境界剣士の最愛精霊《レスティアート》   作:時杜 境

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51 砂漠の勝者

「──むっ。ディアをどこへ連れていくつもりですか」

 

 そこでピタリと彼女の動きが止まった。

 場所は白い正方形の演習室だった。凄惨に活用されたためか、その壁や床には無数のクレーターが刻まれている。

 

 その破壊の中心に立つ白髪の彼女──レスティアートは白杖を手にしたまま、向かいあっている人物を見やった。

 

「実技試験の会場へ向かっただけだろう。そう過保護になるものではない」

 

 と、言うのは頭上に光輪を瞬かせる金長髪の青年。

 レスティアートと同じように彼もまた無傷であり、巨本を抱えたまま涼しい顔で佇んでいる。

 

「向かった座標は……フム、11番街か。砂漠化と界域化が同時に進み、異常進化した魔獣らが発生する場所だな。……ふむ。11番街……11番街……だと……?」

 

「なんですかその反応!? なんで動揺してるんですか!!」

 

 セラフィエル──人の大守護者らしからぬ態度の崩れに、レスティアートは指摘を入れざるを得ない。するとすぐさま、彼の手にある巨本のページがめくられ始める。

 

「…………試験官は誰だ? 水ノ瀬? そうか、ならば合点が……いや、しかしだからといって、禁足地を試験会場に選ぶか普通……?」

 

「なにやら不穏な単語が聞こえますが!?」

 

「人類の精鋭38名が命を賭して調査を進めた界域だ。まぁ、たかが免許を取らせるために送り込むような場所ではないな」

 

「……!」

 

 ──瞬間、レスティアートの周囲が砕け散った。

 制御を放した「破壊」の事象が発生し、烈風の一閃が壁を斬り裂き、空間上部の強化ガラスが音を立てて崩れ去る。

 

「待て、破壊の君。せめて職員は避難させろ」

 

「施設周辺の次元をブチ抜かれたくなければ順路を教えなさい。これは命令です」

 

 破壊の嵐は一瞬にして再び統制下におかれ鎮まったが、未だに白い少女の殺気はミシミシと観測局を揺らしている。

 そんな様子に、セラフィエルは嘆息するのみだ。

 

「……こちらの不手際は謝罪しよう。彼らの追跡は迅速に行うが……君は挨拶の準備をした方がよいかもしれないぞ」

 

「……? 何を……」

 

 次にセラフィエルが放った一言に、彼女は言葉を失った。

 

「数十年ぶりの()()()()()だ。彼らとて、積もる話もあるだろうよ」

 

 

     ◆

 

 

「マーダーワームの討伐に補助・援軍などはありません。ご自身の実力を自由に発揮して頂ければと」

 

「試験時間は接敵から一時間。それを超過しての討伐成功は失格と見なしますのでご注意ください」

 

「また、界域内での試験となりますので予期せぬトラブルが発生する場合もあります。私はこの車内で待機しているので、なにかあれば連絡を。では」

 

 ──とだけ言われて、俺は砂漠にほっぽり出された。

 無情に去っていく軍用輸送車。

 一応はマーダーワームの反応地点まで運んでくれたようだが、車から現地局員の運転手まで、用意周到すぎる。

 

「手の込んだ嫌がらせだな……いや知らねぇけど」

 

 あの局員の目つき、どことなく実家の連中に似てるんだよな。

 刈間家に恨みを持つ人間──そう考えると、俺への対応も納得のいくところはある。

 因縁か私怨か。両方という可能性もあるが、そんな八つ当たりじみた復讐に俺を巻き込むな。

 

「まぁ、行くか」

 

 退路はない。

 果たしてあの役人が迎えに来るかどうかも怪しい所だが、試験に合格しなければ此処に来た意味がない。

 

 とはいえ砂漠は砂漠。

 空の日射が眩しいだけで留まっているのはいいが、まずは討伐対象を見つけるのが大変そうだ。

 

「どうやって誘い出すかな……適当に『斬って』みるか?」

 

 相手の情報はゼロ。

 となると、もう手探りでやってみるしかない。

 

