勇者一行と宿王リッカ   作:地球の星

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4. 旅立ちの時

 祖父のロベルトをコーチに迎えたレックは即座にトレーニングを開始した。

 彼はまずアリアハンの町を飛び出して岬の洞くつの入口まで走って行き、そこから引き返して戻ってきた。

「ハア、ハア…。じいちゃん、戻ってきました。」

「ご苦労。では、次は腕立て伏せじゃ。」

「今すぐにですか?」

「そうじゃ。きつくなってきてからが本番じゃ。頑張るんじゃぞ。」

「…分かりました…。」

 レックは息を切らしていたこともあり、休憩時間を与えられると思っていたため、一瞬動揺してしまった。

 しかし、素早く気持ちを切り替えて腕立て伏せを開始した。

 するとそこにハッサンがやってきて、彼はロベルトに何をしているのかを問いかけてきた。

「おお、あんたか。実はちょうど今、孫を鍛えるためにコーチをしていてな。」

「コーチか。ちょうどいいや。じいさん、俺もそれに加えてくれねえか?」

「何?お前さんも鍛えてほしいのか?」

「ああ。レックは幼なじみの親友であると同時に、絶対に負けられないライバルだからな。」

「分かった。では、お前さんも今から腕立て伏せに参加してもらう。覚悟はいいか?」

「おう。やってやるぜ!」

 彼の意気込みを受けて、ロベルトはその場でハッサンを強化メンバーに入れた。

 

 1時間後。彼らが休憩を取っていると、そこにバーバラがやって来た。

「おっはーっ!元気いっ!?」

「元気だよって言いたいけれど、結構疲れた。」

「まあ、慣れない運動で体バキバキだからな。」

 2人は地面に座り込みながら、アリアハンからの旅立ちの時に備えて体を鍛えていることを話した。

「ふうん、そうなんだ。その時はあたしも行きたいなあ。」

レック「えっ?君もついてくるつもりなのか?」

「うんっ!もしかしたら、あたしの生まれた場所に行けるかもしれないから。」

 バーバラは昔の記憶こそ無いものの、アリアハン出身でないことは確かだったため、いつか自分のルーツについて知りたいという思いをずっと持ち続けていた。

「そういうことよ。あたしも入れてくれる?」

ハッサン「でもよ。外の世界では危険度の高い場所もあるし、強敵もいると思うぜ。」

「大丈夫よ。あたしは今、ギラやルーラを唱えられるように勉強しているから。」

 彼女は同じ魔法使いのリッカと意気投合し、2人で呪文について色々話をしていることを話した。

(※ゲームの魔法使いはギラの前にレベル4でヒャドを覚えますが、バーバラがこれを唱えることにどうも抵抗を感じたため、彼女のヒャドはカットします。代わりにレベル8でルーラを覚える設定にします。)

「分かった。じゃあ、旅立ちの時には君にも声をかけることにするよ。」

「ありがとう、レック。楽しみにしているわ。」

 彼女がムードメーカーらしい笑顔を浮かべていると、そこにミレーユがやって来た。

「バーバラ、ここにいたのね。探したわよ。」

「あら、ミレーユ。どうしてここに?」

「ナジミの塔に行く時間よ。頼んだわね。」

「えっ?あっ、確かにそうだったわね。」

 バーバラはミレーユの指摘を受けてやっと見張りの仕事を思い出した。

 それを受けて、それまで明るかった表情は途端に曇っていった。

「じゃああたし、今から泊まり込みでナジミの塔に行ってくるわね。」

「行ってらっしゃい。気を付けてね。」

「うん…。海を眺めながら呪文の特訓、頑張るわ。レック達もトレーニング、頑張ってね。」

 彼女はうつむきながら海辺にある船着き場に向かっていった。

 その後ろ姿をレックは寂しげな表情でじっと見つめていた。

 

 バーバラの姿が見えなくなった後、レックとハッサンはミレーユにも同じことを話した。

「そう。あなた達も旅に出たいのね。」

レック「えっ?ミレーユも?」

「ええ。私も外の世界の出身だし、それに出来ることならテリーにも会いに行きたいから。」

ハッサン「確かにお前は弟のこと、誰よりも大事にしていたからな。」

「そう。彼のことは1日として忘れたことは無かったわ。」

 ミレーユは弟が旅立って以降、彼のために強くなりたい。もし会えたなら足手まといにならないようになりたいという思いから、回復や補助系の呪文を勉強していることを打ち明けた。

「おおっ!バーバラが攻撃系なのに対して、お前はそっち系か!」

「これは頼もしいね。ぜひ僕達の仲間になってくれ。」

「もちろんよ。ぜひ呪文で貢献してみせるわ。それじゃ、私はこれからレーベに戻って、仕事をしながら色々準備をすることにするわ。」

「じゃあ、その時になったら声をかけに行くぜ。」

「分かったわ。その時はよろしくね。」

 ミレーユは2人に向かって頭を下げた後、レーベに向かっていった。

 一方、レックとハッサンはここで休憩時間が終わったため、再びトレーニングを開始した。

 

