最強冒険者になったのはいいが専用武器が恥ずかしすぎる件 作:シリアルナンバー113
21世紀の日本に、かつて俺はいた。平凡な人間で、何の特徴もなく何の長所もなく。尊敬の目で見られることなど何一つない、そんなありきたりな人生を過ごしていた。
そんなある日、夜中にコンビニに向かっていると無灯火の車が勢いよく飛び込んできて──気づけばこの異世界に転生していた。一切心構えもできず、死体以外に何も残すこともできず、俺は無様に21世紀の日本から去った。
だから赤子として誰とも知らぬ女の腹から取り上げられた時、こう思ったのである。
今度こそは、人に誇れる自分になりたいと。
だから俺は転生後、小さな頃から必死に努力した。必死に文字と言葉を身に着け、武器を振るった。あんな終わりは嫌だと。何も残せないのだけはもう御免だと。
器術と呼ばれるこの世界のファンタジーな力も必死に習得した。
その結果がア〇ルビーズであった。なんでだよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日朝。俺は豪奢で柔らかいベッドで目を覚ます。窓からは朝の光が柔らかく差し込んでいる。木製の床にはふかふかとしたカーペットが敷かれており、その上にはアンティーク調の小さなテーブルと、一人掛けのゆったりとしたソファが置かれている。机の上にはいくつかの古びた本が積まれていて、付箋代わりの氷華鳥の羽が挟んであった。そのいずれも、冒険者という不安定かつ微妙な職につく人間としてはありえないほど高価なものであった。
というのも独身貴族を満喫している俺は、正直あまり金の使い道がない。武器を買うにしても高級品は少ないし、かといって色々買っても管理しきれない。
結果としてこういった身の回りのものに金をかけることが増えるというわけだ。そして部屋を豪奢にしている理由はもう一つある。それはつまるところ、彼女の趣味であった。
「おはようございます、夜に駆ける変態ア〇ルビーズご主人様」
「ローレライ、その呼び名だけはやめてくれない!?」
黒を基調としたクラシックなメイド服を着た美人の女はどこで覚えたのか、まるで貴族の如く気品のあるお辞儀をしながら部屋に入ってきた。艶やかな黒髪にどこまでも覗き込めそうな深い青色をした目を持つ彼女は、俺が雇っているメイドでありそして、唯一俺の秘密を知る女である。ローレライは微笑みながら俺の着替えを準備し、隣に置いてくれる。
ローレライとの関係は話せば長くなるので省略するが、ようはメイドと主人の関係である。俺は金を出して彼女を雇用する。彼女は金を支払われている限り俺の
ローレライはテーブルにカップを置き紅茶(俺はそう呼んでいるが、正式名称は違うらしい)を淹れながら、朝井戸端で仕入れてきたと思われる噂話を俺に話してくる。
「昨日の件で街はもちきりですよ。また『黒数珠』が街を守ったと。国内に噂が広まるのも早いでしょう」
「早いとそれはそれで困るんだよな。その分騎士団の名誉が下がるし」
この世界では、名誉が重要視される。俺に『黒数珠』なんて名前が付くように、二つ名をつける風習があるくらいだ。
その理由はネットがないから、といえば分かるだろうか。個人がどれくらいすごいのかが口コミ以外ではまるでわからない。だから人々は少しでも勇敢さが、有能さが他者に伝わり覚えやすくなるよう二つ名をつける。そうやってできたのが二つ名であり、不覚にも一瞬メインウエポンを子供に見られた結果つけられた名前が『黒珠数』という俺の二つ名であった。最悪過ぎるだろ、まあ子供がア〇ルビーズを理解していなかったから良かったけど。
つまりそれだけ名誉が大事にされるからこそ、俺が『黒数珠』のうちは下手な貴族より上に扱われ、人々から尊敬の目で見られる。逆に仮にア〇ルビーズが正体だとバレてしまえば俺の名声は反転し、そこらの浮浪者よりひどい扱いを受けるわけだがそれはさておき。
そう、これだけ名誉が大事な世の中でこんな噂が流れれば。騎士団の面目は丸潰れなのである。
「騎士団の方はなんて言ってる?」
「淫具野郎に手柄を取られたと怒り回っているようですよ」
「奴らはその事実知らないからな!?」
「でも傍からみたら面白いですよ。市民から国家の剣よりア〇ルビーズが人気集めている光景は」
「国民的ア〇ルビーズになる日も近い……ってなに言わせてるんだ!」
ローレライの戯言を受け流しながら俺は服を着て紅茶を飲み干す。俺の毎朝の恒例行事として、一つだけ続けていることがあった。冒険者たちは皆面倒くさがってやりたがらないけれど、まあこういうことを誰かやらなければ組織は成り立たないのだ。
「それじゃあ後輩たちの器術指導に行ってくる」
「行ってらっしゃいませ、
「なんか言い方おかしくない!?」