大学受験舐めてんのか   作:オカルトって面白いよね・蠱毒とか

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“青春は単なる人生の花盛りではなく、来たるべき結実の秋への準備の季節である”

竹越与三郎


第11話 常に備えよ その時のために 

 高円寺が去った後の音楽室。

 十分以上の間をおいて、司が考え込む2人の少女に対して口を開く。

 

「まあ色々と悩んでるだろうけど、今すぐやるべきことはシンプルだよ」

「はぁ? そんなわけ……」

「あれだけ色々言われると、ちょっとすぐに何かを決めるのは難しい、かな」

 

 今日いきなりそれぞれの担任教師から、この学校は競い合いであり、4クラスが蹴落とし合って頂点を目指す蠱毒であると教えられて。

 その事実をなんとか受け入れようとしていたところに、そもそもこの学校の存在価値や有り様を否定する司と高円寺の言葉を受けた。

 

 全く悩まず深く考えないような人間ならまだしも、それなりに頭が回る神室と松下に色々と考えるなという方が無理な話だ。

 

 しかし司は、この学校の生徒になってしまったとはいえ、少しでも考えを変えるなり、自分で現状について考えてくれるなりしてくれれば、という思いを生徒達に抱いている。

 そのために積極的に動いて観察出来ないような状況にするつもりはないし、全ての個人に手を差し伸べるつもりもないが、この2人は高円寺の気まぐれで話を聞いてしまった2人だ。

 司から積極的に干渉するわけではないのだからこれは不可抗力だ、と司のこの学校で目指しているやり方にも言い訳が立つ。

 

 つまりは司の方針には反するが、なんとなく手近にやってきたからせっかくなら1つ2つ話しておこうというわけだ。

 

 だから、悩む2人に、司はなおも簡単なことだと告げる。

 

「考え方を変えようか」

 

 2人の視線が集まるのを確認して、司は1つずつ指を立てながら話す。

 

「この学校の特権を得られるようにAクラスは目指す。

 目的の進路を目指せるように大学受験の勉強やその他必要な経験などを積んでいく。

 この2つは別にどっちかを選ばないといけない二者択一じゃない。

 Aクラスを目指しながら自分の能力を高めるための研鑽もする。

 まずはそれで良いんじゃないだろうか」

 

 もしかしたら、将来の進路のために、そして進路を勝ち取った後の人生のために、高育をやめて普通の学校で普通の勉強に専念する、という道を選ぶかもしれない。

 

 もしかしたら、普通に目指しては得られない道だからと、Aクラスの特権に賭けるという選択をするかもしれない。

 

 いずれにしろ、それはそのときに決めれば良いものだ。

 

「小さい頃から勉強しろって子供に言うのって、選択肢を増やすためなんだよね。

 今の日本はどんな職業を目指すにもだいたい学力が必要になる。

 だからそのどれを選んでもそこから目指せるように、目的が決まってないうちは取り敢えず勉強は積み重ねておく。

 選択肢を増やすために努力しておくんだよ」

 

 勉強することが必要なのは、この社会で生きていく上の大前提だ。

 その大前提をことさらに子供に課すのは、それがこの社会の中での選択肢を増やすことが出来るからです。

 

「そしてそれはここでも同じだ。

 この学校をやめて普通に受験して大学進学、就職を目指すにしろ、逆にAクラス特権を目指すにしろ、まずは今出来ることをやっておいて損はない。

 出来ることは全部やっておくんだよ。

 自分が選びたくなったときに選びたい道を選ぶために。

 欲張っていこう。

 せっかくの人生だ、早々に見切ってしまうのは勿体ない。

 やるだけやりきってから、あの努力は必要なかったと嘆くぐらいで丁度いい」

 

 一般的に考えればごくごく当たり前の言葉。

 才能の限界なんて、限界まで挑んだ者にしかわからないものだ。

 成長が遅いからと早々に見切ってしまえばその先に続く雄大なる泉を見ることなく足を止めてしまったり、あるいは一足飛びで進めるからと急いでみれば水たまりしかそこには無かったり。

 それがわからないからこそ、人は努力を無為に重ねて何かを探すのである。

 

 だがしかし、今を生きることに精一杯で、まだまだ己で己の道を探すことすらままならない子供である2人にとっては、それは新しい閃きのような言葉だった。

 

 こんな学校にやってくると、どうしても学校の特権という言葉に引きずられてしまう。

 まるでそれこそが人生の目的であるかのように、まるでそれを掴めなければ人生が終わりであるかのように。

 だが、そうではないのだ。

 人生とはこれほどまでに自由であり、その目的も、夢も、そこへの到達手段も全て自分で選ぶことが出来る。

 少なくとも日本の教育はそれを人に許す。

 

「どうせ、この学校が普通に生きるにはデメリットが大きいから辞めて外部で頑張った方が良い、なんて言われたって、すぐに特権の可能性を諦められるわけじゃないだろ?

