GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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キルハウス

「指揮官さま、指揮官さまにお電話です」

 

「ありがとうカリン、回してくれ。はいもしもし、サイファーです」

 

『……やってくれたな』

 

「あぁ、その声はジョゼか。義体の子達はプレゼントを気に入ってくれたかな?」

 

『あのぬいぐるみか?』

 

「そう、ヘンリエッタにも渡したダイナーゲートとSOPⅡジュニアの製品版だ。可愛いだろう?特にアンジェリカは好きそうだと思ってな。エルザの代わりに置いてみた」

 

恐らく渡した名刺に書いていた番号にかけたのだろう。

電話からは嫌みのような大きなため息が聞こえてくるがノーダメだ。

 

こちとらジェリコにどれだけため息と叱責を喰らってると思ってんだ。今更何とも無いわ!

 

『ぬいぐるみもそうだが聞きたいのはエルザの件だ。彼女を連れ去ったのはサイファー、お前だろう』

 

「連れ去ったとは人聞きの悪い、エルザからついて来たよ。可愛がられて揉みくちゃにされてる」

 

最初は不安がっていたエルザだったが、無事に大勢の人形に迎えられた。

まだまだ慣れてはいないが少しずつ表情は柔らかくなっている。

 

顔合わせの時、UMP9に私と同じ声だ!と言われた時にはなんと言えば良いのか言葉に詰まったが……

 

「返すつもりは無いからな、彼女はもうウチの子だぞ」

 

『公社に連れ戻しても、より強力な条件付けをされて自分を忘れるか……処分されるかだろう。僕個人としてはグリフィンに引き取られて良かったと思ってる』

 

「意外と信頼されているんだな」

 

『不思議と悪い奴じゃないと思えるんだ。こんな事をしているからか、グリフィンに居る人間がとても綺麗に思えてくるよ』

 

「センチになりすぎだ、ジャンに聞かれてみろ?面倒だぞ。それから……一応俺達は正式な味方じゃないんだ、迂闊な事は言うな」

 

俺の忠告に、フッと笑ったジョゼは一言ありがとうと言って電話を切った。

 

全く、不思議なのは向こうの方だ。会ったばかり、しかもダミーとは言え頭をぶち抜いた相手に悪い奴じゃないとは。

 

まぁ良いさ、今日は楽しみな事がある。多少の事なら流そうではないか。

 

 

 

 

「今日はどの子を使おうか」

 

我が基地には所属人形が多い。当然として武器保管所に置いてある銃器もそれに伴う。

 

地下にある射撃場のガンラックには、古今東西、種類も問わずありとあらゆる銃が納められている。

その中から俺が迷いに迷って手に取ったのはこの1品、5.56mmアサルトライフル。

 

「今日は416の気分だな」

 

早速416にホロサイト、ブースターとフォアグリップを装着させてシューティングレンジに向かうと、どうやら先客が居たようだ。

 

1人は俺の教官役を受けてくれたジェリコ。そしてラバロ大尉と彼の案内役である416の3人である。

 

「おはようございます、ラバロ大尉。新しい脚には慣れましたか?」

 

「サイファーか。まだ少し慣れないが杖よりは遥かに良い」

 

そう言って片足を上げて見せる大尉には、人形用の外骨格を転用した物が装備されている。

要はMGSVでヒューイが使っていたヤツだ。

 

再び歩ける事が嬉しいのか、ラバロ大尉の口元が少しだけ緩んでいる。

 

「おはよう指揮官。射撃訓練かしら?使うのは……ふふっ、やっぱり貴方は見る目があるわ。このわたしを選ぶなんて」

 

「あぁ。ドイツ製HK416、14.5インチモデル。完璧で究極のアサルトライフルだな」

 

「えぇ、もちろん!わたしが居れば十分よね!」

 

416が満足気な笑みを浮かべて頷く。

俺も嬉しくなってしまうが口が裂けても言えない事がある。

 

実はM4A1とどっち使おうか迷って居たとは言えない。

 

バレる前に移動しようと、そのままジェリコに促されてシューティングレンジに入ったが……

やはり俺も男だな。もう何度もこのシューティングレンジを使っているが、いつまで経ってもワクワクが止まらない。

 

慣れた手つきでマガジンを抜いて確認、再び差し込みチャージングハンドルを引いた。

 

「指揮官、用意が出来たら合図を」

 

「大丈夫だジェリコ。装填完了、いつでも撃てる」

 

「分かりました。では……」

 

自然とグリップを握る手と肩に力が入る。

これではダメだ、力を抜いてリラックス。

後はターゲットを撃つのみ。

 

「始め!」

 

「ッ!」

 

ジェリコの声に瞬時に動きターゲットドローンにホロサイトの照準を合わせて発砲する。

正しい見出し、正しい引きつけ、正しい頬付け。なるべくターゲットドローンの中央を狙って指切りバースト。

 

ダダダンッ!ダダダンッ!ダダッダンッ!

