ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記(本編/子育て日記)   作:救護騎士団記の記録係

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元スレ:ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記
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子育て日記:21日目 羽川ハスミ

子育て日記:21日目 羽川ハスミ

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救護騎士団の皆さんから日記をお預かりしました。

スズランさんに関して気になった事や

記録しておきたいことの交換日記とのこと

 

今日は、正義実現委員会にてスズランをお預かりいたします。

救護騎士団の皆さんが風邪を引かれて

高熱を出してしまったとのことで

 

セリナさんとハナエさんはともかくとして

ミネ団長までとなると、いかに子育てが大変な事かと思う次第です。

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朝食の時に、フラフラとしている3人を見つけ

声をかけたところ、どうにも大丈夫でなさそうだったので

スズランさんを預かろうという話になり、救護騎士団の部室を訪れた。

 

ミネ団長がスズランさんを抱きかかえて

私達へとスズランさんとスズランさんの荷物を渡す。

さすがは体力自慢のミネ団長。

その足取りはしっかりしているものの

それでも上気した頬が熱の高さを物語る。

 

「それでは、申し訳ありませんが、スズランをお願いいたします。」

 

「はい。私たちに任せて、治療に専念してください。」

 

「では、ハスミさん、正義実現委員会の皆さん、よろしくお願いいたします。」

 

マスクをしたミネさんからスズランさんを受け取る。

たっての希望で、抱きかかえるのはマシロ。

 

普段は表情豊かな方ではないはずなのだが

スズランさんの顔を覗き込んでは百面相をしていた。

 

なにやら湯冷めで風邪をひいてしまったらしく

それも3人まとめてとなると子育ての大変さが偲ばれる。

 

一緒に引き渡されたベビーカーに

山盛りに積み重ねられた子育て用品と、たくさんの子育て本。

なにがなにやら、と言うほどの量に少し立ち眩む。

 

そんな大変な任務とあって総出ってきたというのに

それを申し出た身のツルギはというと

ホラー映画の幽霊さながらにドアの陰に隠れて様子を覗いていた。

 

「では、スズランさん、参りましょうか」

 

慣れないマシロに抱かれながらも

スズランさんは救護騎士団の3人に笑顔で手を振る。

 

親代わりとはいえ、長い時間を一緒に過ごしている人達と離れて

なお気遅れすらしないこの子は大物になるかもしれない

 

3人が寝込む救護騎士団の部室を後に、廊下を歩き出した。

いつもなら私に取り憑いた悪霊のように歩くツルギなのだが

今は部員たちの陰に隠れ、相も変わらず距離を取っていた。

 

「ツルギ、なぜ隠れているのですか?」

 

「ぐひ…私では怖がらせて…しまうだろう。」

 

「そうでもないようですが。」

 

スズランさんは部員達の陰から出たり隠れたりするツルギへと

両手を伸ばして挨拶をしているようだ。

 

一度会合の場で面識はあるとはいえ

この様子では怖いとすら思っていないのだろう。

普段なら恐怖を植え付ける象徴のようなツルギも

この子にとってはちょっと不気味なぬいぐるみと変わらない程度の存在かもしれない。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」

 

ホラー映画さならがの唸り声を上げながらも、頬は緩みっぱなし。

スズランさんはそんな姿を見て、キャッキャと笑っているようだが

委員会の面々はそんな見たことのないような様相に

ツルギの想いは読み取れないようで恐怖をしているかのようだった。

そんなツルギにマシロがおずおずと言う。

 

「あの、ツルギ先輩…」

 

「――あ゛あ゛…!?」

 

「抱っこ、してみますか?

 スズランちゃん、おとなしくて抱っこしやすいですよ」

 

マシロが立ち止まりツルギへと向き合うと、ツルギの動きもぴたりと止まった。

 

何を考えているのだろうか、ぴたりと動きもせずに

目線だけはぼーっと空を眺めて、ニヤリと笑う。

一瞬手を差し出したので、抱き上げるかと思ったのだが何やら、そうではない様子。

 

「キェェェエエエエエエエエエ!!!」

 

外廊下のベランダに向かって駆けだしたかと思うと、そのまま飛び降りてしまった。

自由落下に任せて落ちていくツルギ。

慌てるマシロが、ベランダの際まで走って遥か下のツルギを見下ろす。

 

「ツルギ先輩!?ここ3階ですよ!」

 

とは言っても、時すでに遅し。

私もベランダ超しに中庭を見下ろすと

ツルギは既に墜落を終えて、怪我もなく中庭を駆けて行っていた。

照れ隠しなのだろうけれども、そんなことで飛び降りて駆けだすとは、不器用にもほどがある。

 

