このお話を読んでくださっている皆様
大変申し訳ないのですが私の都合により次回の更新が大幅に遅れてしまいます。
何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。
「リロード!」
「416、俺がカバーする!」
遮蔽物の少ないホテルの廊下、押し寄せる五共和国派のテロリスト共は倒しても倒しても湧いてくるのだ。
俺はリロードに入った416のカバーのため、彼女と入れ替わるように飛び出し撃ち。5.56mm弾を奴らの頭に叩き込んでやる。
「指揮官、どうするの?」
「ここを進んだ先にエレベーターがある。そこのシャフトを下って1階に出るぞ」
「了解!閃光弾いっくよー!」
9は話を聞き終えると素早くスタングレネードを投擲、爆音と閃光が敵集団を包み無防備な状態を作り出す。
あとは訓練と強化で培った技術を頼りに404とヘンリエッタを連れ突撃、効果時間の9秒で敵陣を突破。
続け様に45がスモークグレネードで煙幕を展開し俺達と五共和国派を分断してくれた。
その隙を無駄に終わらせる程馬鹿ではない。ヘンリエッタや404小隊が敵を蹴散らす中、俺はアサルトライフルから背負っていたフーリガンツールに持ち替える。
そしてバール状の切っ先をエレベーターの扉にねじ込み強引に開け放った。
エレベーターシャフトを覗き込むと、思わずクラッときてしまいそうな程の高低差だが今からここを降りなくてはならないのだ。
「40、先行して安全の確保。その後は2人づつ降下だ」
「任されて!」
取り出したデバイスをエレベーターのワイヤーに取り付けた40が降下。
「次、9と45!」
「行くわよ9」
「りょーかい!」
2人はそれぞれスモークとスタンを投擲してから降下。
「416、G11行け!」
「何でよ!指揮官を先に」
「416、指揮官の命令だよ。従わないと」
G11に諭された416は八つ当たり気味にスモーク越しの共和国派にアサルトライフルを掃射した後、心配の目を向けて降下。
「ヘンリエッタ、俺達も降下する。デバイスの使い方は分かるな?」
「はい、大丈夫です。416さんに教えてもらってます」
「なら結構だ、よぉし行くぞ!」
ヘンリエッタがシャフトに向かうのを確認した俺は416と同じようにライフルを掃射、キッカリ30発を撃ち切った所でシャフト内のワイヤーに飛びつく。
抵抗が無くなったら奴らも仕掛けてくるだろう。
だから安全ピンを抜いたグレネードを"置いて"おいた。
「降下!」
「降下!」
ヘンリエッタに続いて俺も降下。
抵抗が止んだのを感じ取ったのか、エレベーターシャフトに向かって来る騒々しい足音と怒声。
それら全てを爆音が掻き消した。
「爆発……サイファーさんがやったんですか?」
「あぁ、お土産グレネードは上手くいったみたいだ」
降下する前に置いたM67グレネードは定められた通りに内包された184gのコンポジットBを起爆、無数の破片でテロリストに襲いかかったようだ。
エレベーターシャフトに爆破の勢いで武器や……考えたくも無いが赤黒い何かも飛び込んでくる。
「あんな風に死ぬのはゴメンだな」
エレベーターシャフトの途中に引っかかった、ズタボロの共和国派を見てそう思うのだった。
長いシャフトを降り、エレベーターの天井と扉をぶち破って到着したのは高級ホテルの1階。そのメインホールとでも言うべき場所。
どうやら大多数の敵は銃撃戦のあった最上階に向かって居たようで、メインホールには先に降下した404小隊と制圧さた数人の射殺体が居るのみだ。
「ん、指揮官。全部片付けといたよ」
「さすがだG11」
「んへへへ……」
によによとはにかむG11、そんなG11を小突く416はさておいて俺達は進まねばならない。
「すまないジョゼ、派手にドンパチやっちまった。回収地点を変更する」
『爆音はこちらでも聞こえた。分かった、回収地点は中庭を抜けた裏門にする』
「有事の際は俺達グリフィンの部隊がホテル周辺を封鎖する手筈になっているから、警察もカラビニエリも足止めできるハズだ。ゆっくり待っててくれ」
しっかりとHK416をリロードし、漂う死の臭いを物ともせずメインホールから中庭へと続く扉を蹴破り進む。
そこは整えられた草花が茂り、満天の星空が夜を照らしていた。
「少々デカいアクシデントはあったが何とか無事にホットゾーンを抜けられそうだ」
「グレネードを2つも使っといて少々じゃ無いわよ。帰ったらわたしがしっかりと、みっちりと訓練を見てあげるわ。完璧になるまでね」
「ははは……お手柔らかに頼むぞ」
