GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

6 / 58
FN小隊

なんとも呆気ない最後だ、彼女達をわがままに巻き込んでおいて1人だけ先にくたばるのか……

 

不思議とスローモーションになった視界。俺は今から俺を殺すであろうテロリストと、そいつに突っ込む何かを見た。

 

そして死んだのは……俺ではなく共和国派のテロリストだった。

無惨な事にトップスピードで突っ込んできたバンタイプの車に轢かれたからだ。

空中に放り投げられ石畳に叩き付けられるダメージに人体が耐えられる訳もなく、頭の中から汚い物をぶち撒けて死んでいる。

 

「目標地点に到達。指揮官、救援に来ました」

 

バンの運転席から顔を覗かせたのはリアルに作られた鳥型ロボットを肩に乗せ、キリッとした顔の美女、Ballista。もちろん駆け付けてくれたのは彼女だけでは無い。

 

「GO!GO!GO!」

 

「MOVE!MOVE!」

 

車両の後ろから出てきたFN小隊は、滑らかな動きで部隊を展開させる。

彼女達の顔を見たらなんだか一気に肩の力が抜け、へたり込みそうになるのを何とか堪えてシャキッとさせた。

 

そんな俺の肩をFALが叩く。

 

「FAL、救援感謝する」

「気にしないで指揮官。それよりも怪我は?」

 

「いや、俺に負傷は無い。サブリナとリコのおかげだよ」

 

「そう、リコのね……」

 

FALは美しい顔に挑発的な微笑みを浮かべてリコの元に歩いて……あ。

 

しまった!リコとFALはこの世界で面識がある!

それも敵同士で対面している!

 

「あ、あなたは」

 

「久しぶりねリコ。確か……ヴィラ・ガッディホテルで何とかって下院議員の護衛任務をしてた時に以来かしら?」

 

「…………」

 

「あーFAL、問答は後にしよう。早い所撤退しないとカラビニエリが押っ取り刀で飛んでくるぞ」

 

「そうね。所でこの子はどうするの?」

 

このままリコを放って帰る……って訳にもいかないだろう、いくら公社が政府機関とは言え、カラビニエリに確保されれば面倒になる。

もし義体や諸々の事がバレでもしたら非常にマズイ。

 

俺はリコの頭に手を置いて頭を撫でた。予定は変わるかも知れんが……ここで回収するのも手の1つかも知れんな。

 

少なくともそうすれば、もう戦場に出て殺しをせずに済む。人として……普通の女の子として生かしてやれるかも知れん。

目を瞑って撫でられているこの子は、本当は心優しい子なんだ。だから……

 

「なぁリコ、このまま俺達と一緒に」

 

「危ない!」

 

黙って撫でられていたリコが、突如として目を見開き俺に掴みかかった。

忘れかけていたが彼女は義体だ。その凄まじいパワーに抗う事も出来ず引き摺り倒されそうになる。

 

そして乾いた銃声が鳴り響いた。

最初に俺が感じたのは石畳に叩き付けられた痛みだった。

当然だ、義体のパワーで倒されたのだから。

 

次に感じたのは冷たさ、そう冷たさだ。

ヒヤリとした感覚が腹に走った。まるでドライアイスを素手で触った様な冷たさ。

そして生暖かい液体が体に張り付く気持ち悪さ。

それを経てようやく来たのは熱さと、より激しい痛み。

 

「があッ!?」

 

「指揮官!」

 

Five-seveNが駆け寄って来て俺の腹部を押さえる、その透き通る程に白い手が赤黒く染まるのを気にせずに。

 

体に張り付く。いや溢れ出てくるのは血液、それがかなりの勢いで流れ出ている。もう既に石畳に血溜まりを作るほどだ。

 

そして視界の端に俺を撃った犯人を見た、そいつはトレンチコートに身を包み、復讐の怨念を瞳に宿した金髪のイタリア人。

リコの担当官、ジャン・クローチェその人だった。

 

FALが、FNCが、F2000が、FN49が、Ballistaが、SPAS-12が一斉に銃口を彼に向ける。

それがリコの楽譜を、条件付けを発動させた。

 

「ジャンさん!」

 

「止めなさい!あなた何してるか分かってるの!」

 

リコは考えたのだろう。賢いこの子の事だ、いくら自分が義体とは言えジャンに銃口を向けた彼女達を一度に排除する事は不可能だ。

だが動きを止めさせる事ならできる。その手段としてハンドガンを俺に向けて人質にした。

 

Five-seveNも直ぐ様リコにハンドガンを向けるが、向けることしか出来ない。

戦場は膠着状態になる。

 

「ジャン……クローチェ……リコの、迎えか?」

 

「貴様に話す事は無い、リコを返してもらうぞ」

 

「フラテッロ思いの……兄め。不器用な、奴だな……」

 

ジャンは苛立ちを隠そうとしているのか顔を歪ませる、その理由は俺の言葉かこの状況か。

 

お互いに銃を向け合うが一向に動かない、この場を穏便に動かすには必要な事が1つ。

俺はジャンとリコを刺激しないようにゆっくりと体を動かす。

 

「動かないで!失血が酷くなるわ!」

 

Five-seveNの静止を無視してリコの手に触れる。少年兵とは思えない、キレイな手が血で汚れるが仕方ないと思ってくれ。

 

この場を切り上げるには、こんな事しか思い浮かばないんだ。

 

「わたし、は……」

 

「構わんよ。リコ……よく、聞くんだ。賢い君なら、分かるだろ?このままは……ダメだ」

 