 

ホロサイト越しにマズルフラッシュが走り、ドローンに命中する。

きっかり30発分を発砲、空になったマガジンをHK416を振って飛ばし、直ぐさまリロード。

 

段々と距離が離れるドローンに向かって発砲を続けた。

そして2マガジンを撃ち切った時に射撃終了のブザーが鳴る。

 

「ふぅ……どうだった?かなり良い点出したと思うが」

 

HK416のチャージングハンドルを引いて薬室を確認、セーフティをかけて銃口を下す。

そしてレンジの外で俺の射撃を見ていた3人に感想を求めた。

 

俺としてはいい線行っていると思うが……はてさて。

 

「完璧じゃないわ」

 

「調子に乗らないでください」

 

「論外だな」

 

416 ジェリコ ラバロ大尉の突然の攻撃が俺を襲った。

 

「お、おぉう……」

 

「なぜターゲットに照準を合わせた後ワンテンポ遅れて発砲するの?私を使うなら完璧にして欲しいわ」

 

「移動目標への命中率が5割から6割、最初の頃からは成長していますがまだまだです。むしろ、これからです」

 

「バースト射撃の指切りを失敗したな?それから正しいリロードを行え。そもそも12ヤードの距離で外すな、必中にしろ」

 

思わずフラつきそうになるのを堪えたが、心の痛みは堪えられそうにない……

しかし鬼教官ジェリコには妥協も手加減も無いのだ、そのまま隣の区画に行くように言われた。

 

シューティングレンジ区画の隣にはもう少し広い空間がある、そこはいわゆるキルハウスになっている。

障害物やキャットウォーク等が設置されていて次の射撃訓練は状況判断とか諸々を鍛えるのだ。

俺はスタート地点に立ってジェリコの合図を待った。

 

『これよりキルハウスでの訓練を始める。赤と青のターゲットドローンが出現するが赤だけを狙え。それでは用意、始め!』

 

スピーカーから聞こえてくる彼女の声を合図にして、HK416を構えキルハウスを進む。

落ち着いて素早く。これを考えながら進むと通路にドローンが立ちはだかる。

 

色は赤、つまり敵だ。

 

「コンタクト!」

 

ターゲットドローンに5.56mm弾を叩き込み撃ち倒す。

できるだけ淀みなく、素早くゴールに向かわなければならない。

 

出現するドローンを撃破しつつ狭い通路を抜ける。次は遮蔽物を使ったシチュエーション。

遮蔽物として置いてあるコンクリートブロックから顔を覗かせると、厄介な事に青いドローンを盾にするように赤いドローンが展開している。

 

『よく狙って撃て!』

 

「言われなくても!」

 

バイタルパートを遮蔽物に隠し、最低限だけ身を出してドローンを撃つ。

 

手ブレのせいで青いドローンまで撃ちましたとなれば、ジェリコに何を言われるか分からない。

最悪手にしている杖でどつかれる。

 

「ターゲット排除!」

 

『キャットウォークに上がって狙撃手を排除しろ!』

 

「了解、前進する!」

 

HK416のスリングに身を通して梯子を登れば、鉄パイプと金網で形成されたキャットウォークが一歩を踏む度に耳障りに鳴る。

 

そのままキルハウス全体を眺められる位置まで移動。

 

プローンポジション、いわゆるうつ伏せになってHK416のブースターを起こした。

数倍に拡大され、一種のスコープようになったホロサイト越しに狙撃手を探す。

 

「スナイパー!」

 

こちらと同じく高台に陣取るダーゲットドローンにレティクルを合わせ、フルからセミオートに切り替え発砲した。

 

そこそこに強い反動を肩で受け止めて、着弾点を修正しつつ速射。

ドローンを倒していく。

 

『スナイパー排除、前進!』

 

撃ち終わった空薬莢に気をつけながらキャットウォークを駆け抜け、梯子に足をかけその足を離した。

両手足を梯子の縁に沿わせるようにして滑り降り、手に若干の摩擦熱を感じながらキルハウスの最終レーンに立つ。

 

