GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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彼らはテロリスト

「それがお前の選択か」

 

「あぁ、ヘンリエッタはこのままリタイアさせる。条件付けの強化はしない」

 

福祉公社の課長室。ロレンツォとクローチェ兄弟が会するこの部屋は、一般人どころか他の義体担当官ですら近づくのを躊躇うような張り詰めた空気感を放つ危険ゾーンと化していた。

 

パイプを咥え、じっとジョゼを見るロレンツォ。

凍える瞳から実の弟に視線を送るジャン。

これが自らの覚悟であると両の眼でしっかりと、変えるつもりは無いと意志を見せるジョゼ。

 

「ごめん……でも僕は」

 

「もういい」

 

「兄さん?」

 

「何も喋るな」

 

もう貴様と話すことは無いとばかりな言葉、ジャンにとってこれは既に話し合いではなく一方的な通告となっていた。

 

その姿を視界に入れているロレンツォに、何か悍ましいまでの黒が燃える様さえ錯覚させる程の複雑極まる怒りがジャンを燃やす。

否、ジャンを燃やしているのではない。

ジャンが燃やしているのだ。

 

「ジョゼ、お前を現場から外す。しばらくどこかで大人しくしていろ」

 

「な!?それはどう言う」

 

「ヘンリエッタは使い物にならない、だからと言って今のお前が一人居たところで戦力がどうなる訳ではない」

 

ジャンの言うことはその通りではある。

ジョゼが元憲兵隊で海外派遣の経験もあるとは言え、福祉公社にはそんな人物は珍しくもない。

 

だがジョゼにとって到底納得出来るものでもない。

 

「待ってくれ!僕だって戦える!やっとジャコモを捉えたんだ、仇を討たせてくれ!」

 

「なら何故義体の条件付けを強化しない!確かに強化による大量の投薬は義体の寿命を大幅に削る、自我も残るか定かではない。だがまた使えるようになる。それを選ばなかったのはお前だジョゼ!」

 

熱を帯び出した両者の言い争う声は既に課長室からも漏れ、前線指揮所さながらの怒号が舞う。

ジョゼは僕だけでもと、ジャンはお前は要らないと。

 

既に兄弟の頭には話し合いという言葉は消え去り、自らの主張を押し通すことしか残ってはいない。

 

「お前は復讐を捨てたんだ、サイファーに唆されてな!」

 

「違う!これは僕が決めたことだ!」

 

延々と続くかと思われたこの言い争いにも終わりは来る。

子供のように息を切らして尚言い足りないと言った様相の兄弟を見かねたロレンツォがため息を吐いた。

 

「止めろ二人とも。ジョゼ、今のお前は有事の際に行動出来る状態じゃないだろう?今は休んでおけ、これは課長命令だ」

 

ロレンツォの決定にジョゼはグッと拳を握り締め肩を震わせるしかできない。

 

退出を促されるジョゼは、これだけは聞かねばならないと、その意志を瞳に宿す。

 

「ヘンリエッタはどうなるんだ」

 

「お前の義体だ。お前の好きにしろ」

 

「……分かった。課長、失礼しました」

 

振り向くこと無く部屋を出たジョゼをジャンとロレンツォは黙って見送った。

 

「好きにしろか……そばに居てやれと言わなくて良かったのか?」

 

「そんな人間に見えますか」

 

「どうだろうな」

 

ロレンツォのどこか引っかかりのある物言いに怒りを滲ませた視線を返すジャン。

 

彼の怒りも報復心も本物だ。本物だからこそ秘密組織である福祉公社に身を起き、身寄りのない子供でさえ殺人マシーンとして使う事を厭わない。

 

だがそんなジャンも人であり、悪魔の子と言うわけではない。

 

だからこそジョゼを突き放した。

 

「この情報を知られる訳にはいきません」

 

「しかしこの忙しい時にこんな事を……彼らは暇なのか?」

 

「指揮を執るのは所詮現場を知らない人間なのでしょう。しかしここでターゲットを逸らせたのは幸いでした」

 

作戦部長のモニカ、作戦一課二課の課長ドラーギとロレンツォ、そしてジャンなどの社会福祉公社の中枢部に持ちかけられた情報。

 

「奴らはテロリストです。我々に盾突くだけで無く、政府を脅しさえした。何の遠慮も必要ありません、むしろ今までの対応が異常でした」

 

「それは……認める他ないな」

 

「奴らを擁護していた政治家連中も手のひらを返しました、もう味方は居ない」

 

「それに内務大臣と参事官からの命令だ、他に術は無い。共に戦うか、我々が狙われるか」

 

「簡単な話です。奴らを潰せばいい、幸いなことに参事官も十分な戦力を向けるようです。いざとなれば我々の盾ともできます」

 

むぅ……と唸って腕を組むロレンツォは少し前から気になっていた事をジャンに問う。

 

