勇者一行と宿王リッカ   作:地球の星

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7. いざないの洞くつ

 いざないの洞くつに向かっていたレック、ハッサン、ミレーユ、バーバラ、リッカの5人は、途中で出会ったアルミラージの眠り攻撃にあい、圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまった。

 その中で唯一起きていたリッカはとっさにキメラの翼を使い、そのおかげでアイテムをいくつか失いながらも緊急脱出に成功し、アリアハンに戻ってきた。

 全員が目を覚ました後、彼らは重い足取りで町に入っていき、レックは自分の家に、ハッサン、バーバラ、ミレーユはリッカとともに宿屋に向かっていった。

「そう。今日は大変な目にあってしまったのね。でも、無事に息子の顔を見られて良かったわ。」

「とはいえ、誰かが行動不能になっても取り乱してはいかんぞ。残ったメンバーで対処しなければな。」

 マドリガルが優しい言葉をかけてくれる一方、ロベルトの意見は厳しかった。

「はい、分かりました。次はうまく対処出来るようにします。でも、今日はゆっくりさせて下さい。」

 レックは未だに悔しさとショックから立ち直れておらず、うつむいたままだった。

 そして食事が終わると肩を落としたまま自分の部屋へと向かっていった。

(今日は大変な思いをしたけれど、アルミラージ達に感謝しないとな。彼らはあくまでも勝負と割り切ってくれたから良かったけれど、もし危険度の高い場所での戦闘だったら本当に命が危なかった気がするから。)

 レックはアルミラージに敗れて以降、この日はとうとう笑顔を見せないままベッドの中で眠りに落ちていった。

 

 翌日。何とか気持ちを切り替えた一行は、対策を考えながら各自で活動をすることにした。

 レックはすっかりブーメランで全体攻撃が出来るようになり、さらに火炎ぎりを身に付けたため、前衛役としての立場をすっかり確立した。

 さらに彼はロベルトからリレミトを教えてもらったため、洞くつから即座に脱出出来るようになった

 ハッサンとミレーユは一緒にレーベに向かっていき、現地に到着すると彼は再び大工の仕事に就いた。

 一方、ミレーユは自分の研究室でいざないの洞くつを抜けるためのアイテムを完成させた。

(私の計算が正しければ、これで壁を壊せるはずね。きっと新しい大地にたどり着いてみせるわ。)

 彼女はそれに衝撃を与えないように気をつけながら、ある対策を考え始めた。

 バーバラとリッカはお店で作業を手伝いながら、ルイーダに体験談を話した。

「そう。あなた達はなかなか厄介な敵に出会ってしまったのね。」

「そうなのよ。あたしは2回とも眠ってしまったし、しかもレックはそのどさくさに紛れてあんなことをしようとするし、大変だったわ!」

「もしあの時、私がキメラの翼で緊急脱出しなかったらどうなっていたのかと考えると、今でもゾッとします。」

「まあ、そうと分かればこちらは対策を練るまでね。あたしはギラとムチ攻撃があるけれど、もう一つ何か決め手となるものが欲しいのよね。」

「私はギラをしっかりとマスターしようと思っています。少しでもバーバラさんに近づきたいですから。」

 バーバラとリッカが話し合いをする中で、ルイーダも今度は自身も同行することを決めていたため、対策を練ることにした。

(こうなったら、私ははがねのムチを使うことにするわ。攻撃力が高過ぎるが故にしばらく封印していたけれど、先制で決着をつけないと事故の原因になりそうだから。)

 そう考えた彼女はこの日の仕事を済ませた後、部屋の押し入れからそのアイテムを取り出した。

 

 その後。アリアハンにいるレック達は各自で準備を整えた次第、出発することにした。

 しかしその当日。ターニアが急に熱を出してしまったため、またしてもルイーダはついてこられず、レックはバーバラとリッカを連れて町を出ていった。

 

 彼らはレーベにたどり着くと早速ハッサンを加え、さらにミレーユのところに向かった。

 すると彼女はアレという名の男性のところにおり、馬車でいざないの洞くつまで行かせてくれないか交渉をしていた。

「そうですか。あなた達はどうしても外の世界に行きたいのですね。」

「はい。ですから、洞くつの近くまで連れていってほしいんです。もちろん、無理にとは言いません。でも、出来ることならよろしくお願いします。」

「…分かりました。協力することにしましょう。」

「本当ですか?」

「はい。あなたが壁を壊すためのアイテムを持っている以上、その決意は本物でしょうから。」

「ありがとうございます!」

 ミレーユはうれしそうにお辞儀をした。

 するとその様子を見ていたレック達が彼女のところにやって来た。

「やあ、ミレーユ。」

「あら、レック。それにみんな、来ていたのね。」

「うん。それでね。」

「分かっているわ。馬車に乗せてほしいのね。いいわよ。一緒に行きましょう。」

「良かった。じゃあミレーユ、それにアレさん。よろしくお願いします。」

「いいですよ。ではみなさん、乗ってください。」

 アレが許可を出すと、5人はお礼を言いながら乗り込んだ。

 それを確認した彼は手綱をしごいてリューラを走らせ、村を後にしていった。

 

