GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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ようやく公社組が登場です。

少しですが……


グリフィン

───────ま

 

──指──ま!

 

指揮─さ─!

 

「指揮官さま!」

 

「おう!?」

 

カリンの声で飛び起きた俺は、どうやらいつの間にか寝落ちしていたらしい。時計を見れば深夜を過ぎ始めた頃だ。

 

まったく情けない。作戦が始まれば、前線で戦えない俺に唯一出来ることは彼女達を待つ事だと言うのに……

意識をはっきりさせようと既に冷えきったコーヒーを飲み干す。

 

あぁ苦い、この数年のように苦いコーヒーだ。

 

あの時。転移などと訳の分からない現象に巻き込まれ、拙い演説を披露したあの日から早数年。

当時は偵察隊の報告一つ一つに一喜一憂したものだ。

 

「指揮官さま。少しうなされていましたが大丈夫ですか?」

 

「ん、あぁ……懐かしい夢を見ていた」

 

「懐かしい夢ですか?」

 

グリフィン 鉄血 パラデウス。いずれの勢力も存在が確認できず。また、コーラップス液やそれに関連するE.L.I.D等も確認できず。

 

付近に民間人多数、殆どがヨーロッパ系である。

 

現地通貨がリラであり、使用言語はイタリア語である。

 

偵察隊が入手した新聞、傍受したラジオニュースによればここは1990年代のイタリアである。

 

そして基地の宿舎からヘンリエッタ以下リコ トリエラ クラエス アンジェリカの5名が行方不明……

 

そう、何の因果かドールズフロントラインの登場人物を伴ってGUNSLINGER GIRLの世界に来るなどと馬鹿げた話になったワケだ。

 

それから俺達はカモッラなどの犯罪組織を襲撃して資金を集め、電子戦に強いAK-12やRPK-16達に頼んで全員分の身分証を偽装してもらい新たな組織を作った。

 

組織とはただの集まりの事では無い。仲間の待つ場所、自分達の帰る場所……こと異世界からの訪問者である俺達にとっては、組織とは家である。

帰る場所があると言う事はそれだけで力になれる。

 

PMSCs グリフィン

 

これが俺達の作った組織、居場所、そして俺達の家。

その目的には彼女達の幸福と安寧、無論それにはヘンリエッタ達も含まれる。

 

「指揮官さま、通信です」

 

「繋いでくれ」

 

今回の作戦はイタリア各地に存在する共和国派アジトの同時襲撃作戦。雑多なテロリスト共に百戦錬磨の彼女達が失敗するとは思えないが……やはり心配にはなる。せめて無事であって欲しい物だ。

 

そんな事を考えながら無線機からのCALLに応えると、出撃してくれた404小隊の隊長。UMP45の声が聞こえてくる。

 

『指揮官、聞こえる?作戦は成功、損害無し。これから帰投するわ』

 

「お疲れ様45。君達404小隊が1番早く仕事を終えたよ」

 

『あらそう?416が喜ぶわ。彼女、指揮官にお熱だから役に立てて嬉しいはずよ』

 

「そいつは嬉しいな、帰りも気をつけてな」

 

ふぅ……とりあえず404には損害が無くて良かった。我が基地には修復施設と資材ががあるとはいえ、傷付いた彼女達はなるべく見たくは無い。

 

 

俺は俺が嫌いだ。福祉公社の連中よりもな。

アイツらのやっている事は外道ではあるし、復讐がしたいなら自分でやれとは考えるが、フラテッロの皆々様は現場に出張って戦っていた。

 

それに比べれば、皆に守られて安全な場所から指示を飛ばす俺はド外道であるだろう。

 

「指揮官さま。AR小隊や他の小隊からも続々と作戦成功との報告が届いています」

 

「そうか、何か報告はあるか?誰か負傷したか?」

 

「マカロフ小隊のAK-47が数発被弾、報復として共和国派の拠点を爆破したと。それからAR小隊とハンター隊が捕虜を確保したと報告が」

 

「よし、AR小隊とハンター隊は良くやった。AK-47はまぁ……マカロフが叱ってくれるだろう。警官隊が動く前に帰還してくれ」

 

負傷1名、大破無し……どっと疲れに襲われ椅子に体を預けそうになるが、何とか堪えて姿勢を正す。

最後まで油断してはいけない、彼女達の指揮官としてしっかりせねば。ジェリコからもどやされてしまう。

 

「ふふふ、指揮官さま。作戦も終わりましたし、後のことは私でもできますから行っても大丈夫ですよ」

 

