ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記(本編/子育て日記)   作:救護騎士団記の記録係

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元スレ:【SSスレ】ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記 Part2
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子育て日記:40日目 鷲見セリナ

子育て日記:40日目 鷲見セリナ

スズランちゃんが初めての言葉を話してから2日。

 

初めて私達が理解できる言葉を喋った

ということは親としては言葉を教えたくなるもの。

 

絵本や図鑑、そして果ては自分達の名前までと

言葉をなんとかして教えよう、となるのが

親のエゴ、というものなのかもしれません

―――――――

 

「ほら、スズラン。ミネママですよ」

 

「いーあぁー!」

 

「ほらほら、ハナエママですよぉ~」

 

「んなーあ~」

 

「もう、二人とも。…セリナママも覚えてくださいね。」

 

「いあーまあ。」

 

3人でぎゅうぎゅうと肩を寄せ合い、ぽかんとしたスズランちゃんへと向き合う。

何をさせたいのかよく分かっていないお顔で

私達の言葉を真似しようとするのだが

まだ発音が難しいのか、一向にそれらしい言葉には聞こえない。

 

それでもきっと自分の名前を呼んでくれているように感じられるのは

例えそれが親ばかだとしてもそれだけで嬉しいものだ。

 

スズランちゃんは少しずつ大きくなりはじめ、

色づき始めた亜麻色の翼をぺしぺしと地面に向けて羽ばたいている

どうやら髪色も同じ色のようで、それがミネ団長の庇護欲をさらに掻き立てているようだ。

 

「上手ですよ、スズラン!」

 

なんて言いながら、ミネ団長がスズランを高く高く抱き上げて

それが楽しいのかきゃっきゃと笑うスズランちゃん。

 

そんないつもの昼下がり

賑やかに過ごす私達の元へと来訪者がやってきた。

 

「……どっちが雛鳥か、わからないな」

 

その声に振り返ると、正義実行委員会のツルギ委員長がそこに立っている。

後ろには、正義実行委員会の部員達が数人

これまでであれば、少し身構えるような状況なのだろうが、今では少し違う。

 

ミネ団長はこの姿を見られたのが恥ずかしいのか

そっと地面に降ろして、表情を作り直すが時すでに遅し。

 

「…正義実行委員会の委員長が、こんな時間になんの御用でしょうか」

 

「うゅーご!うゅーご!!」

 

べし、べし、べし、とスズランちゃんによって順番に叩かれる私たちの頭。

よくよく見れば、ツルギ委員長の指先には小さな擦り傷があるようだった。

 

後ろに控える部員達も、どうやら少し怪我をしてはいるものの

擦り傷や打ち身程度のもので、自分の怪我よりも興味があるかのように

ツルギ委員長の後ろからスズランちゃんの姿を覗いていた。

 

このくらいならば、わざわざ救護騎士団を訪ねずとも

自分達で治療できそうなもの。

 

確かに小さな怪我とはいえ

ばい菌がはいってしまえばすぐに化膿してしまう

きちんと手当をすることは良い事なのだろうが、きっと目的はそれではない。

 

なんとなくその目的を察しながらも

私達はいつも通り治療の準備を始め

正義実現委員会の皆さんを部室の中へと通す。

 

「すみません。こちへどうぞ。

 すぐに手当しますね。ツルギ委員長」

 

「うーぎぃ!こーこー!」

 

スズランちゃんが私の真似をして、ツルギ委員長の名前を呼ぶ。

私が救急箱を取りに行こうと立ち上がったその瞬間だった。

 

「…うーぎ……?……あ゛あ゛あ゛――キャァァァアアアアアア!」

 

ツルギ委員長も、それを自分の名前だと認識をしたのだろう

数秒間の硬直の後、部屋に舞うつむじ風。

 

きっと翼を大きくはためかせたのであろうそれが。

棚の包帯や医薬品の箱を吹き飛ばし、それが収まった頃には

正義実行委員会の部員達を残し、忽然と姿を消していた

 

なんだったのだろうか、と唖然とするのも慣れたもので

ここ1カ月とちょっとの間、よく見る光景だ。

おかげで、最後まで治療できた事は無いのだが

それでも何度も訪ねてくるので、治癒の経過は確認できるのでまあ、良いとしよう。

 

「委員長が…すみません…」

 

「いえいえ、もう慣れましたから。

 それよりも、いつも大変ですね。」

 

「今日は全然、最近はツルギ委員長が殆ど全部倒しちゃうので…

 無謀気味に突撃していくのはやめてほしい、ってハスミ先輩も言ってました。」

 

