【GAME原魔勇】 不遇王子で完全攻略、リアルなこのゲームセカイで俺は……!   作:山下敬雄

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GAME3

《話題ex❶落雷の森の噂》

 

 

 俺はただ序盤の街で装備を整えるためだけに散財したわけじゃない。もちろん品揃えは満足いかない。序盤の街にあるありふれたものだった。だが、思わぬ掘り出しものと、隠されたヒントがひとつ……この店にひっそりと物言わず眠っていた事に、俺は気付いてしまったのだ。

 

 

「変わったことですかい?」

 

「例えば商売中、魔物被害や異常気象だとかに困った経験はあるか」

 

「魔物被害……異常気象? ────あ、そういえば。ごく最近のこのところ、まるでヘソを捻じ曲げ唸るような雷鳴が夜分によくきこえましてね……。たしか、東の森のある方角からかと。私も近付かないように子飼いの商人キャラバンには一応通達しています。この新たな販路である魅力的な勇大陸には、反面、何があるか何が起こるわかりませんからなー。一定以上の危険を察したら、不用意に近づかない。それがここで生き残るコツですぞ。山賊もゴロゴロ、雷もゴロゴロ、あはははははゴロがつくものですなーはっははははは」

 

 〝ごろつき〟ってか、まったくやかましいな。まぁ、こんなところで商売をする商人は情報通だからな。これだけ買い物をした神様には隠し事はしないだろう。

 

 そしてやはりな。今回もちゃんと〝ある〟らしい。なら、このまま予定変更だな。

 

 え? もう予定変更?

 

 俺という軽度のVRゲーマーは感覚派なんだよ。プレイしながら閃いたり思い出すタイプのな。だから【鋼の剣】なんてものを衝動買いの脳死で買っちまうんだよ! はは!

 

 もちろん、脳裏に浮かべるちゃんとした筋書きはもう既にあるにはあるが。この、なんだかやけに……リアルな生風の吹くVRセカイが、プレイヤーの思惑通りにノせてくれるとは、──まだ分からねぇ。

 

 プレイヤーにできることは、きっと歩みを止めずに目を凝らし、発見し、このセカイを楽しむこと。

 

 それだけだろう。

 

 

 そうこう仲良くなった武器屋の商人と話し込んでいると──。店内の並ぶ試着室の茶色いカーテンが、ふたつ同時に開いた。

 

「「どう? カール王子?」」

 

「るせぇよ、──似合ってんな」

 

 メイド服からそれぞれ衣装チェンジ。

 

 鉄色の鎧・スカートを纏い、大盾を背に背負う重装気味のサイドテール娘。

 

 ゴーグルをぐいと上げ、小銃を手持ち構える。スチームパンクな様相になったサイドテール娘。

 

 試着室から出てきた従者の二人が、いっちょ前にかわいいポーズを決めている。

 

「王子、これ重い、ホナと同じがいい、かわいい」

 

 さっそく愚痴垂れるのは双子の片割れのギム。しかしコイツは鉄色の重めの運命を背負い、じっくり腰を据えた闘い方をする能力値なので。そんなにかわいくくだらない戯言を聞き入れてる余裕とお金は、今の王ヂには残念ながらない。

 

「ハッ、何言ってんだ。かわいくて戦えるかよ」

 

「はっ、たたかえるかよー」

「テツテツで重いとたたかえない」

 

「重い分かたさが上がってんだから、おしゃれだろ? テツテツ」

 

「かたさ、だから、おしゃれ、つながってない、テツテツ」

 

「わかったわかった、この先のピクニックで死にたいのなら、ホナと同じのをあとで買ってやる。だからそのテツテツ装備で、そのおんぶした試作の魔盾を十分構えれるようにしておけ。あ、言っとくがAPをつかうと、〝ソレ〟もっと重くなるからな?」

 

 たしかに魔銃師のスチームパンク装備セットはかわいいとゲーム内外でも評判だろう。しかし女子っぽいおしゃれと硬さは両立しない、それが前衛盾職の背負う宿命なのだ。

 

 不似合いな鉄色を纏うサイドテール娘が、口をだらっと開けながらきょとんとしている。

 

 【テツテツ装備のギムの親愛度が下がった。】

 

 ──としても、王子権限でこれで一旦行ってもらう他ないのだ。これだけ金をかけてしまったからには、もう後戻りと返品は許されないのだ……!

