友「分かってくれるか」
「お前が好きなのはケモだからな」
友「なぜ知っている」
「ドルフロでケモスキンが来た時に狂喜乱舞して課金しまくった挙句に金を借りたのを忘れたか?」
友「あったねー。ところでエスコンやろうや」
火と言うものは風を受ければその勢いを増し、全てを焼き尽くす大火となる。
そしてその風は基地のスピーカーから吹き抜けた。
『この基地で戦っている、全ての者に告ぐ』
ノイズとハウリングが混ざり、聞き取り難い放送だが彼女達がその声を逃すはずもない。
自らが忠を誓った指揮官の声を忘れるはずがない。
『我々に降伏は無い。我々の居場所は、帰るべき場所はここだけだ。ならば我々は全力をもって襲撃者を撃退し、我々の居場所を守り抜く』
グリフィン側の攻撃が少し弱まった。
『戦える者は武器を取れ、生きている者は武器を取れ。そして奴らに思い知らせよう。我々はただの武装集団などでは無いと、貴様らが踏んだのはグリフィンの尾である事を』
引き金にかけた指も、マグチェンジで動かす手も止めて殆どの戦術人形が放送に聞き入る。
『私は逃げない。君達は強い、だから信じて逃げない。私の命は君達に、私が心から愛し信頼する君達に託す』
それは火を大きくするには十分以上の風量だった。
その放送に呼応するように彼女達が動き出す。
火が燃え上がり炎となる。
指揮官の放送に続くようにして叫んだのはM1895だった。彼女は小柄な体躯よりも大きなコートをたなびかせ、最古参の意地と共に手にするリボルバーを掲げた。
「そうじゃそうじゃ娘達よ!我々に退路は無い、躊躇いも無い!あるのはただ一つ、戦って掴む勝利だけじゃ。
なれば娘達よ!我らの成すべき事はただ一つ、身の程を知らぬ愚か者に己の末路を、その命をもって教えてやるのじゃ!」
「урааа!」
M1895の声に雄叫びをあげてロシア人形達が突撃。
それを見たKar98KやMP40達も溢れんばかりに増すその戦意を敵軍へぶつける。
「他の部隊に遅れを取る訳にはいかないわ。無礼者にわたくし達の力を……見せてさしあげましょう」
「忠誠こそが我が名誉!ペーペーシャ達には負けられない!」
各々が持っていた小さな火は風を受け大きくなり、横へ上へと四方に繋がった事で誰にも止められはしない。
それはグリフィンだけではなく、鉄血もパラデウスも同様だった。
皆が燃えている。怒りと使命感が燃料となって彼女達のコアを動かしている。
忠を誓った指揮官に、助けてくれた指揮官に、拾ってくれた指揮官に。
そして何より指揮官が心から愛し信頼すると言ったのだ。ならば応えるしかあるまい。
「ハハハハハハ!悪夢の中で跪きなさい!」
「余の城に土足で入り込んだ虫けら風情が、楽に死ねると思うなよ」
ドリーマーが嗤う、タレウスが怒る。
炎は勇敢にも立ち塞がる者を焼き。逃げ惑う者を飲み、その全てを殺し尽くす。
パラシュート連隊も彼女達を押しつぶさんと戦車と歩兵戦闘車を前面に出して対抗した。
ターレットリングを交いして、その特徴的な砲塔を動かすアリエテの砲口が彼女達に向けられる。
アリエテ戦車もフレッチャ歩兵戦闘車も歩兵にとっては強敵だ、対戦車ミサイルやロケットを持たない兵士が戦闘車両と会敵した際は戦わないことが最善手。
だと言うのに彼女達は止まらない。
「何だ!?勢いが増した!」
「怯むな!所詮は歩兵だ、喋る暇があるなら榴弾を装填しろ!」
「了解……装填完了!」
「砲手撃て!」
120㎜滑腔砲から放たれる対戦車榴弾が戦術人形の集団の先頭に着弾、手榴弾とは比べ物にならない爆煙が彼女達を視界から掻き消す。
アリエテの車内で砲手が吼えた。
「目標に命中!次弾装て……何?」
砲手のただならぬ雰囲気に、車長は砲弾が着弾したであろう場所を見る。
480㎜の装甲板でさえ貫徹可能な対戦車榴弾、勿論当たれば体も残らない、至近弾でも致命傷は確実。
だがそれは戦術人形というイレギュラーでは当てにならない。
「攻撃はわたしが受け止める!」
