GUNSLINGER DOLLS   作:ジョンドウ

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すみません!誤字報告をされた方ありがとうございます!

でもジョゼ山は誤字じゃないんです!紛らわしくてすみません!


敬意を表する

「ここグリフィンは傭兵会社と伺っていますが、イタリアに本社を置いて仕事はあるのですか?」

 

まるで本物の記者のようにメモを取り出したジャンが質問を投げかける。

 

ヘンリエッタはその横で大人しく、体にピースなジュースを飲んでる。

濃いめに入れてもらったからか、若干表情が緩いのが可愛い。

 

「確かに我々は傭兵会社ではありますが、主な業務は施設警護とか夜間警邏です。早い話が警備会社と言った方が良いですね」

 

「なるほど、ではPMCでは無くPMSCと?それにしても規模が大きいですね。確か軍用ヘリも所有していたと思いますが」

 

「ええ。あまり使うことはありませんが、テロ、暴動、自然災害、有事の際はいつでも動かせます」

 

「しかしこれは合法的に所持しているのですか?」

 

「もちろんですとも!イタリア政府の方々と交渉を重ね、許可をもらっています」

 

少なくとも広告に出したり、アピールしているものはだが、無論グレーどころか真っ黒くろすけな物もあるが。

 

そんな物の許可が下りた理由?決まってるだろ?

 

「共和国派のテロはイタリアの脅威ですからね。政治家の連中、自分達を守ってくれるならと許可をくれましたよ」

 

「では政治家の警護を行う見返りに許可を得たと?」

 

「はい、治安維持として我々への期待も大きくなっていますよ。今度からは大手を振って街を警備できます」

 

お前ら福祉公社には仕事しづらいだろうがな。

元はといえばスポンサーの意向だからって政治家を殺してたのが悪い。

 

俺は悪くねぇぞ。

 

「なるほど、市街地での行動も可能になったと……次はそうですね。この基地の社員は女性が多い様に感じますが」

 

「えぇ、実際女性が多いですよ。皆優秀なスタッフです」

 

「彼女達の出身は?」

 

「バラバラです。アメリカ、中国、ロシア、韓国、イタリア、ドイツ、日本。とにかくバラバラですね。ご安心を、ちゃんとした経歴の持ち主ですよ」

 

電子戦が得意な子に作ってもらった経歴だけどネ。

ちゃんとキレイな事に変わりは無いから、経歴自体が黒い事は知らん。

 

「一人一人個性的ですよ。自分の事をドラゴンだと思ってる元機長だとか、常に自分と会話してるとか、イタリアンピッツァ原理主義者とか」

 

「は、はぁ……」

 

「呼びます?」

 

「いえ結構です」

 

P22は話せば面白いんだがなぁ。P22が話してるP22の区別がつくと、彼女1人しか対面していないのにグループワークをしているような感覚になって楽しいのに。

 

個性が服を着ている様な連中を紹介したいが断られたなら仕方が無い。

 

「お嬢さん。ジュースのおかわりはいるかな?」

 

「えっと、はい。お願い……します」

 

「そう恥ずかしがらないでいい。そのジュースは私も飲みなれた日本の国民的なジュースなんだ、口にあったなら嬉しいよ」

 

わざわざ取り寄せた甲斐があったと言う物。

爽やかで甘酸っぱい乳酸菌飲料は故郷の味。事実、64式自や89式達に大好評なのだ。

 

割る時の濃さで争いが起きてしまう事が度々あるが……

 

その後も記者のふりをしたジョゼとのやり取りは続く。

俺は答えられる範囲で応答を続けて、気が付けば長い時間が経っていた。

窓の外には燃えるような夕焼けが広がっている。

 

「もうこんな時間ですか。本日はお時間を頂きありがとうございました、サイファーさん」

 

「いえいえ、とても有意義な時間で私も楽しかったですから」

 

「上司が許可をくれて記事に載る時には、全力を尽くしますよ」

 

「お願いしますよ?カルロさん」

 

そんな事が無いのは重々承知である。

どことなく憂いを帯びたジョゼの営業スマイルに、俺も同じスマイルで返して握手した。

彼の手を握ると、不思議と重さを感じた。

もちろん物理的な重さでは無い、彼の背景とでも言うのだろうか。

 

憎しみ、怒り、後悔、懺悔。様々な思いを背負った人間の重さだ。

 

ジョゼも背負っているのだ。家族のため、不条理己に身をやつし、己を押し潰してまでも。

 

「指揮官、お客様。どうかされましたか?」

 

「いや……少しな。すみませんカルロさん」

 

「いえ……こちらそ」

 

G36Cの声で手を離した俺は、ふとデスクにある物を思い出しだ。

それを手に取りヘンリエッタに差し出す。

 

俺の手にあるのは少し大きめのぬいぐるみだ。

 

「あの、これは?」

 

「今度発売しようと思っている新商品。ただのぬいぐるみだよ、お土産にどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