 

 

 

 

 

 

 バグってか、数値の見えない親愛度。その透明な数値を街をぶらつき、上げたり下げたり。

 

 このままじゃカール王子としてのキャラやアイデンティティが、ぶれてしまうので、それはあまり気にしすぎないことにした。

 

 元々低くてもそこまで不都合はない、受け取れるメリットもデメリットも。その偉い立場からカール・ロビンゾン第九王子に関係する人物は多かれど、本当のカール王子を知る者は少ない。誰にでもその心をすべて開くキャラではないのだ。

 

 原魔勇の俺の知るストーリーラインで、彼の心を開かせれる可能性のあるキャラやイベントは、普通にプレイしていては巧妙に隠されて見つからず、かつ限られている。

 

 まぁ今日のように〝刺される〟までいく……俺にとってのバッドイベントだけは極力回避していた方がいいのは間違いない。

 

 といっても回避はできなかったところから、このデータは始まったよな……うん、まだ油断はできないのが本音だ。

 

 しかし、さっそく訪れた死亡フラグをへし折り、こうして元気に生きているのでここまでは──100点!

 

 俺が楽しいので100点! といったところか? ハハ。

 

 

 砂粒が進む足底に混じり始めた道を行く。そんな身勝手な王子の後を、とぼとぼと小さな足音を立てて、ついてきていた従者。

 

 ヤル気の低そうでゲームじみた台詞と、重なる双子姉妹の声が、考え事をしていた俺の耳に届いた。

 

「王子ぃー、そっちいくと街の外だよ」「だよ」

 

「あぁしってる。──ってなにやってんだ」

 

「「しんぺんけいご」」

 

 声をかけた背後から俺の前方へと、今、小走りをした双子が回る。簡易な木の門前に、例のサイドテール姉妹が突っ立ち両腕を目一杯ひろげ、通せん坊している。

 

 メイド長から受け給わった〝カール王子のしんぺんけいご〟という最低限の仕事はできるようだ。

 

 その辺の山賊団よりしっかり教育が行き届いている証だな。さすが他国に派遣もしているメイヂ国の質メイドたちだ。

 

 しかし、──しかしのしかしだ。体を張るのはまだ少しばかり、あと数歩と数千歩は早いのだ。

 

「何言ってんだ? これから4人で仲睦まじく夕暮れのexピクニックに行くんだろうが。たのしいたのしい、そこそこの警護をするならそっからだ。テツテツ、スチパン、サンダー、──な?」

 

「ほへ?」「ほへぇ?」「ぬえっ…!??」

 

 王子は微笑う。ついてきたピクニックメンバーをひとりひとり、右、左、後ろ、それぞれしっかりと指差ししながら。

 

 そして王子は、物見やぐらの梯子から今降りようとしていた見張り番の若い男兵に、少額のコインを指ではじき与えた。若い男兵は、まだ梯子の途中で投じられたその輝く賄賂(おだちん)を慌てて掴んだ。

 

 物陰に隠れていたソバカス顔のチョコ、鉄色のギム、小銃を王子に向け構えるホナ。不思議な逆らえない引力と、ワラう眼光が彼女らを従える。

 

 カール王子と従者の女三人は、足元じゃりつく門前を抜け、ベヌレの街の東の門を発った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ベヌレの街から東へ587歩)

▽夕暮れの平原▽にて

 

 

「どらぁーー! さっきからぱんぱん玩具の銃鳴らして調子乗ってんじゃねーぞガキぃぃ! ドタマかち割って俺様(パパ)が今すぐ寝かしつけてヤ・ル!!!」

 

