ナジミの塔で隔離生活を送る海賊ゲルダの一味は、トレーニングをしながら海上での見張りをして過ごしていた。
この日の正午を持って隔離が解除になる日の朝、彼らはある1隻の船が海上からこちらに向かってやってくることに気づいた。
カミュ「お頭!あの船はもしや!?」
「うむ、間違いないだろう。明らかに荒くれどもの乗る船だ。」
「では私、のろしに火をつけにいきます!」
「頼んだぞ。くれぐれも煙の色を間違えるなよ。」
「かしこまりました!」
リッカは返事をした後、一目散にその場所に向かっていった。
ヤンガス「それで、どうするでがす?やっちまいますか?」
「そうだな。アリアハンの連中が持っている貧弱な武器では手に負えんだろうし、ここはあたし達が迎え撃つことにしよう。カミュ、ヤンガス!すぐさま下の階に行くぞ!」
「分かりました!」
「ガッテンでがす!」
ゲルダ達はすぐさまキメラの翼を使って塔の入口に直行し、1階にいたルイーダや他の部下と合流した。
その後、船に乗り込んだ彼らは町からやってきたレック達が見守る中、海上で荒くれ達と戦闘になった。
最初、連中はアリアハンの人などチョロいとばかりになめプをしていたが、ゲルダのキラージャグリング、ヤンガスのかぶとわり、カミュのやいばのブーメラン攻撃、ルイーダのはがねのムチ攻撃が強力だったため、あっという間にHPを削られてしまった。
「まさか現地の連中がこんなに強いなんて!」
「聞いた話と全く違うじゃないか!」
「これはいかん!退却!退却だ!」
アリアハンを侵攻しに来た彼らは全く予想外の出来事に驚いていた。
そしてゲルダの要求に応じて2度とここには来ないことを約束し、たくさんのお金やアイテムを置いて退却をしていった。
その光景はアリアハンの人達の目にも非常にまぶしく映り、王様の耳にもすぐに届いた。
(当初は隔離解除になったら帰ってもらおうと思っていたのだが、この地を守ってもらった以上、そんなことをするわけにはいかなくなってきたな。)
考えを改めた王様はチャモロを呼び、ゲルダ達に上陸許可を出すことにした。
「いやー、やっと町に入れてもらえるぜ。」
「塔に缶詰ってのも意外にきつかったでがす。」
「本当に早く時間が過ぎてほしいと思ったわ。」
「早速現地の人達にお礼をしなければな。」
カミュ、ヤンガス、リッカ、ルイーダは待ちに待った時が訪れて、心の底からほっとしていた。
「隔離期間中の食費などで支払う金額はこんな感じだな。」
ゲルダは袋にお金を詰め込むと、仲間達と一緒に船を降りて本土に上陸した。
するとチャモロが同行しながらアリアハンを案内することになった。
町に入ると、すぐ右側にレックの実家があった。
ゲルダ「ほう。ということは、この家が勇者オルテガの実家でもあったわけか。」
「はい。そしてレックさんは母親のマドリガルさんと、祖父のロベルトさんと一緒に過ごしています。」
チャモロは彼が尊敬する父親のように強くなりたいと言っていたことを話した。
「そうか。あたしもオルテガの話は聞いているから、ぜひそうなってほしいものだな。それで、反対側にあるのは飲食店か?」
「はい。ここではターニアさんが働いています。しかし、最近赤字で彼女は閉店を考えているそうなんですよ。」
「閉店とはおおごとだな。どうしてこんなことになったんだ?」
「理由は簡単で、お客さんが減ってしまったからです。この国はロマリアに通じる旅の扉を封印して鎖国状態にしてから徐々に貧しくなり、しかもここ最近の自然災害の影響もありまして…。」
チャモロはアリアハンとレーベが置かれた状況を正直に話した。
それを聞いて、ゲルダ達もこの大陸のために何かしてあげたいという気持ちになった。
町を歩いていくと、彼らは別の建物の前に差し掛かった。
「ここって、『INN』って看板が出ているけれど、宿屋なの?」
リッカはその表示を見るなり、目を輝かせた。
「確かに宿屋でした。」
「でしたって?」
「ここはつい最近、本当に閉店したんです。」
「えっ?どうして?」
「もちろん赤字のためです。」
チャモロは経営者こそいなくなってしまったものの、内部の設備はそのまま残っていることを伝えた。
「じゃあ、私が引き取ってもいい?」
一味が厳しい表情を浮かべる中、リッカは逆に興味津々だった。
