GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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 「スマホ修理でデータ飛んだ……書き溜めのデータ全部、ハーメルンの機能で書いとけばよかった……」

友「草生え散らかしますわぁ~wwザマァみそらしど~ww」

 「コ☆ロ☆ス」


逃げるのなら

誰か、呼んでいるのか?

 

男の声が尋問室に響く。

ジャンも出て行って、今後はどんなヤツが来たというのか……薄らとしか開けられない目にはアレッサンドロとヒルシャーがいた。

 

「ボッコボコじゃねーか、しかし派手にやられたなオイ」

 

「しっかりするんだサイファー」

 

「うっ……あぁ……」

 

微かな声しか出せないが、それでも気がついてくれたようだ。

 

「おっ意識が戻った!」

 

「サイファー、おいサイファー!僕らが分かるか」

 

「アレッサンドロ・リッチ……ヴィクトル・ハルトマン……」

 

ヒルシャーがぎょっとして動きを止めた。

あぁ、俺が本名を知っているのはおかしいものな。

 

でも痛みと薬で口が止められないんだ。

 

「大丈夫、じゃねぇな。それに自白剤も打たれてんな」

 

「自白剤を……2本だ……」

 

「マジか!?3本打たれてたら廃人確定だぜ。ジャンさんは何考えてんだ」

 

「怖いんだろうさ……」

 

たぶん、彼は怖いんだろう。

 

「怖いって、あの復讐者がか?」

 

「ジョゼが、ヘンリエッタの条件付けを強化しなかったから。だからジョゼが、弟が……自分から離れたと、思って」

 

「なんだそりゃ?あーそう言えば兄弟で言い争ってたな」

 

家族を、愛する人を失った彼から最後の肉親が離れたのだ。

例えそれが思い込みであろうとも精神を蝕む事に変わりは無い。

 

そしてジョゼが自身から離れて、最後に残ったものはリコだろう。

 

「リコが寝返るとでも思ったのか、馬鹿な兄だ……誰もジャンを離れたりなどしていないのに……」

 

「流石にジャンさんのこれ以上の暴走は見過ごせない。僕からジャンさんや課長に言ってみるよ」

 

「ありがとうヒルシャー、家族が迎えに来るまで……短いだろうが頼むよ」

 

「……ジャンさんからの報告は聞いてる。流石のグリフィンも直ぐには動けないと思うが」

 

「いや!あの子達は動く!」

 

「お、おい落ち着けよ社長さん!」

 

咄嗟に言い返して体中に激痛が走る。

体を無理に動かそうとする度、拘束具が肉に食込み身体が軋む。

 

知るか!あの子達を侮るなよ!?

 

「あの子達は……俺の家族は、俺が手塩にかけて育てたんだぞ!

鉄血の要塞砲も、正規軍の戦車も、ガトリングのヤドカリだって撃破してきたんだ……時代遅れの陸軍程度がなんになる!」

 

「サイファー落ち着くんだ、しっかりしろ!何が起きてる!」

 

「知りませんって!?」

 

「製造し編成し育成し数多敵兵を打ち破った我が部隊だぞ!

敵を捻り潰す火力!弾幕を掻い潜る回避!大口径弾を弾く防御!どれをとっても、何を選んでも最高のッ!?」

 

血液が気管に入って咳き込んで、それでまた痛む。

今度は呼吸が出来ない。咳ばかりが続いて息が吸えない。

苦しい、痛い、吐き気がする。

 

全身に張り付いた苦痛が、まるで押しつけるようにして思考を強引に冷まさせる。

 

「フゥ……フゥ……フゥ……」

 

また意識が沈む。

部屋が急速に広がって一人押し潰されるような不安と圧迫感。

 

どうか今度目を開けた時には、愛おしい家族に囲まれている事を願って、意識を手放した。

 

 

─────────────────────

 

 

 

再び気を失ったサイファーの居る尋問室を後にしてアレッサンドロとヒルシャーは話す。

 

「どう思います?やっぱグリフィンは来ますかね」

 

「必ず来るだろう。あの組織はサイファーを取り返しに、必ず」

 

「マジで辞表出したいっすわ……もういっその事、福祉公社を抜けてグリフィンに鞍替えなんてどうです?サイファーを手土産すりゃあ、あの社長さんの事だ、悪いようにはしませんて」

 

「それは……」

 

「お互い、愛国心なんて物の為にこの仕事を選んだ訳じゃないでしょう?それにまぁ、ヒルシャーさんなら所属組織から重要人物を連れ出すなんて事も経験あるかなーなんて」

 

「……なんでその事を」

 

「こう見えて元公安部のスパイですよ?俺」

 

そんな会話を、無論辺りに人が居ないかを確認しながら行いつつアレッサンドロとヒルシャーは公社のフロアを進む。

 

グリフィンの実態が未来からやって来た戦闘ロボットの集団であると教えられたアレッサンドロに、真正面から立ち向かおうという気など無い。

福祉公社が敗北するのが目に見えて分かるというのに、あえてそこに自身とペトルーシュカの命を賭けるのは御免蒙る。

 

そのための福祉公社離反、そして仲間は一人でも多い方が良いと踏んでのヒルシャーへの声かけであった。

 

「あっお帰りなさいサンドロ」

 

「サイファーは生きてましたか」

 

道中怪しげな会話を聞かれる事も無くペトルーシュカとトリエラと合流した担当官2人。

ヒルシャーは、ひとまず先程の話を胸の奥にしまい込む。

 

「あーまぁ生きてはいたぜ。今の所はだが」

 