「《My Dear────あ?」

 

 足場が揺れた。と同時に強大な気配を察知し、咄嗟に俺はその場から大きく飛びのいた。

 直後、砂が爆発した。正面──地中から伸びてきたのは鋼の体表。その無貌が、頭をもたげて此方を見下ろす。

 

《──!!》

 

「おおおおおお!?」

 

 耳にキンとくる耳障りな鳴き声と共に、稲妻が周囲に撒き散らされる。

 幻刀を手にしながら俺は走り始める。その時、後ろから駆動音がし、確認すればワームの体表──鋼と鋼の隙間から──ミサイル、光線らしき殺戮機構が発射したのが見えた。

 

 ゾッとする間もなく炸裂する爆撃の嵐。

 轟音と爆風、砂嵐に巻き込まれてそのまま吹っ飛んだ。

 

「ッ──! おいおいおい、聞いてねぇぞ!?」

 

 滑りつつも着地には成功。数十メートル先には、目のように赤く点灯する殺戮ワームがある。

 ……ベース的には兵器の情報を取り込んだ魔獣、ってトコか? だからってあんな浪漫装備ガチガチな馬鹿野郎が実在するとか界域おかしいな!!

 

《r──》

 

 ワームが帯電し、力が収束する。

 再び撒き散らされる電流の暴風。その範囲は……奴を中心に、約二十メートル圏内か? 続いて奴の体表が駆動し、ミサイルと光線が此方に向かって放たれてくる。

 

(成程な)

 

 これが全ての攻撃パターンとは思わないが、順番は理解した。

 初めの稲妻はミサイル群が発射される頃には消えている。ミサイル側に追跡機能はなし、避ければそのまま地面かどっかにぶつかって消える。一方、光線はある程度こっちを狙ってくるが、走り続ければ回避は容易い。

 

 この手にあるのは刀一振り。

 走りにくい地面を蹴りながら、俺はワームを中心にぐるりと円状に疾駆する。そのすぐ背後を、光線とミサイルが通る気配を感じ取る。

 

(今)

 

 刀身に霊力付与。収束は振り抜きと同時に。

 ワームの胴体狙って、破壊の斬撃を繰り出した。

 

 ──一掃されていく電荷の嵐。

 破壊の余波はいくらかの砂場まで消し去っていく。そのまま斬撃は空間を丸ごと叩き斬り、ワームの姿が二等分に分離した。

 

《────》

 

 フッとワームから光が消える。

 機能を失った残骸はその場に崩れ落ち、いくばくかの轟音と砂埃を引き起こした。

 

「ふぅ……」

 

 肝は冷えたが、そこまでの相手ではなかった。

 ……これで終わりか? しかし──

 

(……なんで消滅しない?)

 

 魔獣ならば倒せば光になって消えるはず。

 霊力で動いていたと仮定しても、そんな気配はもう微塵もない。状況的に考えて、確かに俺は「勝った」といえるだろうが……、

 

 ──何か、とんでもない落とし穴がある気がする。

 

『そうそう、言い忘れていたことがありました』

 

「!?」

 

 局員の声がしたのは携帯から。

 ジャケットの内ポケットだ。いつの間に通話状態になっていたんだか。

 

『ここの界域主は特殊な能力を持っていましてね。これまでに食らった人間の人数分、増殖しているようです』

 

「……なんだって?」

 

『過去、この界域に送り込まれた調査員は38名。それから誤ってこの界域に迷い込んだ者、界域になる以前に住んでいた住民──それら全てを合算して、およそ4088体の界域主がいたようです』

 

「何何何何?」

 

 いきなり数値がインフレしてんだけど。

 意味わからんしそれ。意味不明だしそれ。何言ってんだコイツ??

 

『ご安心を。現在、そこまでの数の界域主の反応はありません。界域を支配する王はただ一体──四千あまりいた界域主たちの多くは、共食いの末に自滅しています』

 

「お、おお……」

 

 流石にな。流石にな!?