あーあ、帰りたくなくなりそう。
なんだかすんごい顔をしている416から顔をそらしたが俺は悪くないだろう。
「あの……サイファーさん、私」
「どうしたヘンリエッタ」
「ごめんなさい、私がちゃんと殺せなかったから……」
そう言いP90を抱きしめて俯くヘンリエッタ。
あぁ本当に、やるせない。
子供の殺しを肯定しないといけないとはな。
「何を言ってるんだ。ヘンリエッタは上手くやってたさ、だろジョゼ?」
『そうだね。ヘンリエッタは悪くない、悪いのはサイファーだ』
「そうバッサリ言われると傷つくがな。まぁほら、ジョゼもそう言ってるんだし自分を責めちゃいけないよ」
「ありがとうございます。サイファーさん」
ヘンリエッタはクスリと笑ってお礼を言ってくれる。
あぁ、いつになれば終わるのだろうか。
いつになれば来るのだろうか。彼女達が殺しなどせず、こうして年相応に笑える日が。
『……なッ!?マズいぞサイファー!さっきヘンリエッタが殺したヴェロッキオは身代わりだ!』
「はぁ!?福祉公社の情報部は何してた、身代わりなんて聞いてないぞ!」
『さっきヴェロッキオ本人の通信を傍受した。他の部屋に潜んでたんだ』
「分かった、ウチの部隊に後を追わせる。俺達はこのまま中庭を抜けてそっちと合流」
「……今ならまだ間に合います!戻って仕留めます!」
「あ、待ちなさいヘンリエッタ!」
45の静止を振り切ってヘンリエッタは元来た道を駆け出して行った。
俺達も後を追おうとした瞬間、40の傍に銃弾が飛来。
小隊と共に咄嗟に遮蔽物に身を隠す。
「あっぶな!」
「別働隊も福祉公社からの情報には無かったぞ!大丈夫か40」
「あたいは大丈夫、それよりもヘンリエッタを追いかけないと」
「そうだな……やるしかないか、俺と416とG11でヘンリエッタの援護に向かう。3人は退路を確保してくれ」
念の為手にしたHK416に弾が込められているかを確認。
グレネードは品切れだが行ける。
いや、やるしかない。
「わたし達が援護するわ、行って指揮官!」
「スマン45。416、G11行くぞ!」
「「了解」」
45口径、9mm、40S&Wの弾幕は増援として現れた共和国派を黙らせるのに十分だった。
UMP三姉妹の援護がある内に中庭を突っ切りメインホールに辿り着くと、遮蔽物に身を隠すヘンリエッタが居た。
そして厄介なことに敵もだ。
俺と416は銃弾を掻い潜りヘンリエッタの元へ辿り着く。
「何やってるのよアンタ!死ぬ気なの!?」
「でも……こうしないと逃げられて!」
「416もヘンリエッタも落ち着け。いいかヘンリエッタ、確かにターゲットのヴェロッキオは仕留めなければならない。でもそれだけじゃダメなんだ」
ヘンリエッタには銃弾飛び交う戦場で絶対にあってはならない興奮と緊張が顔に表れている。
それは最悪死を招く、そうジェリコに教わった。なんとかして宥めなければならない。
「ヘンリエッタも俺達も、使い捨ての駒じゃない。ちゃんと待ってる人の所に帰らないといけない。分かるな?」
「……はい」
「ジョゼはヘンリエッタが殉職しても平気な人かね?」
「違います!ジョゼさんは優しい人です!」
「そうだろう?ジョゼはヘンリエッタが傷ついたり、帰ってこなければ絶対に悲しむ。だからジョゼを悲しませないように生きて帰らないとな」
「はい!」
よし、良い返事だ。
そう思ってG41やSOPにしてやるようにワシャワシャと撫でてやると、わっ!と可愛らしい声を出した。
「ちょっとぉ!指揮官とヘンリエッタも手伝ってよぉ!」
「口の前に手を動かしなさい!」
2人だけに迎撃を任せるわけにはいかない。
多少落ち着いて本調子が出てきたヘンリエッタと目を合わせる。
不思議とグリップを握る手に力が入った。
「G11、ヴェロッキオはどこだ」
「遮蔽物に隠れてる。ねぇ、416のグレネードランチャーで吹っ飛ばしてよ」
「もとはスニーキングミッションだったんだからM320は持ってきて無いわよ!」
「こうなりゃ突っ込む方が早いか……行くぞ416」
「ッ!待ちなさい!」
416の細い腕が俺の首根っこを掴み引きずり倒してきた。
背中に響く僅かな痛みと彼女の視線、果たして堪えているのはどちらか。
「大丈夫だ416。本物の指揮官としての記録も、君達の戦闘ログも"インストール"してる」
「……死んだら承知しないから」
本当に渋々と言った表情で起き上がらせてくれた416に背を叩かれる。
インストールがどう言う事か分かっていないのはヘンリエッタだけ。
俺の頭の中には体験したことのない戦場、使った覚えの無い銃火器の数々、習っても無い指揮の方法がある。
