境界剣士の最愛精霊《レスティアート》   作:時杜 境

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52 舞台裏の即興劇

 わけの分からない男がわけの分からないことを言っている。

 幻覚を疑う。俺、疲れてるしな?

 

「契約だよ契約! オマエの性能(ウデ)を見込んで、スカウト! してるの! どうだ、悪い話じゃねェだろ? 俺は戦力としてオマエをコキ使い、オマエは精霊としての本懐を果たし続ける! ──どうよ?」

 

 どうよ? じゃないが。

 なんだってこんな砂漠のド真ん中で男に口説かれなきゃならねぇんだよ。()ね!

 

「……断る。俺は帰って嫁さんに飯作んなきゃいけねぇんだよ」

 

「──がっ」

 

 男がその場で片膝をついた。

 しかし、すぐさま復活する。

 

「く、クク……久々にモロに食らっちまったぜ……その不良然な見た目でキッチンに立つのかよオマエ……マジかよ……台所精霊かよ……」

 

『──その子、精霊じゃないわよ』

 

 その時、男の右隣に顕現する影があった。

 フードを被った外套姿の女だ。男と同い年くらいに見える。薄青の長髪が特徴的で、どこか幽霊じみて透けていた。

 

「は? 精霊じゃないなら何だっつーんだ?」

 

「人間よ人間。見て分からないの節穴」

 

「は~~? あの数の界域主を一人で倒せる人類がいるワケねーだろスカタン。いたら怪物だよ怪物? 現実を見ろ現実を! あの剣さばき、剣精霊じゃなかったら他になんだよ?」

 

「本物の天才ってやつでしょ。人間ってホラ、なんでもいるし」

 

「……」

 

 男の目がこっちを見た──サングラス越しなので分からないが──じーっと観察されている……

 

「オマエ人間?」

 

「じゃなかったらなんだ不審者。それで、俺の前に立ったということは俺に斬られにきたって解釈でいいのか? いいんだな?」

 

「ちょオイ、待て待て待て! 最近の若者は過激だな!?」

 

「仕方ないんじゃないの。貴方、どう足掻いても怪しいし」

 

 なんなんだこの二人は。このコントは。

 こんな界域に精霊士がいたとしても、こいつらが普通じゃないのは確かだ。時間を止める精霊ってなんかいたか……?

 

「お前らは……なんなんだ? またどこぞの組織の連中か?」

 

「あーん? 組織ィ? そんなみみっちい連中と一緒にするなよ。俺たちは……そう! アウトロー! この世に溢れる主人公たちの物語を影から支援し、悪役どもの計画を邪魔し、最後に美味しい所を持ってって美味しい思いをする! そんな立ち位置で……ありたい!」

 

「それってどっちからも除け者扱いされてサクッと潰される立場じゃねぇ?」

 

「ごもっともね」

 

 女の方から賛同を得てしまった。サングラスの野郎ががくりとうな垂れる。

 

「あ~、まぁとにかくだ! こんな半端な舞台袖で俺たちみたいなのに出会うってことは、今は相当な端役だろ? 例えばそう……お前からは……裏主人公、裏ボス……そういう気配を感じるぜ!」

 

「どういう感性だよ」

 

「彼なりの勝手なジャッジよ。気にしないで」

 

 迷惑なジャッジだな。

 

「名乗りが遅れたな。俺は『黒乃須』──クロノスだ! そう! クロノス! クロノス!! さぁ、何か思い当たる節はないか! ん~~?」

 

「いや、知らん」

 

「正確には『黒乃須(クロノス)鍵一(かぎいち)』ね。私は彼の契約精霊──()()()()()よ」

 

「ッッ!?」

 

 目を剥き、一歩後ずさる。

 警戒状態に移行した俺に、あら、と女が声をあげる。

 

「……その様子だと、もしかして『他のエアリエル』に会ったことがあるのかしら?」

 

「他のエアリエル……?」

 

「大精霊にはそういうのが多いの。本体がそのまま出歩いたら、現世でも騒ぎになるし。だから目的と用途に合わせて、分霊として顕現する。ここにいる『私』もその一人。エアリエルという大精霊から出力された、端末のようなものね」

 

 ……俺の見たエアリエルは、もっと神々しい見た目だったが……

 人間に近い姿で顕現すると、こういったこともありえる、ということか。大精霊って何でもアリか?

