【GAME原魔勇】 不遇王子で完全攻略、リアルなこのゲームセカイで俺は……!   作:山下敬雄

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GAME24

《ミゾレパニック》

 

 

 

「なんだ貴様……一体どっちの味方だ!」

 

「そうよ、何者よ! 私の弓をっ」

 

 今、割り込んできたのは何者か。味方も敵も認知しないこの茶髪頭は、妙な投擲武器を使ったと思えば次の瞬間には剣一本でブランの逆襲を阻んだ。一体何を考えているのか、敵対していたブランとアウロラまでも同調し問いただした。

 

「せっかく(みやげ)探しに来たってのに、お前らこそなんでこんなところにあつらえた様に詰め込まれてんのか、説明してみろ。まったく俺は、王ヂだぞ?」

 

 そう、王ヂである。何度でも問われたらこう言い返す。南関所を抜けた賊の正体を探る気もなく、ウェブルの騎士たちにわざわざ会いにいくこともしない、王ヂはただ大事な土産を求めてexステージにやってきただけであった。

 

 痺れる小競り合いに水を差し飛び込んだはいいものの、実のところは彼らと邂逅した王ヂの方が内心で驚いているのだ。

 

「王子? ふむ、その緑のマントと鷲のような銀の刺繍……メイヂ国の王子か」

 

 ブランに奇襲を仕掛けられた老将は、間に挟まったその男の背を見てさっそく気づいたようだ。

 

「メイヂ? どの王子だ」

 

「さぁ、お隣さんは子沢山すぎて分かりゃしないわよっ。ってよくも私の弓に傷を!」

 

 メイヂ国の王子といえば、候補が多すぎて分からない。ナットゥが首を傾げ、アウロラがまた思い出したように怒り出した。

 

「冴えないメイヂの王子だと……フッ、ははははは。誰でもいい、そこをどけ。小細工をしたロクバショウのそいつに一発かまさねば、私の気が済まんというのだ。どけっ」

 

 持ち手のリングを操り、不格好になっていた武器の変形を解除した。ブランは銀の銃口に籠った煙を払いながら自称王子に告げた。

 

「六刃将? へ? コイツ、ウェブル六刃将なのか! とろそうな爺さんだからお情けで助けてやろうと思ったのに、なぁんだ割って入って骨折り損だぜ」

 

 王ヂは折れた剣を手に取り、首を傾げてアピールする。六刃将ならばわざわざ助けてやらなかったと言いたげだ。

 

「ふぉふぉふぉ、爺さんとはの」

 

「はぁ!? パパ上に失礼ね! 射抜くよ!!」

 

「射抜けよ、できねぇだろ。壊れた武器で」

 

「──ッ!」

 

 挑発と捉えたアウロラが茶髪の横顔に向け弓を構えるが、弓についた亀裂の入った玉ではコントロールは定まらないだろう。王ヂは弓師を鋭い視線で睨み返した。トントンと、右の側頭をよく狙うよう指で差し示しながら。

 

「これアウロラ、構えるでない。メイヂ国の蛮勇王子よ、今のでぇ……うむ、ワシを助けたというが、そなたが余計なことをしなければその獣のようなオナゴはとっくに痺れ倒れていたというぞ。そなたが割って入った末の板挟みの状況じゃ、これ以上悪化しこじれぬうちに、この老いぼれにどちらか立場を明かしてみせぃ、──早急にの」

 

「老いぼれ? 馬鹿言え、他の六刃将ならワンチャンまだしも、豪傑六槍と呼ばれたグリーン・ガレットシーを相手にするかよ」

 

 王ヂはその老将の口車には乗らない。ここで教官側についたとしてもメリットはない。この爺さんのフリをした名の知れた騎士を喜ばせるのがオチだ。そもそも知らぬ先で勃発していたいざこざのどちらかに肩入れするために、ここに来た訳でもない。

 

「ほぉ、流水の美剣士と呼ばれた男の影にいれば大した活躍も残されてないはずじゃが、そんな昔の名をよく知っておったのぉ」

 

「なぁんだ、パパ上のファンじゃない!」

 

「厄介ファンだろ? やっちまうか?」

 

「てことで、時間だ──」

 

 かつての豪傑六槍、今の六刃将。その着飾られた肩書きと丸太のように発達した衰えぬ腕の実力を侮ることはない。

 

 一瞬ちらりと天を見上げ、水滴の落ちてゆく様を確認した王ヂは前を見据えた。

 

「フッ、貴様がワタシに歯向かうというのか。こうもラッキーは続かんぞ」

 

 折れた剣が一本そこにある。教官の生徒から無理矢理借りた剣はもう手元に刃が半分しかない。投擲武器を自ら放棄し飛び込んできた手ぶらの王子が、どうワタシを止めるというのか、ブラン教官は不敵に嗤った。

 

 腹を蹴られた恨みを抱えて──。銀の銃口は両方とも、今茶髪の頭を穴が開くほどに見つめている。しかし、その男の見据える視線が交わらない。まるで目の前の敵など眼中になく、もっと遠くを見ているようだ。それでもブランは怪訝な目で睨み、その奇妙な男の行動を監視しつづけた。

 

「ガンつけるのはこっちじゃねぇ、後ろだぁッッ」

 

「なんだと……!?」

 

「なにっ!?」

 

「なにっ、なによっ!!」

 

「ほぉ……!」

 

 王子が睨みつけたのは、その目の鋭いオンナではない。

 

 地が揺れているのは叫び声が響いたからではない。天からしたたる水滴のテンポが速まるのは、眠りから覚めたからだ。ツララのような岩が落ちてくるのは、蓄えた怒りを今まさに発散している、その兆候。

 

 三騎士、教官、王子様、人間どもの醜い小競り合いがその眠りを妨げた。今更間抜けに驚いてみせても腹に突き刺さったそのモノの怒りはおさまらない。

 

 冷気漂う荒れた鍾乳洞を破壊し現れたのは、ミゾレ色のモンスター。見たこともない巨大なウミウシの姿だった。

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