 まずは今全力を尽くしながら、1年ぐらいかけてゆっくり考えれば良いさ」

「……そうだね。私もDクラスになっちゃったけど、頑張ってみるよ。

 大変そうだけど、やってみないとね」

 

 とはいえ全てをすぐに納得して受け入れられるはずもなく。

 特に松下は自分で自分に見切りをつけて、労力を抑えてより良い人生を選ぼうと考えているタイプなので、司の言うように何事にも全力で、とは思うことが出来ない。

 松下自身としては、それは捨てた道なのだ。

 

 結果、松下は濁すようにありきたりな決意を口にする。

 

 そんな松下の心情は司にもよくわかる。

 初見の相手に説教臭い話をされてすぐに聞き入れるほど、高校生というのは素直ではない。

 そもそも松下もまた、好奇心で高円寺をつけてきただけの純朴な少女ではなく、自分のことを推し量るような目をしていたのに司は気づいていた。

 気付いた上で、特にそれについて触れることなく道を示した。

 

 子供のちょっとしたおいたは許すのが先に進むものの義務だ。

 そして示された上で無視をするならば、それもまたその個人の選択。

 自分が任された指導対象ならばともかく、この学校の生徒にそこまでしてやるつもりはないし、残念ながら今の松下にはどうしても自分のところに引き込みたいほどの価値を見出していない。

 

「ああそれと、勉強するなら参考書や問題集を買ってやるのを奨めるよ」

 

 代わりに、自分で考えるならば最低限そのための知識が無ければと2人に向けて口を開く。

 

「なんで? 学校の教科書がこの学校専用のだから、練習問題まで1つに載ってるって話でしょ?」

 

 松下とは違って決意表明をしなかった神室の疑問に、司はカバンから数学の教科書を出す。

 

「これね。

 まあ普通に問題集としてはポンコツだよ、この教科書。

 圧倒的に量と種類が足りない」

「そう、なの? たくさん問題載ってると思うけど……」

 

 司の出した教科書を捲りながらの疑問。

 中学生の頃から考えれば、教科書だけで十分に問題数は多いように見える。

 だが、高校の勉強は中学とは隔絶している。

 今の日本の学習内容はそうなっている。

 

「数学の問題集で有名なチャートなら数学ⅠAだけで厚さ200ページを超える。

 解答解説も合わせると300ページ以上、問題数は1000題近く。

 数学は結局どれだけ多くのパターンを見てそこから理解を深め使いこなせるかだからね。

 ちなみにこないだの抜き打ちテストの最後の3問、教科書には類題すら無いけど、青チャートならまんま同じ問題が載ってたよ」

 

 若干捻ってきたなと司も感じた抜き打ちテストの最後の3問。

 高育の教科書しか知識が無い状態で、学んだ例題から使える要素を抜き出して解答に繋げるのはかなり難しい問題だったが、問題数の多い問題集や参考書では普通に扱われる癖があるだけの問題だった。

 それを1問でも自力で解いて90点以上を出した生徒達は凄いが、しかし勉強の仕方次第では容易く満点を取れたテストでしかない。

 

「大学受験に向けた勉強の仕方もコツがいるからね。

 まあ勉強の仕方についても自分で色々調べてみるのを奨めるよ。

 俺が色々と教えてもいいけど、松下さんも神室さんも俺を警戒してるみたいだし、俺があれこれ言っても聞こうとは思わないでしょ?」

 

 司の言葉に、松下のにこやかな笑顔がピシリと固まる。

 明らかに司に嫌そうな視線を向けている神室はともかく、自分まで気づかれているとは思っていなかったのだ。

 

「え、っと、なんのことかな?」

「どういうこと?」

 