陸の王者たる戦車が撃ち込んだ砲弾は彼女達の元には届かない、なぜならそう判決を下されたから。
では誰が下したのか?その主は爆煙の中から現れる。
着弾炸裂した対戦車榴弾を受け止めたのは、堅牢無比なるシールドを展開した鉄血製ハイエンド戦術人形、ジャッジ。
裁判官はその小さき身体とは相反する確かな強大さを見せつけ裁断を告げる。
「奴らを殺せ!全軍突撃、叩き潰す!」
銃を手に、怒りを胸に戦術人形達は突撃する。
「応援要請を送った!中佐達が来るまで持たせるぞ、全員踏ん張れ!」
カラビニエリ達は微かな希望と、未だ折れぬプライドで応戦。
しかし普段からその存在を秘匿していた鉄血工造の無人機群と、精神負荷のため出撃を控えさせていたナルシス タレウス サナ達パラデウスが加わったことでいつ戦線が崩壊してもおかしくは無い。
彼らはまさしく綱渡りも等しい戦況の中戦っている。
「中佐はいつ来るって!?」
「分からんが全速力だ、何としても耐え抜け」
「支援砲撃来ます!」
夜空から降り注ぐ砲撃が基地を揺らす。
その爆発は敵を吹き飛ばし、施設を破壊する圧倒的な暴力だ。その威力、その効果は運用するカラビニエリ達がよく知っている。
だと言うのに、そんな砲撃が眼前で敵を吹き飛ばしていると言うのに全くもって安堵は無い。
機甲部隊が迫り来るマンティコアに砲口を向ける。
「こちら1号車、我々はロボットを狙う。2号車も続け!目標、四つ足のデカ物、弾種APFSDS。距離750」
「装填完了!」
「撃て!」
2両のアリエテ戦車から発射されたAPFSDS。音速を超えて飛翔する重金属の矢の前には高耐久を誇るマンティコアであっても耐えられず、続け様に装甲を貫徹される。
黒煙を上げ沈黙するマンティコアを目にし、カラビニエリ達の士気も少しだけ沸く。
「目標沈黙!やりました!」
「一匹仕留めただけだ、まだ来るぞ!」
味方のためにも次の目標を撃破しなければならない、そのためにターゲットを定めるべく覗き込んだペリスコープの視界が光に染まる。
瞬間襲い来る衝撃。54トンの車体が激しく揺さぶられ。乗員全員が狭く堅い車内にその体を打ち付ける。
車長はペリスコープ越しに、炎とは違うチェレンコフ光を思わせる鮮やかな蒼を目に焼き付けた。
「なんだ!?損害報告!」
「り、履帯をやられました!走行不能!」
蒼き閃光は主力戦車であるアリエテの履帯を転輪ごとまとめて消し飛ばしたのだ。
その正体は16Labが開発した新型特殊弾薬。時代遅れだった火薬による推進方式を棄て、高性能加速コイルを採用したことにより、音速の5倍もの速さであらゆる障害を穿つ電磁兵器。
「まだまだ盛大なおもてなしは終わってませんわ!」
漢陽88式の持つレールガン、これこそが蒼き閃光の正体。
そして、いくら戦車が陸の王者であろうともマトモに動く事すらままならず敵に接近を許せばどうなるかは火を見るより明らかである。
接近を許さないように掃射される同軸機銃を掻い潜り、2人の戦術人形が素早く駆け寄り砲塔に飛び乗った。
その内の一人であるPPQがキューポラのハッチに手をかけ、力任せに開け放っていく。
「この程度の装甲板で!」
金属の軋む不気味な音と共に開け放たれた車内、車長席から見上げる夜空にはこちらを覗き込む少女の琥珀のような瞳。
「燃えろ」
車内を覗き込む少女は、Vectorは車内に焼夷手榴弾を投げ入れた。
キューポラから炎を噴き出し乗員も居なくなった戦車を横目にM4が戦場を駆け抜け発砲。その細く綺麗な指がトリガーを引く、コアから湧き出し続ける激情を蓄えた彼女の目が敵を睨んでいる。
私達の居場所を奪う者、壊す者。
私達の仲間を傷つける者、脅かす者。
皆して死ねと、殺すと、煮え滾る殺意を秘めること無く進む。
「リロード!」
破壊された歩兵戦闘車を背に空マガジンを銃本体を振るって乱暴に外し、左手をマグポーチの伸ばした。
意識を再装填に割いたその一瞬、歩兵戦闘車の車内に身を潜めていたカラビニエリのベニートがM4に組み付いた。
「コイツ!?」
「これ以上はやらせん!」
