GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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すみません!投稿時間ミスってました!


思い出せ、思い出すな

「その、なんだ。僕達は何をしてるんだろうか」

 

「何って……お茶ですよ。ヒルシャーさん」

 

泣き止んだマキにまた蹴られたり、トリエラの拘束を解いたりとしてトレド通りの裏路地からメインストリートに戻った俺達は少し歩いた先のバールに入る事にした。

 

しかし流石は人気観光地の喫茶店。さっきの人気の無い裏路地と違い人でごった返してる、これならば俺達が話し合いをしても大丈夫だろう。

 

「人間腹が減ってたり寒ければイライラするし殆どが悪い方向に行ってしまう物です。なら美味いコーヒーで暖まれば落ち着いて話し合う事が出来る、そうは思いませんか?」

 

「それはまぁ、分かるが」

 

「なら結構、お互いの誤解やら何やらを話し合いましょう」

 

「さっき銃を向けて来た相手とお茶なんて普通じゃない」

 

「もうジョゼやラウーロ達ともお茶しましたし、普通じゃない事も経験してますから」

 

いきなりボロアパートからフィクションの世界にぶち込まれてるんだ。これくらいが何だと言うのだ。

 

しかしさっきから話しているのは俺とヒルシャーさんだけである。WA2000……マキは少し不機嫌そうに口をへの字に歪めていて。トリエラも俺とマキを警戒してか緊張している。

 

「マキ、機嫌を直してくれ」

 

「なに?私は別に何とも無いわよ」

 

「そうか、うん……ありがとう。あんなに心配してくれて」

 

「うっさいばか。いいから早く終わらせなさいよ」

 

いつもの様にどこかトゲのある言い方ではある物の、やはりさっき慰められた事が尾を引いているのかそっぽを向いてしまう。

しかしまぁ、耳が少しだけ赤くなっているのを見るにいつものツンデレモードなのだろうな。こうでなければ彼女らしくないから問題は無いが。

 

「ほらマキ、これを食べて元気出せ」

 

「……ん、ありがと」

 

トルタカプレーゼなるチョコレートケーキを彼女の口にほり込んで食べさせると、不機嫌そうな顔からコロリと笑顔になった。

普段はツンケンとした態度と殺しの為に生まれてきたと言う彼女ではあるが意外と表情がコロコロ変わる可愛らしい子なのだ。

特に甘いものに目がない。

 

やはり甘味は素晴らしい。

 

「トリエラも食べなさい。子供は遠慮なんてする物じゃないぞ?」

 

「本当にお年寄りみたいな事を言うんですね、そんな考え方をしているから早く歳をとるんですよ?」

 

「はっはっは!乙女よ、今を生きるが良い。だが歳をとるのも悪くは無いぞ」

 

言葉のナイフを使ってくるか……つくづく恐ろしい娘だ。

バカにするような。いや、違うな。バカを見るような呆れた目で見てくるトリエラの姿が何だかおかしくなって笑ってしまう。

 

そう言えばトリエラだけだな、俺を見て怯えないのは。

 

「御生憎様だけど私達は今しかないの。私達がどんな存在かは知ってると思うのだけど」

 

「もちろん知っているさ、知った上で言っている」

 

「そう……最低ね」

 

トリエラの言う事は最もだろう。

義体として体を弄くり回され、明日も分からぬ生き方を強いられている彼女からすれば、能天気に未来を話すなど最低と言われても仕方がない。

トリエラが睨む横で、ヒルシャーさんもあからさまにでは無い物のムッとした顔で見てくる。

本当に彼はトリエラが大切なんだな。

 

いや、今は亡き同僚が守った大切存在と言うだけでは無い。彼にとってトリエラとは忘れ形見であり、自らの過去の象徴とでも言うべき存在か。

 

「そうだ、俺は最低の存在だ。自分のわがままの為に家族を戦場に出し、自分はぬくぬくと後方でふんぞり返っているクズだ。だけどな……クズにはクズなりの考えがある」

 

「考え?」

 

「例え地獄の底の底。阿鼻地獄よりも深き所に堕ちようと、俺はやらなければならない。そのためなら何だってやってやる、手段を選ばず、仏の蜘蛛の糸だって引きちぎって堕ちてやる」

 

そうだ、俺はやらなければならない。

 

俺は何だ?俺は███だ。

違う。

俺は何だ?俺は███だ。

違う。

 

思い出せ、思い出すな。俺は何だ?俺は指揮官だ。

そうだ、俺は指揮官だ。彼女達の指揮官だ!なら何を望む?何を第1に考える?