様々な存在しない記憶が頭の中に、経験したことの無い経験として存在するのだ。
これこそがK11のファクトリーでの人体実験の成果。
限定的な洗脳により被験者の自我を保ったまま記憶を繋げ、経験を強制的に積ませる。
彼女達戦術人形で言うところの作戦報告書や急速成長ディスクの様な物。
他者の記憶、他者の経験。それをインストールするだけで良いのだから手軽な物だ。
もっとも、バイオニクス サイコトロニクスに明るいスタッフでもかなりの数の人体実験を繰り返してしまった上、副作用やら何やらも偶に出てしまうが……まぁ、いいだろう。
頭がおかしくなるのなんて経験済みだからな。
「指揮官、突撃のタイミングはわたしが指示するわ。G11、ヘンリエッタは援護を」
「ん、了解」
「は、はい!」
銃弾が止んだ時、その時が……突撃の時。
「MOVE!」
お互いにHK416を握りしめ遮蔽物から飛び出し駆ける。
意識を向けるのは前方、視界の範囲内のみ。それ以外はG11とヘンリエッタ、そして416を信じて気にしない。
慌ててリロードを終えようとする共和国派のテロリストを416と同じ姿勢、同じ射撃タイミングで無力化。
視界外の416が、彼女が何を狙っているか、次に何をするか手に取るように分かる。分かってしまう。
今の俺は彼女でわたしだ。完璧と同じなら、それもまた完璧と言う事だろうか。
「「セカンダリ!」」
弾切れのアサルトライフルをスリングを介して下げ、同じタイミングでハンドガンを抜いた。
その一瞬の無防備さえ晒す事に躊躇いは無い。
なぜなら俺達の後ろには頼れるスナイパーと義体少女が居るから。
G11の4.73mmケースレス弾とP90の5.7mm弾が隙を埋める様に的確に援護。
俺はSOCOMMk23に、彼女はHK45に持ち替えて止まらず駆ける。
「く、来るな!来るな来るな来るなぁぁぁあ!!」
追い詰められた哀れな男、ヴェロッキオ大佐は半狂乱になりハンドガンを向けてくる。だが撃たれることは無い。
416の放つ45口径弾がヴェロッキオの指を吹き飛ばす。
奴の手から千切れ飛ぶ指とこぼれ落ちるハンドガン、スローモーションの視界の中俺もSOCOMを発砲。
球垂れも起きない程の至近距離を真っ直ぐ突き進んだ弾丸は頭を撃ち抜いた。
「グッドキル」
「皆のおかげだよ、416」
崩れ落ちるヴェロッキオに416が追加で銃弾を叩き込み確実に息の根を止める。
血と硝煙漂うホテルのメインホールで動くのは俺達だけ。
溜息と共にMk23を下げた。
「ジョゼ、ヴェロッキオを殺った。今度は間違いない」
『分かった。もうそのホテルに動きは無い、裏口の回収地点で待ってる』
「了解」
無線を切ってUMP三姉妹と合流しようと歩みを進める。
ふらつく足取り、白に染まる視界。
よろけを堪えている俺を416がすかさず支えてくれた。
「無茶しないで、歩ける?」
「ありがとう。大丈夫、少しフラついただけだ」
「そう……無理なら言いなさいよね」
頭を振って意識を戻す。
基地に戻ったらHS2000かパラデウス組のグレイに頭痛薬を出してもらおう。
「サイファーさん」
「どうしたヘンリエッタ?どこか負傷したのか?」
「違います。サイファーさんはさっき言ってましたよね、生きて帰らないとって。だからサイファーさんも無茶したらダメです!サイファーさんが死んだら、きっとジョゼさんも悲しむと思いますから……」
言いにくそうに目を伏せたヘンリエッタを、さっきと同じように撫でてやる。
わっ!と可愛らしい声を出す彼女に俺はどこか心を洗われた様な……そんな気がした。
この子の真っ直ぐで歪んだ瞳に、想いに、ジョゼも狂わされたのだろうか。
「そうだな、こんな無茶はやる物じゃないな。さぁ帰ろう、待ってる人の所に」
「はい!」
「ん、帰ろ帰ろ。働いたから眠い……」
「あんたホントに変わんないわね」
あぁ、帰ろう。しっかりと生きて。
HK416
10インチバレルに換装したCQB仕様。
トリガーを引く度、敵を永遠の闇に沈める。
彼女の名を決して間違えてはならない。
彼女は彼女なのだから。
Mk23
純正LAMとサプレッサーを備えた高級品。
消音性と打撃力を備えた攻撃は、致命の一撃となる。
消音のヴェールが隠すのは銃声だけでは無い。
命の音もまた、死の中へ隠してしまうのだ。
フーリガンツール
バールとピッケルを兼ね備えたごく普通のブリーチングツール。
ある人形は言った。
こんな物を振り回すなど野蛮だ、我々は原始人ではないのだからC4とテルミットを使うべきだと。