GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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あけましておめでとうございます。今年1年が皆様にとって良き1年である事を祈っております。


あけましておめでとう

「えー諸君!あけましておめでとうございます」

 

「「「おめでとうございます」」」

 

「今年もよろしくお願いいたします」

 

「「「お願いいたします」」」

 

本日、無事に年も明け新年である。集まってくれた皆も元気そうだ。

 

我が基地ではレクリエーションの一環として新年会を行っている。無論1人が良い者や親しい者達のみで過ごす者も居るが結構参加してくれている。

 

「みなさーん!おみくじはいかが?新年の運勢を占ってみましょう。ワンコインです!」

 

カリンは稼ぎ時と言わんばかりに商売をしているが……まぁ、毎年のことだ。

 

「あ!指揮官さま、お一ついかがでしょう?お安くしておきますわ」

 

「では1つ」

 

カリンにコインを渡して引いたおみくじを開け……む。

 

「大凶、か」

 

……なんか悪いことでも起きるか?

 

 

 

「まったく、新年から騒々しい。おいサイファー、年明けくらい落ち着いたらどうなんだ?」

 

「何を言ってるんですかラバロ大尉。これでも大人しい物ですよ。本当なら初詣やら何やら、とにかく色々やりたいくらいです」

 

「ジャポネーゼは皆そうなのか?」

 

「えぇ、わりと」

 

だって新年明けたら動いてないと落ち着かないんだ。

 

今だって甘酒を配ってるし。

 

「それよりほら、甘酒どうです?今年のは自信作なんです」

 

底が焦げ付かないよう、弱火でかき混ぜている鍋から甘酒をすくってラバロ大尉に渡す。

 

そう、この甘酒は89式や一〇〇式と作った自家製である。

年明けに配れるよう基地内の大掃除と平行して作ったのだ。

 

もっとも、粥に麹を入れて一定温度でキープすることに一番時間が掛かるのだが、コレをたかが保温と侮るなかれ。

その日の気温、湿度、その他色々な物を考えて時間を決めなければならない。

 

「……独特なドリンクだが美味いな」

 

「使っているのは米と水とコウジカビのみ。栄養満点な飲む点滴ですよ」

 

「カビ、ブルーチーズの様な物か。しかし砂糖を使わずにこの甘さとはな」

 

ラバロ大尉は少しだけ顔を歪めて不思議そうに甘酒を見た、そんな顔が見れて俺は結構嬉しい。

 

こうして作ったのが喜ばれるのは良いことだ。

そうして甘酒を配っていると、華やかな着物を着たAS Valと9A-91がこちらによってくる。

 

「指揮官、あけましておめでとうございます」

 

「あけましておめでとうございます。指揮官、甘酒を3つください」

 

晴れ着を持っている組はこうして晴れ着を着て楽しむのが良いらしいのだ。

別に今は年明けの休暇だし元日だから俺も何も言わない。

 

それに彼女達が楽しそうにはしゃぐのは何物にも代えがたい宝物だからな。

 

「はいはい。甘酒3つな……3つ?シャフトのクマの分か?」

 

「違いますよ、クマの分じゃありません」

 

「私とシャフトと……この子の分です。ほら、出ておいで」

 

そう言った9A-91は優しく誰かに声をかけた。

 

何だ何だと見守って居ると、9A-91の後ろから不安げな顔を覗かせる女の子。

そう、この子は……

 

「エルザ、どうした?9A-91の後ろに隠れて」

 

「うぇっと、その……」

 

「大丈夫よ、頑張って!」

 

何か前も見たことあるな、この光景。

 

そこはかとなくデジャヴを感じていると、意を決したエルザが前に出て来る。

まだ不安そうに9A-91の袴を握りしめているが、そんな彼女の姿は何時もと違った。

 

「おぉ!似合ってるじゃないか、可愛いぞエルザ」

 

「あ、ありがとうございます……///」

 

エルザが来ているのは着物。そう、晴れ着だ。

 

9A-91と同じく青色系の落ち着いた色合いに、蝶があしらわれた振袖袴。

確かに服装は華美とは言えないシンプルな物だが、それが着ているエルザの可愛らしさを引き立てて何とも似合っている。

彼女自体が欧州系の美少女なだけあってその姿は高級な人形の様だ。

 

こんな風にオシャレをするのが初めてで照れているのだろう、モジモジとは恥ずかしそうにしている。

 

「学が無いからこれしか言えないが、似合ってるよ」

 

「あぁ、良かった。朝早くから頑張って着たんです、でも1人では着られなかったから手伝ってもらって……ですよね?」

 

「ふふふ。えぇ、Моя дочь♪」

 

……こりゃロシア語も習った方がいいかね?