「……出迎えに行きたいのバレてたか。ではお言葉に甘えるとしよう、すまないカリン」

 

「こういう時はありがとうと言ってくださいな、指揮官さま」

 

「ありがとうカリン。後で君の所で何か買わせてもらうよ」

 

「本当ですか!さすが指揮官さま太っ腹ですわ!」

 

とてもよく出来た後方幕僚のカリンに感謝して司令室を出る、カリンには本当に感謝している。

あの日から今日まで支えてくれたかけがえのない家族だ、いや……思えばドルフロのサービス開始から支えてくれているのか。本当にありがとう、カリン。

 

それからすれ違う彼女達に敬礼を返しつつ格納庫で待っていると、バンタイプの車が入ってくる。

その荷台からぞろぞろと出てきたのはAR小隊。

 

その中の1人、M16A1が手を振って歩み寄って来た。

 

「よぉ、指揮官。どうだい?これから1杯程付き合っちゃくれないか?」

 

「お帰りM16、そいつはいいな。是非とも付き合わせてくれ」

 

「もう!M16姉さんも指揮官も、報告書の提出が先ですよ」

 

「そう言うなよM4。指揮官と私はジャックダニエルを愛する同胞としてだな……」

 

M16とM4、この光景を見ているとどっちが姉だか分からんな。

しかし数年を共にしても未だに嬉しい物だ。

彼女達がこうして笑って幸せに暮らしているのは。

 

……このままGUNSLINGER GIRLから、どるふろ癒し編にならないか?

 

そんな事を考えて居ると横っ腹に何かが突っ込んできた。何とか受身を取ってみるものの堪えきれずに押し倒される。

 

いつもの事ではあるがやっぱり痛いな……

犯人は分かっている、M4SOPMODⅡだ。

 

「指揮官、帰ってきたよ!抱っこ抱っこ!」

 

「ははは!痛いじゃないかSOP、まったくコイツめ!」

 

わしゃわしゃと頭を撫でくりまわしてやるとキャッキャと胸の上でSOPがはしゃぎ回る。

その可愛らしい仕草とは裏腹にベッタリと返り血が顔に付いていることは気にしない、してはいけない。

 

まるで犬とじゃれあう様にSOPを抱っこしていると、ここ数年で慣れたのか表情1つ変えることなくAR-15とROが来た。

 

「AR-15、RO。任務完了ご苦労だった。無事で嬉しいよ」

 

「ありがとうございます指揮官。これくらいの任務でしたら簡単な物ですよ」

 

「えぇ。どちらかと言うと、ターゲットを皆殺しにしようとするSOPⅡを止める方が大変でした」

 

SOPを見ればぷいと視線をそらされてしまう。その犬のような仕草に許しそうになるが、お灸を据えるのは後でいいだろう。

今は彼女達を休ませたい。

 

そうこうしていると、基地の格納庫に続々とバンタイプの車が停車し人が降りてくる。

全員帰還できて何よりである。負傷と聞いていたAK-47も、今は腕の傷よりマカロフの叱責の方が辛そうだ。

 

「おぉハンター、おかえり」

 

「ただいまだ指揮官。しかし弱すぎるぞ、やはり生身の人間ごときでは狩りの獲物は務まらないな」

 

そう言ってハンターは、バンの荷台からうめき声を出す哀れな男を1人投げ出して来た。

片腕は曲がってはいけない方向に曲がっていて、男の頭に被せられた袋には赤黒い血が滲んでいる。

 

痛そうとは思うがそれ以上の感情は無い。せいぜいが電子戦では得られない、有益な情報を吐いてくれと願うばかりである。

 

「よし、生け捕りはイージスに運ばせよう。皆よく頑張ってくれた、次の作戦までゆっくり休んでくれ」

 

そうして各々が返事を返して宿舎に戻って行く中、突如として何者かに背後から抱きしめられた。白魚のような美しい指が俺の顔に触れる。

 

目、鼻、口と一つ一つのパーツを愛おしげに撫でる指は、そのまま顎をそっと撫でると首を絞めるように手をあてがってきた。

こんな事をする者に心当たりがあり過ぎるが……彼女だろう。

 

「おかえり、416」

 

「指揮官……あいつらと随分仲良さそうにしてたじゃない……わたしがいればそれで十分じゃないの?ねぇ?」

 

あいつら……とは考えなくても分かる、AR小隊だ。大方さっきのM16とのやり取りを見られたのだろう。

彼女の手を優しく握って振り返りれば、何とも言えない瞳をした416と向き合うことになる。

 

