ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記(本編/子育て日記)   作:救護騎士団記の記録係

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元スレ:【SSスレ】ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記 Part2
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子育て日記:50日目 蒼森ミネ(2)

「あー!」

 

手を振るスズランに、アリウスの4人は

また四者四様のリアクションを見せる。

 

リアクションに迷って左右を見ているサオリさん。

仮面を少しずらして無表情で手を振るアツコさん

少しやわらかな表情に変わったミサキさん

少し身を乗り出して、興味津々に見ているヒヨリさん

 

そんな4人を見て、スズランもご機嫌なようで私の胸を叩いて床に降ろせと指示をする。

 

最近は歩いて転ぶ事もずいぶんと減った。

自分の足で歩くことも増えてきたので室内などでは自由にさせていることも多い。

そしてどうやらスズランは自分で歩く方がお好みのようだ。

 

床に降ろしてあげると、テーブルを迂回するように歩き出す。

セリナかハナエのところにでも行くのだろうか、と見守っていると

二人の後ろを通り抜けテーブルの向こう側

 

すっかりテーブルの影に隠れたスズランに

私が立ち上がった頃には既にスズランはサオリさんの足元へと辿り着いていた。

 

「なんだ、どうしたんだ…?

 なぜ私をじっと見ているんだ。

 私は、……私はどうしたらいい?」

 

「さあ?子供の世話の仕方なんて知らないよ。

 一番ヒヨリの面倒を見てたリーダーが、一番詳しいんじゃない?」

 

「フフ、サオリが困ってるなんて少し新鮮」

 

サオリさんの椅子の隣から、じっとサオリさんの顔を見つめるスズラン。

 

しばらく見つめ合って、膠着状態が出来上がり

困り果てて、椅子から立ち上がったサオリさん。

 

その目は助けを求めるように、他の面々へと向けられるものの

ミサキさんとアツコさんは我関せず。

悠々お茶を飲んで、お菓子に手を伸ばす。

 

「……くッ!」

 

きっと本当に子供と接する方法が分からないのだろう。

身構えてと少し下がるサオリさん。

下がると近づくスズランに、もう一歩後ろに下がると

逃げようとするのを捕まえるかのようにスズランはひしと抱きついた。

 

「おりぃ?」

 

「姫!ミサキ!私はどうすればいい!?

 頼む。助けてくれ!」

 

しっかりと足に抱きついたスズランを蹴らないようにと

今度は身動きをすることができなくなった様子。

 

スクワッドの皆さんに助けを求めるサオリさんだが

なにやらにやりと微笑むばかりで助ける気はないご様子だ。

 

ちらり、こちらへと助けを求める目を向けられるものの

なぜか楽しそうなスズランに、このまま引き剝がしてしまうと

ぐずり出しそうな気がして少し様子見。

 

「なぜだ、姫、ミサキ!なぜ私を見捨てるんだ!」

 

「そりゃ、リーダーも私達を見捨てて自分探しの旅に行ったからでしょ。」

 

「自分が助けて欲しいときにだけ助けてもらえると思うのは、傲慢」

 

その言葉に、一人だけ別に現れた理由を悟る。

今はサオリさんは1人だけ別行動、ということなのだろう。

そして、この二人はそれを少し根に持っていると。

 

なにやら救護が必要そうな関係性に、どう口を挟もうかと悩んでいると

そんな中、唯一助けに入ったのはヒヨリさん。

 

「あの、あの…スズラン…ちゃん?