 

「だからそう警戒しなくていいわよ。どういう『私』と会ったかは知らないけど、そっちの『私』の事情は知らないし」

 

「……お前らのことがますます分からねぇぞ。何者なんだよ」

 

 分霊とはいえ、大精霊の一角と契約している男。それに付き合う大精霊。

 明らかに尋常じゃない。裏ボスというのはそっちじゃないのか。

 

「俺の名を知らないとはとんだ不敬者だが……初回特別サービスだ、教えてやろう。俺らはいわゆる、『境界渡り』ってやつだよ」

 

「境界渡り……?」

 

「まぁそういう反応よね。こいつが勝手に自称してるだけだし」

 

「いらんことを言うな。要は俺らは界域を渡り歩いてんだよ。一種の冒険家だな。俺は異界学者として、ある壮大な目的のために活動しているのであーる」

 

 異界学者……

 そういった職があるのは知っているが、ここまで命知らずな行動をしている奴は他にいないだろう。界域で寝起きし、生活し、冒険って……絶対に頭のネジが飛んでいる。

 

「具体的には! そう──俺は()()()()()()()()()()

 

「神ィ?」

 

「あっおいやめろ全然信じてなさそーな反応! 俺は神だったんだよ、元は! クロノス神! 聞いたことねぇのォ!?」

 

 全然知らん。

 聞いたこともないし。

 

「有名な方じゃなくて、時間の方の神格だけどね。まぁ……()()()()()()()()()()()()()()んだけど」

 

「……食われてる? 魔獣にか」

 

「それ以外にねぇだろ? 侵蝕をガッツリ受けてんだぜ侵蝕をよ。だからとっとと神の一柱でも立てて、世界を立て直さなきゃならん。新たなる世界──()()ってやつだな」

 

 ……新世(しんせい)

 妙に耳に残る単語だ。なんとなく、重要なことのように感じる。

 

「ま……唯一神になっても生き残りじゃぁ格好もつかねぇけどな。おい、クソ生意気白っ毛小僧。俺の助手になれよ。人間にも雇用関係ってのがあるだろ? そっちの方で契約しようぜー」

 

「しねぇよ。しないが…………、」

 

 俺は刀を降ろし、この二人を観察する。

 ……怪しさしかないが、学者というのなら──ここまで無茶をしているようなイカレ学者なら。

 レスティアートと融合している力についても……何か知っているかもしれない。

 

「聞きたいことがある。お前ら、レスティアートって精霊を知ってるか?」

 

「ほほう」

 

 キュピン、と野郎のサングラスが光った気がした。

 ……黒い笑みを浮かべている。なんだその反応。

 

「ザ・伝説の代名詞だな? 帝国の皇帝が作り出した、当時の人類の技術結晶の最高作! そいつを使い捨てに使い潰すとか、いやぁ歴史上の消費伝説だわな。一説によりゃぁ、元はただのお姫さんで、なんかしらの精霊と融合させられたって話だが──」

 

 クロノスの視線は、そこでエアリエルの方に向く。

 

「そいつについてはお前が詳しいんじゃねぇの? な~? 帝国の大守護者~?」

 

「私は分霊なんだから顔を合わせたこともないわよ。けど、融合精霊ってのはホント。ただ……本当にそれが精霊だったのか、断定することはできないんだけどね」

 

「んン? というと?」

 

「彼女は『破壊の精霊』じゃなくて、『破壊という概念』と融合したの。この違い、分かる?」

 

 言葉遊びのような、些細な違い。

 ……だがそれこそが、恐らく俺の行き詰まりを解消する手がかりだ。

 

「どこの世界にも、『破壊』という概念はあるわよね。つまりそれよ。ありとあらゆる世界、並行宇宙とか並行世界とか、そういうの全部ひっくるめて、『破壊』という概念が集合した世界。世界……というか、そういった『場』なのかしらね」

 

「ふーむ? つまり、超! 大枠としての概念が領域になったってことか?」

 

「そうね。皇帝はこれを、『破壊の事象界』と呼んでいたわ」

 

 破壊の……事象界。

 ──つまりあいつは、

 

「世界を丸ごと一つ、融合されたってことか……!?」

 

「ふゥん。合理的な計画だな。異界に対抗するには世界を、ってコトか」

 

「だからってお前……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とか、狂ってんだろ!?」

 

