境界剣士の最愛精霊《レスティアート》   作:時杜 境

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25 黙示の社

 服飾店を出ていた。

 

 周囲に良夜と架鈴の姿はない。ダブルデートは自然解散。各々のカップル強度が高いので、こうなってしまうのは必然だった。いつの間にか外で待機していた良夜を架鈴が捕まえ、そのまま映画館方面へと引っ張っていくのを見送り、俺たちも自分たちのデートを続行する。

 

「んも~……外の密室で襲うのは、せめて人気のないところでッ! す、すっごい恥ずかしかったんですからね!?」

 

「え……人気のないところでならいいって、そっちの方が……」

 

 幼女、墓穴を掘る。そのまま固まってしまった。

 結局、レスティアートの水着は選定に選定を重ねて五着ほど購入。選定の主眼はロリでも本来の姿でも映える一着、だ。これでいつでも水場の戦場が来ても問題なかろう。手にした戦利品を見るたび、ほくほくする。

 

「こほんっ──で、では次はディアの水着ですねっ」

 

「え?」

 

「え、じゃありませんが。私の水着だけ買ってどうするんですか!」

 

 ──というワケで水着選び後半戦は、俺がレティにコーディネートされまくることになった。隣の男性用の服飾店でだ。というか途中からは水着とか関係なくなっていた。俺はただ言われるがままにレティの選んだ服を着続けていただけだが、まあ、終始彼女が楽し気だったので良しとしよう。

 

「……ここまで悩んでおいて何ですけど、ディアの体が他の女性の目に晒されると考えると、耐えがたいものがありますね……」

 

「それ、俺がお前に言うべき台詞だったな?」

 

 結局、俺の水着は三着セレクトされて購入。他の服は結局買わなかったが、理由としては、

 

「…………今日のこれ以上の供給は、致死量に値します」

 

「?」

 

 ──とのことだった。

 よく分からないが、レティの言うことなんだから俺には推し量れぬ深い意味があるんだろう。

 

「さて、そろそろ昼だし……ランチにするか」

 

「あの……お、お友達の方は……?」

 

「そんなのいつか会えたらいいんだよ。会えなかったら、それはそれで残念でしたってことで」

 

「爽やかな笑みで言い切りました!?」

 

 というか、いっそ再会できなくていい。

 レスティアートとのデートを邪魔されたくないからな。

 

「友人は大事にするべきですよ! ディアも良夜さんたちと会った日、他の人に言ってたじゃないですかっ」

 

 良夜たちと会った日……初屋上デートでのことか?

 俺、そんなこと言ったか?

 

「不思議そうに首を傾げないでください!? 言ってました、私、ちゃんと覚えてるんですから!」

 

「そうか……んー、でもアレが友人かと言われると、どうかな……」

 

「前提が覆されましたー!?」

 

 あんな奴を友人と呼ぶ奴の気が知れない。

 知人で充分だ。

 

「レティ、昼は何がいい?」

 

「えっ、えと、そうですね……先ほど二階を回った時に、雰囲気の良さそうなお店が……」

 

「よし行こう今すぐ行こうもはや昼はそこしかありえねぇ」

 

「そ、即決ですね!?」

 

 そんなわけでレティの手を引いて、二階のエリアへとやってくる。先ほど彷徨っていた時は軽く流し見していたので、果たしてどこに目的の店舗があるかは分からなかったが──

 

「あっ、あれです」

 

 レティが指さした先にあったのは──喫茶店だった。

 モールの一角。なんだか妙な言い方だが、屋内の死角を狙ったような隅のほうに、しかし堂々とた店構え。

 木造建築な見た目で、知る人ぞ知る名店、みたいな雰囲気をビシバシ感じる。もっと率直に言ってしまうなら、そこだけまるで異界のようだった。

 

「……あ?」

 

 俺は足を止めていた。

 その店の前に、見覚えのある人影が立っていたからだ。

 

 

「よお、待ってたぜ我が大親友。あんまり遅いモンだから、てっきり死んだものかと思ってた」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()

