GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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コラボイベントの時に何も考えずSG MG部隊を突撃させてピノッキオに切り刻まれた思い出


覚悟

暗く、深い闇。

淡い月光だけが照らす夜に福祉公社の職員と義体のリコとトリエラ、そして2人の担当官が居る。

そんな夜の中、グリフィンから来た鉄血の部隊も福祉公社と同じ様にクリスティアーノの潜伏する屋敷を囲んだ。

 

その部隊長のエクスキューショナーは漆黒のコートと枯れ羽の付いた帽子を身にまとい、その機械腕を鳴らしていた。

 

「良い夜だ。匂い立つなぁ、獣狩りの夜だ」

 

そんな彼女を見た福祉公社の面々は思った。

何だかとんでもないのが来たぞ!と。

 

ジャンはすでに怒りのボルテージを上昇させながらエクスキューショナーに詰め寄る。

 

「今回の作戦は福祉公社だけで行う。部外者は帰ってもらおうか」

 

「あぁ?」

 

高身長なジャンをもってしても少し首を傾けなければならない程大柄なエクスキューショナー。

彼女はジャンの言葉に返答する代わりに、その身の丈を超えるような可変式の大鎌を地面に突き立てた。

 

「なんでオレ様がお前の言うことを聞かないといけない?」

 

「……なんだと」

 

「オレ様は指揮官の命令でここに居る。なんで指揮官でもない、只の人間に指図されないといけないんだ?」

 

嘲るでも、怒るでもない。至極当然の事を言っている様なエクスキューショナーの態度が怒れるジャンの炎に油を注ぐ。

 

修羅場を潜ってきたヒルシャー、フェッロでさえ思わずひるみそうになる怒気を軽く受け流し、エクスキューショナーは異形な機械腕を威嚇するように鳴らした。

 

「余り調子に乗るなよ人間。オレ達が大人しいのは指揮官のためだ、アイツに許可さえ貰えれば貴様らの臓物を引きずり出して、リコ達を取り戻すってのによ」

 

「リコを取り戻すだと?」

 

「あぁそうさ。お前をブッ殺した後でな」

 

そのエクスキューショナーの言葉にいち早く動いたのはリコだ。

リコは担当官に危害が加えられる可能性を感じ、素早く2人の間に割って入るとエクスキューショナーに銃口を向けた、向けられてはいるが震えている。

 

それは死を纏うエクスキューショナーの前に割り込んだから。

 

「リコ」

 

エクスキューショナーはその銃口とリコの顔に目をやり、少しだけ悲しそうに顔を歪める。そしてリコを刺激しないようにゆっくりと銃を掴んだ。

 

「そんな顔すんなよリコ。オレ達は仲間だろ?」

 

「……ジャンさんに酷いことを言う人は仲間じゃありません」

 

「そうか。そうか、そうか……フッフフフ!アハハハ!あーそうだ、そうだった!リコはそう言うヤツだったなぁ」

 

懐かしむ様に笑い声を上げる彼女は危険を感じさせる程に美しく、そして神秘的だ。

蒼き月光をその一身に受け、月そのものの様に輝くエクスキューショナー。

ヒルシャーやトリエラ達には、それは人という括りを、この世に存在する者の括りを超越した上位的な何かにすら感じられた。

 

「まぁ、今回は非常時を除き手出し無用と指揮官から言われてるからな。これはトリエラが乗り越えるべき試練だ、だからトリエラ……手出しをさせてくれるなよ?」

 

くつくつとどこか不気味に感じられる笑い。

 

エクスキューショナーはただ闇に中に佇むだけだった。

 

 

───────────────────

 

 

「おじさんを助けに来たんだ!」

 

共和国派内でも凄腕の殺し屋ピノッキオ、彼にとってクリスティアーノは只のクライエントと言う関係では無かった。

幼少期に暗く冷たい穴倉から救ってくれた人。

何も知らず、何も無い自分に暖かさを、愛情を注いでくれた人。

 