「行っちゃいましたね…」

 

「どうせあの様子です、どこからか見守っていますよ。

 なんだかんだ、この子がお気に入りのようですからね。」

 

「……そういうものですか。」

 

ぽかんとしたマシロの頬をスズランさんがぺしぺしと優しく平手打ち。

それを見下げると、ニコニコと笑顔を称え

いつの間にか黒い羽根を握っていたスズランさんがいた。

 

この常闇の羽根は、ツルギのものだろう。

いつの間に渡したのか、それとも舞ったものを偶然に掴んだのか

どちらにせよご満悦のようなので、よいとしよう。

 

ぞろぞろと連れ立つ私たちに一般の生徒達がざわめく。

その注目はもっぱらマシロに抱えられたスズランさん。

 

先日の全校集会でティーパーティーが宣言を出して

生徒たちに協力を呼び掛けてから、周知となったこの子の存在

 

救護騎士団が育てている、と報じられたのその子を

私たちが連れているとあれば、それは話題の種だろう。

 

そんな中、部室へとたどり着くと

待機を命じていた部員達が一斉に駆け寄る。

 

スズランさんを人目見ようと、マシロを取り囲んでもみくちゃとなる。

そんな部員達に遠くから声をかけるのはイチカ。

用意周到に、部室の一角を整頓してくれているようだった。

 

「ダメっすよー、そんな一斉に言ったら赤ちゃんが驚いちゃうじゃないっすか」

 

「とりあえず、ここ準備しといたっすから。

 あとは、お願いするっすね。」

 

興味なさげに振舞ってはいるようだが

こんなに準備をしているのは

おそらく気をかけてくれているということなのだろう。

 

イチカが片付けてくれたスペースに

2人掛りで運んできたベビーベッドを設置して

マシロがスズランさんをそこに寝かせる。

しかし、何が気に入らないのか、手から離れた瞬間にぐずり始めた

 

「えと、どうしましょうか…」

 

どうすべきかは分からないが、このままでは泣いてしまうのだろう。

赤ちゃんが泣くことは当然ではあるのだが

意図的にそうさせるのは違うというのは分かる。

 

「仕方ありませんね。」

 

マシロにばかり抱かせているのも気が引けると

私がベッドから抱きかかえると、すぐにぐずるのをやめてくれた。

 

しかし、なにやら不思議そうな顔をしている。

何が不思議なのやら、と目線を追いかけると、それは私の胸へと向けられていた。

 

「あら、そんなに不思議ですか?

 あなたのお母様達よりは大きいかもしれませんが…」

 

私の胸をぺちぺちと叩き「お~」と歓声を上げるスズランさん

抱かれている心地が不思議なのだろうか

まあ、気に入らないというわけではなさそうなので良いのだが。

 

しばらく抱きかかえてみて

それからベッドに寝かせてみるもやはりぐずり始めるので

部員達が代わる代わる抱いていた。

 

部員達も部員達で、普段できない体験であるのが楽しいのか

子供とはいえ軽くはないスズランさんを抱きかかえては喜んでいる。

そんな中マシロはまだ抱っこしたりないようで

部員達に紛れては、自分の番を待っていた。

 

「それにしても、みんな飽きないっすね。」

 

「あなたは良いのですか?」

 

「まあ、みんなが楽しんでいるうちは、いいんじゃないですかね。」

 

なんて吞気を言っていると、出動のベルが鳴る。

子供に沸き立つ空気は一瞬で日常へと引き戻される。

 

「出動します、装備の確認を。

 スズランさんは待機する部員…イチカに任せて、ほら、グズグズしない」

 

「え、私っすか!?…まあいいですけど…」

 

不承不承にスズランさんを受け取ると、やれやれといった表情であやし始める。

こんな騒がしい事態にも動じないあたり、この子はよく"訓練されている"

 

―――――

 

そんなこんな、ひと悶着を終えて部室に戻る。

負傷者の治療をして、そろそろお昼時。

 

戻りしなに救護騎士団の用意した手帳を開いてみると

食事の間隔やミルクの作り方が図解入りで事細かに描かれていた。

そろそろ準備をしなくては、と考えながら部室の扉を開けると

 

「おーよちよちかわいいっすね~

 スーちゃんは天使みたいでちゅねー

 んーまっ!んふふー……」

 

赤ちゃん言葉でスズランさんの頬にキスをするイチカ。

私の後ろから覗き込む委員会子達の視線を翼でふさぐものの時すでに遅し。

 

イチカがこちらに気付いて、ほんの一瞬の空白の後

そこには顔を真っ赤に染めたイチカがいた。

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