そして彼女は自身が宿王という称号を持っており、自分が新しい経営者になりたいことを打ち明けた。
「ええっ?本気ですか?」
「私は本気よ。」
「確かにあんたは新たな土地で宿屋の主として成功したいって言っていたからな。」
ルイーダは自身も店の経営者として成功したいという思いを抱いており、その夢を叶えるためにゲルダの船に乗り込んだことを話した。
「というわけよ。ねえ、私に宿屋をやらせて。」
「えっと…。」
「お願い!」
「で、では、城に行って聞いてみることにします。」
チャモロは許可を得るために王様に会いに行くことにした。
するとルイーダもターニアの飲食店の再建をしたいと言い出したため、彼はそれもあわせて聞くことにした。
王様からの伝言では、費用を自分達で負担することを条件として彼女達に許可を出してくれた。
「やったあっ!じゃあ私、早速宿屋の改装作業に入るわね!」
「私はターニアの店に行き、彼女と話し合うことにしよう。」
リッカとルイーダは気合いを入れながらそれぞれの建物に向かっていった。
ターニアの店に入っていったルイーダは、メニュー表を見ながら「Pepper Ale」と書かれた飲み物に注目をした。
「これはペッパー アレと読むのか?」
「いえ。ペッパー エールです。」
「おっと、これは失礼。それで、これはお酒か?」
「いえ、ソフトドリンクです。お酒は切らしているんです。」
「そうか。まあいいだろう。これを注文することにする。」
「分かりました。」
ターニアはそう言うと、即座に飲み物を提供することにした。
ルイーダはドリンクを味わいながら飲み、料金を支払った後、早速この店を立て直したいことを打ち明けた。
「えっ?あの、いいんでしょうか?この地に来たばかりの人に経営してもらうなんて。」
「私の腕前を信じてほしい。これからは毎日お頭達に客としても来てもらい、食事をしてもらうつもりだ。必ずこの店を立て直してみせる。私は無給で雇ってもらって構わない。」
彼女の決意は本気だった。
ターニアは最初どうすればいいのか分からず、オロオロしていたが、このままでは閉店が時間の問題だったため、最終的にその熱意にかけてみることにした。
結果、ルイーダはこの店に住み込みで働くことになった。
一方、ゲルダやヤンガス、カミュ達はリッカの宿屋に寝泊まりしながら、バーバラの畑仕事を手伝ったり、テリーの狩りや釣りに参加したり、レックとハッサンの稽古相手をしながら過ごした。
そして、彼らはアリアハンやレーベの人達とすっかりなじんでいった。
ある日。ゲルダは店でレック達に世界の現状を色々と話すことにした。
その中で、彼女はアリアハン大陸が平和である一方、別の大陸では魔王バラモスが現れて人々に影響を及ぼしていること。
ここは危険度が0であるものの、国によっては人々の争いやモンスター襲撃の影響もあって「1:十分レベルを上げてください」、「2:不要不急の渡航はやめてください」、「3:レベルを上げても渡航は危険です」、「4:退避してください」という危険度が設定されていること。
真の勇者と呼ばれたオルテガがきっとどこかで生きていると信じていること。
さらに、レックに会えたことで彼の行方を捜しに行きたいと思うようになったことを打ち明けた。
レック、バーバラ、ハッサン、ミレーユはここにいるだけでは知る由もなかった事実を知ることになり、思わずしり込みをしそうになった。
一方、チャモロとテリーは逆にあの船に乗って世界を旅してみたいという思いを抱くようになった。
しかし、チャモロは城の職員としての安定した仕事を手放すことになってしまい、テリーは狩りの仕事に加えて馬のリューラの世話もあり、何よりも姉のミレーユと離れることになるため、簡単にはいかなかった。
そうしているうちに、ゲルダ達の旅立ちの時は刻一刻と迫ってきたため、彼らは近いうちに決断を下さなければならなかった。
そしてこのままズルズルと引きずるくらいならという思いから、それぞれ王様とミレーユに心の内を話すことにした。
10日後。いよいよゲルダ達の海賊船が再び航海に出ることになった。
「この出航でもうここには当分戻ってこないって、本当ですか?」
「ああ。ずいぶん長い拠点だったが、これでお別れってわけだ。寂しいだろ?」
