このお話を読んでくださっている皆様。今年も更新を頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。
『こちらM16。上り方面を探索しているが見つからない、多分そっちに仕掛けてあると思う。オーバー』
「RO了解、こちらも引き続き捜索するわ。アウト」
夜を迎えたローマの地下鉄。いつもなら騒々しく運行している列車や、チンピラが集まるそこは不気味な程静かである。
理由は簡単、今地下鉄に居るのはグリフィンから派遣された戦術人形達とイタリア警察しか居ないからだ。
辺り一帯は封鎖され、民間人は誰一人として入れない様になっている。
ROは枕木の下、レールの影など死角になりそうな所をピカティニーレールに取り付けたフラッシュライトで照らして確認していく。
隅から隅まで照らし、時には手が汚れるのも厭わずに砂利を払い除けてまで確認するのは生真面目なROらしい。
「RO!あった!見つけたよ!」
「SOPⅡ、本当にあったの?」
「間違いないよ、見て見て!」
まるで仕留めた獲物を見せびらかす様なSOPⅡに「本当に犬では無いだろうか」と思いつつもROは走り寄る。そしてSOPが指し示した場所にフラッシュライトを当てた。
強い光を当てられるそれは、五共和国派が地下鉄に仕掛けられた爆弾。ご丁寧に隣には時限装置と思わしき物が時を刻んでいる。
間違いなく爆発物であると確認したROは、事前にK11に説明された手順に従って凍結処理を行う為にバッグから冷却スプレーを探した。
一見玩具のように簡単な仕掛けに見えても、トラップとはその油断を突いてくる物。
高性能な彼女は爆発物処理も出来なくは無いが、専門家の指示通りにした方が無難である。
「今からK11の指示通り、爆発物の凍結処理を行うわ。SOPⅡ、ちょっと離れ」
「えい!」
「SOPⅡ!?」
SOPⅡの抜き手が爆発物を貫いた。
「な、何やってるのよ!?死ぬ気なの!」
「えぇ〜だってこうした方が早いよ。それにほら!爆発しなかったし良いじゃん」
「そういう問題じゃないの!」
ケラケラと笑って済ますSOPⅡにROはキレた。
SOPⅡは元から少し幼いメンタルではあったがここ数年で輪をかけて幼くなっている気がする。
そうだ、これは指揮官がSOPⅡを甘やかしているからに違いない!
帰ったら少し指揮官ともお話しなければ……最近はあまり構って貰えていないから長めに時間を貰おう。
そんな事を考えるROだった。
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「まったくパダーニャ共め。新年早々から爆弾騒ぎなぞ起こしやがって」
「お疲れ様です、指揮官さま。コーヒーはいかがでしょう?」
「頼むよカリン」
ようやくROへの労い……もとい、ROからのお説教も終わった俺をカリンのコーヒーが出迎えくれた。
本場のイタリアンエスプレッソではあるが……こうも飲んでばかりいると飽きてくるな。偶には茶が飲みたい。
前エルザが入れてくれた紅茶、確かロシアンキャラバンだったか?あれは美味かった。
今度、抹茶とか番茶でも仕入れてみるか?