 そんなインフレクソゲーが始まったら流石の俺も試験を放棄するところだった──などと考えた時、地鳴りがあった。

 

「………………あん?」

 

 青空が、曇り始める。

 砂漠に影が落ち、地中からニョキニョキと生えてくるそれら。

 地平線の遠くから、ボコボコと、続々と。

 大地を引っくり返すような音を立てながら──()()()()()()()()()()()が顔を出し始める。

 

「…………………………」

 

『現在感知できる界域主反応は()()()()()()です。むろん試験内容、合格条件は「界域主の殲滅」であるため……振るって最善を尽くしてください』

 

「ざッけんなテメェエエエ──ッ!!」

 

 天変地異も真っ青な地獄の光景に怒号する。

 見事だ鬼畜クソ局員。後で絶対ェぶった斬る!!

 

 

     ◆

 

 

「あのー、いいんですかね」

 

 ためらいがちにそう口を開いたのは運転手の男性局員だった。

 輸送車の後部座席には、自身の上司にあたる水ノ瀬がいる。役員の完璧な模範として仕事をこなすのが局内で知られる水ノ瀬という男だ。しかし今の状況は、彼のことを表面上しか知らない者でも疑問を持たざるを得なかった。

 

「さっきの子……新人をいきなり送るような場所じゃないっすよここ? なんか局にとっての危険因子だったりするんですか?」

 

 観測局による裏工作は珍しいことではない。

 水ノ瀬も立場上、何度かそういった仕事を果たしたことはあるだろう。これもその一環なのかと、運転手は遠まわしに訊いていた。

 

「いえ、私の行動は局の意向とは特に関係ありません。純粋な私怨です」

 

「……えー」

 

 あっさり返ってきた爆弾発言に、運転手の男は目をさまよわせる。

 内容の割には、水ノ瀬の口調があまりにもいつも通りだったからだろう。

 

「彼はあの家でも手に余る代物だったようですし、その家に関する証言者も私だけです。であれば個人的な犯行としか言いようがありません。貴方はそんな私に利用された被害者といえますね」

 

「なんでそんなに……」

 

「だから、私怨ですよ」

 

 個人的な恨み。これは公私混同した「犯行」だと認めながら、彼の顔色は能面のように動かない。

 口調も声色も。まるで人形のように──人間味がない。

 

「ある所に愛し合った夫婦がいた。女はどこにでもある家庭の出身でしたが、しかし男の家は普通ではなかった。婚姻は認めるが、代わりに生まれた子供を寄越せと言うようなね。つまり二人の自由と引き換えです。妻は嫌がりましたが、男は愛する者がいればそれでよかった。家との取引に応じて生後間もない子供を引き渡し、妻との自由を手に入れた」

 

「……そ、それで……?」

 

「普通に失敗しましたよ。大層ショックが大きかったのか、妻は床に臥せて間もなく亡くなりました。実家に事の顛末を報告にしに行ってみれば、子供には別の親役があてがわれ育てられていた。まぁ、その辺りはどうでもいいですが」

 

 ふう、とそこで彼は一呼吸置く。

 聞き手の男は、恐る恐る問うた。

 

「……だから私怨、ですか。奥さんが亡くなったのは彼のせいだと?」

 

「恐らくその回答が万人に理解しやすいものだとは思いますが、少し違います。彼女が倒れたのは彼女の精神が軟弱だっただけに過ぎません。それに壊れた原因は、家と取引した私にあるといえるでしょうしね」

 

「ならどうして……」

 

「ただ、気持ち悪いからですよ」

 

 その簡潔な回答には、この男に残った感情全てが詰まっているようだった。

 

彼女()は死んだというのに私が生きている現状が。私がこのまま後を追っても、奴だけはのうのうと生き残る現実が。──はいそこ、理解できないという顔ですね? 分かります。私のこの感情は、子孫を残す生命の摂理に反している。ともあれ、私が悔いなく死ぬためには彼にも死んでもらわなければならない。故に、私怨です」

 

 語り手は窓の外へ目を向ける。

 一面の暗い砂嵐がそこにある。

 