「ジョゼ、お前の目的は変わらずか?」

 

「えぇ、変わりはしません。ジャコモを……家族の仇を討つ、それだけが私の生きる意味です」

 

「ならこの作戦にお前はどう意味を付ける?上からの命令ではなく、自分自身の中でどう意味を見つける?」

 

「決まっています。これ以上失わないために」

 

これ以上何を失いたくないのか。

ジョゼかリコか、それとも体の内を蝕む痛みなのか。

 

ロレンツォはジャンの背に恐ろしい死者を見た気がした。

 

 

 

──────────────

 

 

 

ようやっとサブリナとルイスも復帰し、部隊編成に使用した武器弾薬の増産や装備の修復が終わった所で直ぐコレだと悪態をつきそうになるが作戦前だ。グッと堪えよう。

 

「さて、諸君らも知っての通りこのイタリアでは現在、総動員も斯くやと言った体制で各地を警備監視している。しかし全てに対応出来るだけの人員は居ないようだ、そこで我々グリフィンにも依頼が来た」

 

「私達も警備に参加しろと?」

 

「いや違うようだぞAR-15。我々は共和国派やテログループが潜伏していると思われるポイントを調査、発見次第殲滅せよとの依頼だ。場所はゴーストタウンや各地の別荘地となる、これを見てくれ」

 

ブリーフィングルームにはAR小隊 404小隊 叛逆小隊にネゲヴ小隊やFN小隊などの名だたる面々が揃い踏みだ。

下手な軍隊でも蹂躙できるほどの精鋭部隊、それを投入するのだからテロリストに少しの同情心も芽生える。

 

「……多いわね、ウチのヘリを総動員じゃない」

 

「でもできないことはないわ。いいでしょう、指揮官の命令はこの私が完璧にこなしてみせるから」

 

「うんうん!私達404小隊は無敵だ!」

 

404小隊が任せろとばかりに頷く。

 

「私達スペシャリスト小隊も忘れないでね」

 

「隊長、勝手に隊の名前変えんといてーな」

 

ネゲヴも胸を張り、それにツッコミを入れるガリルもやったるで!と伝わってくる。

他の隊もやる気満々だ。

 

「はいはい静粛にな、では作戦にアサインされている隊は出撃せよ。帰りを待っているからな」

 

 

 

タキシングするヘリコプターのエンジン音と出撃用意を終え機体に搭乗していく彼女達の音が騒々しく響く我が基地の駐機場。

 

俺は彼女を探すべく辺りを見回し、そして駆け寄る。

 

「指揮官?どうしたんですか」

 

「M4、君達の見送りと個人的にM4に聞きたかった事があったから探してた」

 

「聞きたかったことですか?」

 

マグポーチに予備マガジンと各種グレネードを詰め込むM4を捕まえて少し立ち話。

 

忙しいのにちゃんと対応してくれるこの子は本当に優しい子だ。

 

「ほらクリスマスイブの日にM4のお願いをなんでも1つ叶えるって言ってたろ?それを思い出したんだ。なんだか聞いておかないとどーにも座りが悪くてな」

 

「あ、私も忘れてました。でもなんで今?」

 

「んー、どうという事は無いんだ。ホントにさっき思い出して、何となく聞かなきゃいけない気がしたから」

 

「なんですかそれ」

 

ふふふと可愛らしく笑ったM4は少しだけ恥ずかしそうに、でも悲しげな目を逸らす。

 

「指揮官の名前を……サイファーでは無く、本当の名前を聞こうと思ってたんです。でも指揮官は……」

 

「そうか、悪かった」

 

「なんで指揮官が謝るんですか」

 

「M4に辛そうな顔させてしまったからな」

 

愛する家族にそんな顔をさせたくはない。でもさせてしまった、なら謝るべきだと話すと、M4は呆れながらも微笑んでくれた。

 

「なら代わりのお願いを聞こうか、なんでも言ってくれ」

 

「突然そう言われると……何にしようかしら」

 

可愛らしく悩み始めた彼女をずっと眺めて居たくもあったが、思い返せば今は出撃前。

おーいと姉の呼ぶ声にはっとしたM4は慌ただしくも最終チェックを終えると焦りながら顔を向けてくる。

 

「お願いはまた考えておきます!それじゃ行ってきます!」

 

「気をつけてな、絶対帰ってくるんだぞ!」

 

「はい!」

 

彼女達を小隊を乗せたヘリ達が高度を上げて飛び立って行く。

 

どうか無事でと、機体が見えなくなるまで敬礼を続けた。




友「更新遅れ 理由 何故」

 「父 階段から落ちた 骨折 手術」

友「マジかよ」

 「体中の血の気が引いた状態でテイエムオペラオーみたいな喋り方になってた。そのまま風呂に入ったから患部がパンパンになってたぜ」

友「ファンキーが過ぎんか?」

 「ファンキーというかファニーというか……」
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