GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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見てくださっている方、保存してくださっている方、この様な文を読んでくださり誠にありがとうございます。
申し訳ありませんが、次のお話で毎日投稿から週間に変えたいと思っています。

ご理解の程、どうかよろしくお願いします。


リコ

『リコ、無線の調子はどうだ』

 

「大丈夫です。ジャンさん」

 

今日のお仕事は殺しではなく偵察、とあるレストランでターゲットを観察する事だ。

 

『そうか。ターゲットの様子は?』

 

「女の人を1人、連れています……ものすごい量のご飯を食べてます」

 

『……そんな無駄な情報は要らん』

 

ジャンさんはそう言うけれど本当に凄い量を食べている。

 

もうピッツァ2枚 パスタ3皿、他にもオッソブーコやカルパッチョ。ドルチェは既に4皿。え、5皿目を注文してる……

 

その凄まじい食事量にお仕事を忘れそうになりながらターゲットの会話を盗み聞く。

 

「…………上手く聞き取れませんが、この料理が美味しいとか、イタリアの街並みはキレイとか。そんな話をしています」

 

『もっと接近して情報を集めろ。前回の様な失敗は許さん、一言一句聞き逃すな』

 

「分かりました」

 

ジャンさんの指示通りに私はターゲットに近づく。ここは人の多い人気店、接近してもバレないはず。

 

もう少し、あと少し、そんな気持ちが悪かったのだと思う。

突然ドンッと身体を衝撃が襲った。

後ろを見ると、慌てた顔で5皿目のドルチェを持っているレストランのウェイター。多分この人とぶつかった。

 

迫ってくる床に手を伸ばそうとした時に誰かがそっと私の体を支えてくれる。

「おっと」

 

「あ、ありがとうございます」

 

マズいと、思った。

 

私を支えている人、その人がターゲットだったから。

 

「怪我は無いか?"リコ"」

 

その人の口から、私の名前が出たから。

 

「ッ!?」

 

「ここでそんな物を抜くんじゃ無い。射撃の腕より抜くタイミング……だったかな」

 

コートから銃を抜こうとする私の腕に、優しく手をかけて微笑みかけてくるターゲット。

 

けどその微笑みは人優しい笑みなのにとても冷たい。

 

あぁ、この目は地獄の目だ。

 

私の身体が、心が冷たくなって行く。動けなくなっていく。四肢を失う夢が現実になりつつある。

 

「指揮官大丈夫ですか……って、リコだ!一緒にご飯食べようよ!」

 

「お、それはいいな。リコ、食事にしよう」

 

ものすごい量のご飯を食べていた女の人も私の名前を知っていた。

それが恐怖になって私に襲いかかる。

 

今すぐ逃げ出したい、この人達を撃ち殺したい、この恐怖から解放されたい。

そんな私の懇願にも近い祈りは、思わぬ形で叶うことになる。

 

レストランに突っ込んできた車によって。

 

 

───────────────────

 

 

「指揮官!大丈夫ですか!」

 

「なんとかな、リコも無事だ。ありがとうサブリナ」

 

俺はリコを抱き抱えて遮蔽物……咄嗟にサブリナが蹴り倒したテーブルの裏に隠れた。

防弾など期待は出来ないが姿を隠すには十分に使える。

 

せっかくの休み、それなのに……

サブリナに誘われて飯を食っていたら突然リコが現れるわ、うっかりリコの名前を呼んで拳銃を抜かれそうになるわ、車が突っ込んで来るわ!

今日は厄日だわ!

 

オマケにレストランに響く銃声と怒号!

 

「殺せ!1人残らず殺せ!」

 

「今こそ同胞達の仇を!拝金主義者に死を!」

 

突っ込んで来た車からは次々と武装したイタリア人。レストランの客やウェイターを見境なく殺している。

 

さっきまで美味そうなイタリアンの匂いに満ちていたホールは、あっという間に血と硝煙が立ち込める戦場に変わった。

隣に目をやってサブリナを見れば、楽器ケースからもう1つの自分と言うべき物を取り出している。

 

SPAS-12。

12ゲージショットシェルを6+1発装填できるセミフル切り替え式のショットガン。

 

「もう!あの人達何なの!」

 

「大方、共和国派だろうさ。ウチか公社か知らないが手酷くやられたんだろう。ほんと、今日は厄日だわ……」

 

「元気だして指揮官、今本部に連絡したよ。他の部隊が来るまで絶対に指揮官を守るから!」

 

ショットシェルを薬室に装填、 射撃モードをセミオートに切り替えて頼もしい笑顔を向けてくれるサブリナ。

 

彼女と同じく準備をしなければならない。俺はコートの内側に手を這わせて、ホルスターからそれを抜く。

 

「持ってて良かった護身用ってな」

 

俺の手にあるのはSIGP226。扱い易く、頑丈で、撃ちやすいエリート拳銃。

 

俺としてはM1911やMk23が持ちたかったのだが、素人が護身用に45口径を使うなと反対されたのだ。

仕方なく扱い易い9mm弾使用のハンドガンから選んだのがこの一挺、P226という訳である。

 

M9にギャン泣きされたのは言うまでもない。が……

 

「俺、スライドがカッチリしてる方が好きなんだ」

 

「指揮官?」

 

「なんでもない」

 

許せM9よ、後でケーキ買ってあげるから。

 

「あ、あの……」

 

「ん?どうしたリコ、どこか痛むか?」

 

「いえ、その……ありがとうございます」

 

「そうか、怪我が無いなら良かった」

 

リコに手を伸ばすと、恐る恐るといった表情で彼女は目を瞑った。

そのまま頭を撫でてやるとプラチナブロンドの髪が揺れる。

 