 松下同様に疑問を抱いた様子の神室の言葉に、司は肩を竦める。

 

「皆さん腹の探り合いがお好きなんですね、って感じかな。

 まあ何でも良いよ。俺は俺の話したいことを話したから、後は勝手にしておくれ」

 

 そもそも話す気は無かったんだがな、というボヤキは内心に隠しておく。

 元々はただ学校を観察するだけのつもりで、別にこうやって生徒達に道を示したり教師じみたことなんてやるつもりはなかった。

 そもそもここは司の勢力とは敵対している勢力が作った場所で、だからこそ生徒含めてそれを評価しに来たのだ。

 

 だが神室という少女と知り合って、彼女が治療と助けが必要な状況にあるという疑いが出てきて。

 更にこの学校が生徒に良くない影響を及ぼす場所であるということも知って、教師が生徒にとって良い存在ではないことも知って。

 

 結局司は、子供という存在が一切庇護されずに歪まされるのが耐えられなかったのである。

 厳しい環境を与えて鍛えることと、庇護することなく毒沼に放りだして歪ませることは話が違うのだ。

 

 だから今日もこんな風に、気にかけている神室はともかく関係ないクラスの生徒の前で長々と話してしまった。

 

「悪いね、説教じみた話を長々として。

 これは俺の性分みたいなものだけど、以後は気をつけるよ」

 

 そう軽く頭を下げた司に、松下は笑いながらも頷いた。

 

「ええと、別に困ってはいない、かな?

 私もためになる話を聞けたから。

 互いにクラスは違うけど、神室さんも土門君もこれからよろしくね」

「……よろしく」

「よろしく」

 

 珍しく神室が好意的な返答をしたのは、司と高円寺の衝撃的な話をともに聞いた相手として松下に仲間意識のようなものを感じていたからである。

 そのため普段から彼女が纏っている人嫌いの精神が松下に対しては弱まり、消極的ながらも交友を肯定するような返事が出たのである。

 

 とはいえ、積極的に交流しようという気持ちは神室にはない。

 あくまで拒否はしないと認めたに過ぎないのだ。

 

「ねえ、もう遅いけど帰らないで良いわけ?

 こいつはともかく、あんた用事とかあるんじゃないの?

 私も帰りたいんだけど」

 

 暗くなり始めた外を見ながら言った神室の言葉に、司に警戒心を指摘されて言葉に詰まっていた松下は乗っかることにした。

 

「あー、うん。確かにクラスの話し合いもう終わっちゃってるかも。

 取り敢えず私は教室に戻ることにするね。

 じゃあ、2人ともまたね」

「じゃあねー」

「……」

 

 2人に別れを告げて立ち上がる松下。

 しかしそのまま立ち去ることはなく、立ち止まって司の方に目を向ける。

 

「それと、土門君」

「ん?」

「確かに最初に見た時は、警戒もしてたし観察しようって気持ちもあったけど、今は違うからね?」

 

 司の憶測を否定する言葉を口にする松下に、司は黙って続きを促す。

 

「システムとかAクラスの特権の話とか先生にされた後で警戒しちゃったけど、話を聞いてたら『これはちゃんと聞いておいた方がいい話だ』ってわかったから。

 だから本当にありがたかったと思ってるし、2人とはこれからも仲良くしたいと思ってるよ」

 

 それに、と続ける松下。

 

「ここで起きたことは、誰も口外しないでしょ?

 Aクラスの人と仲良くなったって、他の友だちにバレなかったら何も問題は無いから」

 

 それは、高円寺が松下と神室にかけた口止めの誓約を逆手に取る言葉だった。

 いたずらっ気な表情をした松下のその言葉に、一瞬で頭を冷やした司は謝罪を口にする。

 

「それは、悪かったな。変に邪推した。謝罪するよ。

 すまなかった」

「私の方こそ、いきなり警戒しちゃってごめんね」

 

 自分が警戒していることを見抜いて指摘した司と、最初から警戒してしまった自身は同罪だという松下に、司は首を振る。

 

「いや、松下さんは警戒していたとはいえ内心にとどめてくれてただろ?