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 休日の学生らしいショートパンツにブラウスというラフな格好で、それ以外には大した特徴のない、()()()()()()()()()()()がそこにいた。

 

「お、……て、てめえ」

 

「んー?」

 

 そいつの眼が、俺の横にいる彼女に向く。

 面白げに、興味深そうに。

 鷹の目のように鋭く、狙い澄ませた視線がレスティアートを見た。

 咄嗟にその眼から庇いに入る。

 

「おいおい、見せろよ」

 

「見るな。この観察魔」

 

「え、ええと、ディア? もしかしてこの人が──?」

 

「…………まぁ。例の奴だよ、例のヤツ」

 

 中学時代の旧友にして腐れ縁。

 その名を、俺は決して呼ばない。

 

「初めまして、斬世の彼女さん。──私は一影(いちかげ)栄紗(えいさ)。そこの刈間斬世の……元カノだよ!」

 

「も?」

 

「違ぇよアホ!! ボケ! 斬り殺すぞマジで!!」

 

「もと……? もと……ディアの……もと……???」

 

「レティイ! 本気にすんな、そんな恐ろしい事実は過去一度として発生したことはねぇッ!!」

 

 レティの顔が埴輪のようになってしまう。がくがくと両肩を揺さぶるが、まるで意識が戻ってこない……!!

 

「こいつはただの中学の腐れ縁で……!」

 

「ちゅう、がく……オンナノ、ヒト……シンユウ……」

 

「親友でも彼女でもなんでもねぇ!! ただの他人だ他人!」

 

「えー。昔はあんなに楽しくやってたのにナー。他人呼ばわりは冷たいナー」

 

「黙ってろテメェ……!!」

 

「たのしくディアがオンナノヒトとたのしくワタシト出会うマエニ」

 

「レティ──!! 違うから、絶対に違うから! 俺がこの天地で唯一愛して愛し尽くしてんのはお前だけだ!! 初恋も初カノも初恋人も初嫁もレティだけッ!」

 

 するとバグって痙攣し始めていたレティがピタリと止まる。

 みるみるうちに顔が赤くなり──うん、どうやら正気を取り戻したようだ。

 

「はい……愛し、尽くされて……ます……」

 

「……」

 

 やめて。

 急にそんなこと言われたら、なんか気恥ずかしいとかそういうレベルの空気じゃなくなるから、やめて。

 

「──……こほんっ。……し、失礼しました……免疫のない単語に動揺してしまいました。ええと、ディアはもう私のものなので、今さらヨリを戻せるとは思わないでくださいッ!」

 

 宣言すると同時にぎゅっと俺に抱き着いてくるレスティアート。

 まだ若干の誤解が残ってる気がするがしかしこれはこれで大変最高に嬉しい宣言なので満更でもないっつーかだからこっちが照れくさいというかだな……!!

 

「ああ、どうぞどうぞご自由に。別に元カノでもなんでもないし」

 

「えっ」

 

 対する戦犯の態度はあっさりしたもの。

 奴からすりゃ自分から仕掛けた茶番なので当然だろう。

 

「私はただの親友を名乗る者だ。さっきのはちょっと試してみただけ。いやぁ、想像以上のバカップルやってて安心したよ」

 

「出会い頭に人の彼女を脳破壊すんな」

 

 世界が滅ぶぞ、マジで。

 

「ともあれ、久しぶり親友。()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()

 

 含みのある言い方だ。絶対に狙って言葉を選んでいる。

 ……こいつはもう、俺が一度死んだことを看破しているようだ。

 

「ま立ち話も何だし、中に入ろうよ。奢ってやるからさ!」

 

「お前の善意には身震いするぜ……」

 

 ……そんなこんなで。

 こうして数か月ぶりに再会した自称・親友と、俺たちは昼食を共にすることになってしまった。

 

 

     ◆

 

 

 入った店内はクラシックな内装だった。

 アンティークの装飾は、喫茶店というならまさにこれ、な空気感。

 しかし人の入りは少なく……というか俺たちしか居らず、妙な雰囲気が混在している。その具体的な言語化は難しいのだが、あえて言うなら、現世ながらに界域に近い趣のある店だった。