SOPMODⅡ Jrとダイナーゲートのぬいぐるみを抱いたヘンリエッタは、少しうつむきながらも返事を返してくれる。

その可愛い微笑みが耐える事のない未来、それが欲しい。

 

GUNSLINGER GIRLなんて世界にぶち込まれたのだ。こんな事を望んだとて咎められはしないだろう。

 

「カルロさん」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「多くの物を背負う貴方に、私は敬意を表する。何かあれば遠慮なく連絡をしてくれ、君達兄弟以外の者達も受け入れる」

 

「……ありがとうございます。その様な事があれば是非、頼らせてください」

 

その言葉に、何とも言えない笑みを貼り付けてジョゼとヘンリエッタは応接室を出る。

 

俺は彼等フラテッロが見えなくなるまで胸を張った敬礼で見送った。

 

 

───────────────────

 

 

「兄さん、グリフィンに潜入して例の日本人から話を聞き出したよ。詳しい事は帰ってから話す」

 

『そうか……感づかれたか?』

 

「そうだね、恐らくだけど……彼は僕達が公社の人間だと知った上で話を受け入れたんだと思う」

 

『厄介な連中だ、だが都合のいい事に奴を消せとスポンサーから依頼が入ったところだ。帰ってきたらブリーフィングを行う、いいな』

 

兄 ジャン・クローチェからの電話を切ったジョゼは、愛車であるポルシェの運転席で大きく息をついた。

 

先日にトップを銃撃された組織に、そのトップを撃った組織、それも犯人の弟である彼が足を踏み入れたのだ。

ヘンリエッタを連れているとしても、向けられる濃密な殺気と、綱渡りも甚だしい作戦。そして殺気に当てられて暴走寸前のヘンリエッタに気を配っていた疲れは途方も無い物だった。

 

「あの……すみませんジョゼさん。私、あの人の目が怖くて……ジョゼさんを守ろうと思って」

 

「ありがとうヘンリエッタ。確かに、あの男の人の目は怖かったね」

 

「はい……とても優しくしてくれるのに、とても冷たくて暗い目をしてて。撃たれてないのに手足が痛くなって……」

 

そう言って貰ったぬいぐるみを抱き締めるヘンリエッタ、彼女は右手を庇うようにしている。

 

一種の幻肢痛のような物だろう。あのサイファーと言う男は条件付けで忘れさせた筈の、ヘンリエッタとなる前の記憶を思い出させる程にヘンリエッタの心理に楔を打ち込んだのだ。

 

そんな彼女を、ジョゼは優しく撫でる。

 

「念の為、公社に帰ったらビアンキ先生に診てもらうかい?」

 

「い、いえ!大丈夫です!大丈夫ですから、だからその……」

 

ヘンリエッタは考えた、もしビアンキ先生にお仕事に使えないと考えられたらと。

仕事の出来ない義体に担当官が付けられるとは思えない。

 

それはジョゼの為に生きていると言っても過言ではないヘンリエッタにとって、死よりも恐ろしい物だ。

 

「分かった、ただし!何かあれば直ぐに言うこと。良いね?」

 

「はい!ありがとうございます、ジョゼさん!」

 

「うん、いい返事だ。ついでに夕飯を食べて帰ろう。美味しいレストランがあるんだ」

 

2人を乗せたポルシェは、だんだんと暗くなっていくイタリアの街並みに消えていった。

 

 

───────────────────

 

 

スコープの向こうには緊張感の欠けらも無い顔をしたターゲット、私はその頭に照準を合わせた。

 

今回のお仕事は簡単な物だと私は考えていた。隙だらけのターゲットを狙撃するだけの簡単なお仕事、そんな事に2人もフラテッロを投入するから。

 

実際、サイファーと名乗っている日本人は警戒する事もなく一定の速度で街を歩いている。訓練よりも簡単かもしれない、私はこんな事を早く終わらせようとトリガーに指をかけた。

 

公社のスポンサーから依頼されたと言うこのお仕事を早く終わらせれば、今度こそ褒めて貰えるかもしれない。

 

あの2人の様に……

 

今度こそ、今度こそあの人は私を。

 

その時。突然ターゲットが立ち止まり、自分の存在をアピールする様に大きく手を広げてぐるりと回って……私と目を合わせて笑った。

 

偶然?いや、あの日本人は確かに私を見ている、スコープ越しに私の目を見ている。

その笑顔に得体の知れない恐怖を感じる、冷や汗が止まらない。息が乱れる、指が震える。

 

助けて、助けて!助けて!助けて!

 

かけっぱなしのセーフティに気付いた時、隣からくぐもった発砲音が。

急いでスコープを覗けば、頭に銃弾を受けたターゲットが血溜まりに沈んでいた。変わらず私達の方に笑いかけながら……

 

「エルザ、ボヤっとするな!……チッ、使えん奴だな」

 

不気味な恐怖で、遠く遠くなった周りの音の中。ラウーロさんの言葉だけが私の中で木霊した。

 

 

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