GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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すみません……テストと1ヶ月実習でなかなか投稿できそうにないです……


私達を信じて

登はんする彼女達を援護出来る建物の上。

遮蔽物となる屋根もあり支援に適したポイントにはヘンリエッタとジョゼとAlfa、ついでに俺。

 

「ジョゼ、ウチの部隊にはジャコモを見つけた場合殺さず拘束するように命じてある。もし捕らえられたらそっちに引き渡すからな」

 

「……すまない」

 

「いいさ、立場が同じなら俺もそうなると思うから」

 

ペチェネグのバイポッドを立て、いつでも射撃ができるように構えながらジョゼに話す。

 

元よりグリフィンの目的はヘンリエッタ達の回収、もしくは死なないようにする事。

共和国派がどうなろうとイタリアが分断されようと割とどうでも良いのだ。

 

だからこそクローチェ兄弟に復讐をさせてやりたい。

 

「ジョゼ、刺し違えても……なんてのは止めてくれよ。ジャコモを捕らえるにしろ殺すにしろ、ジョゼが生きてないとダメだからな」

 

俺は不安げにP90を抱いて顔を伏せるヘンリエッタを撫でてジョゼを見る。

 

お前にはこの子が居るんだぞと、そんな切実な思いを込めた視線はジョゼには届かない。

彼はただじっと、両親を殺し、妹を殺し、兄の婚約者を殺し、人生を狂わせた男であるジャコモ・ダンテがいるであろう鐘楼を睨むばかり。

 

「ジョゼさん……」

 

「よしよし。ジョゼさんにも色々あるんだ、今はそっとしてあげような」

 

「大丈夫よヘンリエッタ。無事に終わらせて、また夜間観測しましょう?」

 

「うん……がんばろ、Alfa」

 

互いに手を取って励まし合う二人を見ると、温かい物が芽生えてくる。

だからこそ守らねばならん、この子達を死なせる訳にはいかんのだ。

 

ヘンリエッタの小さな肩に手を置き、じゃがんで目線を会わせる。

 

「ヘンリエッタ、無理はしないようにな。君は一人じゃ無い」

 

出会った頃は怯えて目線も合わせなかったこの子も、慣れてきたのか今はコクリと小さく頷いてくれる。

 

『……作戦を始める』

 

「了解」

 

無線機からも伝わるジャンの殺気を受け流してペチェネグのハンドルを動かし初弾装填。

 

大丈夫だ、ルイス達は強い。心配などいらないほどに強いのだと結局心配をして号令をかける。

 

どうか無事で、と願う。

 

「M200、狙撃始め」

 

『分かりました、お任せください』

 

「ルイス隊は突撃せよ」

 

『はい!』

 

ペチェネグのスコープを覗けばM200の狙撃で慌てふためくテロリスト共。

 

内心いい気味だと思っていると眉間に皺を寄せたジョゼが口を開く。

 

「まさか本当に揺れるヘリから狙撃するなんて」

 

「作戦会議でも言ったろ?ウチの家族は強いって」

 

次々と頭を撃ち抜かれる共和国派を眺めて居ると、ルイス達が突撃した正面扉の方で派手な爆発が起きた。

 

ジョゼとヘンリエッタが慌てて反応するものの、逆に俺とAlfaは平然としたまま。

この程度の爆発如きで彼女達の防御は崩れるものかよ。

 

「ヒルシャー何があったんだ!」

 

『恐らく指向性の対人地雷です!今被害を確認中で』

 

「要らんよそんな物。あの子達の防御は鉄壁だ」

 

それを証明するかの様に鐘楼内から激しい銃声と、それに掻き消されるような断末魔が聞こえた。

 

ほら見ろと我がことのように得意げに笑ってやる。

たかだかクレイモアの一つ二つでサブリナ達の防御は抜けんぞ、やるなら要塞砲くらい持って来い。

 

『確かに被害はありません……相変わらずグリフィンの戦力は異常だ』

 