 

 入ってすぐ見えるカウンターでは、マスターらしき若い男性がグラスを磨いている。

 俺たちは出迎えた店員に案内され、窓際のボックス席の一つに腰を下ろす。俺の左隣にレティ、正面に例の奴という具合だ。

 

 喫茶『黙示の(やしろ)』。

 ショッピングモールの一角にこんな場所があるなんて俺は当然知らなかったが、なぜか懐かしさを覚えた。不思議な感覚、とはこういうものだろうか。

 

「さー、なんでも頼めなんでも頼め? この世紀の大天才、一影栄紗に飯を奢らせる機会なんか一生に三度あるかないかだぜ。普段なら駄菓子にしか金を使いたがらないこの私が、親友が奇跡の彼女持ちになったことを祝して奢ってやろう」

 

「……じゃあ、俺はこのビッグステーキ盛りセット。白米大盛りで。あとコーヒーフロート」

 

「わ、私はこれを……」

 

 メニューを指さしたレティの注文の品はオムライス。

 更にエビフライにフライドポテトにスパゲッティに、兎に切り取ったフルーツ付き、旗を立てた完成図の写真が載っているそれは、彼女にしか食べられない至高の一品だった。

 

 ……なるほどこういうのが好きなのか……

 今後の料理の参考になるぜ。

 

「オッケー。それじゃ私はチョコパフェ、イチゴパフェ、バニラパフェとガトーショコラにアイスココアだ」

 

「なッ!?」

 

「ぐっ!?」

 

 こ、こいつ!

 デザートオンリーとか、全人類が一度は出先でやってみたい好き放題の注文をしやがって!

 

「んじゃ改めて。斬世の彼女さん……別にこのまま彼女さん呼びでも私は構わないんだけど、名前くらいはお尋ねしてもよろしい?」

 

 各々で注文を終えると、相手がそう切り出した。

 緊張した面持ちのレティが軽く頭を下げる。

 

「あ、申し遅れました。私はレ、」

 

『──本名は名乗らない方がいい。一応』

 

 咄嗟に念話を飛ばした。

 英雄精霊レスティアートの名は知名度が高すぎる。いや、この頭の切れる自他ともに認める天才野郎なら、いずれ、いや既に看破しているかもしれないが、それでもだ。

 

 ので、レティはいったん言葉を止め、こう続けた。

 

「……レティア、といいます。よ、よろしくお願いします」

 

「レティアちゃん、ね。『喜び』か。ははーぁ、それはもうピッタリな偽……名前じゃないか」

 

『偽名だってバレてます!?』

 

『まぁ……それくらいは見抜くか』

 

 だとしても、本名までは流石に辿り着いていない……と思いたい。

 こいつがどれだけ馬鹿げた推理力を持っていたとしてもだ。

 レスティアートと名乗る精霊の実在は……なるべく伏せておいた方がいいと、俺は思う。

 

 知らない方がいい事もあるように。

 知らなければ巻き込まれない事もある。

 予防策のようなものだ。とりわけこいつは、精霊士とは縁もゆかりもない、一般人なのだから。

 

「じゃあレティアちゃん、どうして斬世に惚れたの?」

 

「へ!?」

 

 ……即行で恋バナを展開し始めやがった。

 女子2、男子1。

 ガールズトークへの移行が鮮やかすぎる。だが耳を澄ませておくのは忘れない俺だった。

 

「ど、ど、どうしてと言われても。咄嗟だったというかっ。ええと、ええと、えっと……!!」

 

 レティの目がぐるぐる回ってきた。

 ……そうか。同年代とのガールズトークなんて経験、レティには無い。架鈴とするにしても、二人っきりにさせた事がないからな……

 

「つまり一目惚れってやつか。いいね、ロマンスだね。私も彼氏に対しては見た目が好みだったから、ソッコーで落としたんだよね。よく分かるよ」

 

「…………ん? 彼氏?」

 

「うん。彼氏。高校で出来た」

 