 いえ…すみません、スズランさん。

 サオリ姉さんが困っているので…」

 

ミサキさんの足にしがみつくスズランを自分の胸に抱き上げた。

その不慣れな手つきを見るに、彼女も特に子供に慣れている、という訳ではなさそうだ。

 

サオリさんから離されて、今度はヒヨリさんの顔をじっと見るスズラン

なんとなく、このあとの光景が見えてしまった自分がいるが

まあ、特に問題があるわけでもないのでよいとしよう。

 

「すまない、ヒヨリ。助かった」

 

「えへへ…リーダーには、いっぱい助けて貰いましたし…」

 

腰砕けに椅子へと座り込むサオリさん。

ほっと一息、マスクを外して椅子の上にへたり込む。

 

しかしスズランはヒヨリさんより、サオリさんが良いようで

「あ~」とサオリさんを指差す。

きっとサオリさんに近づきたいのだろうが

あの困りようを見るにヒヨリさんも戻すわけにはいかないのだろう。

 

「ごめんなさい…サオリ姉さんが困っちゃうので…」

 

「あぁうー…」

 

「あー、あー!泣かないで、泣かないでください!」

 

ヒヨリさんの腕の中、ぐずり始めたスズランに、ヒヨリさんが慌てふためく。

 

普段はあまり泣かないスズランではあるが

こうなってしまっては既に、私達でも止められないのは

サクラコさんのおかげで、分かりきっていた。

 

「あ゛ー…うぇ…びぇええー!」

 

「え、あの泣かないでくだ…泣かない…泣かないで…え、あの…

 うわぁぁぁぁああああああん」

 

「びぇーーーーーー!!!」

 

「うわぁぁぁぁああああああん!!!」

 

抱っこする側とされる側の泣き声の二重奏。

窓ガラスをビリビリと揺らす程の大合唱。

 

さすがにと助けに向かおうとテーブルを回り込んでいると

一足早くアツコさんがヒヨリさんの隣で

そのお面をはずしていないないばぁ。

 

仮面の下から見えた、儚げなその整ったお顔と優しい微笑みに

スズランはぴたりと泣き止んでいた。

 

「姫ちゃんありがとうございますぅう…」

 

「すみませんお二人とも、ほらスズラン」

 

スズランを受け取ろうと、私が手を伸ばすが

スズランは羽をバサバサと抵抗。

 

珍しいこともあるものだ、とは思う反面

アリウスの方達にすぐに懐いてしまった事が

少し妬けてしまうのは親心なのだろうか。

 

「やーぁー!」

 

「やーではありません。

 ほら、スズランこっちに来なさい。」

 

バサバサと抵抗するスズランをなんとか受け取ると

当人はちょっと不貞腐れた顔で私を見上げる。

 

あっち、あっちと4人を指さして

まだ遊びたい、と言っているときのそれ。

 

初対面でこの懐きようというのは

もしかすると何か通じるものがあるだろうか。

もっとアリウスについて調べてみる価値はあるのかもしれない。

 

「ぉりひぉー、めぇー」

 

きっとヒヨリさんとサオリさんの方へと手を伸ばし

遊ぼう、遊ぼうと手を伸ばす。

 

じっと向けられた視線に困ってヒヨリさんが手を振ると

スズランはにっこり笑ってもっと手を伸ばす。

 

「ヒヨリと遊びたいのかな?

 ヒヨリは…まあ、うん。子供みたいなものだしね。」

 

「ひどくないですか!?うう、辛いです…苦しいです…」

 

「てっきり自覚があるものだと思ってた」

 

「ないです!私だってもう…

 え、なんですかみんなしてその顔…」

 

喜劇のようなやり取りに、私はついつい笑ってしまう。

スズランの鼻水を拭きにティッシュを片手に近寄ってきていたハナエも

最初とは打って変わって楽しそうに笑っていた。

 

まさか、あのアリウス分校の生徒と

こんな形で笑いあう日がくるなど誰が想像をしていたのだろうか。

そして、こんな日を誰が思い描くことをできたのだろうか。

 

いや、きっと思い描くことすらしなかった方が間違いだったのかもしれない。

私達にはきっと違いはなかった。ただ環境が違ったそれだけのことだ。

 

「それにしても、この子は物怖じしないね。」

 

「そうですね、あまり人見知りはしません。

 それどころか…こうやってすぐ懐いてしまい、ちょっと困りますね。」

 