「それで指揮官さま、国立博物館を警護する様に依頼が来ていますがどうしましょう?」
「国立博物館を爆破するのはブラフだ。だが部隊を派遣しないのは心象が悪いな、適当に部隊を送ろう」
「畏まりましたわ。それで、本命の方に投入する部隊は如何なさいますか?」
原作にあった連続爆破事件の黒幕。諜報班にも裏取りしてもらったが、やはり左派のエンリコが首謀者だった。
北部だか南部だか知らんが仕事を増やすテロリストに過ぎない。他ならぬ飯の種ではあるものの、俺はこう言うなりふり構わぬコミュニストとかアナーキストと言うのが嫌いだ。
しかしエンリコ確保には公社も動くだろう、出来るならばその前に奴を確保したい。今後の事も考えてフランカ・フランコの2人の情報も欲しいからな。
その後はファクトリーに送らず福祉公社に送ってやろうか、着払いで。
「奴の潜伏予想地点は?」
「はい。テヴェレ川の中洲、ティベリーナ島に潜伏すると思われます。ターゲットのシンパが武器を持ち込んで集結している事が確認されていますから、間違い無いかと」
「何時もの様に雑多な小火器と弱小なテロリスト共か。だが油断は出来んな、室内でのCQBに長けた部隊。それとバックアップで狙撃部隊も欲しい……」
「スナイパーが必要になる任務でしょうか?室内戦が主になると思いますけど」
「テロリスト相手なら別に良いんだが、公社が出てくるとなるとウチもそれなりの人員が欲しいからな。あの子達がやられて後悔なんてのはしたくない」
「心配は良いですけど余りやり過ぎないでくださいね。さっきもROさんにSOPⅡを甘やかすな!って怒られてたじゃないですか」
少し呆れ気味に言ってくるカリンに、適当に手を挙げて返答しておく。
だがこれぐらいでやり過ぎな物か。出来るなら彼女達には最高級の装備に最高級のバックアップを付けて、それこそ攻撃ヘリとか奥の手も付けたいくらいなのに。
「指揮官さまは人の心配ばっかりなんですから。少しは休んでくださいな」
「新年の休みは貰ったよ、それに正月だって明けたんだから働かにゃならんだろう?」
「もう!今度のお休みはこっそりお仕事が出来ないようにしますからね!」
「あー分かった分かった、今は作戦に集中しよう。うん」
最近この手の小言が増えて来た気がする。
しかし仕事が出来ないようにするとは何をされるのだろうか?
まさか拘束するとかか?こんな男を縛って喜びそうなのは居な……いや、心当たりは何人か居るな。
寒気がしたような気がするのでカリンのコーヒーを飲んで温まるとしよう。
しかし未来の不安より眼前の脅威だ、先ずはエンリコをどうにかせねばなるまい。
作戦のため、俺は出撃させる7人を呼ぶ事にした。
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あいにくの曇り空が月光を遮り、暗闇が辺りを包む夜のローマ市街、そこでは福祉公社の作戦が始まっていた。
テヴェレ川を挟んでティベリーナ島を見張るのは公安部ローマ支局の職員であるエンツォだ。
彼は青々と残るヒゲの剃り跡を撫でながらジョゼの無線に応える。
望遠鏡越しに自分の娘よりも小さな褐色の女の子がテロリストを絞殺するのを見ると、背筋になんとも言えない不気味さが走った。
「エンツォ。始めちまったぞ」
「かまわん、どうせ爆弾屋は現れん。さっさとエンリコの野郎をとっちめて……ん?」
「どうしたエンツォ?」
「何かが……何かがテヴェレ川を走ってる」
暗闇の中ではあるが、確かに水上を水飛沫を上げてティベリーナ島に向かっている物体をエンツォは見た。
雲の切れ目から覗いた月明かりがアンノウンを照らす。
それは視認性を低めるために黒く塗装された軍用のゾディアックボート。
そのボートには、まるで人形の様に整った顔立ちの少女達が美しい髪をたな引かせている。
「マズいぞジョゼ、あいつら例のPMSCsだ。ボートでティベリーナ島に向かってるぞ」
「グリフィンもエンリコが狙いか。分かった、エンツォは引き続き監視を頼」
エンツォの耳に付けていたヘッドセットタイプの無線機が撃ち抜かれる。
「スナイパーか!」
咄嗟に伏せて身を隠した彼は早鐘を打つ心臓を抑えて撃たれた右耳に手を当てた。
だが不思議と痛みが訪れる事は無い。
当たり前だ、撃たれたのは耳の無線機だけなのだ。