 ────世界がぶっ壊れたような衝撃を受けた。完全に脳が一瞬フリーズする。

 

「おっ……おま……まともな人間関係を築けたのかッ!?」

 

「失礼なやっちゃなー。というか私の人付き合いに関しては、単に斬世と私の相性が悪いってだけだよ。斬世だって、私以外とは友好的な関係を築けるだろ?」

 

「た……確かに」

 

 確かにこいつを基準にすれば、他のあらゆる人類全員と仲良くできるような気がする! あまりに単純明快すぎる事実、その実証に寒気が止まらねぇ! やっぱこいつ天才か!!

 

「お待たせいたしましたー」

 

 そこで注文した料理が運ばれてきた。

 俺の分も、レティの分も、そして奴のデザートセットもだ。

 ……早い。早すぎる。なんだこの店。まだ三分も経ってねぇぞ!?

 

 テーブルには先ほど注文されていたパフェがずらっと並び、「ほわー……」とレティが羨ましげに見つめている。うーん、かわいい。

 

「……後で注文してみたらどうだ?」

 

「は、はいっ……」

 

 お子様ラン……オムライスセットについてきたオレンジジュースを飲みつつも、ちらちらとレティはデザート群から目が離せていない。当の注文者は、アイス系が盛り込まれているパフェを放置するという暴挙で、まずはガトーショコラから手をつけていた。

 

 俺も自分のステーキと大盛りの白米に挑みかかる。

 ……うわっ、超うめぇ。値段はメニュー表を見ていた時に確認したが、あの安さでこの美味さ? なんか法則が狂ってじゃねぇの? ここは早くて安くて美味いという、庶民に優しい飲食店の王なのか……?

 

「あっ、美味しい……」

 

「だよな。ちょっと普段じゃお目にかかれない味だ」

 

 レティの方も同様に高品質の一品のようだ。

 そちらの味も気になる、が…………

 

「……ん? お二人、別に恋人らしく『あーん』してもいいんだぜ?」

 

 ……横目で見たレティと視線が合う。

 別にお互いそこに抵抗はないのだが……なんというか、この相手を前に惚気ていいのか? という暗黙の疑念が横たわっている。

 

「なんだ、しないのか。写メ撮ろうと準備してきたのに」

 

「するな。油断も隙もねぇな相変わらず」

 

「なんだよー。くれよロリ成分を」

 

「やらねぇよ!」

 

「あんま噛みつくなって。ほらー、レティアちゃんが寂しそう」

 

「えっ!? い、いえ、そんな……!?」

 

 ……くっ、レティが本当に寂しそうにしていたのかどうかは後で本人に直接取材させてもらうとして、二人そろってこいつのペースに乗せられている。彼氏ができても無敵かこの野郎……

 

「じゃー話を戻して。レティアちゃん、斬世のどこが好き?」

 

「え……! ど、どこ、って、ええと……」

 

 ……それは気になる。すげえ気になる。

 普段から好き好き言ってくれるレティだが、具体的な言語化はあまり聞いたことがない。気恥ずかしくて俺からは訊けないものの、こういう状況なら合法的に、超合意的に聞き出すことができる──!

 

「………………朝。いっぱいちゅーしないと起きないところ……とか?」

 

「あ、店員さーん。ホットコーヒー一つ下さい。濃厚ブラックで」

 

 一発撃沈。真の最強無敵はここにあり。

 俺もコーヒーフロートを飲み損じてむせていた。

 

 

「やれやれ、油断した。とんでもない火力だった」

 

 コーヒーブレイクを挟んだところで、態勢を立て直した自業自得の馬鹿野郎は、懲りもせずに何事もなかったかのように話を続行する。どういうメンタルをしてんだ。

 

「えーと、斬世の方は……訊くまでもないか。いきなり目の前に美少女が出てきたら、口説かない以外の選択肢なんかないしな」

 

「人をなんだと思ってやがる」

 

「え、口説かないの?」

 

「口説くけど」

 