「がんっ、ざんねん」「ぱんっ、かんねん」

 

「は!? ガキが増え!? 俺の【アクセスアックス】の刃が欠けたァッ……ぶへぇーーー!??」

 

 不意に現れたのは似たような顔立ちのガキ。そのガキが構えたレア盾に阻まれ、振りかぶり勢いよく下ろしたご自慢のレア斧を欠けさせてしまった。

 

 手に痺れが伝ったパープルバンダナの賊男。斧の一撃を受け止めたその硬い盾の後ろからひょこっと出てきたのは、小さな魔銃の銃口。

 

 銃口から溜め放たれた魔力弾が、瞬く間に、紫布を飾った驚く男の顔面に到達。眉間の間を撃ち込まれた賊男は、クリティカルダメージを貰い、その場に倒れた。

 

 千切れた紫の布が、ひらり……地面へと舞い落ちる。

 

 ギムはホナの近くにいつでも瞬間移動できる【ハングリーミラー】という特殊能力がある。今もなおネットの片隅で密かにつづいている〝ギムホナ姉妹の育成研究〟。その長年のゲーム研究の末、結局はこの優れた唯一無二の移動能力を活かそうとした構築に辿り着くことになる。

 

 盾のギム、そして、回復のホナ、そのセット運用が最終決定版であり、安定基本のスタイルだとネットの某研究機関により結論付けられた。

 

 しかし、最近の研究結果では【燕の剣】×2を用いたどちらも剣士の攻撃的な運用もありらしいが、それは双子姉妹のキャラと能力の成り立ちの解釈が一致しないので俺はあまり好きじゃないのだ。

 

 ごほん……通常運用する1人では微妙に頼りないが、装備ビルドを尖らせた2人ならばこの通り。

 

 立派な盾と回復(たまに銃でぶっ殺す)両方の役割が存分にこなせるようになる、扱いにクセのある特殊双子ユニットだ。

 

 初見プレイでは、2ユニットで一人前のこいつらの出撃枠がもったいなくて、戦力外にするプレイヤーも多いことだろう。(もっとお手軽につよいユニットがいるから必然的にな)

 

 だが何より見た目が可愛らしいし、楽しい双子属性も備えてある、一部のわかってる男子は彼女らを自軍編成から外すなんて意地でもしないことだろう。

 

 そして、この比較的弱い双子。彼女らに今まで興味がなかった者たちも、何故かゲームプレイ途中から急に育て出したヤツも多いんだとか? おもに能力以外の評価ががらっと変わるような……いったいなぜだろうか? ハハ。

 

「おだちんおだちん…【チョコボール】!!」

 

「たががガキとガキと地味な雌だぁーーぶっ潰ごほぁーー!??」

 

【チョコボール】:

チョコに似た玉を射出するシンプルでおかしな魔法だ。裏ステータスでこのユニット本人にチョコを食べさせた分、魔法弾の射出量が少しずつ増えるなど強くなる効果がある。が、無駄チョコ代で軍資金がかなり食ってしまうので、このユニットをあまり育てる人はいない。だがきっちりと育てれば弱いことはない。最終的には一人前の魔法師として、強さ上位のユニットにも食い込める活躍を見込める。

ちなみに魔法で生み出したチョコは食パンに泥を塗ったような味らしい。ひもじいかな悲しいかな。

 

 

「な、ななななんだこいつらーー!!! ガキとイキった雑魚男だから小遣い感覚で狩れるって話じゃなかったのかヨー!?」

 

「あぁーそれ、情報がちょっと古いぜ。ガセネタ掴まされたな、あばよ。──後ろだ、紫シムラ」

 

 遠目で微笑む雑魚男こと俺を睨み、うろたえる紫バンダナ。その最後の一人が後ろを振り返ろうとするが、もう遅い。

 

 赤焼けを浮かび飛んでいた白い骨鳥が、振り返る賊の無防備な頸をはげしくつついた。「どさり……」──草地に音を立て倒れた未熟者が、ぴたりとも動かなくなった。

 