 2日後。母親のマドリガルの声で目が覚めたレックは、あの日と同じように2人で家を後にしていった。

 城の前で母親と離れた後、レックは王様と謁見し、父親と同様に外の世界に行きたいことを告げた。

「王様。勝手なお願いですが、了解していただけますでしょうか?」

「良かろう。この大陸を出ることを許可する。」

「えっ?いいんですか?」

 レックは断られたらどうしようとばかり考えていたため、思わぬ回答に驚いた。

「うむ。鎖国状態のままではやがてこのアリアハンとレーベはすたれていってしまうだろうからな。」

 王様は海賊達がたくさんのお金や有用な装備品を置いていってくれたことが忘れられずにいた。

 そしてチャモロに外の世界に行ってもらい、アリアハン大陸のことを紹介してほしいと伝えていたことを話した。

「そう言うわけじゃ。お前さんにもこの国を豊かにするために力を貸してほしい。お願い出来るか?」

「はいっ!分かりました!期待にこたえられるように頑張ります!」

 レックは胸を張って王様の依頼を受けることにした。

 そして王様からゲルダ達が置いていったはがねの剣や鉄の盾といったアイテムの使用を勧められたが、重くて継続使用が厳しい状態だったため、銅の剣と旅人の服で出発することにした。

「では、行ってくるがよい。良い知らせを待っているぞ。」

 王様は城を後にしていくレックをオルテガの背中と重ね合わせていた。

 

 城から町に出てきた彼はちょうど現地に来ていたハッサンに鉢合わせしたため、即座に声をかけた。

「おおっ!いよいよその時が来たか!」

「うん。協力してもらえるかな?」

「もちろんだぜ。俺も親には何度も話を重ねて、やっと許可をもらえたからな。」

「分かった。じゃあ、これから一緒に協力して頑張ろう。」

「ガッテンだぜ!」

 銅の剣と皮の腰巻きを身に付けたハッサンは喜んで仲間に加わってくれた。

 

 2人がルイーダの店の中に入っていくと、そこではルイーダとリッカが客席で話をしていた。

「レックさん、ハッサンさん、おはようございます。」

「2人とも、私の店でお食事でもするのかい?」

「いえ、そう言うわけではないですけれど…。」

「俺達、いよいよ旅立つことにしたから、それを伝えにな。」

 レックとハッサンは王様の了解を得た上で外の世界を目指すことを伝えた。

「そうか。あんた達もとうとうその気持ちになったのか。じゃあ、私もそれに協力することにするか。」

ハッサン「えっ?ルイーダさんもか?」

レック「あの、いいんでしょうか?」

「心配は無用だ。私は盗賊という職業に就きながら、ミロという人物の相棒として冒険をしていたんだ。ちょうどこの店も軌道に乗ってきたからターニアに任せても大丈夫だろうし、私も参加させてほしい。」

 ルイーダは昔の自分を思い出して血が騒いでいるのか、やる気満々だった。

「分かりました。じゃあ、お互い協力して頑張りましょう。」

 レックはその意気込みにこたえ、喜んで迎え入れてくれた。

「よし!では私も今から装備を整えてくることにする。少し待っていてくれ。」

 ルイーダは弾むような足取りで店の奥に入っていった。

「ところでよ。お前はどうするんだ?一緒に来るか?」

 ハッサンは無言のまま話を聞いていたリッカが気になったため、問いかけてみた。

「わ、私は…。」

 彼女は突然質問をされたせいか、戸惑っているようだった。

「ハッサン、行くこと前提でそんなことを言っちゃダメだと思うよ。」

「ああ、わりいわりい。ただ聞いてみただけだからよ。気にしないでくれ。」

 2人はあたふたしながらとっさに謝った。

「あの…、実は…、私も旅に出たいと思っているんですっ!」

「ええっ?」

「マジかよ!」

 レックとハッサンは予想だにしなかった返事を聞いて、思わずビックリだった。

「あのな、俺はつい出来心で聞いただけなんだ。遠慮なく断っていいんだぜ。」

「いえ。私も加えてほしいんです。」

 リッカはバーバラと話をしているうちに彼女と行動を共にしたいと考えるようになったこと。そしてアリアハンに開店した宿屋がいまいち振るわず、インバウンドでお客を増やしたいという思いを持っていることを話した。

「そういうわけなんです。どうか私も加えてください。私はバーバラさんには及びませんが、呪文が使えます。魔法使いとしてきっと貢献してみせます。」

 リッカは見るからに戦闘には向いていない感じではあったが、その意気込みはルイーダにも負けないものがあった。

「分かった。じゃあ、俺達が責任持って守ってやるぜ。」

「ハッサンさん、いいんでしょうか?」

「ああ。声をかけたのは俺だからな。一緒に頑張ろうぜ。」

「分かりました!ありがとうございます!」

 リッカは感謝をしながら深々とお辞儀をした。

「では、私は今から宿屋に行って着替えてきます!」

 彼女は駆け足で店を後にしていった。

 