「よしよし。こちらサイファー、ルイス隊はそのまま鐘楼を駆け上がれ。ネゲヴ隊は退路を確保しつつ人質の救出だ」

 

無線を飛ばし、そろそろ出番かとペチェネグを構えた。

 

ペチェネグ専用弾はPKPの記憶をインストールした俺でも扱えなかったから通常の徹甲弾だ、だが発射レート800rpmで放たれる7.62x54mmR弾は強力の一言。

 

意識を無線に向けるとトミー達が登はんを開始するようだった。

 

「多分そろそろだと思う、準備は良い?ヘンリエッタ……ヘンリエッタ?」

 

「あ!う、うん……大丈夫、大丈夫だよ」

 

「そう、何かあったら言ってね。私達は友達だもの」

 

「うん……ありがとう」

 

明らかにヘンリエッタは不調そうだが、今は作戦中だ。離脱させられない中ではどうしようもない。

ここはAlfaに任せる他にないか。

 

『指揮官、MP5です。登はん部隊は鐘楼に取り付きました!援護願います!』

 

「了解、上だけ見て他は任せてくれ。そしてあの弾頭を止めろ、頼んだぞ」

 

MP5からの要請を受け俺達は射撃を始める。

トリガーに指をかければ、誇り高きPKPの戦闘記録が頭の中で繰り返される。

 

俺の中に人が混ざり合うこの冷めた感覚も、慣れれば楽な物だ。

 

俺の中でワタシが咆える。

敵を殺せと。

 

「フン……バラバラになって死ね」

 

強力なリコイルを慣れた動作で受け止めて登はん部隊を援護する。

 

AK-AlfaやヘンリエッタのP90よりも一際大きな銃声を轟かせて放たれるペチェネグの銃弾は、遮蔽物越しにすらテロリスト共を撃ち殺す。

 

「雑魚共が!残りはどいつだ!」

 

ヘンリエッタを狙うテロリスト、死ね。

ジョゼを狙うテロリスト、死ね。

トミー達を狙うテロリスト、死ね。

 

俺の家族に手を出す者、俺の大切な者に手を出す者。皆消えろ。

 

「きゃっ!」

 

「流れ弾!?ヘンリエッタ、怪我は!」

 

「う、うん……私は大丈夫、でもP90が……ジョゼさんから貰った大切な銃なの!」

 

「後にしろヘンリエッタ!」

 

「ジョゼの言う通りだ!今は後回……クソッ!Alfa、取ってきてやれ!」

 

危ない、思考がPKPに染まりかけていた。

頭を振って、意識を戻す。見れば展望台フロアの制圧も済んだようだからAlfaを銃の回収に向かわせても大丈夫だろう。

 

『こちらトンプソン、ボス聞こえるかい?』

 

「聞こえるぞ、ミサイル弾頭は見つかったか」

 

『あぁバッチリだ。なんせ私達の真上にぶら下がってんだ、一体どうやってここまで運んだんだ?』

 

トミーのもっともな疑問の解など持ち合わせてはいないのでスルー。

ペチェネグの弾帯を交換しながらG36Cに弾頭から信管を抜いて無力化するように命じ、じっと待つ。

 

「ミサイルの解体までできるのか」

 

「かなり前に腕の良いヤツを拾ってな、今じゃグリフィンで一二を争う爆破技師だ。そいつらからノウハウを学んでるから間違いない無いと思うぜ」

 

少し意識からPKPを離してジョゼと話す。

あまりにもPKPに成りすぎると、さっきみたいに悪意無く厳しい事を言ってしまいそうになるから困る。

 

現に流れ弾が当たってP90を落としたヘンリエッタは、ジョゼと俺からそんな物捨て置けと言われて不安定になっている。

親しく接してくれるAlfaがそばを離れたのも原因だろう。

 

「大丈夫だよヘンリエッタ、落っことしたP90は直ぐにAlfaが見つけてくれる。あの子はすごく頼りになるんだ」

 