「そして彼を殺せば……いや、既に殺意を向けた時点で、私は彼の精霊を敵に回している。これで世界が滅ぶかもしれませんが、それはそれで上々の成果でしょう。私の世界はとうに停止していますし、丸ごと滅びるのなら盛大だ」

 

「……今だけ共犯の立場を忘れて言わせてもらっていいっすかね。最低だなアンタ」

 

 ともあれ諸とも滅べば責められる先もないワケだ。

 運転席の男は変な潔さを覚えながら、現実逃避に今晩の飯のことを考える。

 

「しかし私怨を抜きにしても、この行動が間違っているとは思いませんよ。あの三十世紀も前の生体兵器が、あの家の遺物として発掘された時点で私も回収を試みました。結局、これは余計な邪魔(教団)が入ったので白紙になりましたがね」

 

 刈間斬世の最初の取引相手。

 襲撃がなければ人知れずこの男の手に渡り、彼女は歴史の闇に葬られていただろう。

 

「どうやら上層部は彼らを新たな戦力として使いたいようですが、愚行だと言わざるをえない。過ぎた力を手にした者たちの欲望には際限がありません──それを私はよく知っている。であれば初めからそのような兵器(モノ)、この世にあるべきではないでしょう」

 

 ドン、と遠くから地響きが聞こえた。

 外は暗雲の砂嵐で満ちている。運転手が顔を上げて目を凝らせば、その最中、微かに赤い斬撃の光が瞬いていた。

 

「……ほ、本当に一人であの数の界域主を相手に……?」

 

「……やはり危険ですね。あの数で始末できるといいんですが」

 

「……」

 

 あの青年を見捨てることが正しいのか、運転手の男にはわからない。

 水ノ瀬の決断に値する意志を、彼は持っていない。ただ──

 

「……た、助けませんか? このまま俺たち生き残っても、これはあまりに……」

 

「良心の呵責に苛まれる、と? 別に構いませんよ。運転席にいるのは貴方です。しかし向かった所で、我々が奴らの餌食になる可能性の方が高そうですが」

 

「う……、」

 

 ハンドルを握る手が止まる。

 しかし男の逡巡は、不意に断ち切られた。

 

「ッッ──!?」

 

 凄まじい衝撃と共に、車両が横薙ぎに吹っ飛ばされた。

 横転は避けられたが、窓のすぐ外には一体の鉄のワームが現れていた。

 

「なッ……」

 

「光学迷彩と結界を突破してきましたか。……野生の勘、というやつですかね?」

 

「アンタ何落ち着いてんだ! 死ッ、死ぬ……死にますよ俺ら!?」

 

「別にいいのでは? 少なくとも私は妻に会えますし」

 

「俺はまだ彼女もできてね──ッ!」

 

 アクセルを踏み、男がハンドルを回す。

 だがワームの方が早い。その体表から光線が放たれ、彼らの視界は白く染まる。

 

「うわあああああ!?」

 

 絶望と恐怖に男が叫ぶ。

 ──しかし覚悟した死は、いつまでも来なかった。

 

 

『────』

 

 

 ゾグリ、と。

 死よりも恐ろしい殺気が、車内を貫いた。

 

 吹きすさぶ砂嵐の向こう。

 車を狙っていたマーダーワームは根本だけ残して消滅していた。その上空──滞空する白い少女の影が、その瞳が、鋭く水ノ瀬を睨みつけていた。

 

「……」

 

 窓越しにそれを受けてなお、鉄面皮の役人は眉一つ動かさない。

 殺気の静寂はほんの一瞬だった。外の少女は白杖を手に、素早くこの界域の嵐の渦中へと飛んでいく。

 

「……そう簡単にはいきませんか。戻りましょう。車を……」

 

 水ノ瀬が視線を向けると、運転手はぐったりとしていた。殺気を受けただけで気絶したようだ。

 辟易とした様子で水ノ瀬は溜息をつく。

 

「……最近の局員は軟弱でいけませんね」

 

 

     ◆

 

 

 別に地獄とまでは言わないが、終わりの見えないマラソンをさせられている気分だった。

 

 一つ、視界の悪さ。二つ、足場の悪さ。三つ、敵の多さ。

 暗がりの砂嵐の中だが、幸いにも斬撃を当てさえすれば一撃で沈められるので、とにかく回避のためにスタミナを使う。

 こんな馬鹿げた集団戦もやったことがない。が、やったことがないものでも、人は徐々に()()()

 

 適応し、順応し、対応する。

 次に剣を振るうために如何(どう)すればいいか? どう動くのが効率的か? どう走るのが最速か? どう連中の目をかいくぐって、最高効率で殲滅できるのか──?

