「まずは君たちの実力をテストさせてもらいます」
斎賀に別室に連れてかれて開口一番に聞かされたのがこれである。
「いいじゃねぇか! この前は何もできなかったけど今回は!」
ヒカルはすでに臨戦体制に入っていた。
私もいつでも回復に回れるように準備する。
「では、始めましょう」
そう言って斎賀は無数の鎖を展開する。
あの鎖は厄介だ。
拘束されたら魔法が使えない。
そんな中、ヒカルは一心不乱に斎賀に迫る。
「お得意の鎖なんざ当たらなけりゃどうでもねぇ! 食いやがれこの野郎!」
ヒカルの間合いに斎賀が入る。
ヒカルは即座に剣を錬成し切り掛かる。
しかし……
「なるほど、錬成の魔法ですか。ですが耐久力不足ですね」
鎖を自在に操りヒカルの錬成した剣を砕く。
そのまま鎖を束ねてヒカルを貫いた。
「え……?」
一瞬の出来事に対処が遅れる。
「どうしました? 早くしないと彼は死にますよ?」
その一言で正気に戻る。
すぐ様ヒカルに駆け寄り魔法で傷の手当てを———
「簡単に回復させるとでも?」
私は鎖に弾かれて倒れ伏す。
痛い。
けど、早くしないとヒカルが死ぬ!
再びヒカルの元に駆けつける。
鎖で殴打されながらも回復魔法をかけることには成功した。
あとは傷が塞がるまで私が耐えればいい。
鎖で殴打された部分からの出血が激しい。
痛い、痛い、痛い!
自分の身にも回復魔法をかけてただひたすらに耐える。
私が死ねばヒカルも死ぬ。
今までの私はゲームのキャラとしてしか彼を観ていなかった。
けど、血の温もりが、鼓動が、彼は生きていると証明する。
痛みを耐えろ。
私が死んだら人が死ぬんだぞ!
そうしてヒカルが目を覚ます。
「凛……凛?!」
「起きるのが遅いのよ、馬鹿」
ヒカルの瞳に怒りが満ちる。
「焼き尽くしてやる!」
ヒカルの両の手が燃えあがる。
まるで火炎放射器の様に斎賀に向かって獄炎が放たれる。
しかし……
「なるほど、2種の魔法……いや、3種ですか。中々珍しいタイプですね」
斎賀は鎖を束ねて盾がわりにして炎から身を守っていた。
ダメージは一切ない。
「な、これでもダメかよ!」
ヒカルが言葉を吐く。
ヒカルは続け様に剣を錬成し炎を纏わせ切り掛かる。
「複合も可能、と。将来性はありそうですね」
しかし斎賀には届かない。
全て鎖でいなされてしまう。
瞬間、不意に痛みが走る。
斎賀の鎖が私に突き刺さり抉る。
痛い、痛い、痛い!
早く魔法で治さなきゃ!
だが、魔法が使えない。
そうだ、斎賀の鎖には魔法を使えなくする能力があるじゃないか!
ぐっ……
脇腹から抉るように鎖が出てくる。
こんなのどうやって倒したらいいんだ!
……いや、手はある。
「ぐァァァア!!!」
鎖を握って腹ごと引きちぎる。
痛みで頭がおかしくなりそうだ。
けどこれで魔法が使える!
すぐさま傷を繋げ、応急処置をとる。
ヒカルは斎賀に苛烈な攻撃を仕掛けるが全ていなされていた。
……こんな様で本当に「バグラス」と戦えるのか?
本当にヒカルを生かすことができるのか?
考えろ、考えろ!
私に使えるのは回復魔法だけ……回復?
本当にそれだけか?
いや、試すだけの価値はある。
私は斎賀の隙を狙い斎賀に近づき、触れた。
そうして一気に回復魔法を流し込む。
「な?!」
この試合中初めて斎賀が逃げようとした。
やっぱりだ。
過剰な回復はダメなんだ!
事実、私が触れた部分はドロドロに溶けていた。
これなら私も戦える。
「……なるほど、いい着眼点です」
距離を取った斎賀はそう言って鎖をしまった。
「何だ? 終わりかよ」
ヒカルはバツの悪そうな顔で悪態をつく。
「ええ、これ以上は無駄ですからね。あなた方のトレーニングメニューを作る方にシフトします。特にヒカルくんはもう少し実戦経験を積まなくてはなりません」
「そうかよ、チクショウ」
ヒカルは苛立っていた。
実際何もできなかったのだ。
心底気分が悪いだろう。
けど、私は知っている。
ヒカルは最強の魔法使いになる事を。
そのためなら私はどんなことでもするつもりだ。