「この王ヂを小遣い感覚とはな。舐められたもんだぜ、ハッ。もう聞こえちゃいねぇか、ははは」

 

 手元に操作し戻ってきたボーンブーメを、よしよしと撫でながら労う。

 

 王ヂ操作役の俺が、沈む夕日と沈む賊どもの屍を眺めていると──

 

「王子ぃー、めしー」「ピクニック、めしー」

「ふぅ……おだちん……感覚…!」

 

 どうやら従者たちは腹を空かせていたようだ。

 俺は「はいはい」と適当に返事をしながら、ひりつかない雑魚戦に、つい欠伸をしてしまった。

 

 バイオレット山賊団、どこかで見たような山賊団の色違いを発見したので、道中ついでに新装備を与えた双子たちの試運転を兼ねて狩っておいた。

 

 まぁ、予想以上に弱かったとは言うまでもない。統率力でいえば昼間の山賊のアジト以下だ。おおかた頭がやられたから、今がチャンスで成り代わってやろう、そんな魂胆の山賊の残党だったんだろう。

 

 賊どもの旗揚げは虚しくも失敗。攻略道中、サプライズにもならないこんな所で躓いていては、VRゲーム好きのプレイヤーとして……おっ──

 

 横たわる山賊の身をごそごそとまさぐっていると、俺は山賊っぽいアイテムを発見した。

 

 山賊が山賊っぽいアイテムを持っているとテンションが上がるものだ。海賊が海賊っぽいことをしてくれると、アガるのと同じだ。

 

「おっ、酒か」

「わーい、酒だよこせー」「酒よこせー、祝ーい」

「よこせるかよ、レーティングを考えろレーティングを」

「でーてぃんぐ、えろーい」「でーてぃんぐ、えろーい」

「あながち間違ってはいない……お、よろこべおつぎはお高いチョコだぞ?」

「「わーい、お高いチョコだよこせー」」

「!? おだちん!?」

「ガキは干し肉で我慢しやがれ」

「「ガキは干し肉で我慢しやがれ、けっ」」

「けっ、てなんだよ。そのカエルみたいな顔。そらよ、チョコ担当大臣は、チョコだ」

「おっ!?おだちん…!! ありが…あり…ほっ……」

 

 能力的に意味のないチョコをせがむ食いしんぼうの双子には、干し肉を与える。チョコはメイド従者のチョコへと包み紙ごと投げ渡した。

 

 こうして盗んだ飯を食う。盗んだアイテムを我が物顔で使用する愛用する。この世界、勇大陸の上にのっかる住人は皆たくましいのだ。一歩でも街より外に踏み出しゃ日常が賊や魔物。

 

 ちょっとしたピクニックとパーティー感覚だ。襲いくる者を襲い返し、ぶっ殺し経験値をつみながら、食費代も浮く。一石二鳥のお得だな。

 

 俺たちは余さず倒したパープル山賊団から、落ちたアイテムを回収しながら、平原のど真ん中でスムーズに夕食の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【つよいつよいアモン様をお倒しできれば賞金10万GENくれてやる!】従者のメイドたちが悪乗りを重ねて作ったそんな手製の木看板が掲げられ、街の腕自慢たちが中央広場に集った。

 

 しかし集った猛者たちは、こぞって、緑髪の男のその木剣さばきに驚く間もなく、次々と返り討ちにされていく。

 

 騒ぎに観戦にきた街の淑女たちもメイドたちに混じり、黄色い声援を飛ばす。アモン様へと向けられる四方八方の野次歓声が、だんだんと厚みを帯びていった。

 

 その勇ましい剣は来るもの拒まず、尻尾を巻いて逃げるものにはその爽やかな笑みを。

 

 街の挑戦者たちを余さず平らげたアモンが額に流れた一汗をぬぐった。

 

 握っていた剣を下げ、気が緩んだその時。背後からすばやく迫る足音を────受け止めた。

 