キルハウスの最終レーンはCQBレーンとなっていて、障害物から飛び出して来るターゲットを排除しつつ進まなければならない。

 

レーンに足を踏み入れた俺を、赤と青のダーゲットドローンが歓迎する。

 

「コンタクト!」

 

教わった通り、CQB用にHK416を構え直して赤のドローンを排除。

 

反射で撃たないように、しっかりと敵味方の区別を付ける事も忘れない。

 

ターゲット確認。赤、排除。

 

ターゲット確認。青、スルー。

 

ターゲット確認。青、ス……赤に変わりやがった、排除。

 

「弾切れ!セカンダリを使う!」

 

マガジンにも薬室にも銃弾の無いプライマリから手を放して腰のホルスターからセカンダリであるハンドガンを抜いた。

 

こいつはSOCOM Mk.23。

少々どころか結構デカいが、それを補って余りある信頼性と45口径の打撃力。そして12発のマガジン容量が魅力的。

 

CQBレーンは速度が重要視される。そのため一々リロードを行うよりも、セカンダリウェポンに切り換える方が速い。

Mk.23のサイトとLAMの放つレーザーで狙いを付けて撃つ。

5.56mmよりは軽いが、それでも強力な反動を手首で受け止めてレーンを駆けた。

 

『そこで最後だ、室内の敵を掃討しろ。スタングレネードを使え』

 

「了解!」

 

CQBレーン、と言うよりもこのキルハウスのラストは室内戦。

無骨なコンクリートでできた部屋の向こうがゴールとなっている。

 

Mk.23をリロードして、ジェリコの指示に従いスタングレネードを構えた。

と言ってもこれは音が鳴るだけの訓練用グレネードだが。

 

「投擲用意!グレネードを投げる!」

 

訓練用グレネードが入るギリギリの隙間分だけ扉を開けて投げ込んだ。

そしてバンッ!と音が鳴った事を確認し突入。

一般的にスタングレネードの効果時間は約9秒、この制限の中で敵を無力化するのがベスト。これを狙いたい。

 

室内には赤4青2、合わせて6機のターゲットドローンが鎮座……いや、1機のドローンはこちらに接近している。

 

まずはそいつを撃つ、ダブルタップで撃ち込んだ45ACP弾がドローンを撃破判定に持って行く。

そのまま動きを止めること無く連続でドローンを撃った。

 

感覚的に残り1秒。なんとかベストなタイムに収まった事に満足しつつ、Mk.23の銃口を下ろした。

 

「クリア、敵影無し」

 

『戻ってきてください指揮官、反省会を行います』

 

「分かった、今行く」

 

俺は足早にキルハウスを後にして武器庫に装備を返す。

 

そのままジェリコ達と合流した。

 

「あー、どうだった?」

 

シューティングレンジでの酷評が脳裏をよぎり、思わず身構えてしまうが3人の評価は思いのほか普通だった。

 

「完璧からは遠いけど……及第点ね、要は合格よ」

 

「416と同じです。指揮官はこれで満足せずに更に上を目指してください」

 

「そこらの新兵よりは良い動きだ。お前は体に教え込んだ方が良いタイプだな」

 

3人の言葉にほっと胸をなで下ろす。

 

それにしても及第点か、結構いい線行ってたと思ってたんだが……

 

「416、具体的にはどこがダメだった?」

 

「んーそうね」

 

はっきりと及第点と付けてくれた416は、しかし悩むような仕草をすると何やら笑みを浮かべる。

 

そうして彼女は堂々と言ってくれたのだ。

 

「教えない」

 

「……何て?」

 

「教えてあげない。そういう事は自分で考えなさい」

 

確かにそうだ。分からないからと安易に誰かを頼ってはダメだ。

 

俺は彼女達の指揮官なんだ。堂々として自分の力で立たなければならない。

416はそう言っているのか。

 

「これからの指揮官の訓練、全部わたしが見てあげる」

 

「……何て?」

 

「あら?言ったじゃない、及第点だって。だから指揮官の訓練を見て完璧かどうか判断してあげるの。もちろん全てを教えてあげるわ、わたしが指揮官を完璧に育て上げる……そう、わたしが」

 

とんでもない事を言い出した416と、呆れた顔でため息をつくジェリコ。

 

まるで釣りで使う生き餌でも見るような……哀れな者を見る視線を向けるラバロ大尉に、苦笑いで返しておいた。




 「どう?毎回最初に読んでもらって悪いけど」

友「オメーさぁ、このキルハウスの構造ピースウォーカーのマザーベースのだな?」

 「バレたか」
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