ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記(本編/子育て日記)   作:救護騎士団記の記録係

15 / 22
元スレ:【SSスレ】ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記 Part2
https://bbs.animanch.com/board/3248666/


子育て日記:43日目 蒼森ミネ

子育て日記:43日目 蒼森ミネ

先生がアリウスの生徒との接触を計画してくれている中でも

私達の子育てが止まる、ということはありません

 

日々、この子の変化を見守るその日々というのはそれだけで幸せがあります

そして、時折目を疑うような変化もまた、この子の成長の一ページです

 

――――――――

 

「ミネ団長、…ちょっと、見てください」

 

昼休み、救護騎士団の部室へと戻ってきた私たちを迎え

スズランを受け取ったセリナが言う。

じっとスズランと向き合うセリナの横からスズランの顔を覗き込むと

その隣には、比較するように一枚の写真が握られていた

 

「あ、ずるい。セリナ先輩、私も私もー」

 

ハナエがセリナを挟んで向こう側

3人並んでスズランの方を覗き込む。

 

写真とスズラン、交互に目をやって

間違い探しのようにそれを比較していると

確かにどちらもスズランなのだが、そこには確かな違いがあった。

 

ふわふわの髪の毛は随分伸びて、量も増えて来た。

 

目は相変わらずにまん丸ではあるのだが

写真ではまだ淡い色だったその瞳は、だんだんとオレンジ色に色づいていて

毎日顔を見ていたはずの私達はその変化を見落としていたことのに驚いた。

 

「赤ちゃんの瞳の色が変わると言うのは、本当だったのですね。」

 

「わ、きれいな色ですねえ」

 

写真と比べながらまだ淡い色を発しているその橙色を覗き込んでいると

その髪の毛もいつの間にか亜麻色の中に、一筋の鉄黒色に染まりかけた房を見つけた。

 

メッシュのように入るそのひと房の色違いは根本から少し色が違っていて

きっとこれも生まれ持った特徴の一つなのだろう。

 

「ふふ、スズランったらお洒落さんですね。」

 

「うぇい!」

 

セリナがそのひと房を手に取って撫でると

どやっとばかりに自慢げな顔をして見せるスズランは

その背中にある髪の毛と同じ色の翼をはためかせさらに感情を示して見せる。

 

バサバサと振るわれたその翼は、もう既に体に対して十分以上に大きく

音もなく、心地の良いそよ風を起こしていた。

 

私たちの翼は、この重たい体を空に持ち上げるには

少々頼りない翼ではあるが、この子なら本当に飛んでしまうかもしれない

羽ばたくたびに舞い上がる柔らかな羽毛。

空中でひとつ掴みとって、もうすぐ生まれてくる空を駆けるための翼に思いを馳せる。

 

そんな感傷に浸る私の後ろで、

先ほどまで隣に並んでいたはずのハナエは鼻歌交じりに何かを集めていた。

 

膝を折って、床をぴょんぴょんと飛び跳ねながら

何かを一つ一つつまみ上げては手のひらに乗せる。

その繰り返しで既に大きな塊と化しているそれはすぐに片手には収まらない量になっていた

 

「ハナエ。何を集めているのですか?」

 

「これですか?」

 

ハナエの両手にこんもりと盛られたその綿のようなものは、スズランの幼綿羽

スズランがご機嫌に翼をはためかせるたびに舞い散る

ダウンのようなそれは、よくよく見れば部屋中に落ちていた

 

さすがに、救護騎士団の医務室ともあろうものがこの惨状というのは、

ちょっと見せられたものではないかもしれない。

 

「これでちょっとしたクッションでも作ろうかと!

 スゥちゃんの羽根が生え変わるまでには、いっぱい集まりそうですし!」

 

そう言うと、その手の物を大切そうに抱えて、部屋の隅まで足早に。

そこにはいつから集めているのか

既に、手提げのビニール袋にいっぱいの幼綿羽が詰められていた。

 

いつの間に、と私もセリナも言葉を失う。

ようやくと口を出そうになった言葉は「まったくこの子は」ではあったが

実際に口を突いたのは別の言葉

 

「…私にもお願いします」

 

「あの、私にもお願いします…」

 

きっとセリナも同じ気持ちであったのだろう

少し恥ずかしがりながらも、二人して同じ言葉を口にすると

その言葉の前に私達が何を考えていたのか察したのであろうハナエが

ニッコリと少しの意地悪さを含んだ顔で笑う

 

「どうしましょーかねー?」

 

大切そうに、スズランの羽毛が入ったビニール袋を抱くハナエ。

それを左右に振りながら、チラチラとこちらの出方を伺う。

 

「そんな殺生な!私だって、何か思い出の品が欲しいのです!」

 

「そうですよ、いじわるなんて言っちゃだめですよ!」

 

そんな私達の姦しいやりとりを、スズランはきょとんとした顔で眺める

自分の羽根がそんなにも珍しいものだろうか、と背中から回した翼を

ふむふむ、しげしげそれを眺める。

 

そして何を考えたのか、少しだけ「うー」とうなったあとに

少し気合を込めた「きゃい!」何をしているのかと眺めていると

その手に握った何かを、ぐいっと私たちの目の前に突き出した

 

「あい!」

 

私が掌を差し出すとその拳が開かれ、はらり、私の掌に落ちる。

そこには小さな、生えたての小さな正羽が一枚舞い降りた。

 

ニコニコしたその笑顔を称えながら、両手を頬に充てた照れ笑い。

きっとこの子は、自分の大好きな羽根を私たちにくれたのだろう。

 

自分がとても大切にしている、

生徒達から貰った羽根のように、自分の大切なものを。

 

羽根を抜くのだって、自然に抜けるのでなければ痛くないわけではない。

 

この子はきっと強い子だ。痛みを乗り越えてなお、愛を与えられる強い子だ。

もしかしたら私達とともに、私達のように救護の道を歩んでくれる子なのかもしれない。

 

その美しい亜麻色と鉄黒色が入り混じる

不思議できれいな模様の羽根に、3人で手を重ねて私達は想った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。