勇者一行と宿王リッカ   作:地球の星

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13. アリアハンを守るために

 レック達がいざないの洞くつで奮闘している頃、外ではスラリンなどのモンスター達がトレーニングをしていた。

「果たしてレックさん達は無事なんでしょうか。」

「分からんな。とにかく情報が無いことには…。」

「そうですね。指示があるまではここにいないと…。」

 アルミラージ、魔法使い、ホイミスライムはいつ戦闘になってもいいように、洞くつの入口をのぞきながら体を動かしていた。

(出来ればレックさん達が追い返してくれればいいんですが…。)

 スラリンは仲間モンスターとの修行の成果もあってレベル9まで上がったが、いかんぜんHPや攻撃力などのステータスは低く、呪文もニフラムしかないため、出来れば戦いたくないのが本音だった。

 それは他のモンスター達も同じで、レック達の活躍を願い続けていた。

 すると洞くつから数人の人間達が光に包まれた状態で飛び出してきた。

 彼らはさらに宙に舞い上がり始めたが、そこでレックはキメラの翼の効果を解除したため、6人は地面に降り立った。

「あっ、みなさん。戻ってきたんですね。」

 スラリンをはじめ、一同は一瞬うれしそうな表情を見せたが、バーバラは傷だらけの状態で気を失っており、ミレーユはリッカとルイーダに肩を担がれ、ハッサンは痛み止めが切れてきたせいなのか、足で体を支えきれずに前のめりに倒れ込んでしまった。

「どうしたんですか!?ボロボロの状態じゃないですか!」

 スラリンは心配しながらレックのそばにやってきた。

 そしてみんなで協力しながらバーバラとミレーユをあおむけにした後、レックはボス級の実力を持つ相手2人からベギラマを受けてこうなってしまったことを話した。

「ベギラマってそんなに強いんですか?」

「そうよ。耐性無しなら一撃で40ポイントほどのHPを削られてしまう。それをダブルでくらったら、HPの低い職業の人では到底耐えられないわ。」

 スラリンの質問に対し、ルイーダはその呪文がいかに強力なものなのかを説明した。

 それを聞いて、みんなは果たして相手に勝てるのかどうか、不安を感じずにはいられなかった。

 そんな中で、レックはどうして洞くつ内での戦闘中に緊急脱出出来たのかが分からずにいた。

「もしかしたら、バーバラさんの力が乗り移ったのかもしれないですね。」

「えっ?」

 リッカの発言を受けて、レックは思わずバーバラを見つめた。

 体のあちこちにやけどをしている彼女はまだ意識が無いままぐったりしていたため、真相を確かめることは出来なかった。

(いずれにしても、君のおかげで僕達は助かったよ。ありがとう。)

 レックは心の中でバーバラに感謝をするとスクッと立ち上がり、洞くつの方を向いた。

ルイーダ「どうしたの?まさか相手と真っ向勝負を挑むの?」

「うん。ここで迎え撃つ。アリアハンの運命のために戦い抜く!」

ハッサン「お前、本気で言ってんのか!」

「本気だ。助けてくれたバーバラのために、そしてこの大陸を守るために、この身がどうなろうと戦ってやる。」

「そうですか。では、私も協力することにしましょう!」

リッカ「ルイーダさん、いいんですか?相手は強敵ですよ!」

「心配はいりません。私が本気を出した時のレベルは28です。まもの使いのビーストモード同様、そうなれるのは短い時間だけですが、その時のHPに加えてはがねのムチの攻撃力を合わせればベギラマ使いであろうと恐れることはありません。」

 普段はやさしい彼女も、今回ばかりはまるで鬼のような表情をしていた。

 その姿を見たレックも彼女の実力にかけることにした。

 一方、ハッサンは自分も参加することを宣言した。

レック「えっ?無茶だよ。そんな体で。」

「無茶でもやってやるぜ。大切な仲間をこんな目にあわせたやつを許してはおけねえ。絶対にやり返してやる。」

 ハッサンは未だに起き上がれないミレーユを見つめながら立ち上がった。

 しかし、少し歩いたところで再び倒れそうになったため、ホイミスライムからホイミを唱えてもらうことになった。

「では、私も参加します。HPは少ないですが、MPはたっぷりありますので、ヒャドやギラで蹴散らしてみせます。」

 リッカはベギラマの恐怖を感じながらも、勇気を振り絞って言い切った。

 するとアルミラージはラリホー攻めで、魔法使いはメラとギラで、ホイミスライムはホイミタンクとして参加することになった。

 