 道中では一角ウサギやバブルスライム、じんめんちょう、ナジミの塔で出会った魔法使いがいたが、馬車は勢いよく駆け抜けていったために勝負になることはなく、スイスイと進むことが出来た。

 そしていざないの洞くつの手前にある泉が見えてくると、アレは手綱を引いてリューラを減速させ、やがて水辺で止まった。

「それじゃ、みなさん。到着です。」

「おっさん、ありがとな。それじゃ行ってくるぜ。」

 ハッサンが馬車を真っ先に降りると、それに続いて他の4人もお礼を言いながら降りてきた。

「ではみなさん。気を付けていってきてください。帰りは大丈夫ですか?」

ミレーユ「心配しないでください。私はキメラの翼を持っています。」

「それにあたしはルーラとリレミトが両方使えるから、即座に緊急脱出出来るわよ。」

「そうですか。それなら心配はなさそうですね。では、景気づけの意味も込めて私からこれを渡すことにしましょう。」

 アレはそう言うと、道具袋から聖なるナイフを取り出した。

「これを持っていってください。軽いので魔法使い系の人にも装備出来ますよ。」

「えっ?本当ですか?」

「はい。試しに使ってみてください。」

「ありがとうございます!」

 リッカはそれを受け取ると早速素振りをしてみた。

「本当に私にも使えそうですね。では、ありがたく使わせていただきます!」

 彼女は感謝をしながらブロンズナイフから武器を持ち替えた。

 そしてアレは喜ぶ彼女を見届けた後、馬車で引き返していった。

 

 5人が泉の周囲を歩いているとアルミラージ5匹がおり、彼らはあの時と同様に勝負を挑んできた。

「今度はあの時と同じ手は食わないわ。ラリホー!」

 ミレーユは前回の雪辱を果たしたい一心で覚えた呪文を早速使い、4匹を眠らせた。

 すると唯一眠らなかったDは思わぬ状況にビビってしまい、「どうか命はお助け下さい。」と言いながら後ずさりを始めた。

「分かった。以前、僕達が眠ってしまった時、君達は立ち直るための時間をくれたから、今度は僕達がその借りを返すことにしよう。いさぎよくここを通してくれるのであればこれ以上の攻撃はしないし、これからは協力し合う関係になろう。」

 レックが問いかけると、Dはパーティーアタックをする形でみんなを起こし、相談をすることにした。

「分かりました。では、どうぞ、お通りください。」

「これからはお互いノーサイドでいきましょう。」

 AとCの発言を受けて勝負はあっさりと終了し、レック達はその先に進めるようになった。

 しかし、洞くつの入口は雨風にさらされ続けていたこともあって、ほとんど埋まってしまった状態だった。

「これが本当に話に聞いていた洞くつなの?」

「まいったわね。どうしましょう。」

「とりあえず掘るしかないな。」

 バーバラとミレーユが頭を抱える一方、レックは地面をザクザク掘り始めた。

「それじゃ俺もやってやるぜ。」

「私も協力します。」

 レックの姿に即発され、ハッサンとリッカも作業に参加した。

 そしてミレーユとバーバラも手伝い、結果的にどうにか人が入れそうな状態になったため、今度は入る順番を決めることになった。

「じゃあ、僕が最初に入るよ。」

 レックが迷わず名乗りをあげると、バーバラもそれに続いた。

 結果、2人に続いてハッサン、ミレーユ、リッカという順番で入っていくことになった。

 

「よいしょ、よいしょ…。やっぱり狭いわねえ。挟まったりしないかしら。」

「大丈夫だよ、僕だって通れたんだから。」

 一足先に内部に入ったレックはバーバラの手を握って引っ張った。

 そして彼女が中に入って立ち上がると、持っていた木の棒にメラを唱え、たいまつの要領で明かりをつけた。

「ここ、結構広々としているわね。壁はどこにあるのかしら。」

「壁伝いに歩けばきっとたどり着けるよ。」

「そうね。早く通りたいような、でも怖いような、複雑な気持ちね。」

「大丈夫。5人で力を合わせれば、きっと目的地までたどり着けるよ。」

 2人が会話をしていると、不意にハッサンが「うおおおおっ!」と言いだした。

「どうしたの?」

「早く入ろうよ。」

 不思議に思ったバーバラとレックが彼のもとに歩み寄って問いかけると、ハッサンは「体が挟まった!抜けねえぜ!助けてくれ!」と言いながら必死にもがき続けていた。

 これは大変なことになったと察知した2人は即座に彼の手をつかみ、力いっぱい引っ張った。

「ぐあああっ!やめてくれ!体がちぎれそうだぜ!」

 ハッサンは苦しみながら叫び声をあげるばかりだった。

 さらにレックとバーバラはここでリレミトを唱えたが、出口がふさがっている状態だったため、失敗してしまった。

 