 実際、レスティアートを目撃した時はそうしようとしたけども失敗したし。

 ま、逆にあれはあれで良かったかもしれない。静謐で神秘的な出会いのシーンが、俺の口説き劇場で台無しになっていた可能性もある。

 

「なら、レティアちゃんのどこが好きなの?」

 

「!」

 

 横からレティが期待するような視線を向けてくる。

 どこって……どこってそりゃあ────

 

「──150字以内で述べよ。論文っぽく」

 

「個人の嗜好性の十全な伝達は、他者との認識の断絶という壁がある限り困難を伴うが、その誤差を語弊と恐れずに弁論するなら、彼女の持つ極めて高度な造形が生じさせた視覚的衝撃は観測者の精神状態に大きな影響をもたらした。従って俺は対象を構築する因果、対象の存在によって発生しうる万象を愛好していると結論できるな。」

 

「!?」

 

「くっ……句読点まで含めて完璧な回答を提出しやがって……! 持ってけ満点!!」

 

 やれやれ、頭を使う長文台詞は疲れるな。

 慣れない言葉遣いはするもんじゃない。

 

「驚きの豹変ぶりだな……恋は人を変えるとは言うが、変わりすぎだろ。水を得た魚か、愛を知って完全体に進化したのか? ツンギレ気味で、クールでニヒルな刈間斬世くんはどうしちゃったんだよ。死んだのか?」

 

「見りゃ分かるだろ」

 

 死んだかと問われれば、死んだ。

 死んで、生き返った。

 レスティアートを目撃して、俺の人生はようやく始まったのだ。

 

 それくらいの出会いで。

 それほどの衝撃的な邂逅だった。

 

「ぁぅぁぅぁぅぁぅ…………」

 

 ようやく先ほどの台詞を理解したらしいレティは、遅れて一人で顔を真っ赤にしていた。

 そうアレ、要は「一目惚れ」と「全部好き!」で片付けられる無駄長文台詞だったからな。

 

「甘かったのは私の認識か……おまえらはバカップルじゃない──新婚夫婦だ」

 

「「新婚……」」

 

「つーかよく見たら指輪までしてるし……そこで気付くべきだったな。いや想定するべきだった。永遠に爆発してるといいさ。その方が世界も平和だ」

 

 どこか投げやり気味に言って、相手は待機列を作っているパフェ攻略に取り掛かっていく。

 それからは十五分ほど、近況報告のような情報交換じみた雑談を交えながらの食事が続いた。レティと俺もそろそろ完食し、食後のデザートは何にしようかと考え始めた頃。

 

『らんらんらーん♪ 電話ですよ♪』

 

「ッ!?」

 

 突如として店内に自分の歌声が響き、レティが凄い勢いで此方を振り向いた。

 音源は俺の携帯である。電話のようだ。

 

「ちょっ……! ディア、ディア? いいい今の音声は、この前歌ってって言われたモノでは──!」

 

「そうだけど」

 

「そうだけどじゃなくッ!? なんで今流すんですか!?」

 

「着信音にしてるから……」

 

「ちゃくしんおん!?」

 

『電話ですよ♪』

 

 彼女が未知の文化にカルチャーショックを受けている間に、電話に出てみる。

 相手は……良夜からだった。

 

「もしもし──」

 

『斬世ッ! 今どこ!? 大丈夫!?』

 

「あ? なんだいきなり。そっちが平気か?」

 

 妙に切羽詰まった声に困惑する。

 変なイタズラ……をするような奴でもないだろう。しかも向こうは向こうでデート中のはずだ。

 

「「え」」

 

 ──ばつん、と。

 そこでいきなり、店内の照明が落ちた。

 更に言うのならば喫茶店の外、ショッピングモール全体の明かりも消灯した。それに俺は怯み、レティも驚きを露わにする。

 

「モールジャックテロか。相変わらず世界は飽きないな」

 

 ただ一人、平然としているスイーツ好きはどこまでも他人事。むしろ、この事態を愉しんでいるような節すらあった。

 

 ……本当に今日は良いデート日和のようだ。

 こいつに再会すると、ろくなことがない。

 

 

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