「う、うん…。すっかり仲良しになっていたから…。」
レックはゲルダを名残惜しそうに見つめていた。
「あたしもお前と別れるのはつらい。だが、これが今生の別れではない。会いたくなったら、そちらから会いに来い。オルテガのような立派な勇者になってな。」
彼女はそう言うと、せん別としてはがねの剣や大かなづち、鉄の盾、鉄かぶとなどの装備品を置いていくことにした。
「本当にいいんですか?」
「ああ。あたし達はこれから自分達のアジトに戻る。そこに行けばその程度の武器などたくさんあるからな。だから遠慮なく使ってくれ。何なら換金しても構わんぞ。」
「そ、それは恐れ多いです。とにかくありがとうございます。」
レックは深々と頭を下げた後、それらを受け取った。
しかし、今の自分の腕力では到底使いこなせそうになかったため、これらは城の兵士達に使ってもらうことにした。
彼らが会話をしているかたわらでは、バーバラとリッカがこの日収穫したばかりの野菜を、ターニアとルイーダがパンやお料理を、そしてハッサンが水や薪を船に運んでいた。
その横ではミレーユとテリーが名残惜しそうに会話をしていた。
「本当に行ってしまうのね。私はずっとそばにいてほしかったんだけれど…。」
「すまねえな。だが、広い世界を見たいっていう気持ちは抑えられなくてな。それに、俺達の故郷がどうなっているのかも知りたいしな。」
「そうね。私達は難民としてこの地にやってきたわけだし、心の中ではそう思っていたけれど、本当に行くとなるとやっぱり寂しいわ。出来ることなら…。」
ミレーユは最初に話を聞いて以来、反対の一点張りだった上に、今でも引き留めたい気持ちだったが、とうとう根負けするような形で弟を送り出すことにした。
「じゃあ姉さん。まだまだ話したいことはあるけれど、時間だ。行ってくる。馬の世話、頼んだぜ。」
「分かったわ…。行ってらっしゃい…。」
彼女は両手で顔を覆いながら、とうとう泣き出してしまった。
一方のテリーはそんな姉を見届けた後、カミュからブーメランを受け取り、まもの使いとして活動することになった。
そして彼は近くにいたスラリンとホイミンにも声をかけ、一緒に来ないかと誘ってみた。
「ぼ、僕はその…、恐れ多いです…。」
「僕は行きます!広い世界を見たいですし、モンスターと人間の懸け橋にもなりたいです!」
スラリンは不安のあまりに断ってしまったが、ホイミンは勇気を振り絞ってついてきてくれることになった。
「分かった。来たけりゃ来い。お前は僧侶としての素質がありそうだしな。」
「はいっ!きっと回復役として役に立ってみせます!」
ホイミンはスラリンとの別れを惜しみながらも、これからの冒険の日々に期待を寄せていた。
しばらくすると今度は城からチャモロがやってきた。
「私も仲間に入れてください。たった今、王様から『広い世界に出て、たくさんのことを学んで来い。』という言葉を受けて、旅に出られることになりました。どうかよろしくお願いします。」
「そうか。良かろう。仲間は多い方が心強いからな。まあ、その実力では戦闘は厳しいかもしれんが、レベル20になれば転職で大出世するように『アレ』に就かせてやる。それまではホイミタンクとしての役割を頼んだぞ。」
「はい!頑張ります!」
チャモロはゲルダからの期待にこたえようと意気込んでいた。
すると船からバーバラ、ハッサン、ターニア、リッカ、ルイーダが出てきた。
「リッカ、ルイーダ。お前達はテリー、チャモロ、ホイミンとの交換要員という形でこのアリアハンに留まってもらう。あたしとしては寂しくなるが、各自の目標を果たしてほしい。」
「はい、分かりました!ここできっと宿王としてみなさんの役に立ってみせます。」
「私もあの店に自分の名前を付けてもらった以上、それに見合うように頑張ります。」
2人はお世話になった人達との別れを惜しみつつも、ここで出会ったレック達と協力しながら過ごしていくことを誓った。
そしてヤンガスがいかりを上げ、彼の他にテリーやチャモロを含めて乗組員が全員船に乗り込んだ後、カミュは帆を広げ、いよいよアリアハンを出港していった。
その様子をレック、ハッサン、ミレーユ、バーバラ、リッカ、ルイーダ、ターニアは名残惜しそうにじっと見つめていた。