そのままジッと見つめ合う。すると、先に折れた416が申し訳なさそうに顔を伏せてか細い声を出した。

 

「ごめんなさい……その……」

 

「その感情をAR小隊にぶつけないのなら構わんさ。俺達は家族だ、言いたい事はストレートに言ってくれた方が嬉しい」

 

「ありがとう……指揮官」

 

「おう」

 

サラサラとした髪にそっと手を添えてやると、気持ち良さそうに目を閉じて頭を預けてくる416。

初めは初対面の彼女達に向けられている見覚えの無い好意や視線に恐怖していたものだ。

 

だが時間をかけて彼女達を知れば知る程に、向かられる好意が嬉しくなった。

ゲームのキャラクターとしてではなく、1人の人物として愛するようになった。

 

「俺は416のそう言う表情も、感情も、全て引っ括めて好きだ」

 

「……あなたのその言葉、わたしだけの言葉なら良かった」

 

「俺は皆の指揮官だ、1人だけ贔屓ってのはできんよ。皆を愛してる」

 

「女の敵ね」

 

「どーせ死ぬのならベッドの上で死ぬか、君達に殺されたい。撃ちたくなったら撃ってくれ」

 

俺にそんな上等な死に方ができるかね?416を撫でながらそんな事を思う。

 

ヘンリエッタ達を助けたい、せめて全員笑って死なせてやりたい。そんな俺の我儘に付き合わせている彼女達のため、俺は出来ることを出来る限りしよう。

 

そんな事を思う夜だ。

 

──────────────

 

福祉公社の会議室、そこでは今まさに会議が難航していた。

険しい顔をしてテーブルを囲む面々の前にはビニールに包まれた銃弾や惨殺された五共和国派の写真が並べられている。

 

重苦しい空気の中、ジャン・クローチェが口を開いた。

 

「数日前、二課が張っていた共和国派のネストが何者かに襲撃された。生存者も目撃者も無しだ」

 

「軍、もしくはカラビニエリの仕業ですか?」

 

「いや、どちらも動いた形跡は無い」

 

真面目なドイツ人らしくパリッとしたシワひとつ無いスーツとは対照的に、眉間に皺を寄せて写真を睨むのはヴィクトル・ヒルシャー。

 

「使用された弾薬は9mmパラベラムから7.62×39mmまで様々……特に気になるのはこれだ、9×39mm弾。調べた所、使用された銃は最新式のロシア製特殊部隊用ライフル。9A-91と思われるそうだ」

 

「ロシアの特殊部隊、まさかスペツナズやアルファ部隊が?」

 

「ジョゼ、イタリアのテロリスト相手にロシアが手を出すとは思えない。だが未知の相手である事は確かだ、これを見ろ。その現場からは薬莢が見つからなかったそうだ」

 

実の兄であるジャンに投げ渡された写真を受け取ったジョゼッフォ・クローチェは、それをまじまじと見つめる。

 

血溜まりに沈む共和国派のテロリストの死体、撃たれたと思われる場所には通常の銃弾ではありえないほど黒く焦げて炭化していた。

 

「そして死体からも、何も見つからなかった。技術部からはレーザーの様な光学兵器を使ったとしか考えようがないらしい」

 

「そんな馬鹿な!個人携行可能な光学兵器が実用化されているなんて。いや、なにかの実地試験のために共和国派のネストを襲ったのか?」

 

疑問を解消しようとする度に新たな疑問が現れる。最新式の特殊部隊用ライフル、前代未聞の光学兵器。情報の波がゆっくりと、しかし確実に脳のリソースを消耗させた。

 

会議室に虚しく響く、誰かのため息に対して誰も咎めることは無い。いや出来ない。

 

「問題は共和国派だけじゃない。ラバロを襲撃した新興企業の傭兵会社……グリフィンだったか?あれはどうなった」

 

「ここ数年で動きが活発になって来ている。数週間前にはロシア製のガンシップを購入したと広告を出しているよ」

 

ヒルシャーの返答を聞いたマルコー・トーニは新たな疑問が追加された事に顔を顰めて悩ましげに腕を組む。

 

このままでは埒が明かない。今はすべき事はまだあるのだ。

そんな思いを胸にロレンツォ課長はパイプを吹かして決定を下した。

 

「例の傭兵会社にはジャン リコ組を向かわせる。他の者は引き続き共和国派の対処に当たってくれ」

 

暗闇の中で蠢いていた何かが顔を出そうとしている。そんな思いが彼らの頭をよぎった。

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