「あら…」

 

「まるで怪我したいかのようだ、とも…」

 

「それは良くないですね…」

 

その言葉にミネ団長の耳がピクリと動く。

おそらく、次にツルギ委員長が来られた時は

一番染みる、一番よく効く傷薬が使われるのだろう。

 

残された部員達の治療をしていると、次に現れたのはサクラコさん。

こちらもこちらでスズランちゃんの様子を気にしているようで

ドアに身を隠すようにして隙間から覗いている。

 

なんで入ってこないのかと言うと、初対面のときに泣かれて以降

自分の顔を見ると泣くのではないかと心配なのだそうだ。

 

「あの…すみませんが頭痛薬を分けて頂きたく思うのですが…」

 

小さくか細いその声で話しかけてくるサクラコさんは

正義実行委員会の部員達の治療をするミネ団長の隣

それを興味深そうに眺めるスズランちゃんへと目を滑らせた。

 

その視線に勘付いてなのか、スズランちゃんが

ドアの方へと目を向けるとばっちりと視線がぶつかり合う

 

「スズランさん……えと、わっぴー?」

 

「あっいー!」

 

サクラコさんの顔を見ると、一目散にベビーベッドへと駆け寄るスズラン。

逃げ出したのかと落ち込むサクラコさんは、頭を押さえてしゃがみこむ。

 

しかし、スズランちゃんはベビーベッドへと一生懸命手を伸ばし

何かを引っ掴むと、一目散にドアの前へぽてぽてと歩いていた。

 

本人としては走っているつもりなのだろうけれど

その足が踏み鳴らすのはぺちぺちという音。

サクラコさんの足元までたどり着くと

ベビーベッドから掴んだ何かをサクラコさんの方へと見せていた。

 

「あら…?それは…」

 

「あー!」

 

にっこりと笑うスズランちゃんの手には、ウィンプルが握られており

それを下手っぴに被って、満面の笑みでサクラコさんに向き合っていた。

サクラコさんはそれを見るや否や、ドアの隙間からするり、スズランちゃんを抱きしめる

 

「ああ、スズランさん。神のご加護のあらんことを…」

 

「本当に、この子は…すみません…」

 

「いえ。もう大丈夫です。私は大丈夫です。」

 

サクラコさんが抱きしめたスズランちゃんをゆっくり離し立ち上がると

物足りないかのようにスズランちゃんはそれを見上げる。

 

最初は不思議そうな顔、徐々に不安そうな顔、そして目に涙を貯める。

 

これは、もしかして、なんて私はスマートフォンを片手に構えると

スズランちゃんはサクラコさんの方に手を伸ばして泣き始める。

ほとんど泣かないあまり見る事のない表情に片手に構えて写真を一枚。

 

慌てふためくシスターフッドの冷血で冷徹なトップと

それを困らせるスズランちゃんのツーショット。

 

「なぜ…なぜ…こうなるんでしょうか…ほら、わぴわぴー」

 

「あや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

「すみません…あのこれ…」

 

サクラコさんに頭痛薬を渡し、スズランちゃんを抱きかかえると

ズランは私の白衣に顔を埋め、その鼻水と涙を拭っている。

 

苦手、というわけでもないようだが、なぜか毎回このオチになるのは、なぜなのだろう。

大きくなったら、本人に聞いてみたいことの一つだ。

 

「ありがとうございます…夜分遅くに失礼、いたしました…」

 

なんとも言えない表情で救護騎士団の部室を後にするサクラコさんへ

スズランちゃんの手を振って見送り、私は部室に向きなおす。

 

そこでは丁度、正義実行委員会の方達も治療を終えたところで

彼女達もスズランちゃんの頭を撫でて部室を後にした。

そんなひと波を終えて、ミネ団長はため息ひとつ。

 

「まったく、ツルギ委員長は何のために来たのでしょうか。」

 

「スゥちゃんの事を気にしてくれてるんですから嬉しいことじゃないですか。」

 

「それならば治療くらい受けて行くべきです。」

 

ハナエちゃんとミネ団長が困ったように小さく笑う。

次の要救護者に備えて、使った医薬品を補充して

時計を見て見れば、もうすぐ消灯時間。

 

明日は、ティーパーティーへの定期報告の予定がある

といっても、ナギサ様もセイア様も気にしてくれているだけで

昔のように、出向くだけで緊張するような会ではない。

先生も招いてのことだ、明日に備えて早く眠るとしよう

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