世界が燃えている。
私の抵抗は無意味だった。
私の足掻きは見苦しかった。
私の隣で血まみれで倒れ伏す少年を見る。
私が選択を間違えなければ救えた命だった。
私は間違えた。
間違えて、間違えて、間違い続けた。
その結果が今だ。
その奥では巨大な
あぁ……忌々しい。
◇◆◇
私の名前は
なっているって言うのは私は元々信条凛ではなかったから。
信条凛はノベルゲーム『不楽の城』に登場する主人公の名前だ。
『不楽の城』は主人公の凛と
2人は奇妙な縁で結ばれた幼馴染で、何気ない日常を送っていた。
でもある日突然魔法の才に目覚めると同時に異世界からの侵略者『フラク』と戦う事になる。
その日々の中で2人の絆は深まっていき最終的には『フラク』を倒してハッピーエンド……と言うのが大まかなゲーム概要だ。
本当は様々なエンディングが用意されてるがここでは割愛させてもらう。
よくあるノベルゲーの一つだが
グッズはコンプリートしたしコラボカフェにも何回も行った。
ここまで話して何だが、つまり『不楽の城』はゲームだ。
そしてどういう分けか俺は『不楽の城』の主人公『信条凛』に転生しているわけだ。
と言っても死んだ時の記憶も曖昧で生前は男だったことと『不楽の城』の全ルートくらいしかよく覚えてない。
まぁ、色々語ったが要約すると俺は『不楽の城』の信条凛にTS転生した。
シナリオが本格的に始まるのは信条凛が15歳になった時。
今の私は13歳、あと二年の猶予がある。
15になるまでにノートに『不楽の城』の全ルート派生を書き上げる。
バッドエンドなんて絶対入りたくない。
このゲームでのバッドエンドは=死だ。
狙うならノーマル以上だが、私には幸いこのチートノートがある。
目指すは一点、グランドエンド。
凛とヒカルが『フラク』を倒して世界に平和が戻り結ばれる。
そのグランドエンドを目指す。
その為にも今から張り巡らすことができるでは打たないといけない。
主にヒカルの好感度上げとか。
と言うわけで今、私はお弁当を2個ほど作っている。
私とヒカルの分だ。
私……信条凛と伊月ヒカルは天涯孤独の身だ。
同じ施設で育ち、同じ家で暮らしている。
そんなヒカルの好感度を上げるには日常的にお節介を焼かないといけない。
これもその一つだ。
我ながらいい出来の弁当が作れた。
そうして自室でまだ眠っているヒカルを起こしに行く。
扉を数度ノックしてヒカルの部屋に入る。
「ヒカル、起きろ〜朝だぞ〜」
「ん……まだ6時半じゃねぇか! 相変わらず凛は早起きだな」
「そりゃ、アンタのお弁当作ったりしてるからね。早起きにもなるわよ」
「悪りい、いつもありがとうな」
「そう思うならさっさと朝の支度済ませちゃってね! 朝ごはんも出来てるから!」
「いやぁ、何から何まで助かるぜ本当」
そんな会話をしてヒカルの部屋を後にした。
それを2年続けた。
多分好感度は高いはずだ。
そして15歳の誕生日、私達は魔法の才に目覚める。
私の魔法は回復の魔法、いわゆるヒーラーだ。
対するヒカルはバチバチの攻撃魔法、アタッカーだ。
……そして、私達が魔法に目覚めたと言うことは『フラク』が侵略を開始するということ。
ここからは2人の共同作業、ヒカルを援護して『フラク』と戦う……はずだった。
『臨時ニュースをお伝えします! 何ということでしょう! これは現実なのでしょうか?! 先程午前8時に突如空に空いた穴から現れた謎の生命態を巨大な蟲が喰らっています! 我々の常識を遥かに凌駕した光景が広がっています! これは夢などではありません! 現実に起こっているのです!』
は? 『フラク』を喰う蟲? そんなのどのルートにも存在しない!
いや、何より蟲の集団が敵かも分からない。
こんなのデータにはないぞ!
いや、落ち着け。
これは一体何なんだそもそも蟲型エネミーなんて『不楽の城』に存在すらしない!
「おい! 凛! 庭を見ろ!」
「へ……?」
そこには先程ニュースで映っていた蟲型エネミーがいた。
まるで品定めをするかの如くコチラをみている。
「凛、俺の後ろにいろ! 大丈夫、魔法は散々練習した! アイツが俺たちに害をなすなら俺が倒す!」
ヒカルは警戒態勢に入る。
私は咄嗟にヒカルの後ろに移動して後方支援の準備に入る。
蟲は窓ガラスを割り部屋に侵入してくる。
蜘蛛にも似た水晶の塊じみた怪物が喉を鳴らし距離を詰めてくる。
瞬間、ヒカルは魔法で剣を錬成し蜘蛛に飛びかかる。
しかし……
「がぁっ!」
「ヒカル!」
剣が蜘蛛を貫く事はなかった。
代わりにヒカルの腹が切り裂かれる。
すぐさまヒカルの治療にあたる。
幸い致命傷ではない。
けど……
蜘蛛はコチラを観ながらゆっくりと近づいてくる。
ヒカルの回復が間に合わない。
このままじゃ2人とも死ぬ!
どうすればいい!
考えろ、考えろ、考えろ!
瞬間、蜘蛛に体を貫かれ壁に投げ飛ばされる。
あぁ……また死ぬのか私は……
朦朧とする意識の中でみた光景はヒカルが蜘蛛に対して激怒し魔法によって焼き尽くす物だった。
瞼が重い、身体が痛い、私は死ぬのか?
ヒカルが私の胴体の傷を塞ごうと魔法を使うが無理だ。
ヒカルは回復魔法を使えない。
私に待っているのは死だ。
視界が霞む。
こんな想定外のことは知らなかった。
まるでバグだ。
大きく話から逸脱している。
あぁ……そうか、私が転生したから物語りが狂ったのか?
ダメだ、思考が溶けていく。
「死ぬな! 凛!」
ぐちゃぐちゃの涙顔でヒカルが私に訴えかける。
声すら出せない。
クソ、こんなはずじゃないのに……