マズイな……段々と話すのも辛くなってきたぞ。

 

「だから、銃を俺に向けたまま……ゆっくり、ジャンの所に向かうんだ」

 

「なんで、そんな」

 

「大丈夫、俺はリコを……信じる。さぁ……早く、お兄さんの所に行きなさい」

 

「…………ごめんなさい」

 

そう小さく呟いたリコは照準を俺に定めたままジャンの元へ向かった。

そう、これで良い。流石にフラテッロ一組だけで戦う気は無いだろう。

 

あとはお互い撤退するだけ。それでこの話はお終いにしたい。願わくば、死ぬ事の無いように祈って。

 

「Ballista、運転をお願い。早急に離脱するわよ」

 

「待て!貴様達は何者だ」

 

「残念、あなたに答える口なんて持ってないわ。指揮官の命令が無ければ、今すぐ榴弾をプレゼントしてあげるのに」

 

「我々がこのまま見逃すとでも思っているのか。抵抗は無駄だ」

 

「あら、ジョークのセンスがなさすぎよ。私が教えてもいいけど……時間が無いわね。FNC!指揮官を運ぶから手を貸して!」

 

彼女達は警戒を向けたまま、俺を引きずってバンに乗り込む。

不安な目をして見つめてくるリコと、変わらずに睨んでいるジャンの二人に何か言おうとしたが、その前に車に積み込まれた。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

私達と指揮官を乗せた車両は人気の無い道を猛スピードで走っていた。

急がないと指揮官の命が危ない、既に多くの血が流れている。

 

彼の意識が保つように言葉をかけ続けた。

 

「指揮官?指揮官、私の声が聞こえる?」

 

「FALか……なんとか。けど、ふわふわする……」

 

「マズい状況ね。FN49、医療班の手配をお願い」

 

「は、はい!」

 

「他の皆は応急処置を手伝って!」

 

念のためにと用意していた救急キットを広げた。一通りの物はそろってはいるけれど間に合うか……

 

急ぐ私達とは対照的にFNCは落ち着いた手つきでボーチからドロップを取る。

 

「FNC……なんだ、それ……」

 

「フェンタニルドロップ、鎮痛剤です。お口を開けてください指揮官様」

 

「ありが……とう」

 

FNCが鎮痛剤を投与している間に、私は1つのパッケージを取り出して止血剤入リのガーゼを手に取った。

人間の指揮官には痛覚を遮断するなんてできないから苦しむ事になるけれど……でも、それでもやるしか無い。

この人に死んでほしく無いから。

 

これから行うことを理解したF2000が自分がかぶっていた帽子を丸めて指揮官の口に持って行ってくれる。

 

「指揮官……これからすごく痛い事をします。思い切り噛んでも良いですからこれを咥えてください」

 

「止血帯の用意ができたわ。57とF2000は上半身を、下半身はSPAS-12とFN49が押さえて……行くわよ」

 

指揮官の銃創は2つ。

私は4人に押さえつけられた彼の腹部。その銃創に、手にした止血帯を押し込んだ。

 

「ッ!?う゛っぁぁぁあ!!」

 

「暴れちゃダメ!皆もっと押さえて!」

 

指揮官は目を見開きうなり声をあげる。

激痛で動こうとする体を4人が押さている間に止血帯を詰め込んで行く。

 

止血帯ごと突っ込んだ指に纏わり付く指揮官の肉と血液が、私のコアにダメージを与えてくる。

 

「1つ目は終わったわ!あと1つ、耐えてよ指揮官!」

 

1つ目の銃創と同じ要領で止血帯を詰めて上から圧迫した。

何分、何時間経っただろうか。止血帯が周りの血液を凝固させる頃には、暴れていたのが嘘のように静になった。

 

「嘘……ダメ、ダメダメダメ!指揮官!目を開けてよ!」

 

「いや……やめてください……こんなのいやぁ!」

 

「まったく、SPAS-12もFN49も落ち着きなさい。気を失っただけよ、死んではいないわ」

 

まぁ、危険なことには変わりないけれど。それでも一安心ってところね。

 

FN49とF2000はそれを聞いて結局泣き出してしまった。

見た目や言動とは裏腹にかなりドライな性格のFNCだって、うっすらと涙を流している。

 

「そう言うFALだって泣いてるじゃないの」

 

「当たり前よ、嬉しいんだから。それは57も同じでしょ」

 

「まぁ、ね」

 

本当に罪な男ね、私達みたいな良い女を泣かせるなんて。

 

「Ballista、分かってると思うけど」

 

「素早く安全に、ですよね。大丈夫です、あと少しで着きますから」

 

「そうなの?そんなに走ったのね」

 

「あんな事をしたんです。FALも休んでください」

 

Ballistaの言葉は嬉しいけど、まだシステムをセカンダリレベルにはしたくなかった。

指揮官が予断を許さない状況なのはもちろん。だけどそれ以上に、この人が前に居るのに意識を失いたくはなかったから。

 

こんな罪な人を好きになるなんて。ホント、私は馬鹿な女ね。




エミリオ(わ!すごいキレイなお姉さんだ……)

FAL「あら?坊やはこのホテルのポーター?」

エミリオ「あ。は、はい!」

FAL「そう……ねぇ、このホテルから少しの所にチョコレートのお店があるの。1000リラあげるわ、お釣りはチップにしていいからお使いに行ってきてくれない?」

エミリオ「ありがとうございます、行ってきます!」

FAL「ベルギーチョコレートをお願いね……ふぅ、民間人の退避確認。もし死なれたら後味悪いもの」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。