数百メートル先から放たれた308ウィンチェスター弾はローマの夜を切り裂き、エンツォの肌にかすり傷すら付けず、正確にヘッドセットだけを弾いたのだから。
これ程の高度極まる狙撃技術を持つ射手はグリフィンにおいてもごく僅かしか居ない。
そんな彼女は正しくハイエンドでエリートでアーティスト。
鷹を思わせる様な鋭い眼光で、指揮官から渡された愛用のスコープ越しに命を摘む戦場の傍観者。
自身を『殺しのためだけに作られた』と自称するだけあって、彼女の狙撃は一種の芸術の様に美しい。
「ターゲットの撤退を確認。いつも通り、見事な狙撃ですね」
「当たり前でしょ、私の役目は敵を討つことなんだから。これくらい出来て当然よ」
「うふふ。帰ったら指揮官に褒めてもらわないといけませんね」
「な、はぁ!?アイツは何の関係も無いじゃない!」
「では指揮官に褒めてもらわなくても良いんですか?」
「そうは、言ってないし……」
「あらあら」
指揮官の事を出した途端に、冷徹な暗殺者から素直に成れない少女に姿を変えたWA2000。
そんな彼女に、同じくグリフィンのライフル使いであるスプリングフィールドが包容力溢れる姉の様な微笑みを向けた。
彼女達はたった二人の狙撃班。
WA2000は実戦的に仕上げられ、艶一つ無いマットな質感ながら彫刻の様に美しいライフルを。
スプリングフィールドは、最早アンティークと呼ばれるような。されど確かに使い込まれ、数多の激戦をくぐり抜けたライフルを。
各々が分身として刻まれた武器を持ち、ティベリーナ島を見据えた。
「あーもう!こんな仕事さっさと終わらせるんだから!」
「そうですね……ここから先は気合を入れましょう」
その暗殺者と武人の照準からは、誰も逃れられない。
「……ヒルシャー、グリフィンが現れた。それから、エンツォと連絡が取れない」
「もしスナイパーだとしたら屋外はマズいですね、速く屋敷に向かいましょう。奴らの狙いが我々と同じなら尚のことです」
「出来ればやり合いたくは無いが……どうなる事か」
一抹の不安を抱えて、フラテッロ達は突入を開始した。
そして福祉公社組に遅れてティベリーナ島に上陸を果たしたグリフィンの突入部隊もまた、武器を携えて行動を開始。
既に公社組が交戦している正面玄関とは違い、彼女達が居る裏口は比較的静かだ。
突入隊の隊長として任命されたM590が隊員に指示を飛ばす。
「皆さん、敵の主力は迎撃の為に反対側に回っています。その隙を突いて一気に突入、ターゲットのテロリストを確保します。良いですね?」
「大丈夫ですわ、ブリーフィングはバッチリ聞いております。ワタクシ、エリートですから!」
「はい~大丈夫ですよ。皆さん頑張りましょうね、えいえいおー!」
「……本当に大丈夫でしょうか」
若干の不安を抱えはする物の、彼女達は皆共に戦ってきた戦友達だ。やることはキッチリとやってくれるので心配は少ししか要らないだろう。
M590はショットガンを腰に回して、背中に背負うそれを握る。
一見してそれはバールの様な物。しかしバールと呼ぶには些か短く、釘抜きとは反対側に鉄塊が付いていた。
「扉は施錠されて、窓にはバリケード……これを使います」
M590が構えたのはスレッジハンマー。
彼女は10キロを超えるそれを軽々と持ち上げる。
10キロの鉄塊、成人男性がそれを使うだけでも扉を破壊できるガジェットを戦術人形が使えばどうなるか?
「せーの、ふんッ!」
スレッジハンマーは鍵部分だけを破壊するに留まらず、蝶番すらぶっ飛ばして扉を粉々に破砕した。
そうしてぶち破られた扉の破片が哀れにも近くで見張りをしていたテロリストに襲いかかる。
「がぁっ!?な、なんだ!」
飛散した木片が直撃し、もんどり打って倒れ込む彼が次に見たのは凍てつく眼差しでこちらを見下ろす褐色の美女。
そして振り上げられたスレッジハンマー。
「ひッ!?や、やめ!」
「はぁ!」
10キロのスレッジハンマーを戦術人形の出力を用いて叩きつければどうなるのか?
それは火を見るより明らかと言う物。
M590のハードノックを受けたテロリストにとって、迫り来る鉄塊が人生最後の光景となった。
友「なんでエルザはラバロのこと覚えてねーの?」
「だってクラエスの記憶から大尉の事を消しても他の義体が覚えてたら思い出しそうじゃん。だから記憶からされたっていう設定に」
友「オメーなんでそう言うことを説明しないの、書かれないと分からないよ読者は」
「……ッス」