 

 その答えは、十分も戦っていれば分かってきた。

 

《────》

 

 ──鋼鉄のワームを二十体まとめて寸断する。

 こいつらは連携もなくバカスカ撃ちやがるので、俺を置いて勝手に敵対モードになることがある。それで固まったグループから一気にぶった斬る。直後に爆発することがあるので離脱は早めに、だ。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 息が切れる。次は死ぬ。

 今もホラ、次の攻勢(ミサイル)が目の前に向かってきて──

 

「──ぁぁああああアア!!」

 

 全力で疾駆する。砂を蹴り飛ばして一瞬の安全圏に入り込む。

 その先に出てきたワームを雑に斬り、その残骸を盾にして砲撃をやり過ごす。

 

 物陰で三秒の休憩時間。

 ──息は整った。次だ。

 

 戦場へ飛び出していく。背後のエリアが吹っ飛ばされる。

 走れ。走れ。走れ。走れ。

 斬れ、斬れ、斬れ、斬れ(キル)

 剣筋がブレることはない。俺がどんな状態になっても、一閃の軌跡は苛つくほど真っすぐだ。

 

 いつだってそうだ。

 どんなに頭にキていようが、どんなに苦しかろうが、刃は知ったことかと言わんばかりに斬り続ける。

 斬る瞬間、俺はヒトでなくなる。精神と切り離され、それを行うだけの機構(モノ)になる。

 

 ──そして終わった直後、そんな自分に吐き気がする。

 

「がぁ……はぁ、はぁ、はぁ、ァ……──」

 

 刹那、光と爆風に飲み込まれた。

 機能停止したワームたちが自爆したのだ。そのまま、この戦場地帯は陥没していく。

 

 空中に放り出されたものの、俺は消えゆく残骸を足場に跳んで底に着地する。

 ……幸い、降ってくる残骸は消滅していっているのでぶつかる心配はなさそうだ。地上までの高さは……二十メートルくらいか。

 

(終わった……か)

 

 駆動するモノたちの音は聞こえない。聞こえない。聞こえない。

 あれだけ五月蠅(うるさ)かった機械仕掛けたちは、ようやく全滅した。

 

 ──だが。

 

「……誰だ」

 

 ざり、と後ろから足音がした。

 界域ではイレギュラーが起きるのが相場だと俺は知っている。嫌な経験だが。

 

 

「こいつは驚いた。『停止した時間』の中で動けるのかオマエ」

 

 

 いつの間にか視界が、薄青に染まっていた。

 フィルターでもかかったようだ。そして停まっている。風を舞う砂の一粒まで──恐らくは──この界域全ての時間が、停止している。

 

 そんな世界で俺は振り返る。そこには妙な奴が立っていた。

 

 体格や声からして二十代後半くらいの男。身長は俺と同程度。

 肩ほどまでの灰色髪でハーフアップ、かけているサングラスで顔つきは伺えない。

 ベージュ色のロングコート、黒いロングブーツの出で立ちは旅人のような、学者のような雰囲気だ。左肩には……長銃らしきものを背負っている。

 

「通りがかりだったが良い拾い物かもしれねェな……よし!」

 

「……?」

 

 やるつもりか、と俺は刀を構える。

 しかし謎の男は次の瞬間、ビシッと此方を指差して──

 

「俺と契約しろそこの剣精霊!! 悪いようにはしねェからよ!」

 

「…………はあ?」

 

 ──よく分からないことを言ってきた。

 

 




 すいません……そいつ人間なんです……
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