手を上げられるとでも、思ったのだろうか。

 

その仕草が……俺の心を締め付ける。

子供が子供として生きられない。それが何よりも辛く、苛立たせる。

俺がその原因であることもだ。

 

「Cz75は持ってるな?」

 

「はい持っています」

 

「俺達が助かるには、共和国派の奴らを突破して味方と合流するしか無い。この場で戦力になるのはサブリナとリコだ。君のような女の子を頼るのは心苦しいが……頼む」

 

「けど……」

 

「今はお互い撃ち合う時じゃない、賢いリコなら分かってくれるよな?」

 

悲しい事に俺は全く戦力にはならないだろう。ハンドガンを構えたリコは俺の言葉に頷いてくれた。

 

サブリナは気合十分、リコもやる気だ。なら最後は俺が覚悟を決めるしかない。

どーせ地獄に落ちるのは確定してるんだ、人を殺した所で些細なモンだ。

 

「よし、やるぞ。総員構え」

 

レストランはいつの間には静寂に包まれていた。俺達以外の客は皆逃げたか死んだか……

 

これは良い、動いているのは味方の2人以外パダーニャのクソ共だ。民間人への流れ弾を気にせず済む。

 

俺達が潜むテーブルに足音が近づいてくる。

 

「ステイ……ステイ……」

 

やるなら素早く確実に。

 

「今!」

 

「必殺!」

 

掛け声でテーブルから飛び出したサブリナが発砲、ハンドガンとは比べ物にならない轟音とマズルフラッシュを発生させる。

 

12ゲージのショットシェルに内蔵された8.38mmのペレットが敵の頭を文字通りに吹き飛した。

セミオート機構によって即座に装填されたSPAS-12は立て続けに1人2人とキルカウントを重ねる。

 

リコもそうだ。突然の事に対応しきれていない共和国派の連中を物言わぬ屍に変えている。

流石に飛んだり跳ねたりと言った動きは無いが、確実に相手の息の根を止る姿はウチの手練を彷彿とさせる。

 

「これが義体の戦い方か。凄まじいな」

 

「えと、ありがとうございます」

 

「……いや、先に進もう。包囲を突破して味方と合流する、サブリナが先頭だ。行くぞ!」

 

子供の殺しを褒めて、それに礼を言われる……か、やるせない物だ。

 

だが今は進むしか無い。俺が死ぬ時はベッドの上か、戦術人形に殺されるかだ。こんな所でテロリストに殺されるのはゴメンだ。

 

レストランを飛び出した俺達を迎えたのは共和国派、そいつに照準を合わせてトリガーを引く。

 

「コンタクト!」

 

身体の中心線、バイタルパートを狙った。

パンッ!パンッ!と発砲音が聞こえる度に人が踊り、人が死ぬ。

 

なんて事は無い。撃って当たって殺した事に喜びを感じはするが、人を殺す葛藤だとか、そんな物は余り感じなかった。

 

「以外と戦えるんですね」

 

「あんなゴロツキ上がりに手間取ってちゃ教官達に泥を塗る事になるからな。まぁ、君やウチの社員よりは下手だけど」

 

「肩が上がり過ぎなんですよ。少し腕を曲げて力を抜くんです、力の入れ過ぎはブレに繋がりますから」

 

「なるほど、フリンチと言うのになるものな。意識してやってみッ!」

 

リコと2人で石畳を踏み鳴らす、騒がしい足音に反射で銃を向けた。建物の影から出てきたのは雑多な小火器を手にした小汚い共和国派、つまり敵。

 

先行を取ったのは俺達だ。

子気味良く発砲音が響きリコが3人、俺が2人を倒す。

 

「おぉ、再照準が合わせやすくなった。ありがとうリコ」

 

「どういたしまして。それよりこれからどうするんですか?」

 

「指揮官、リコ!応援がもう直ぐ着くって。カッライヤ橋のソデリーニ通り側で合流しようって来たよ!」

 

「よし、聞いたなリコ?このまま北上してアルノ川を目指すぞ!」

 

「「はい!」」

 

合流地点を目指して銃を片手にストリートを駆け出す。

立ち塞がる者はサブリナのSPASでぶっ飛ばし、俺とリコのハンドガンで撃ち殺す。一体どれ程の構成員が居るのか知らないがコイツらは殺しても殺しても湧いて出てくるのだ。

既にP226の全マガジン使い切り、落ちていたFALを使っている。

 

だがもう少しでアルノ川に辿り着く。そんな希望を遮るように、甲高いスキール音を鳴らして現れた車両からはゾロゾロと共和国派が現れた。

俺達に銃を向けようとする運転席の男にリコが発砲する。

 

「ッ弾切れ!」

 

「サブリナ!」

 

「任せて!」

 

残る敵は6人、サブリナと同時に構えて引き金を引く。

1人は首から上が無くなり、もう1人は7.62mmを胸に数発食らった。これで残り4人、だが次弾を発砲したのはサブリナのSPAS-12だけだった。

 

俺の拾ったFALのコッキングレバーが後退途中で固まった様に動いていないのだ。

粗製のチープアモが原因なのか、杜撰な手入れが原因なのかは分からない。

だが1つ分かるのは、いくらセミオートショットガンとは言え4人を捌き切る前に誰かが撃たれるという事だ。

 

「全滅させられない!指揮官避けて!」

 

「指揮官さん!」

 

やはりそうだ、どうしても1人残ってしまった。

リコが再装填を完了するよりも、サブリナが撃つよりも速く、共和国派は発砲できる。既にその照準は俺に向いているのだから。

 

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