M4は手に持つライフルを掴まれ、そして突き出されたことでそのストックが彼女の胸にぶつかる。
戦術人形であるから突然の痛みで体が動かなくなることや胸への打撃で呼吸が乱れる事はない、しかし予想外の一撃は体制を崩すには十分。
M4は背中を歩兵戦闘車の残骸に強かに打ち付け、その首を捕まれる。
「やってくれた、このテロリストがぁ!」
「ッ!」
「女子供と思っていたがとんだ化物だ!このまま絞め殺してやる!」
あらん限りの力を込めてM4の首を絞めるベニートの目もまた、M4と同じく怒りに染まっている。
同じ車両に乗っていた操縦手も砲手も既に殺され、兵員室から降ろしたファビオ達も殺され。
苦節と誇りと栄光を分かち合った仲間も殺され、彼の目には怒りしかない。
「俺達は連隊の名誉を……あの日々を取り戻す!だから貴様らをッ!?」
前触れ無く降り注いだMLRSの支援砲撃、直前と違い様子がおかしく狙いも散けているロケット弾が近くで爆ぜ、ベニートを揺らす。
首を締め上げていた拘束から逃れたM4が叫ぶ。
「知ったことか!」
よろけたベニートの腕をつかみ返すと、その肘を殴りつける。強烈な打撃でへし折れた腕が力なく垂れ下がり、激しい痛みが彼を鈍らせた。
M4の蹴り上げがベニートの顎にヒット、その攻撃は一撃で脳を揺らす。
「お前達の名誉なんて知った事じゃない!」
のけぞった男の体を掴み投げ飛ばす。
背中と腕の痛みに顔を歪ませるベニート、M4はその顔面を踏みつける。
やってくれたのはお前達だと、よくも私達の家を仲間を傷つけてくれたと、M4は足下の人間が動かなくなるまで続けた。
「殺してやる……」
M4はM9銃剣を引き抜き逆手に構える。狙うはしぶとくも死んでいないベニート、その首筋。
「殺してやる」
M4には音も光景も認識出来ない、聴覚モジュールも視覚モジュールも正常に動作はしている。
しかしコアの、彼女の心の内から溢れ出す憎悪と怒りにメンタルが支配され、ただ敵を殺すことしか頭にはない。
「殺してやるッ!」
銃剣を握り締め振り上げる。
殺意と共に振り下ろさんとしたその手。
渾身の力を込めたその手を、M16が掴んで止めた。
「よせM4」
「姉さん!?なんで!コイツは……コイツらは!」
「戦闘は終わった。周りを見ろ」
「終わ……た?」
急速に機能を取り戻した視界には、次々と武装解除し降伏する敵。
そして眩い光が飛び込んでくる。
それはブラックホークに取り付けられたサーチライトだ。同じく備え付けられた外部スピーカーからは、それに乗って帰還したネゲヴの声が響いていた。
『武装勢力に告ぐ、お前達のロケット砲及び増援部隊を撃破し、指揮官も捕らえた。直ちに武装解除し投降せよ。従わない場合は排除する。
繰り返す、カラビニエリ第一パラシュート連隊に告ぐ。増援は来ない、そしてイラーリオ・メロイ中佐も捕虜となった。抵抗を止め武装解除せよ』
M4は憤った。武装解除?投降せよ?
言葉にするのも困難な怒りを渦巻き、仲間ですら殺しかねない瞳のM4。
そんな妹と同じく、しかしそれを秘めたM16の瞳。
「コイツらには聞かなきゃならない事が山ほどある」
「だからって!このクズ共は私達の!」
「聞けM4」
M16が妹の肩を抑えた。
それはM4を落ち着かせるようでありながら、どこか自分自身に言い聞かせているようでもある。
「指揮官が見つからない」
「……え?でも、指揮官の救助にはK2が」
「そのK2の部隊が指揮官を確保できてない。だから聞き出さなきゃならない、だから殺せない、だから……」
分かってくれ。
苦痛と共に絞り出したその言葉は、妹の叫びに掻き消された。
「クルビットしながらレールガン当ててくるとかバカじゃねぇの」
友「オメーは巴戦狙いすぎなの。F-15JにはQAAMあるんだから使えよ」
「やだ!それ使うと負けた気がする」
友「HCAAなんて産廃使って勝てるんなら世話ねぇぜ」
「お前だって無理くりSuー33使ってるくせに」
友「俺は生粋のフランカー乗りで狙撃手なの」