 しばらくするとバーバラが意識を取り戻した。

「あっ、バーバラ。気が付いたんだね。」

 レックは彼女のところに歩み寄り、ホイミを唱えようとしたが、時を同じくして洞くつ内を偵察に出ていた一角ウサギが足早に戻ってきて、みんなに合図をした。

 それを受けてバーバラは「あたしはいいから、そのMPをこの後のために使って。」と言い出した。

「えっ?でも。」

「お願い。」

「……。」

 レックはすぐに判断が出来ず、一瞬迷ってしまった。

 しかし、この後の戦いはMPをセーブしながら乗り切れるものではないと思ったため、不本意ながらも受け入れることにした。

「分かった。行ってくる。」

 彼は自分でバーバラを治療出来ない悔しさを振り切り、ルイーダ、ハッサン、リッカ、そして仲間モンスター達と一緒に相手を迎え撃つことにした。

 一方、洞くつ内部では「突撃ーーっ!」という魔女の声に続いて足音が徐々に大きくなってきた。

 最初に階段を駆け上がってきたのはさまようよろい4人だった。

 しかし、出口付近でアルミラージのラリホー攻めにあってCとDが眠ってしまい、さらに待ち伏せしていたルイーダの(本気の)ムチ攻撃とリッカのギラで全員HPを削り切られ、階段下へと転げ落ちていった。

「ま、待ち伏せしていたとは…。む、無念だ…。」

 地下1階に戻されたさまようよろい達はみんな気を失ってしまった。

 続いておばけありくいとキャタピラーが集団でやってきたが、アルミラージ達のラリホー攻めで一気に眠ってしまい、バブルスライムから毒を移された上に魔法使いの集団ギラで追い返されてしまった。

 次の相手はポイズントード4匹だったが、スラリンのニフラムで数が半分になり、一角ウサギのツノ攻撃、そしてリッカとルイーダの通常攻撃がさく裂したため、レックとハッサンの出番も無いまま返り討ちにあった。

「何だお前ら!だらしないぞ!」

「こうなったら切り札よ!」

 魔女の2人は戻ってきたモンスター達を叱り飛ばした後、あばれザルとキャットフライを2匹ずつ送り込んできた。

 しかも彼らは不意打ちを仕掛けてきたため、あばれザルのターゲットにされたレックとハッサンは大ダメージを受けてしまい、キャットフライAは痛恨の一撃でルイーダのHPを一気に減らし、Bはマホトーンでアルミラージの呪文を封じてしまった。

(こうなったら全体攻撃よりも一匹を確実に仕留めるしかない!)

 そう考えたレックは素早く武器をはがねの剣に持ち替えた。

 その間にハッサンが不意打ち返しをするかのように捨て身であばれザルAに突っ込んでいき、階段下へと突き落としてKOさせた。

 しかし、キャットフライAが彼をターゲットにしようとしたため、このままでは大ダメージを受けてしまうことを察知したレックは火炎ぎりを浴びせ、危ういところで倒した。

 キャットフライBとあばれザルBはルイーダを集中攻撃してきたが、危ないと思った彼女はとっさに身を守り、ダメージを減少させた。

「ルイーダさん、大丈夫?」

「私を気にするなら、相手を攻撃して!」

「えっ!?あ、はいっ!」

 リッカはルイーダに喝を入れられて気持ちを切り替え、あばれザルBにヒャドを浴びせた。

 次のターンではルイーダとハッサンが外れ、魔法使いとスラリンが入った。

 そしてスラリンがレックから受け取ったブーメラン攻撃で双方にダメージを与えた後、レックが火炎ぎりでキャットフライBを倒した。

 それを見たあばれザルBはレックに大ダメージを与えたため、彼はKO寸前になってしまったが、魔法使いのギラ、リッカのヒャド、スラリンの会心の一撃が決まったため、どうにか決着がついた。

 戦闘が終わるとレックは即座にホイミで自身を回復させ、リッカとルイーダは薬草で回復をした。

 すると洞くつから不気味な女性の笑い声が聞こえてきた。

「ついに来たか。あの魔女2人が。」

「まあ、来るとは思っていたけれどな。」

 レックとハッサンが武者震いをしていると、それに呼応するかのようにその2人が姿を現した。

「あんた達、あたし達の部下をここまで苦しめるなんて、やるじゃない。」

「だけど、それもここまでよ。あなた達を倒してアリアハンを征服するわ。」

 自信満々の2人に対し、レック達はせめてもう少し回復をする時間がほしいと要請したが却下されてしまった。

 それどころか彼女達は何と新手のモンスターを連れてきた。

レック「ぎょえーーーっ!何だそれは!?」

「これ?スカイドラゴンって言うの。驚いた?」

「こう見えてもあたし達のかわいいペットなのよ。」

「どう?怖い?今なら降参してもいいのよ。」

「アリアハンの半分は残してあげるからね。」

 2人は高笑いをしながら余裕を見せていた。

 その姿を見たリッカは強さを知っているのか、まるで絶望的な表情を浮かべ、その場に立ち尽くしてしまった。

(いかにも強烈な炎を吐いてきそうだな。)

(さらにダブルベギラマを使われたら…。)