 一方、外にいるミレーユとリッカもただならぬことが起きていることに気づいており、話し合いをしていた。

「困ったわ。どうしようかしらね。」

「ミレーユさんの持っている、壁を壊せるアイテムをここで使ってみてはどうでしょうか?」

「それはダメよ!ハッサンがとんでもないことになってしまうわ!」

「どうしてですか?」

「それはいずれ話すわ。とにかく、ここで使うわけにはいかないわ!」

 ミレーユはリッカの提案をきっぱりと却下した。

 するとわずかに開いている隙間からレックとバーバラの声が聞こえてきたため、4人はこれからどうすればいいのかを話し合うことにした。

 その結果、ミレーユがキメラの翼で一旦レーベに行き、助けを求めに行くことにした。

「それはありがてえぜ!じゃあ、頼んだぞ。」

「分かったわ。」

 ミレーユが道具袋を開けて薬草の下に埋もれている翼を探し出そうとした時、洞くつ内ではバーバラの足の上を何かが通り過ぎていった。

「きゃあっ!何これ?モンスターッ!?」

 彼女がビクッとしていると、それはハッサンの方に進んでいき、隙間を通り抜けるように外へと出ていった。

「2人とも、今何かがそっちに向かったわ。戦闘になるかもしれないから気を付けて。」

「分かったわ。」

「了解しました。」

 バーバラの忠告を受けて、2人は武器を持って身構えた。

 すると、中から黒い昆虫が姿を現した。

「イヤーーーーッ!!あれよ!あれっっっ!!!」

「私、こんな黒い虫と戦いたくなーーーいっっっ!!」

 ミレーユとリッカは突如大声で悲鳴をあげ、何と駆け足でその場から逃げ出してしまった。

 そして彼女達の声は段々小さくなっていき、やがてハッサンの耳にも届かなくなってしまった。

「おい!俺を見捨てるんじゃねえ!戻って来ーーーい!」

 彼は声の限り叫んだが、結局無駄な努力だった。

 すると時を同じくして

「キャアアアーーーッ!!あたしの足に何か止まったわ!!もしかして、あれなの!?イヤーーーッッッ!!!」

 という悲鳴が洞くつ内にこだまし、何かガバッという音がした。

 そして次の瞬間「わああっ!」というレックの声がした後、彼はドサッ!という音を響かせながら仰向けに倒れた。

「レック、どうした?」

 ハッサンは状況を確認しようと声をかけたが、すっかり混乱しているバーバラの悲鳴のせいでかき消されてしまった。

 しばらくすると彼女の声が聞こえなくなったため、彼は改めて声をかけた。

「レック、大丈夫か?バーバラはどうなったんだ?」

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「おい!お前も混乱してんのかあっ!」

 ハッサンは何とか洞くつの内部に入り込もうともがき続けた。

 すると、体を押さえ続けていた岩の位置がずれたため、ようやく少しずつだが前に進めるようになった。

(おっ!これはチャンスだぜ!このまま中に入ってやる!)

 彼は力を込めて1cmずつ中に入っていき、最終的に無理やり体を押し込んだ。

 するとその時、腰の辺りでゴキッという音が響いた。

(あっ、これはぎっくり腰か!?やっ、やっちまったな…。)

 ハッサンは顔を青くしながらレックとバーバラのところに近づいていった。

 そして地面に転がっているたいまつを手に取って2人を照らし出すと、レックの体の上にバーバラがうつ伏せになっていた。

(こっ、これはっ、やばくね!?)

 ハッサンは動くたびに腰に痛みが走る状態ではあったが、しばらく彼らに見とれてしまった。

 しかし、このままでは大変なことになりそうな状態だったため、顔をしかめながらバーバラの肩を押して体をずらした。

 するとレックは酸欠状態になりつつあったが、すごく幸せそうな表情をしていた。

 

 20分後。ミレーユとリッカが正気になった状態で戻ってきたため、みんなは協力して洞くつから脱出する方法を模索した。

 その中で、バーバラは大きく息を吸ってしばらく魔力をため込んだ後、MPを10消費して岩に呪文を叩き込んだ。

レック「ええっ?何、今の。メラの4倍近くの威力だったけれど。」

「そう。これはメラミよ。まだMP消費の割に威力は弱いし、隙だらけになってしまうから実戦では使えないけれど、うまくいって良かったわ。」

 彼女はもう一度魔力をため込み、メラミを唱えた。

 すると今度はリッカが外からヒャドを唱えて岩を急冷させ、ミレーユのバギとレックの火炎ぎりで岩を砕いた結果、ようやく人間が歩いて出られるだけのスペースを確保した。

 外に出ると一行はバーバラのルーラで引き返していったが、レックはあの出来事を思い出してしまい、顔が真っ赤になった。

 一方のバーバラはなぜ彼がそうなっているのかが分からなかったため、首をかしげるばかりだった。

 




 名前の由来
・アレ(Allais):フランス人の苗字です。この作品のタグにもなっているので、ここで使ってみました。

 今回出てきた「あれ」はマザー2に登場するモンスターです。表記はひらがなですが、タグつながりでゲスト出演させました。
 嫌いな方、ごめんなさい。
 僕も嫌いです。

 バーバラがここで不完全ながらもメラミを唱えたことに関しては、6でのメラミ攻めが忘れられないため、イオに代わる形でこのようにしてみました。
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