が、自分を道具としか見ていない。
その事実は、シェリーにとっては、心の傷になっているだろう。
それは、どのような言葉を言っても、変わらないのだろう。
だからこそ、あえて、俺は。
「本当だろうな、君を道具だと思って、利用したのは」
「…やっぱり、そうですよね、お父様は、いやあの男はっ」
そう、シェリーはその事実を知りながらも。
「でもっ、憎めないのですっ!お母さまを殺したのはっあの男なのにっ私は未だにっ」
これまで我慢していたのだろう。
「だってっ、あの男は私がお母さまが亡くなった後も、ずっと一緒にいてくれた。本当に父親のように、だからこそ」
そうして、シェリーのその言葉に対して。
「全てが一つだけとは限らない」
「えっ」
俺は、そのまま続ける。
「人間の心は分からない。それは、自分自身でも同じだ。あの男は確かにお前の母親を殺した。それはどうやっても変わらない事実だ。けれど同時に利用しているだけだった君をここまで愛情をこめて、育てたも事実じゃないのか」
「…はい」
「だからこそ、憎いんだろ、
その問いかけに対して、シェリーは。
「はい」
シェリーは確かに頷いた。
「ディケイドは、確かに皆を守ってくれました。私を守ってくれました。それが善意で行った事も分かりました!けれど、お父様を殺した事は許せない」
「そうだな」
それと同時だった。
「だからこそ、ディケイドに会ったら伝えないといけません。恨みを。けれど、それ以上にお父様を解放してくれた事を」
そう言ったシェリーの手元には、既に使い物にならなくなったガラクタの強欲の瞳。
「全てがこれが原因だとは言いません。けど、きっとこれを使い続けても、お父様が待ち受けていたのは、悲惨な結末だと思います。
そんな結末から、救ってくれたディケイドに、会って、お礼をしたい」
「そうか」
心とは、本当に分からない。
そんな感想と共に、俺達は、リンドブルムに辿り着く。