「はい……ありがとうございます、サイファーさん……」

 

流石のジョゼさんも家族の仇を前にしてはヘンリエッタに意識が向かないか。

 

じっとジャコモ・ダンテが居るであろう鐘楼を睨む彼に声をかけようとして、耳に掛けた無線機からの怒号をもろに喰らった。

 

『何をしている!さっさと部隊を突入させてジャコモを探せ!』

 

「いっ!?なんだジャンさんか、落ち着いてくださいよ」

 

『落ち着けだと?ふざけているのか貴様!』

 

「部下達が自爆用と見られる弾頭を確認し、現在無力化しています。起爆を許せば鐘楼に居る全ての者が死にますよ」

 

『構うものか!我々の目的は首謀者のジャコモ・ダンテを捕らえる事だ!逃げることも止まることも許さん!』

 

不思議とその物言いに腹が立った。

 

「我々の目的?お前の目的の間違えだろうが言い直せ!」

 

『何も知らないお前に何が分かる!あいつに何をされたか、何一つ知らないお前が!』

 

「鐘楼1階から突入したルイス隊が駆け上がっても見つからないんだぞ!後続のネゲヴ隊だって居るのに!ジャコモは最初からここには居ない!」

 

『だから探せと言っている!』

 

「18で米軍キャンプを爆破して駆逐艦を攻撃するようなバカがこんなちゃちな連中だけでテロを起こすか?ヤツはもっと大きな舞台で来る!」

 

『知った様な口を!』

 

「知らずに言えるか!」

 

ぎゃいぎゃいキャンキャンとジャコモが居る居ないの言い争い。

 

こればかりは譲りたくないのだ。クローチェ兄弟の仇討ちには協力する、もしジャコモを捕らえたのならそちらに引き渡す。

 

だがそれは愛する家族やヘンリエッタ、ジョゼ、無論ジャン達が無事なのが大前提。

爆弾が頭上にあって且つターゲットが居る可能性も無いのに部隊の突入などできるか。

 

そんな聞くに堪えない大人の言葉の応酬がまだまだ続くと思われた。

 

無線機からMG3の叫びが聞こえるまでは。

 

「どうした!」

 

『ベアトリーチェが狙撃されたんだ!今MP5とG36Cが手当を……あぁクッソ最悪!』

 

「MG3!おいMG3!」

 

『弾頭の起爆装置を起動された!』

 

焦る思考を止めようとしても上手くいかない。

無線から聞こえる慌ただしい声、悲痛な声を聞くとわっと汗が噴き出し口が渇く。

 

今から全員を離脱させる時間はない、だが策が無いわけでは無いのだ。

無いわけではでは……だが、けど……

 

『指揮官、私達は大丈夫だよ』

 

『だから命令して、私達を信じて』

 

サブリナとルイスの、覚悟を持った声。

仲間を守ると言う信念と自らの犠牲を厭わない高潔さ。

 

「すまない……」

 

PKPのグリップを強く握り、俺をワタシに変える。

 

そうだ、足手まといの指揮官は引っ込んでいろ!

何を躊躇う事がある?

 

あの二人は共に戦った戦友だ!家族だ!

なら信じてやるってモンだろう!

 

「サブリナ、ルイス、二人は弾頭の下で構えろ。AA-12、べネリ、弾頭が下げられたフックを撃て。弾種スラッグ」

 

俺の中からワタシが声を上げる。

 

『指揮官。敵狙撃地点の特定完了』

 

「黙らせろM200」

 

『了解』

 

大丈夫だ。やれる、やれる!

 

あの二人が信じてと言ったんだ!

 

「投げろ」

 

鐘楼から飛び出す弾頭。

 

ヘンリエッタを遮蔽物へ突き飛ばし、ジョゼの掴んで伏せさせる。

ヴェネツィアの青く澄み切った空を染めるような、そんな爆発が起きた。

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