それは、初めて、ディケイドになった後の出来事。
ディケイドの力。
それは、俺自身が望んだ力ではなかった。
けれど。
「ここは、どこなんだ」
何もかも無くした俺にとっては、それはただ一つ、自分を守る為の手段でしかなかった。
先程まで、崩壊していた世界にいた影響もあってか、平穏な様子の町並みに強い違和感を感じた。
街を歩きながら、どうするべきか悩んでいた。
『次のニュースです。かつて、日本中を恐怖させた未確認生命体が、再び現れました。警視庁は、これに対抗して』
「未確認生命体」
まるで、知らない単語。
そのはずだった。
だが、俺は、その時、正体を知っていた。
「グロンギっ」
なぜ、その名前を知っているのか、疑問だった。
だが、そうしていると聞こえて来た悲鳴。
その悲鳴の元へと、なぜか脚が進んだ。
そこに待ち受けていたのは、グロンギによって、行われたゲゲル。
先程まで、襲っていた怪物に対して、恐怖はあった。
だけど、それは最初だけ。
「お前らっ」
次に感じたのは、怒りだった。
怒りと共に、人を襲うグロンギに対して、俺は既にディケイドとなっていた。
ディケイドとなった俺は、そのままグロンギと戦った。
戦いの素人であったはずの俺が、なぜ戦えたのか。
それもまた、グロンギの力だったのか。
それは分からない。
けれど、数の差で、徐々に追い詰められていた。
未だに、戦闘経験の少ない俺では、追い込まれるのは必然だった。
だが、その時に。
「超変身!」
俺を、助けた存在がいた。
それが、俺にとって初めて会った仮面ライダーであるクウガだ。
疑問に思いながらも、俺とクウガは、その場で共闘した。
未だに疑心暗鬼であり、同じ怪人だと疑っていた俺だが、この場を乗り越える為に。
そうして、戦いが終わった後。
「士!まさか、こっちに来ていたのか?」
「士?一体、誰の話をしているんだ?」
その言葉と共に、俺は変身を解除した。
解除した俺の姿を見て。
「えっ、子供!?君は一体」
「・・・さぁな、それよりも、お前は誰だ?さっきのグロンギと同じ」
「いや、俺は、人間で、仮面ライダーだよ」
そう、クウガもまた、変身を解除した。
「俺は、小野寺ユウスケ!」
彼は、そう自己紹介を行った。
俺は行く当てもなかった事もあり、小野寺ユウスケの元で居候する事になった。
「それで、士ってのは一体」
「あぁ、俺の知っているディケイドで、君とは違う奴なんだ。結構生意気で、何かと喧嘩していたけど、今は何をしているんだろうな」
「・・・そうか」
「それにしても、君が体験したのを聞くと、もしかして、また世界の崩壊が?いや、よく考えたら、またグロンギが復活したのも」
「どちらでも良い、俺には、もぅ帰る場所はないから」
そう、俺は呟いた。
それを聞いたユウスケは。
「なんだか、君を見ていると、本当に士を思い出すよ」
「・・・その士っていう人と比べたら、俺なんて」
「そうかもな、けど、それはまだまだ成長途中だろ、なんだって君はまだ子供だから」
「子供か」
俺自身、あの時、まだ中学に上がる前だった。
だからこそ、未だに自立なんてしていなかった。
何よりも。
「俺は、これからどうすれば良いんだ。ましてや、戦うなんて」
そう、弱音を吐いた時だった。
「そうだな、士は、世界を救うという目的だったけど、君は、まだその目的も見つけていないんだな」
それは、今でも変わらない。
旅を続けた先に、何があるなんて、俺にはさっぱりだった。
けれど。
「そっちにはあるのか?目的は?」
「んっ、目的?勿論」
そう、彼は笑顔で言った。
「皆の笑顔を守るため」
「皆の」
彼の言葉に、疑問はあった。
「あぁ、そうだな、士と出会った時は、俺には姉さんって呼んで慕った人がいたんだ。その人の為に戦っていたんだ。
けれど、戦いの中で」
その時は悲しそうだった。
けれど。
「そんな時に、姉さんが「私の笑顔のために戦ってあんなに強いなら、世界中の人の笑顔のためだったら貴方はもっと強くなれる」。そして、士の奴は「誰も戦わなくっていいようにするために、自分ひとりが闇に落ちたとしても、誰かを笑顔にしたい」ってね」
そう、照れ臭そうに、話していた。
「そうなんだ」
「士の奴なんて、あの時は丁度、君と同じく、仮面ライダーとして戦い始めたばかりだって聞いたな」
そんな彼の言葉に対して。
「「俺は」」
そう、話していた時、過去を振り返りすぎた。
ふと、見ると、ガキ共は既に寝ていた。
「・・・自分語りが過ぎたな」
ガキ共からしたら、つまらない話だったかもしれない。
けれど、そうだな。
「笑顔か」
こいつらが見せた笑顔は、どちらかと言うと、この状況を少しでも良い方向にしたい。
そんな無理から来ているような気がする。
だからこそ。
「せめて、ガキ共が心の底から笑える所に連れて行かないといけないかもな」
それが、もしかしたら、この世界での俺の役割かもしれない。
そうだろ、ユウスケさん。