 絶妙なタイミングで死角から不意を突いてきた──今度の相手は大人ではなく、なんと自分よりも若く見える少年が挑んできた。

 

 挑戦的な剣だがその攻撃に孕んでいたのはそれだけはない。殺気に反応したアモンは、動こうとしたメイド兵たちを手で制しながら、少年の鉄剣を握る木剣のまま弾き返した。

 

 少年は何も語らない。

 

 そこに会話はない。だが目をみれば分かる、彼の目の色が他の者とは違うと。

 

 緑髪の剣士はどこからでもかかってくるように、そんなオーラをただよわせる。石畳にはじかれ倒れた少年のことを見つめ、その剣をまた構え直した。

 

 

 

 

 いつもは野郎どもが集い酒臭い酒場が、今日ばかりはとってもフルーティー、華やかに香る。

 

 酒も、剣も、ジュースも、その実力を比べ合う挑戦者というものは尽きない。人はなんでもくだらない何かを賭けて遊ぶことができる生き物らしい。

 

 クピン・シープルは共有ふる一つの円机のリングで、挑戦者の女と睨み合う。

 

 自称〝オレンジアイドル系お姉さん戦士のイヨ・ポン〟と今、飲み干したグラスを次々と積み重ね並べながら、その数を競い合っている。

 

 甘酸っぱいプライド、そしてベヌレの街1点ものの景品装備である【オレンジの王冠】をかけて、

 

 口元に滴るオレンジの汁をお互いに勇ましく拭いながら、二人の女の熾烈な孤独の闘いがつづいている。

 

 

 

 

 オレンジの日が沈んでいく、もうすぐ夜がやって来る、その前に────

 

 小休憩し、腹を満たしおえた。

 

 カール王子、チョコ、ギム、ホナの一行は、チーズをとかし干し肉を炙ってディップしたこのおもいでの焚火の元を離れる。そして、そのまま東の方角へと4人で固まり進んでいった。

 

 一歩一歩、だが目的はまだ先にある。

 

 暗くなり始めた道中でまた遭遇した野良の魔物と賊の残党を、王子と従者が協力し一緒に倒しながら。

 

 俺、自操作するカール王子は熱心に守りの陣形の確認とレクチャーをしていく。ギムとホナはわかっているのかわかっていないのか、似たような顔がどちらも「うんうん」と頷く。メイド長から承った〝しんぺんけいご〟の任務から、新たに追加で与えた俺の仕事をこなしていく。

 

 メイド兵で魔法師の素質のあるチョコには「無駄チョコを使うな」とだけ簡単な作戦を伝えておき、命令気味の圧をかけて一旦頷かせた。

 

 雑魚戦ですこし、それぞれのユニットの動きは把握できた。

 

 だが、相変わらず操作ユニットの視点変更はできない。このゲームが元SRPGの血を継いでいる部分の視点変更と便利なショートカットコマンドが、バグっているためか、使用できないのは、はっきり言って不確定要素がこんもりできつい。

 

 だが──

 

「王子ぃー、これすると動けない、テツテツおもい」

 

「はは、文鎮みたいに動けなくていいんだよ、その状態でもホナのところにお前が一瞬で動ければな。それにかたさ、はやさ、ぱわー、まほう、最初からきように全部できたらおもしろくねぇだろ? 全部やろうとすればきっと中途半端で穂先は太く実らない。そうやって足りない部分をカバーし合うのがお前たち、双子のスライだろ、ギム、ホナ」

 

「王子ぃー、せんちめんたる? きゅん」「めんたるおせんち? きゅん」

 

「親愛度が上がったならそう言ってくれ、はは」

 

 デキしだいでは引き返すのも正直70%ぐらいはありだったが……崩れなければ、いけるんじゃねえか?

