GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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侵入者達よ

福祉公社に降り立った3部隊はそれぞれに分かれた。

 

ルートAをAR小隊が

ルートBを404小隊が

ルートCを反逆小隊が

 

彼女達は指揮官を見つけるべく、怒りに飲まれそうなメンタルを抑え建物を進む。

 

「福祉公社はかなり押されている。共和国派ばかりと会敵する」

 

「急がないと指揮官が危ないわね」

 

AN-94 RPK-16は空マガジンを乱雑に投げ捨てながらリロード。

彼女達の周りには倒れ伏すテロリストの死体が床を血で染めている。

 

「敵排除、作戦続行」

 

AK-12は作戦開始前から両の目を開いていた。

その瞳には指揮官の痕跡を1つも逃すこと無く見つけ出そうと、普段の彼女からは考えられない狼の如き執念を滾らせている。

 

「義体が出てきた場合は頼む」

 

「Va bene 捕らえるのは得意よ」

 

特殊装備を背負ったFP-6を守るようにAK-15が先行、福祉公社職員により施錠された扉を蹴破るべく構えた。

だがAK-15の脚が動くよりも先に扉が砕け、飛び出してきた2人が彼女に襲いかかる。

 

それは福祉公社の義体であるシルヴィアとキアーラ。

キアーラはショットガンを向け、シルヴィアは義体化の影響で既に満身創痍な体を無理矢理動かしてAK-15にフーリガンツールを叩き付けた。

 

シルヴィアの持てる力を全て使ったフルスイング。

当たれば骨折どころか腕ごと持って行かれそうな打撃は、逆に彼女の幼い手にダメージを与えた。

 

「いッ!?何が」

 

まるで鉄骨を殴り付けたかの様な衝撃と反動。力の入らなくなる手を抑えてシルヴィアが見たのは、確かにAK-15の腕に叩き付けた金属製のツール。

それがひしゃげて歪んでいた。

 

ありえない光景、ありえない情報。

 

だが二人はこの感覚を知っている。

先の鐘楼占拠事件の際、地雷も銃弾も果てはミサイルの爆発すら防いだ女性達を後ろから見ていたから。

そう、彼女達の意識が紛れもなくこの敵は危険だと信号を発する。

 

この敵は人間ではないと。

 

「……今の私は手加減できないぞ」

 

「まさかグリフィン!?シルヴィア!」

 

「キアーラ逃げて!」

 

シルヴィアの、その小柄な少女の体を掴み上げたAK-15はキアーラに投げつけた。

迫り来る仲間を受け止めようと身構えたキアーラは、想像以上の強さにシルヴィアを抱きかかえたまま壁まで叩き付けられる。

一塊になり思うように動けない二人に装備を向けたのはAK-15ではなくFP-6。

彼女は背中のタンクから伸びる火炎放射器を思わせる装備を手にしていた。

 

「おしおきの時間よ」

 

そして吹き出したのは灼熱の炎などではなく、ウレタンフォームを思わせる泡だ。

 

その泡が二人に張り付くように広がっていく。空気に触れた瞬間から膨らみ始め、細かな泡が連なって体積を増して体を包み込んでいくのが、文字通り肌で感じさせれる。

 

シルヴィアとキアーラも脱出しようとするが吹き付けられた泡は瞬時に硬化し、拘束してしまう。

 

「暴れるな、それは空気に触れれば即硬化する凝固剤。逃れる事はできない」

 

「化学火傷ができないように中身は調整してあるけど、それでもあなた達には十分な拘束力があるわ」

 

これこそが特技兵が持つ鹵獲用装備。

鉄血やパラデウスでも拘束可能なフォームガンに固められれば脱出はほぼ不可能。

 

身動きも取れず攻撃も通じない。

今の二人は義体では無い、圧倒的強者である銀狼を前にした子ウサギ。

 

銀狼はゆっくりと歩みを進め、その手を伸ばす。

 

後はただ、死を待つのみ。

 

「いや……」

 

「ひッ!」

 

銀狼の、AK-15の手がそっと触れた。

 

「指揮官を連れ帰るまで、しばらく我慢しなさい」

 

おそらく人の頭など容易に握りつぶせるであろうAK-15の手は、今から食い殺される小動物のように震えるシルヴィアとキアーラを撫でた。

彼女は不器用な、けれども安心させようとする思いが伝わるような笑みを浮かべる。

 

AK-15に情けなどない、敵と判定されれば一切の容赦無く攻撃し殲滅する。

だがそれでも無力な子供を殺すことは、何よりアンジェリカと同じ子供を殺すことは、指揮官が直々に命じないでもしなければ実行する気はない。

 

それがAK-15という人であった。

 

「対象確認、シルヴィア キアーラ。非殺害リスト記載確認、対象の無力化を確認。作戦を続行」

 

AK-15とは逆に、感情抑制機能によりただ任務を遂行するだけの殺人マシーンへと変貌したAK-12。

 

彼女の雪狼の眼が二人に向けられ、恐怖がぶり返す。

一睨みもされてはいない、たった一瞥。しかしその一瞥には不気味なほどに人が無かった。

 

AN-94がAK-12の肩に手を置いて止める。

 

「AK-12、義体の子が居るということは……」

 

RPK-16は義体達が飛び出してきた扉の向こうに歩みを進めた。

 

「あぁ、やっぱり。義体が居るなら担当官も居る、あなた達はフラテッロですから」

 