 

言ったじゃないか。

 

『だが1つ!私の目標を言うなれば、私の望み、私の願い。それは私の部下であり、大切な家族である君達1人1人の幸福と安寧である!』

 

あの時の光景が。あの時の言葉が。

 

『我々は生きねばならない!我々は意思があるからだ!

我々は戦わねばならない!我々は死んでいないからだ!』

 

「サイファー」

 

「ッと……すまない。マキ」

 

思考の沼に落ちていたようだ、それをマキが呼び止めてくれた。

何か力を感じる右手を見みれば彼女の細い指がガッチリと掴んでいる、その理由を考えようとしたがカチャカチャと音を鳴らすコーヒーカップで察せられた。

 

右手が痙攣している。

 

「お見苦しい物を失礼しましたヒルシャーさん」

 

「その……大丈夫なのか?」

 

「ご心配なく、ただの偽性痙攣ですから。学生時代の精神疾患が癖になってしまって……困った物です。まぁ、そんなことはどうでもよろしい。ヒルシャーさん、貴方はなぜ我々を付け狙ったんです?これは貴方の独断だと思うのですが」

 

やっと震えが止まった手でコーヒーを飲みながら問いかけると、ヒルシャーさんも重い口を開けてくれる。

 

トリエラも、ここまで来たら話すしか無いと腹をくくったのか諦めたのか知らんが頬杖をついてケーキを食べ出したのだから横やりの心配はいらない。

 

「僕らはある噂を確かめるため出張に来たんだ。ここナポリで大規模な密輸が行われると」

 

「ナポリで密輸……となると海路ですね。しかしイタリア警察ならまだしも沿岸警備隊が見逃しますか?あそこは海軍の傘下でしょうに」

 

「……沿岸警備隊。いや、海軍はこの事を黙認しているんだ」

 

「軍上層部が反社と仲良しこよし?」

 

ヒルシャーは、やるせない物を飲み込む様にコーヒーを飲む。

絡まった思考をコーヒーのカフェインと苦みが解してくれたのだろう、眉間に皺を寄せながら深い溜息を吐いた。

 

その様子を見るに、どうやらかなり面倒事のようだ。

 

「その通り」

 

「ふざけてます?」

 

「同感だよ」

 

何だか聞いてて疲れてくるな。

こんなバカが考えた様な事が軍隊で起きているのだから。

 

「公社で独自に調査したところ、密輸されているのは武器弾薬がほとんどだと分かった。もっと詳しく調べるために僕らが派遣されて、そして君の姿を見つけたんだ」

 

「なるほど、よくよく運の無い物です。しかし我々グリフィンは密輸などには関わって居ませんよ、むしろ取り締まる側です」

 

「それが本当なら密輸に関わっていそうなのはカモッラ、赤い旅団残党……」

 

「そして五共和国派」

 

そこまで言うと、俺もヒルシャーさんもかなり盛大な溜息を吐いて椅子に深く座り込んだ。

オシャレな椅子が少しだけ軋むほどに。

 

うん、「また」なんだ。済まない。

 

「五共和国派の連中は本当に……」

 

「何が彼らを動かすんだろうか……」

 

FX-05に頼んで美味いテキーラでも教えてもらおうか。

 

五共和国派のしつこさに呆れていると、トルタカプレーゼを食べ終えたマキが声を上げる。

 

「ばっかじゃないの!要はテロリストを全員殺せば良いだけでしょ?何を悩んでんのよ。ヒルシャー、その密輸はいつ行われるのかしら?」

 

「あ、あぁ。集めた情報だと2日後の夜にはルーマニアを出た偽装貨物船が入港するようだ」

 

……よし、決まりだな。

 

「ヒルシャーさん、トリエラ。この後は時間あります?」

 

「何をするつもりなんだ」

 

「部下の力をお見せしようかと」

 

ケータイを取り出して頼れる後方幕僚長にかける。

 

 

俺の運転するフィアットに乗せられたヒルシャーとトリエラのフラテッロは、数時間のドライブを経てグリフィンの基地に連れられてきた。

重厚なゲートをくぐり、フィアットを止める。

 

「トリエラ、分かって居ると思うが」

 

「分かってますよ。サイファーの指示に従う、先制攻撃はしない。ですよね」

 

「あぁ。流石の君も、この状態じゃ……」

 