 準備を整えた後、町を後にした4人は、対岸にそびえたっているナジミの塔を見ながら外を歩き回った。

 するとそこに大ガラスが4羽現れた。

 カラス達はレック達の持っているアイテムに興味を持ったのだろう。しきりに攻撃を仕掛けてきた。

「明らかに戦う気ね。いいでしょう。やりますよ!」

 ルイーダは自慢の素早さに物を言わせながらブロンズナイフで先制攻撃をし、AをKOさせた。

(※ルイーダは本気で戦うと強過ぎるため、武器と力をセーブしています。)

 それに続くようにレックは銅の剣で攻撃し、リッカはメラをヒットさせてBをKOさせた。

 一方のカラス達は逃げようとしたのか一旦飛び立ったが、すぐにまた舞い降りてきてきた。

「では、ターンの最後は俺がやってやるぜ!」

 戦士のハッサンは相手の攻撃を受けながらもCに一撃を叩き込んだが、HPを1残してしまった。

 次のターンでは再びルイーダが最初に行動してDを一撃KOし、リッカがひのきの棒でCに通常攻撃をしたが、ダメージを与えられなかった。

 彼女はCの反撃を受けてしまったが、直後にレックがキックをしてやっと決着がついた。

「よし、見事に勝ちましたね!」

「でも、一撃では相手に勝てなかったな。こんなつもりじゃなかったんだけれど。」

「ああ。俺もまだまだ能力を半分も発揮出来ていないようだな。」

 ルイーダ、レック、ハッサンが話し合いをしている一方、通常攻撃が効かなかったリッカは無言のままだった。

 

 次に出会ったのはスライムの群れだった。

「これなら全員一撃で一匹ずつ倒せそうね。では…。」

 リッカはとっさにメラを唱えるモーションに入った。

「ちょ、ちょっと待って!僕達は悪いスライムじゃないよ!」

 彼らの一匹は前に出てくると、戦闘をしないように要請してきた。

「えっ?」

 レックはその声を聞いて、思わず他の3人に待ったをかけた。

「君はもしや?」

「そうです。スラリンです。僕達は人間を襲ったりはしません。どうか信じてください。」

「分かった。驚かせてごめん。僕達もむやみに戦わないように気を付けるよ。」

「ありがとうございます。僕達も人間と仲良く過ごせるようにするつもりです。」

 レック達とスラリン達は戦闘をすることも無く、笑顔で会話をした。

 

 その後。今度は傷をいやした大ガラスがリベンジとばかりにやって来た。

「懲りない奴らだな。」

「もう一度やっつけてやろうぜ。」

「待って。ここは私が手を打つわ。とっておきの手があるの。」

 ルイーダは両手でレックとハッサンを制止すると、突然「カ~ラ~ス~、なぜしゃべる~?」と歌い出した。

 すると大ガラス達はついつい乗ってしまったため、このターンは誰も攻撃してこなかった。

「しめたぜ!」

「チャンスだ!」

「私もやるわ!」

 ハッサン、レック、リッカは隙ありとばかりに通常攻撃とメラを叩き込んだ。

「そんな、ひどい…。」

「これはたまらん!」

「ぎょえーーっっ!!」

「すんませんしたーっ。」

 2度もやられたカラス達は再度空高く飛び立ち、今度こそ退散していった。

「よし。これで少しは自信がついてきた。」

「ああ。このままレベルアップしていくぞ。」

「私もミロと過ごした日々を思い出したわ。」

「私…、何とか戦力になれるように頑張ります…。」

 レック、ハッサン、ルイーダが確かな手ごたえを感じる一方、リッカは他の3人と比べて実力が明らかに劣っていることを実感していた。

 

 この後、4人はミレーユに会うためにレーベに向かっていったが、途中で出会った一角ウサギが角で捨て身の先制攻撃をしてきたためにかなりのダメージを受けてしまい、さらにバブルスライムの毒攻撃を受けたため、撤退を余儀なくされてしまった。

(回復役がいないとレベル上げても厳しいな。)

(毒消し草無しじゃジーマーで進めないぜ。)

 傷の痛みと毒による気持ち悪さに耐えながら何とかアリアハンにたどりついたレック達はまっしぐらに道具屋に行き、薬草と毒消し草を購入した。

 そして何とか体調を立て直すと、レックは自宅に、他の3人は宿屋に向かっていって一晩を過ごすことにした。

 

 その頃、ナジミの塔にいるバーバラはというと…。

「うえーーん、やっぱり一人は寂しいよおっ…。誰か来てよおっ…。」

 彼女は泣きたい気持ちを我慢しながら、夕日で真っ赤に染まる海を見つめていた。

 




 ゲームではナジミの塔に行く時、海底通路を通っていきますが、この作品では渡し船で行くことにしています。
 これは僕が2024年9月に青森と函館に行って新幹線で青函トンネルを往復し、さらにトンネルや青函連絡船に関するエピソードを色々学ばせていただいたことに由来しています。
 その時、トンネルが完成するまでにどれくらいの苦労があったのかについて知り、海底トンネルを出すのが恐れ多くなってしまったため、結果的に船にしました。

 
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