 

「王子ぃー、ちょっときもい」「きもいちょっと、おもい」

 

「なんでだよ!!(たしかに!!)」

 

 親愛度なんて恥ずかしい言葉、口に出すべきじゃあなかった。今の『ちょっときもい』で、親愛度がちょっと下がったなら良い話損じゃないか! ちくしょー、はは。

 

「かか、カール王子さま……ひ、ほ、ほほ本当にココココに入るんデス……? ひっ、なんか鳴って!?」

 

 さっき喋りすぎた王子は反省する。生のゲームプレイにも反映し、今度は多くを語らない。

 

 先頭でランタンを片手に進む。そこに明るく浮かぶ王子の理解不能の微笑みが、ソバカス顔の従者の不安顔を、もっと苦く不安に変えさせていく。

 

「なに、そんな不安がるな。ここから先はちょっとした〝ex肝試し〟だ。いくぞっ」

 

 結局しゃべる。沈黙を生み出す寡黙な王子スマイルを浮かべつづけるより、王ヂはそれがいい。

 

 頼りなく灯るランタンの案内で、鬱蒼としげる道を立ち止まらず行く。

 

 そして、まるで俺たちを歓迎するように近くに落ちた、その不吉な雷鳴のゴングと共に、

 

 魔が蠢く夜の森の中へと、個性豊かな4人のパーティーが影を落とし重ねながら入場していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

■【雷鳴の森のライトニングビートル】:

不自然に集中する落雷が観測された。ベヌレの街の東の森の方だ。

 

勇大陸の地は未踏の魔大陸ほどではないが、依然不浄の地である。天からまばらに降る雷よりも怖い、そんな魔物たちが跋扈するたくましい世界だ。

 

しかし、幾度も雷鳴の鳴りひびく方角から、なにやらイヤな風と震動がする。感覚の鋭い一部の者は、その肌や耳にそう感じていた。

 

そして、西の山の頭の命令で、あやしい東の森の調査に向かった緑頭巾の部下たちは──なんと、幾日待てどもその誰ひとりも帰っては来なかった。

 

『気味が悪いねぇ、あんたたち、あの東のこげくさい森に不用意に遊びにいくんじゃないよ』

『姐さんきいてくれよっ、俺の魔石を盗んで消えたんだよコングの野郎! ぜってぇそこで、こそこそ立ちしょんべんしながら隠れてるにちげぇネェ!』

『そんな光る石ころと濁った屑よりも、あんたの命の方が大事さガング。広くなった部屋と空いた2段ベッドは、一人で使いな』

『ね、姐さん!!!』

 

この世で最も繁栄した種とは何か。人間、鳥類、魚類、否それは昆虫である。

 

実に多種多様、実に多くの特殊能力を持つ種に枝分かれし、土中水中空中木中、様々な環境を住処とする数えきれないほどの進化に富んだ種だ。

 

さらに、そんな昆虫のたちの中でも幼虫から成虫へと変態する能力を持つものがいる。

 

危険な存在であることを示すよう妖しく灯る発光器。その発光器のついたサナギの中に潜む黒光りの甲殻は、灼ける大木に掴まりながら、長く鋭い角を天へと伸ばし突き出す。

 

天からの怒れる恵、はげしく降り注ぐ雷を、伸ばした角のストローに伝わせながら、全身に痺れるほどの最上の栄養を得る。

 

今か今かと、地を、大木を、疼かせる……。

 

神に愛された魔虫は、とどろくその胎動を、日夜ひそかにつづけている。

 

サナギが蝶へと生まれ変わるような、その時まで……。

 

 

 

 

 

 巨大サナギの角から発せられた小雷が地を揺らす。

 

 特殊な雷を浴びた卵から虫の魔物が急速に孵り、今、生まれ出たビッグキャタピラーたちは、禁断の森に我が物顔で踏み入れた人間たちに襲い掛かった。

 

 ビッグキャタピラーのクリティカルポイントは節足体にある赤い○模様。俺はVR仕込み、同じ会社の他ゲーム仕込みの巧みなブーメラン操作術で、遠距離からずばずばと弱点の赤い的を目掛けてクリティカルヒットさせてゆく。 

