GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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短い上に本筋とはあんまり関係ないですよろしくお願いします。


断章 じゃからおぬし、今はただ眠るがよいよ

寝付きが悪い……

 

別に今夜に限った事では無いが寝付けない日がよくある。

ずーっと耳鳴りが続いて、漠然とした不安に苛まれ、気がつけば腕を噛んで血を流している様な夜。今夜がまさにそれだ。

 

自分でつけた噛み傷にさっさと消毒液をぶっかけてカットバンを張り包帯で保護。

体を動かしたことで多少落ち着いた耳鳴りと思考にどう対処するか……

 

「風薬を没収されたのは辛い」

 

こういう時によく飲んでいたブ○ンとウイスキーの特製カクテルが医療班にバレてからその手の薬はグレイやHS2000から直接飲まされる様になったからなぁ。

 

「明日は休みだし寝落ちするまで音楽でも聞くか……いや、やっぱ酒だな」

 

こういう時はアルコールで意識を飛ばすに限る。

何とか夜勤をしていたウォッカクラブの連中から2本のウォッカを手に入れる事が出来た。

愛好家の集いらしくキンキンに冷えているそれを手に、中庭へと出て月見酒と行こう。

 

鼻に抜けるアルコールの突く様な感覚とウォッカ特有の軽やかな風味が耳鳴りを治め、噛み破った腕の痛みを心地良く喉を焼く痛みで上書きしてくれる。

 

1本目を空けた時くらいだろうか。俺は小さな老兵に声をかけられた。

 

「おぬし、何をして居るのじゃ?」

 

「月見酒を少々。ナガンこそどうしたんだ?」

 

「見回りの交代帰りにふと外を見たらおぬしが居ったものでのう。1人で飲むのも寂しかろうと思って来たんじゃよ」

 

「そうか、そいつはありがたい」

 

トテトテと隣に座ったナガンに酒瓶を渡すと、小さな体に見合わず瓶に口づけて豪快に飲む。

 

「うむ、よく冷えておるわ。ビールも良いがウォッカもまた良い物じゃ」

 

上機嫌に返された酒瓶を受け取りまた飲む。

 

「それで?今度は何があったんじゃ?言っておくが何でも無いなどとつまらんことは抜かすでないぞ」

 

「ナガンにはお見通しか」

 

「当たり前じゃ。わしは誰よりも前から、そばで、おぬしを見てきたんじゃぞ。伊達に最古参を名乗ってはおらぬわ」

 

ふふん!と張った小さな胸に安心感を覚えるのは何度目だろうか。

 

たしかナガンと会った時もこうだった。

動画サイトで見たゲームの広告に惹かれ、他に稼ぐ当てもなく傭兵会社に就職した俺をカリンがチュートリアルで色々教えてくれて。

 

最初に部下になった1911 P38 ナガンの3人が安心しろと、お前には私達が着いていると言ってくれたのを。あの荒廃した世界の、まだ平成だった時の俺が何も知らない学生だった時……グリフィンの基地のスマホで……

 

矛盾の気持ち悪さに焦ってナガンの手からウォッカをひったくり流し込む。

 

「大丈夫じゃ」

 

「……ごめん」

 

「何を謝る事がある。おぬしはよくやっとるよ、流石はわしらの指揮官じゃ。じゃからのう、おぬし、わしらはおぬしに失望などしはせんよ」

 

ナガンのその言葉が酷く心地良く、不安とはまた違った鼓動の早まりをもたらしてくれる。

 

「あぁ、クソ……視界が」

 

「なんじゃ、もう酔ったのかの?」

 

そうか、もうアルコールが回ったのか。

遠のいて視野角が広がる世界に嫌気がする。

ふらつく頭にも嫌気がする。

 

そんな言うことを聞かないバカ頭がとうとう倒れる。

でも痛くは無かった。

 

ナガンの膝が優しく受け止めてくれたから。

 

「まったくしょうがないのう」

 

「ごめん……」

 

「これくらい構いはせんよ。服を脱いでハバネラを踊り出す奴も居るからのう」

 

心当たりに思わず笑って、ナガンを見上げる。

 

「ありがとうなぁ……あぁ、もっと……ナガンと飲みたい」

 

「いつでも付き合ってやるからの、今は大人しく寝ておくがよいよ。今くらいは無理を

せんでもよいのじゃから」

 

小さくて大きなナガンの手に瞼を下げられて、ようやく眠れる。

 

耳鳴りは聞こえなかった。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

わしの膝に頭を乗せて、指揮官は幼子のような寝顔を見せる。

こんなに穏やかな顔が見れるのは多くはない。

 

指揮官は優しい、いや優しすぎた。

 

人形のわし達を、作り物で消耗品のわし達を文字通り人の倍気にかけ、人として接した。

感謝を忘れず、褒め、叱り、笑い、泣いて。

 

だからこそ鉄血やパラデウスも付き従のじゃろうて。

 

「わしはのサイファー。おぬしがこうして穏やかに居られるのが一番なんじゃよ」

 

そのためらばどんな事でもしてやろう。

 

壊して奪って殺してやろう。

たとえ便所に隠れていようとも追い詰めてやろう。

 

どこぞのSF作家が考えたロボット三原則など知ったことではない。

既にこの手は血に染まっておるのじゃからのう。

 

「それにわし達は皆、おぬしのためなら何のためらいはありはせん。じゃからおぬし、今はただ眠るがよいよ」




  「んにぃぃ!んにぃぃ!」

友1「チ○ポ~ww」

友2「落ち着けイカレ共、なんで狂っとんで?」

友1「説明しよう!コイツは実習先を嫌がっていた児童養護施設に配属されリアルタコピーを見せられた挙げ句に実習メンバーの女子の使用済みタオルを盗んだ冤罪をかけられ精神が崩壊しているのだ!」

友2「苦労してんのな。で、お前は何してんの?」

友1「合いの手」

  「殺すぞぉ!」
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