アツコさんが鼻を拭かれるスズランの顔を覗き込む。

それに気づいたスズランも、ぱっちりと目を見開いてアツコさんの顔を見る。

 

じっと顔を見つめた後に「おー」と声を上げたのは

どういう意味なのかはわからないが、きっと何かの感嘆だ。

 

「ん?何?」

 

優しい顔でほほ笑む彼女に、スズランは手を伸ばす。

それに顔を近づけたアツコさんの頬を撫で頭を撫でるスズラン。

くすぐったそうに笑うアツコさんに、ミサキさんが訊ねた。

 

「姫、そんな子供好きだっけ?」

 

「ううん。…そもそも子供好きとか嫌いとか以前かな

 ミサキは、子供苦手だっけ」

 

「あんまり得意ではないかな。何を考えてるかわからないし。」

 

複雑そうな顔をするミサキさんに今度は手を伸ばすスズラン。

困りながらも、アツコさんと入れ替わり

顔を近づけてくるアツコさんの方へ近づけると

スズランの手がミサキさんの頭を撫でる。

しばらく撫でられ「ふっ」とほほ笑み優しく上がる口角から

優しい言葉が漏れて出た。

 

「まあでも、嫌いでは…ないかもしれない」

 

―――――――――――――――――――――

テーブルに残ったお菓子を名残惜しげに

ヒヨリさんが見つめていたので

それを衛生管理用の袋に詰めて渡してあげる。

 

「何か見返りが必要なのでは…」

 

なんて言いながらも受け取ったヒヨリさん。

サオリさんにもそれを分け、小さくこちらに一礼をする。

 

「私達も何か情報があればまた連絡をする」

 

「はい。もしあなた方も助けが必要ならば連絡をください

 救護が必要な人に手を差し伸べるのが、私たち救護騎士団ですから」

 

「……ああ、その時は頼む。」

 

武器を取り、肩にかけて建物の奥へと

アリウススクワッドの方達は影へと消えた。

 

少しの間、その場に留まって耳をそばだててみたが

どうやら外で争いなどは起きなかった様子。

 

協力してくれた彼女らに何かあれば

ティーパーティーや正義実現委員会が動くのであればと

と構えてはみていたものの、杞憂だったようで一安心だ。

 

しかし、ここまでトリニティの主要戦力を揃えて

本当にただの過保護だったというのも少し滑稽な気もするが

その滑稽さも、また平和の象徴なのかもしれない。

 

テーブルに残された食器を片付け始めると先生の電話が鳴り始める。

その画面を見て、その発信者を先生が告げる。

 

"ナギサから電話だ。"

 

このタイミングで、ということはきっと話の内容や

この中の状況と言うのは彼女に筒抜けだったのだろう。

 

お茶会の準備といい、不思議な事でもないし

会話の内容を隠し立てする気もないので気にはしないが

その悪趣味さに、呆れたため息が一つ漏れる。

 

電話に先生が出て、数言の会話が為された後に先生は言う。

 

"スピーカーにするね"

 

テーブルにスマートフォンを置いて

画面を操作すると、部屋の中に響くナギサ様の声。

 

『あまり、情報は得られなかったようで、残念です』

 

「そうですね。しかし、アリウスの出身はまだ否定もしきれないように思います」

 

『ええ。こちらでも調査を続けようとは…』

 

そんな話をしていると、何やら窓の外や扉の向こうが騒がしい。

 

ちらりとその方向を確認すると、

ガラスの向こうにはシスター服や、黒いセーラー服の生徒がちらほらと。

どうもこの人たちも、やはりスズランの保護者らしい。

 

「セリナ、ハナエ。扉を開けてあげてください。

 ここまでしてくださったのです。事情は説明してあげないと。」

 

二人が教会の大きな扉を開けると

様々な制服の生徒達が、雪崩のように教会の中へと流れ込んだ。

 

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