「そうですか……ひとまずは良かったと、そう思います」

 

浮かない顔で身を寄せるペトルーシュカと、当たり前のように彼女の体に手を添えて受け止めるサンドロ。

 

それをちょっとだけ羨むような、面白くないような目で一瞥したトリエラ。

彼女はヒルシャーにこれからの事を聞く。

 

例え相手が誰であろうと、担当官に命じられるのなら殺してみせる。

それが厳しい稽古を付けてくれた恩師であろうと、暖かく接してくれた知人であろうと。

決して勝てない相手であろうと。

 

だから命令しろと、そう伝える。

 

「それでヒルシャーさん、私達はグリフィンと戦うんですか」

 

「こんな事になった以上、いずれは衝突は避けられないだろう」

 

「なら命令をください、グリフィンと戦えって。そうすれば私は死ぬまで戦いますよ」

 

「トリエラ!そう言う言い方は……止めてくれ」

 

ヒルシャーの苦しそうな声にトリエラは顔を背ける。

だがトリエラのその顔もまた苦しそうだ。

 

心の内を上手いこと表すことのできない自分にトリエラは嫌気が差してる。

 

「ごめんなさい……こんなことが言いたいわけじゃないんです。ただ不安で、ヒルシャーさんに命令されないと、ちゃんと戦えない気がして。ヒルシャーさん、私は義体失格ですね」

 

「トリエラ……いや、僕の方こそ君の不安を感じてやれなかった。僕の方こそ担当官失格で」

 

「ハイハイハイ!湿っぽいのは止め止め!」

 

パンパンと手を叩いたアレッサンドロの声に2人は意識を互いに戻す。

 

「とりあえず、戦うにせよ逃げるにせよ準備はしとかねぇとな。なんせ、相手は未来から来たロボットなんだぜ?さっさと準備しちまおう」

 

「え、逃げるって福祉公社から?」

 

「そうさペトラ。福祉公社には飯を食わせて貰ったし、お前と出会えたりして色々と恩はあるが、だからって他人の引いた貧乏クジに付き合う程じゃねぇ」

 

「アレッサンドロ!?それ言っても大丈夫なのか!」

 

「俺は一人で逃げる気は無いですよ。ヒルシャーさんだってそうでしょう?逃げるのならパートナーとですよ」

 

まるでアンタ達も一緒に逃げるんだろ?と、そう視線に込められた思いを受けたヒルシャーはトリエラを見る。

またこの子を連れて逃げ出すか。

まだユーロポールに所属していた時、アムステルダムのスナッフフィルムの撮影現場から、人間の残忍さと悪心の巣窟から助け出して……

 

否、自分はこの子を助けるなどできていないじゃないか。

 

この子の為にとユーロポールから離反して、足を洗いたがっていたとは言えマフィアのマリオとまで手を組んで最先端の治療を受けさせるためにイタリアへ送って、そして義体にさせられて。

そう、僕はトリエラを助けた事なんてない。いつもいつも助けられて、これではラシェルに顔向けできない。

 

「あの……ヒルシャーさん?なんで頭を撫でてくるんです?」

 

「ダメか?」

 

「ダメじゃ……ないですけど」

 

手を動かしてトリエラの頭を撫でる。

サラサラと滑らかで初々しい金髪が指の間を抜け、ヒルシャーの逸る気持ちを少しだけ落ち着かせた。

 

「僕に着いてきてくれるか」

 

後悔と信念と優しさと、様々な想いが混ざり合う彼の目を見るトリエラ。

彼女の頭には瞬間的に愚問の二文字が駆ける。

 

そんな言葉で確認を取らなくたって私はついて行くと言うのに。震える口で言葉を紡ぎ、離れて欲しくないと怯える瞳で見つめるヒルシャーが。

 

トリエラにはそんな彼がたまらなく愛おしく映るのだった。

 

「当たり前のことを聞かないでください、私はヒルシャーさんについて行きますよ。どこへだって、条件付けじゃなく私の意志で。私の想いで」

 

トリエラの千草色の瞳には力強い、そして人としての確かな熱が力強く渦巻いている。

 

「そっ!それにヒルシャーさんだけだと戦力的に不安ですから!」

 

「トリエラ……ありがとう」

 

自分の発言が恥ずかしくなって少しだけ声を荒げるトリエラを今度こそ助けると心に決め、ヒルシャーはアレッサンドロを見た。

 

彼の行動が決まった。

 

「ヒルシャーさんとトリエラが加わってくれるなら心強いぜ!本当ならジョゼさんとこも誘いたかったが……」

 

「居ないものは仕方が無い。僕らはどうやってサイファーを連れ出してグリフィンとコンタクトを取るか考えよう、サイファーの状況を見るに余り時間はかけられない」

 

担当官達が計画について考える傍ら、ペトルーシュカとトリエラも話を始める。

 

「なんだか大変なことになっちゃったね」

 

「私は後悔は無いよ、ただあの人に着いて行くだけ。ペトルーシュカこそ良かったの?」

 

「私もトリエラと同じで自分の意思でサンドロに着いて行くことにしたから。ふふっ私達、意外と似たもの同士だね」

 

ペトルーシュカとトリエラは、互いに担当官を人として慕う者としてのシンパシーを感じた。

 

この人とありたいと、この人と過ごしたいと。

その想いを、彼女達は兵器ではなく人として胸に抱いて。

 

 




 「あと卒論の資料も飛んだ」

友「良いことを言ってやろう、お前もフリーターにならないか?」

 「嫌じゃ」
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