翌日。ルイーダとターニアはこの日も飲食店で働いていた。
するとそこにバーバラが野菜を持って店にやって来た。
「おっまたせえーーーっ!頼まれていたジャガイモとにんじんを届けに来たわ!」
「わあっ!どうもありがとう。」
「早速調理に取り掛かるわね。」
ターニアとルイーダは代金を支払った後、箱から野菜を取り出し、水洗いを始めた。
「あたしの育てた食材を使ってくれてありがとう!」
ターニア「バーバラさん、どういたしまして。」
ルイーダ「これからおいしい料理を作ってあげるわね。」
「わあっ!ありがとう!楽しみにしているわね。」
バーバラは店に留まり、調理の様子を見守ることにした。
「どうやらここの経営も何とか軌道に乗ってきたようね。」
「ええ。これもルイーダさんが色々な知恵を出してくれたおかげよ。」
「いえ。ターニアさんの頑張りがあったおかげよ。」
「そんな。私はただ、ルイーダさんを信じてついていっただけで…。」
「キャハハハ…。2人ともそんなに謙遜しなくてもいいのに。」
バーバラは持ち前の明るさでムードメーカーぶりを発揮しながら調理の様子を見守った。
その頃。アリアハンとレーベの中間にある草原地帯では、レックとハッサンが今後のことについて話し合いをしていた。
「結局、お前はあの船に乗って親父に会いには行かなかったな。」
「うん。行きたいとは思っていたけれど、母さんやじいちゃんと離れることになるから。」
「とはいえ、外の世界へのあこがれはあるんだろ?」
「それは確かにあるよ。でも、今の実力では危険度1の地帯でも自信が持てなくて…。」
レックは期待よりも不安の方が先走っていることを打ち明けた。
しかし、早かれ遅かれ、彼がこの大陸を飛び出していくであろうという雰囲気はしっかりと感じ取っていたため、ハッサンはその時は自分もついていくことを告げた。
「えっ?いいの?」
「ああ。俺も広い世界を見てみたいし、悪いモンスターも退治したいからよ。このことはこれから親に話すつもりだ。」
彼は旅に出る際には戦士になるのか、それとも武闘家になるのかで悩んでいる状態ではあったが、いずれにしても前衛アタッカーになりたいという意気込みだった。
「じゃあ、旅に出る時はお互い協力しながら頑張ろう。」
「分かったぜ。お互い親友として、そして良きライバルとして頑張ろうぜ。」
2人はお互い手をガッチリと握りながら活躍を誓った。
その後、ハッサンはレーベにある自宅に行き、両親に自分の希望を話したが、案の定反対をされてしまった。
しかし、その言い分には外の人達は野蛮だとかいった偏見が見て取れたため、ハッサンにはそれが引っかかった。
「あの海賊ゲルダの話を聞く限りでは、そんな奴等ばかりではないと思うぜ。それに、たとえそんな奴らに出会ったとしても、俺がぶっ倒してやるからよ。」
彼は親から色々言われても引き下がらず、説得を続けた。
その結果、大工の仕事が忙しくなる時にはここに戻ってくることを条件に、渋々ながら了解をしてくれた。
一方、レックの母親のマドリガルと、祖父のロベルトは反対することも無く、旅立ちを後押ししてくれた。
「母さん、じいちゃん。本当にいいの?」
「ええ。いつかこういう時が来ると思っていたから。」
「じゃが、今のお前の実力ではきっと苦労するじゃろうな。」
ロベルトはそう言うと、これから自分がコーチになって孫を鍛えることを宣言した。
「お父さん、いいんですか?戦いからはもうずいぶん長い間離れているのに。」
「まあ、直接戦うのは厳しいが、わしにはオルテガを鍛え上げた実績があるからの。」
「確かにあなたはあの時、夫に厳しい修行をさせて、結果的にムキムキの体を作り上げましたけれど…。」
マドリガルはオルテガが毎日フラフラになるほどのメニューを課していた時を思い出したため、思わずしり込みをしてしまった。
「大丈夫じゃ。レックにあんなことをしたら故障してしまうことくらい、分かっておる。」
「そう。それならいいけれど…。」
彼女はまだ不安をぬぐえずにいる一方、レックは「ぜひお願いします!」と言って、祖父にコーチをお願いした。
「分かった。では、明日から早速始めることにしよう。」
「はいっ!」
レックは気合いを入れて返事をした。