 

「急造のビッグキャタピラーは全然ビッグじゃねぇ、ハリボテだ。生まれてすぐハイハイできて偉いねぇ、そらよっ!」

 

 俺はさらに戻って来たブーメランに再度APを消費し【パワーブーメ】の技で火力を上げて、確実に森にへばりつく卵を潰し、未来の増援を絶っていく。

 

 しかし、サナギの親の喝が聞こえたのか、土中からダンゴムシアースが飛び出してきた。

 

 敵はビッグキャタピラーだけではない。丸まって下から体当たりを仕掛けてきた、こいつのクリティカルポイントは、さて、なぁんだ?

 

 正解は繋ぎ目──繋ぎ目があっちゃぁ、そのご自慢のダンゴムシ装甲も完璧じゃ、ねぇっ!

 

「完璧にしてくれなかった製作者(かみさま)を恨みな、ハッ」

 

 鎌を振るようにボーンブーメを握り振る。丸々形態をとったダンゴムシの魔物の繋ぎ目を、不思議な原理で強引にこじ開けて、中身をクリティカルダメージで抉った。

 

 ブーメランで近接戦闘できないと誰が決めた? ターン制のSRPGからタクティカルアクションへと、名打ち、【GAME原魔勇】のゲームシステムはシリーズを重なる度に昇華されていった。

 

 楽しみ方はもはや無限大、俺というプレイヤーにできないことなど、この自由すぎるセカイにはもはやない。

 

 しかし、さっきの雷の喝に飛び出したダンゴムシは一匹だけではない。

 

「がんっ、おもくてたすかる」「ぱんっ、ばんざいたすかる」

 

 丸く突っ込んできたダンゴムシを、大盾を前に突き出したギムがはじき返す。そして地に寝そべり万歳の格好をしたダンゴムシのCTP、クリティカルポイントを、ホナがチャージした魔弾がタイミングを合わせ撃ち抜いた。

 

「ついでにぱんっ、王子あまい、ダンゴムシ」「あまい、つめが、ダンゴムシ」

 

「ハッ、横槍さんきゅー!」

 

 俺が倒し損ねていた必死に起き上がろうとしていた瀕死のダンゴムシを、ホナがおまけの射撃で屠る。

 

 詰めが甘いらしい俺は、頼もしい活躍をみせる後ろの双子の状況を確認。さらに後方に控えているソバカス娘、彼女が両手で今握る〝へんてこな杖〟その枝の底から溜まりつつある魔力の具合も確認した。

 

 そして再び、生まれたての魔物の赤○印に目掛けて、手持ちの骨のブーメランを投げ放つ。

 

「寄る雑魚は殺せ、あのサナギにはその時まで絶対手を出すな。ギムは守れ俺以外を、ホナは回復を怠るな俺以外を、チョコは無駄チョコを打つなよあっせるなよー。じっくりじっくりいこうか。作戦はサナギが蝶になったとき、ホンモノの勝利の雷鳴はもうすぐ……近いぜ!」

 

 暗い森の中で、食らいついてくる虫どもを滅していく。

 

 大木にかじりつく、角のはえたサナギは標的(ターゲット)。そしてソレを守護するのは、地に打ちひびく雷の号令にめざめる虫の魔物ども。

 

 数で上回るそれらの敵群に対して──。

 

 ソバカス顔のメイドを過保護に守りぬく陣形を敷いた、カール王子と双子の親衛隊。

 

 果たして、最後に鳴り響くのはどちらのけたたましい雷鳴か。

 

 それは────おそらく、俺のみぞ知る……。

 

「王子ぃー、みっちゃくしんぺんけいご」

「あぁ、みっちゃくしんぺん……って今すぐ戻りやがれ!」

「──じょーだん、テツテツ」

「無駄に瞬間移動かましてんじゃねぇぞ……ハッ! 王子の俺にかまうな、敵にかまえ! ──構えろッ、ヤるぞ!!」




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