自分を人として生まれ変わらせた人。

 

そんな恩人が共和国派内部の、汚い責任の押し付け合いで政府に売られた。それはピノッキオにとって我慢ならないことであった。

 

「助け?そんな物いらん」

 

息を切らし、フランカのワイン農園から飛んできたピノッキオにクリスティアーノはあっけらかんと言い放つ。

彼に目には諦めが巣食っていた。

 

「この屋敷の殆どの人間に暇をやった。最低限の人間しか居らん」

 

「どうして!?どうしておじさんは逃げないんです!いつ警察が来るか分からないのに!」

 

「身の振りようは自分で決めさせろ。そろそろ潮時だ、誰かが責任を取らねばならん。この国を愛し、この国のためにと活動をしてきたが……やり方を間違えたらしい」

 

達観にも似た諦めを暗に伝えるクリスティアーノに、ピノッキオも負けじと反抗する。

 

「ピノッキオ、どうしてそんなに聞き分けが悪い」

 

「……おじさんが好きだからだ」

 

ピノッキオの口から出た言葉は彼の想いだ。

 

「おじさんは僕の命の恩人じゃないか!僕を外に出して名前を付けて!育ててくれた!」

 

それは人形のピノッキオでなく、人としての言葉だった。

 

「おじさんが逃げないって言うのなら……ここに来る奴らは皆殺しにしてやるッ!」

 

彼は力強くナイフを握り締めた。

 

 

───────────────────

 

 

 

「ピノッキオめ、そう言って私の言う事を聞きやしない……助けたのは単なる損得勘定からだった。学校にも行かせず、殺しだけを教えた私をアイツは好きだと言う。アレッシオ、私はどうすればいい?」

 

クリスティアーノは先程のことを思い返しながら使用人のアレッシオが差し出したコーヒーを飲み、愚痴めいた言葉で彼に問いかけた。

だがアレッシオには、それがどこか暖かさを含んでいるようにも感じられた。

 

まるで手のかかる我が子を自慢するような。初めての反抗期に喜びを感じさせるような。そんなクリスティアーノの口ぶりにアレッシオは静かに答える。

 

「私は10年以上、お二人の様子を見てまいりました。差し出がましい様ですが、私の目には旦那様が損得以上の愛情を注いでいるように映りました」

 

「……そうか。なぁアレッシオ」

 

クリスティアーノは覚悟を宿す。それは前のような諦めではない、例え生き恥を晒そうと生き抜く覚悟の目。

 

「私は生きるべきと思うか?」

 

「えぇ、旦那様」

 

アレッシオもまた従者としての覚悟を湛え、クリスティアーノの問に答えた。

 

「よし、車を用意しろ。私はイタリアを出る」

 

 

───────────────────

 

 

トリエラとリコの2人は作戦を開始した。トリエラは屋敷の玄関から、リコは南側のガレージからクリスティアーノを捜すため侵入する。

 

半袖のブラウスにスカートとブーツと言う、装備としては到底頼りない格好でSIGP230を構えるトリエラ。

せめて防弾ベストぐらいはグリフィンに借りても良かったのではとも思わなくも無いが、指揮を執るジャンが許さなかったのだから仕方が無いと納得することにした。

 

『トリエラ、屋敷の様子は?』

 

「やけに静かにです。夜だと言っても嫌なくらいに……」

 

無線機越しのヒルシャーとのやり取りに少しの安心感を得ようとする彼女は風を切る音を聞いた。

 

「ッ!?」

 

闇の中から飛来したスローイングダガーがトリエラの握るハンドガンを弾いた。

間髪入れずに首めがけて迫る刃にカウンターの蹴りを入れ、互いに体勢を立て直す。

 

屋敷の中を微かに照らす常夜灯と月光が明かすは因縁の相手。

 

「ピノッキオ!」

 

「君はモンタルチーノの女の子か……あの時殺しておくべきだったな」

 