 

「シャフト、この後も何か回るのか?」

 

「はい、エルザちゃんにお汁粉を食べさせてあげようって、ヴィーフリとかA-454達と提案して」

 

「随分と可愛がられてるんだなぁ、エルザは」

 

「えぇ、もうすっかり懐かれて。9A-91なんて、Моя дочь……私の娘なんて言っちゃってるんです」

 

そ、そうか。私の娘か……

 

やっばい9A-91がすごい目でこっち見てる、あれは獲物を追い詰めるハンターの眼光だ。

 

ニィっと、三日月型に歪む口が恐ろしい。

 

「指揮官?どうかしました?」

 

「いや!何でも無いぞシャフト!」

 

そんな9A-91の笑顔に感じた薄ら寒さを誤魔化すように、彼女達に甘酒を押しつける。

 

「お汁粉を貰いに行くなら急いだ方が良い。サブリナに食い尽くされる。だからほら、はやくエルザを連れて行ってやりなさい」

 

「むー……分かりました、今はまだいいです。行きましょうエルザちゃん」

 

「はい、ではまた……あちぇーつ」

 

2人仲睦まじく手を繋ぐ9A-91とエルザ。そして生暖かい目で見てくるシャフトを見送る。

 

しかしアチェーツ……父親だったか。

何ともまぁ、本当に何ともまぁ……

 

「ラバロ大尉」

 

「知らん。貴様の惚れた腫れたに俺を巻き込むな」

 

「何かこう……無いんですか?何かこう……何か」

 

「あの娘達とは出会って数ヶ月だ、知るわけが無い。それにだ」

 

そう言った大尉は、俺の胸に飲み終わった甘酒のカップを押し付けてくる。その顔は大尉にしては珍しく口角を上げてニヤついている。

 

「あの娘達の幸せはお前は望み、だろ?」

 

俺は何も言うことは無く、空いているカップにおかわりを注いだ。

 

──────────────

 

私、エルザ・デ・シーカがサイファーさんの手を取ってグリフィンに来てから色々な事があった。

 

最初は怯えていた私をグリフィンの人達はとても歓迎してくれた。

私が困惑していると。

『ワタシ達もそうだったから』と、ナルシスと言う人に言われた。聞いてみたらグリフィンに居る大勢の人が元々敵だったらしい。

 

グリフィンの人達は本当に良くしてくれている。

ラバロと言う人は私を見て辛そうにしていたけれど、それでも心配してくれているのは分かる。

 

けど、私はラバロさんとどこかで会っているのだろうか?

なんだか初めて会った気がしなかった。

 

他にもたくさんの人と出会えた。

 

UMP9さんは『わたしと同じ声だ~!妹ができたみたい!』とはしゃいでいた。

 

GSh-18さんやHS2000さんは義体の副作用が出ない様に治療をしてくれている。

 

スプリングフィールドさんは『いつでも甘えて良いですよ』と優しく抱きしめてくれた。

 

そして9A-91さん。

サイファーさんは私の監視役だって言っていたけれど、いつもそばに居て、私を優しく見守ってくれている人。

温かい……お母さんってこんな感じなのかなと思った人。

 

色んな出会い、色んな思い出。公社では感じられなかった温かい物。

サイファーさんは『感じられるようにエルザが成長した』って言っていたけれど、あんまり実感は無い。

けど、けど私は幸せ。

 

これは作られたエルザじゃない。私の本当の思いなんだ。

 

「……ふふ」

 

「エルザちゃん、どうかしたの?」

 

「私、幸せだなって思って」

 

そう言って9A-91さん……お母さんを見上げると、お母さんは優しく微笑んで撫でてくれた。

 

この温かさはお汁粉の温かさだけじゃない。

 

 

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