 そんなもの、一人に背負わせていいものじゃない。

 道理であの規格外っぷりだ。……吐き気がする。

 

「狂っていても最善よ。効率的だし。一人を代わりに世界を買えるなら、安い買い物でしょう?」

 

「テメッ……」

 

「──いやぁそうでもないだろ」

 

 差し込まれたクロノスの言葉に、沸騰しかけた頭が冷却される。

 

「一人に世界いっこを集中させるなんざ、バランスが悪ぃったらねぇ。第一よぉ、そいつ自身が現世(こっち)を恨んで反逆してくるリスクのが高いじゃねぇか。これの一体どこが合理なんだよ。事故ってんのか?」

 

「「……」」

 

 エアリエルと二人、黙り込む。

 ……言われてみればそうだ。普通はそうだ。いくらレティの忠誠が皇室に、帝国にあるといっても、それが融合後も続く保証なんかどこにもない。だったら──彼女を戦線に送り込むことによって、()()()()()()()()()()()()()()()だとしたら──?

 

「だったら彼女はなんだというの? 私には破壊の神の失敗作としか思えないけれど」

 

「ハッ! 世界の運営まで司ってくれる神格なんかいるかよ。優しいか」

 

 神でも精霊でもない。

 世界を司るもの。運営するもの。

 それは、一体なんだというのか?

 

「世界の一部でなく、世界そのもの。世界を維持し、運営し、管理する──そいつは『()()()』と呼ぶべきものだろうな」

 

「統括者……」

 

 ……レティはいつも、その身一つで破壊の力を抑え込んでいる。

 維持と運営と管理。

 特徴としては……当てはまっている。

 

「じゃあ神よりも上の存在ということ?」

 

「──そうだな。だが立場上の話だぜ? 俺たちは世界を必要に応じて盛り上げてはやるが、運営なんかしないってだけ。世界は神さえ死のうと勝手に続くものだ。生命が死に絶えようとな。なら神とは別に、世界の管理者がいる……ってのは不思議な話じゃない」

 

「それ、死の神とかはどういう扱いになるわけ?」

 

「あんなの魂の蒐集家だろ。悪趣味極まる。『死後の世界』なんてのは、そいつらを勝手に神格化した人間が作ったおとぎ話だよ」

 

 ……さらっと残酷な真実が語られた気がする。

 死は恐ろしいものだが、死に先などないと断言されるのはもっと恐ろしい。……これは人間独自の感覚だろうか。

 

「……統括者とか言ったな。そんな奴と人間が契約したら、人間側はどうなる?」

 

「おおっと? 野望がデケェな少年。世界最強でも目指してんのか」

 

「契約できても、初手で殺されると思うわよ。気まぐれが起きて、その世界の眷属……いえ、住民として生まれ変わる……みたいなことがない限りはね」

 

 ……今まさに俺はその状態ってことじゃねぇか。

 学友の奴も似たようなことを言っていた。なんで推測だけでこの結論にまで達してんだ。やっぱ怖ぇわあいつ。

 

「けどそんな状態、永遠に続くものじゃないわ。どうあれ、人間としての器が耐え切れなくなる。生命には経年劣化があるし。少しずつ擦り切れていく貴方を、彼女は終わりまで見届けることになるでしょうね」

 

「……ッ!」

 

 ゾッとしない。

 それはバッドエンドというよりビターエンド。苦い結末になりそうだ。

 

「それにやっぱ、普通に()()()()()()()しな」

 

「バランス……?」

 

「あらゆる存在には『規格』がある。そいつに見合った“世界への影響度”……『舞台上の立ち位置』だ。世界と同等の統括者と人間一人が釣り合う道理はない。人間側に『格』が足りねぇからだ」

 

「だったら、その差を補填する方法は──!」

 

「──いや、無理だろ。逆立ちしたって人間自身が『世界』になれるワケねぇ」

 

「ああ!?」

 

「なんでキレんだよ! 無理なモンは無理だって!! 世界救おうが世界壊そうが、個が全になるワケねーだろ──!?」

 

 ぐっ……この……!

 ここまで来ておいて、常識的なことをのたまいやがって──!

 

 

「別になくもないわよ。普通に世界の出力、規模に相当する大精霊を捕まえればいいじゃない」

 

 

 ──って?