「やれるものならやってみろ!」

 

トリエラも銃剣を構える。

2人の間に急速に広がる粘度の高い殺気、緊張感。まるで沼を泳ぐかの様な空気の中でトリエラは不思議と冷静だった。

 

ピノッキオを見てみる、人間だ。

 

『トリエラ!どうした!?』

 

「ピノッキオです!」

 

残虐な笑みを浮かべ貫手を放ってくるSOPⅡではない。

近接格闘の訓練だというのにコンバットアックスを投げてくるCz75ではない。

口数少なく二刀のナイフを振るうブルートではない。

大剣を振り回す処刑人でも、狡猾に罠を張る狩人でもない。敵は人間なんだ。

 

(大丈夫、今の私はモンタルチーノの時とは違う。ピノッキオの動きが……)

 

「分かる!」

 

「チィッ!」

 

振るわれるピノッキオのナイフに銃剣を合わせ受け流す。

今のトリエラは確実に成長している、技術も経験も力もピノッキオよりも上だ。ならば負ける道理はない。

 

不利を悟り逃げるピノッキオを見てトリエラは確信した。

 

(相手は人間!ただの人間だ!私より技術と経験が上"だった"人間!)

 

『トリエラ!聞こえているか!大丈夫なのか!?』

 

「……大丈夫ですよ、ヒルシャーさん。今の私ならヤツに勝てます」

 

彼女の覚悟を受けたかのように銃剣が鈍色に光る。

 

「クソッ!まるで化け物じゃないか!!」

 

敵、それも自分を追い詰めるほどの強敵の襲撃。それをクリスティアーノに伝えるべくピノッキオは屋敷を駆ける。

 

(あの女の子……確実に強くなっている。おじさんを早く逃がさないと!)

 

彼の背をじっとりと嫌な汗が流れる。あの一瞬の攻防、たった数度刃を交わしただけで分かる。

自分は無事ではすまないと分かる。

 

だからこそクリスティアーノだけは逃がさなければならない。

 

「ッ!ピノッキオ!」

 

「おじさん!?何してるんだ、あの音が聞こえないのかい!早く逃げて!」

 

廊下の出会い頭でピノッキオはクリスティアーノに会う。

なぜここにいるのか?

おじさんは何をしているのか?

 

そんな事を気にする暇は彼に無い。今は一刻も早くおじさんを逃がさなければと詰め寄るピノッキオをクリスティアーノは制した。

 

「聞けピノッキオ!私は決めたぞ、1度国外に逃げてやり直す……だからお前も死ぬな!納屋に車を1台隠してある、これがキーだ」

 

ピノッキオは思いもしなかったクリスティアーノの言葉に戸惑うのを隠し、車のキーを受け取った。

クリスティアーノの目は前の様な疲れ果てた目では無くなっている。

 

彼の目は国を想い、活動を始めた頃の覚悟と使命に燃えた目をしている。その力強い眼差しはピノッキオにも力を分け与えるようだった。

 

「結局、あの男の言う通りになるとはな」

 

「あの男?何を言って」

 

「いいかピノッキオ、もし逃げ切れず投降する様な事になったならグリフィンに行け。あの男なら悪い様にはしないはずだ」

 

「大丈夫だよ、おじさん。絶対に逃げておじさんの所に帰る。おじさんは僕の生きる意味だから」

 

「ピノッキオ……」

 

許してくれ、クリスティアーノはそう呟いて車庫に駆け出す。

その姿をピノッキオは笑顔で見送った。

 

「おじさんごめん。あの女の子を相手に僕は生きて逃げれそうにない、でもせめて……おじさんが逃げる時間は稼ぐよ」

 

彼が自分の鼻をかく、まるで鼻が延びていないかを確認するピノキオの様に。

 

「行くよ、第2ラウンドだ」

 

信愛するおじさんからの想いを胸に、彼もまた確かな覚悟を持ってトリエラの元に走った。

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