 もし本当にこれらをくらったら一気に壊滅状態になるのは間違いないだけに、レックとハッサンの表情はこわばっていった。

 しかし、これは絶対に勝たなければいけない勝負であるため、彼らには戦うしか選択肢が無かった。

 すると魔女達は洞くつ内での戦闘と同様にレック、ハッサン、ミレーユ、バーバラとの勝負を要請してきた。

レック「えっ?でも彼女達はベギラマ2発を浴びた影響で戦えない状態なんだ。」

ハッサン「出来ることなら大目に見てやってくれねえか?」

「ダメよ。あたし達はあの時と同じ状況で戦いたいんだから。」

「さあ、あの時のパツキン美女と赤毛の少女、出てらっしゃい。」

 彼女達はかたくなに態度を変えなかったため、レック達は仕方なく従うことにした。

 ミレーユとバーバラはホイミスライムの治療のおかげでようやく立ち上がれるようになったものの、少しでもダメージを受ければ間違いなくKOになってしまう状態だった。

「というわけで、あの時のメンバーがそろったわね。」

「じゃあ、今から戦いの続きを始めることにするわ。」

 魔女2人の合図とともに、無謀な勝負が再び始まってしまい、スカイドラゴンが先制攻撃とばかりに炎を吐くモーションに入った。

(ま、間に合わねえ…。)

(どうすればいいんだ!)

 ハッサンとレックの脳裏には最悪の状況がよぎった。

 これまでか…!

 2人がそう思った時、ミレーユが彼らの前に出てきて、こちらも先制攻撃とばかりにニフラムを唱えた。

 すると、その炎と呪文は同時に相手に命中した。

「きゃあああっ!」

 ミレーユは悲鳴をあげながらその場に倒れ込んでしまったが、一方のスカイドラゴンも炎を吐いた状態のまま、彼女以外にダメージを与えることなく退場となってしまった。

「ミレーユ!そんな…。」

「俺達を守るために…。」

 レックとハッサンは間一髪で炎を回避出来たものの、身代わりという形になってしまった彼女のそばにやってきて、ホイミと薬草を使った。

「えっ?ええっ!?」

「まさか、そんな!」

 一方の魔女達も予想外のことが起きたために隙を見せてしまい、1ターン行動出来ずにいると、今度はバーバラが脳裏によぎった「強くなるのですよ。もっと強く…。」という女性の声に導かれるかのように突如覚醒し、全ての魔力を暴走気味に解き放った。

「こっ、これはまさかアレなの?」

「究極の呪文と言われているアレ?」

 2人はなす術なく、その呪文をまともに受けてしまった。

 

 大ダメージを受けた彼女達だったが、あらかじめ装備していた服やかぶり物、装飾品などが威力を軽減してくれたため、かろうじてレッドゾーンで踏みとどまった。

 その直後、バーバラはその場に倒れ込んでしまった。

「あの2人にこんな切り札があったなんて。」

「ますます黒焦げにしてやりたくなったわ!」

「でも今はHPがピンチだから、ここはベホイミで回復をすることにしましょう。」

「そうね。あたし達がやられたら、これから誰が指揮をとるのという話になるから。」

 彼女達は動揺しながらも呪文を唱える動作に入った。

 するとレックはとっさにAに体当たりし、発動前にKOさせた。

 しかし、ハッサンの攻撃は一瞬遅かったため、Bはダメージこそ受けたものの、差し引きでHPを50近く回復した。

 これだけでもショックだったが、Bは間髪入れずにベギラマを唱える動作に入った。

(これを受けたらバーバラとミレーユだけでなく、僕達も…。何とか阻止したいけれど、間に合わない…。)

 レックは一瞬全滅を覚悟した。

 するとハッサンが足の痛みをこらえながらBの前に立ちはだかった。

「ベギラマ!」

「させねえっ!」

 ハッサンは結果的に仁王立ちのような形になり、呪文を一身に受けてしまった。

「ぐああああっ!!!」

 大ダメージを受けた彼は、魔女Bの目の前で倒れ込んでしまった。

「ハッサン!!」

 想像すらしたくない光景を目の当たりにしてしまったレックはとうとう理性を失い、「うわあああっっ!!」と叫びながらMPを使い切る覚悟で火炎ぎりを浴びせ、ついに決着をつけた。

 お頭が戦闘不能になったのを目の当たりにした手下達はすっかり動揺してしまい、徐々に撤退をし始めた。

 その中でもまだアリアハンに乗り込もうとする者はいたが、鬼の形相をしているルイーダとリッカ、さらにスラリン達を見て、とうとう全面撤退を決断し、魔女2人を連れて退却していった。

(ふう…。まさかスカイドラゴンを連れてくるとは予想外だったわね。まあ、ゲルダさん達がこれまで集めてくれたデータのおかげで弱点を知っていたから対処出来たけれど…。)

 ルイーダはミレーユが魔女に指名された時、こっそりとニフラムが効くことを伝えており、それが役に立ったことでほっとしていた。

「ミレーユ、バーバラ、ハッサン…。ごめん…。こんな目にあわせてしまって…。」

 戦いには勝ったとはいえ、レックは3人を守れなかった自責の念からその場にへたり込み、涙をボロボロ流すばかりだった。

 

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