RPK-16は笑顔で、それでいて油断なくマシンガンを構えている。

その銃口の先には即席のバリケードに身を隠している大人達。

 

指揮を飛ばして居たであろうマルコーに彼女は視線を向けた。

 

「厄介なのが来ちまったな……」

 

「呼び込んだのはあなた達よマルコー」

 

反逆小隊と向き合うのは担当官だけでは無い。

作戦二課の面々も横倒しにしたロッカーを盾にして反逆小隊を見る。

 

ジョルジョとアマデオが武器を手に隙を伺う。

 

「やるか……」

 

「やれると思うか?」

 

「言っただけだ」

 

彼らの軽口も言葉の端々が震えて、ヒヤリとした嫌な汗が背中を湿らせた。

 

「お前らはトリエラとヒルシャーと一緒にグリフィンの訓練に参加してたんだろ、アイツらの手の内とか分からないのか!」

 

「あのなアルフォンソ、お前は爪と牙しか武器が無いからって狼とやり合えるのかよ」

 

「しかも群れだぞ。命がいくつあっても足りるモンか」

 

その言葉にアルフォンソは口を閉じるしかできない。

ジョルジョとアマデオの言うことはもっともだ。相対するは元より戦闘力の高いハイエンド戦術人形達、それも数多の激戦と修羅場を潜り抜けることでよりシャープに研ぎ澄まされた戦闘部隊の彼女達。

 

身に纏う冷気の如き静かな殺意、それを実行出来る能力と経験、アクセントとして添えられた装備品でさえ高品質。

 

それはもはや人の身で戦うことを考える事すら躊躇われる程の怪物と他ならない。

作戦二課の中で唯一ロシア系の大柄な女性、オリガの頭には古くスラブの地で伝わる名が過る。

 

「あれはヴィルコラクの群れだよ」

 

「ヴィルコラクって……」

 

「人狼だよ」

 

プリシッラは勝手に固唾を呑む喉の動きすら遠く感じた。

 

「指揮官がどこに居るのかを言って欲しい。それと武装解除さえしてくれれば私達は攻撃しない……AK-12を止めている内に早く」

 

いつもはAK-12に付き従うNA-94が珍しくAK-12の肩を掴み制止させていた。

今のAK-12は一切の感情を抑制している。

目標を確認し、非殺害リストに無ければ殺し、リストに名があれば無力化する。

 

そのためであれば、例えそれが面識のあるマルコーや、アンジェリカと親しかった面々であっても容赦なく手足を撃ち抜き『無力化』する。

 

彼らが名を連ねるリストは非殺害リストであって非殺傷リストではないからだ。

 

「投降しろマルコー。アンジェリカと親しかったあなた達を、我々も撃ちたくは無い」

 

投降を呼びかけるAK-15。

マルコー達は静かに、その問い掛けに答えるべきかを考える。

 

 

 

────────────────────────────

 

 

 

AK-12達反逆小隊がマルコー達と対峙している時、404小隊もまた施設内を駆け回っていた。

 

コンクリートと防弾装甲で構成された公社の訓練場。

グリフィン工兵隊によって改修されたエアコンの駆動音と適度な涼しさに満ちた空間。それは今、騒音と熱気で溢れている。

 

「コンタクト、前方に敵集団。416!」

 

「言われなくても分かってる!グレネード!まとめて吹き飛ばす!」

 

UMP45の指示に怒り返しながら、416は遮蔽物から素早く身を乗り出し照準。アンダーバレルにマウントされたM320のトリガーを引いた。

 

グレネードランチャー特有の射出音と共に放たれた40㎜の榴弾は放物線を描きながら敵集団ド真ん中の着弾。

充填された高性能炸薬の爆圧と飛散する無数の破片で加害範囲内の人間を押し殺し引き裂く。

 

「こいつら、邪魔……ッ!」

 

「9!右に敵!」

 

「ありがと40姉!」

 

仲間が肉の壁となり即死を免れた者も、G11とUMP姉妹の射撃を受け仲間と同じく死体の仲間入りだ。

その地獄のような光景の中で、ラバロもまた銃を手にしている。

 

「これ程の戦力、共和国派も本気で福祉公社を落としに来たか」

 

「それとも最期の悪足掻きかもね。どのみち私達には関係の無い事よ、指揮官を確保できれば公社がどうなろうとね」

 

UMP45は淡々と、あの拷問時から変わらぬ冷徹さでサブマシンガンを発砲し死体を増やしていく。

彼女のサイトに捉えられた人間は怖ろしいまでの正確な射撃、それには明確に感情が滲み出ていた。

 

怒り。底冷えするような怒りがUMP45の瞳から爛々と光る、それは他の404小隊も同じだった。皆が一様に殺気で瞳をギラつかせ銃を手に突き進む。

銃声の応酬 爆音 叫び 嘆き 断末魔。

地獄のような戦場であり日常でもあるそれを404達が駆ける。

 

その時に声が響いた。

 

「侵入者達よ!」

 

それは怨嗟の坩堝と化した場には似つかわしくない声。

意識外からの一言はグリフィンと共和国派の引き金を止めさせ、戦場に一瞬の空白を作る。

 

皆が一様に声の主を見ようと高所のキャットウォークに視線を向け、見つけた。

 

「これ以上の狼藉は私が許さない!命惜しくは直ちに武装解除し、投降せよ!」




内々定先が赤字で新卒やっぱ取れんわって無しだと思う
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