 俺は勝手に松下さんの隠した内面を掘り返して、煽るようなことを言ったからな。

 明確に俺に非がある」

「そう? でも、ここってそういう学校だよね、多分。

 私だって土門君に何かあるんじゃないかって疑ったし」

「表に出すかどうかという話だよ。

 例え相手のことを疑っていても、あるいは警戒されているのはわかっていても、笑顔で握手をするべきなんだ。

 俺はそれが出来なかった。だから俺に非があるんだ」

 

 この学校の仕組みやシステムに対する苛立ち。

 神室達に話している間に出てきたそれが、同じ学生相手に探るような目を向ける松下へと発露してしまった。

 おそらくこれが、普段から探られ慣れている橋本相手や、心配する対象である神室相手ならばそうはならなかっただろうが、松下は希少な他クラスの生徒だ。

 そんな相手すら、探るような視線を向けてくる。

 学校全体がそうなっているという事実に対しての苛立ちが出てしまったのである。

 

「そっか。わかった。その謝罪を受け入れます。

 代わりにお願いがあるんだけど、良いかな?」

 

 その司の言葉に一定の納得をした松下は、思わず巡ってきた機会に内心を目を輝かせながら、さり気なく司に謝罪の証を要求する。

 相手をこの学校の生徒であり、これから花開く蕾だと下に見ている部分がある司は、それに特に考えることなく首肯する。

 

「出来る範囲ならね。食事ぐらいなら奢るよ。

 あんまり高いのはあれだけど」

「じゃあ、土門君の端末のプライベートポイントの画面を見せてほしいな。

 それとポイントの履歴のやり取りも」

 

 そして、その思わぬ松下の言葉に内心で驚きつつ、それを感じさせないまま端末を取り出す。

 確かにそこに目をつけられたことには驚いたが、しかし事前に対策はしているし焦ることはない。

 

「何の意図があるかはわからないけど、別にそれぐらいなら。

 メールとかは流石に見せられないけど」

「あれ、良いの?」

 

 躊躇うことなく端末を差し出しロックを外した司に、松下は宛が外れて戸惑う表情をする。

 

「……どういうこと?」

 

 その2人のやり取りを見ていた神室は、意識して黙って聞いていたものの、2人のやり取りに思わず口を開く。

 松下が気づいたそれに、神室は気づいていなかったのだ。

 

「さっき高円寺君が端末のプライベートポイントを見せたとき、土門君だけ驚いてなかったでしょ?

 高円寺君と仲いいみたいだし、もしかしたら土門君もポイントをたくさん持ってるのかなと思って。

 でも、違ったのかな?」

「……ちょっと、どういうこと?」

 

 謝罪の証という建前を取った松下と違って、神室には司に対する遠慮は無い。

 それどころか普段から司のせいで監視に振り回されているのだからと、司に厳しく当たることもある。

 

 他者に積極的に関わらないという普段の彼女らしくないその行動には、司が意図的に神室の懐へと入り込み、密かに彼女との間にある心の壁を取り払いつつある、というのも関係しているのだが、それはさておき。

 

 神室に詰問された司は、肩を竦める。

 その目の前に置かれた端末の画面には15万pptの表示。

 少し多いが、Aクラスなら別におかしな数字ではない。

 

「そもそもだけど、財布に全財産を入れて持ち歩くっていうのが個人的に考えられない。

 額は人によるけど、普段使う程度の金は持ち歩いて後は銀行なり家なりに置いておくのが普通だと思うよ。

 2人もお年玉全額持ち歩いたりはしないでしょ?」

「確かにそれはそうだけど……でも、ポイントは端末にしか入れれないよ?」

「あんた……何かしてるでしょ」

 

 これまでの関わりと今日の会話から司が何かをしていると確信し詰め寄る神室。

 そしてそれは間違いではない。

 

「この学校では何でもポイントで買えるらしいからね。

 新しい財布を買えないか聞いたら買わせてくれたよ」

 

 生憎とそれを持ってきていないのでここで示してみるわけにもいかないが、司の言わんとするところは2人には伝わったらしい。

 

「えっと……プライベートポイントでもう1つ端末を買った、ってことで良いのかな?」

「そういうものも買えるの? ここって。

 端末は1人1個でしょ?」

 

 松下の言葉に、神室が当然の疑問を尋ねる。

 しかし司の言動や高円寺のプライベートポイントから、この学校では普通ではないことが起こり得ると理解した松下ははっきりと頷いた。

 