チラリとヒルシャーが窓越しに車外を見た。そこには、フラテッロ達に向けられる銃口の数々。

そのどれもが大口径で高威力なのだ。

 

生身のヒルシャーはもちろん、義体のトリエラとて掠めただけで手足が吹き飛ぶような対物クラスが鎌首をもたげる様相は、修羅場を潜って来た2人にとっても肝の冷える物だろう。

 

「すみませんヒルシャーさん。ウチの子達には不用意に銃口を向けない様連絡したんですが」

 

「いえ、警戒されて当然です。僕達は明確に味方になったわけではありませんから」

 

言葉を交わす俺達をノック音が遮った。フィアットのウィンドウをノックしているのは、夕陽を浴びて金糸の様なブロンドをたなびかせる凛々しい美女。

 

そんな彼女を、ヒルシャーは思わず凝視している。

 

「あれは……ライヒスアドラー?」

 

その理由は彼女の被るギャリソン帽に輝く鷲のバッチが理由だった。

 

「おぉ、FG42。どうした?」

 

「指揮官と、そしてお客様のお迎えにあがりました。周囲の兵は下がらせ我々の部隊が警護を引き継ぎます」

 

FG42がそう言うと、軍靴を高鳴らした集団がフィアットを囲む。

先ほどと違い銃口は向けられてはいないが、先ほど以上の威圧感をヒルシャーは感じる。

 

車を降りたサイファーとWA2000に促されてフラテッロが見たのはその集団が持つ武器。銃に慣れ親しんで尚、映画や本でしか見たことの無い銃火器の数々にトリエラは驚いた。

 

「StG44、MP40にルガー拳銃?タイムスリップでもした気分だわ」

 

「はっはっは!その気持ちは良く分かるぞトリエラ。な?マキ」

 

「えぇ、本当にね」

 

「……?」

 

不思議そうに小首をかしげるトリエラを置いて、マキは一足先に基地へと向かう。その手には紙袋が大事そうに抱えられている。

 

「じゃあ私は宿舎に戻るわ。その……ネクタイピン、あ……ありがと。それじゃ!」

 

走り去るマキを見て一言つぶやく。

 

「私の家族は可愛いでしょう?ヒルシャーさん」

 

 

「どうぞおかけください。誰か、2人にコーヒーを」

 

「もう入れてあるわ、ドリップコーヒーは時間がかかるもの」

 

促されるままソファに腰を下ろしたヒルシャーさんとトリエラの前にKar98kがコーヒーを置く。

対面に座る2人の緊張が伝わってくるのか、ソーサーの置かれる音がやけに耳に残った。

 

「そう警戒しないでください。こちらから客人として招いたのですから手出しはしませんよ」

 

「そうですか、なら頂こう」

 

恐る恐るといった顔でヒルシャーさんがコーヒーに手をつけた。

 

「まるで狼の巣だ」

 

コーヒーを出してくれたKar98K、周りで控えるMP姉妹やMG姉妹を見た彼はそうつぶやく。

狼か。まぁ彼女達はその程度ではない。グレイプニルだって引きちぎる魔獣だろうさ。

 

「ここはベトン作りのバンカーより強固ですよ。福祉公社どころかイタリア陸軍だって落とせはしないでしょう。我々にはそれだけの戦力がある」

 

「それなら心強いが……本当に手を貸してくれるのか?」

 

「敵に強力な武器が渡ること、それは大切な家族が負傷する原因となり得ます。それを潰すことは大きなメリットになりますよ。それに……」

 

Kar98Kが出してくれたコク深いコーヒーを味わい、フラテッロを見た。

 

「直接では無いとは言え、休日を邪魔しやがったんだ。代償は払ってもらわにゃな……では物資やら何やらを都合させるために仕事をしてきます。お二人には監視を付けますが、どうぞくつろいで行ってください」

 

その3人と言うのがこの親子と1人……。

 

「エルザちゃんがお世話になってました。私は9A-91、この子の母です。よろしくお願いしますね」

 

「トリエラ、ヒルシャーさん。久しぶり」

 

「変わりはないようだな、ヒルシャー」

 

「……え?は、え?エルザよね?」

 

「ラバロさん!?何がどうなって……」

 

公社で見た事もないニコニコとした笑顔で手を繋ぐエルザに始末されたと思っていたラバロ大尉。

 

2人は理解が追いつかなかった。




友「トリエラとヒルシャーってこんなのか?」
「個人的に書きにくいんだよこの2人……」
友「はえー、がんば」
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