「何でも買えるって、多分そういうことだと思う。

 普通は1個だって決まってるものでも、ポイント次第では買えたりするんじゃないかな」

「……なにそれ。学校が嘘なんてついていいわけ?」

 

 不機嫌そうな神室のつぶやきに、端末を拾い上げた司が口を挟む。

 

「嘘は言っていないはずだよ。端末が1人に1個提供されるとは言ってるけど、それ以上買えないとは限らない。

 プライベートポイントだって毎月1日に支給されるとは言ってたけど、額については言及してない。

 嘘はついてないんだ、言ってないし意図的に隠してるだけで。

 まあ特権がAクラスだけって入学してから初めて言うのはめちゃくちゃグレーだけど、あれもギリギリ言い訳出来る範囲だ」

「ポイントがあれば何でも出来るってこと?」

「少なくとも教師に聞く価値はある、ってところだろうね」

 

 司の言葉に考え込む2人。

 金で何でもできる、と聞いても、そもそも学校のルールは前提として生活をしていたので、抜け穴を探すようなことをしたことが無かったのだ。

 

「だからこの学校は碌でもないと言ったんだよ。

 高校の教師が生徒にやることじゃないんだよ、これは。

 当然社会に出ればそういう場面に出会うことはあるだろうけど、それなら授業で知識として教えた上で経験をさせるべきだ。

 いきなり放り込んで体験させるものじゃない」

 

 だから司は、この学校の仕組みに腹立たしさを感じているのだ。

 

「何でも買える……すぐには思いつかないけど、覚えておいた方が良さそうだね」

「はぁ……テストで退学ってだけでおかしいのに、まだ考えないといけないとか……」

 

 すぐに色々と気づいていそうな司に尋ねたかったが、しかし2人はそこまで司に頼ろうとはしなかった。

 それは無意識に人に完全に頼り切ることを避ける意識でもあり、また社会全体で見れば勉強面で成功してきた2人からすれば、そこで人に頼るという意識がそもそもなかったというのもある。

 

 そしてだからこそ、司も自分から口を挟もうとはしなかった。

 聞かれれば教え導くことはするが、しかし自分から積極的に関わることは避ける。

 

 司の一線はそこに引かれている。

 司はこの学校ではあくまで観察者であり傍観者であって、善意の級友ではあるものの、中学の頃にしたように指導者や教導者をやるつもりはないのだ。

 

「松下さん、そろそろ時間やばいんじゃない?」

 

 とはいえ、思考の内容についてアドバイスはしなくても、時間が迫っていることを教えるぐらいはする。

 司の言葉に弾かれたように時計を見上げた松下が、慌てたように再び席を立つ。

 

「そ、そうだったね。私もう行かないと。あ、2人とも連絡先交換して貰っても良い?

 せっかくこうして知り合えたし、秘密を共有する仲として」

「……はぁ」

「良いよ」

 

 司は特に抵抗なく、神室はため息をつきながらもそれぞれ松下と連絡先を交換する。

 

「それじゃあまたね!」

 

 音楽室から去っていく松下を見送り、後には神室と司だけが残った。




最新話部分を書いていたのですが、気がつけばこのあたりだけで2万字を超えていたので、分割して投稿していくことにします。
特に話が展開することもないので、もうこの木金土あたりの投稿で5月1日は終わらせてしまいたいと思います。



高育の学習内容については細かく分野や難易度でどこまでやってるかと設定を考えてはいませんが、シャッフル試験のときの作問の場面や、その他の場面の勉強の力の入れなさから、一般的な問題集ではなく、専用の問題集を生徒に与えることで学習範囲を抑えているのではないかと考えてこんな感じにしました。

ちなみに作者はニューアクションレジェンド派です。

他のキャラクター視点(一人称の地の文という意味ではなく、司がいない場面で、ということ)での描写を読みたいですか? 例えば松下が中間試験への対策に奔走する姿を松下視点で書くのか、あるいはいつも通り司が後から聞いたという形で書くのか。司という異物への、司が居ない場面での反応(例えば神室と松下が2人で話してる場面等)も含めて、視点を統一するべきか色んなキャラの目線を書くべきか悩んでいます。

  • 司中心で、司が見聞きした情報で良い
  • 他のキャラクター視点の情報もみたい。
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