 

「……捕まえる?」

 

「召喚するとか契約するとか、色々手段はあると思うけど。要は均衡できる存在を用意すれば、抑え込めるんじゃない?」

 

「いやいやオマエ、そんな精霊が一体どこに…………あっ」

 

 クロノスが何かに気付いたのか、視線を泳がせる。

 ──すかさず近づき、俺はその胸倉をつかんだ。

 

「おい。何に気付いた。言え」

 

「よ、世の中、知らないことが良いこともある、ゼ……?」

 

「関係ねぇよ。吐け」

 

「おいおい俺様を脅してくる奴なんて何年ぶりだ──ちょぉおおオイ! 剣仕舞おうなー!? なー!?」

 

「やだ、私の契約者ってクソザコすぎね……あら?」

 

 不意にエアリエルが顔を上げた。

 んあ? とそれにクロノスが反応する。

 

「どうしたエア?」

 

「──時間切れみたい。貴方、死ぬかもよ」

 

「へ?」

 

 直後だった。

 天から降ってきた極光の光線が、停止した世界を叩き壊した。

 

「のおおわあああ!?」

 

「レッ……」

 

 破壊の衝撃を受けてクロノスから手を放してしまう。いや、だがそれで正解だった。

 なぜなら次の瞬間、彼がいたところに目がけて破壊光線がぶち込まれたのだから。

 

 

「ディアッ!! 無事ですか!?」

 

 

 ──そして目の前にパッと現れる白き愛しい姿。

 いや、恐らく距離を破壊するとかいう術で来たのだろう。それでホラ──飛び込んでくるから推進力がそのまま来てですね──!?

 

「ぐはぁっ!?」

 

 幸い、すっ飛ぶことはなかった。

 なんとかレティを正面から咄嗟に受け止め、その場に後ろから倒れ込むことになったが。

 

「ああっディア! ディア、ディア、ディア! ご無事ですか! ご無事ですね! よかった、よかったぁ……!!」

 

 ぺたぺたぺたと、あちこち素早く触診される。お前ちょっと俺の体に触るの慣れすぎてねぇか? 気のせい?

 とにかく上体を起こすと、ぎゅっ! と抱き着いてきた。

 

「ううっ、ううう……もう絶対離れません、一生離れません、これからはお風呂もトイレも一緒です……」

 

「と、トイレは勘弁しろ……」

 

 ──レスティアートが参上した影響か。

 時間停止前まで吹いていた砂嵐はかき消え、暗雲は晴れ渡っていた。

 そして俺たちから離れたところには、呆然といった様子でこっちを見る境界渡りたちがいる。

 

「やっぱりそうだったのね。彼が契約者だったみたい」

 

「……どういうこった?」

 

「ここに来る前に壁役を配置しておいたのよ。私の分体。だけど知性体型として顕現した弊害ね。出力が全ッ然足りないわ。貴方、契約者としてポンコツなのよ、ポンコツ」

 

「ああ、だからちょっと透けてたのか……」

 

 佇むエアリエルの横で、クロノスは尻餅をついたまま此方を凝視している。

 そんな奴の視線を受けてか、バッ! と警戒するようにレティが立ち上がった。

 

「──それで、一体どちら様です? まさか異界の知性体ではありませんよね?」

 

「……、オマエ……そうか、思い出した。フェブルウスが封印した……」

 

「っ?」

 

 そこでようやくクロノスが立ち上がる──瞬間、

 

「く……はは! ハハハハハハ! そうかよ、とっくに始まってたってコトか! 随分長い遠回りをしていたようだが、これでようやく合流か!」

 

「なんなんですかアレ。ディア、消し飛ばしていいですか?」

 

「浮気」

 

 呟くと、うっ、とレティが白杖を構えたまま固まる。

 俺も立ち上がり、律儀な彼女の様子に頭を撫でつつ……笑っているクロノスを見やる。

 

「話の続きだ。お前、何を知ってる?」

 

「ああ、いいぜ。教えてやるよ! いや、教えるしかねぇなこれは! そういう役回りなんだろうさ、ハハハッ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「何……?」

 

 思いも寄らない大精霊の名前に眉をひそめる。

 やはりこいつからは聞くべき情報が多すぎる。

 

「こんなピンポイントで使える人材もいるとか相変わらず潤沢な在庫だぜ。まあ、いい。ようやく運が向いてきた。俺と契約してくれないのは非ッ常に残念だがな!」

 

「──は?」

 

 レティの殺気が強まる。

 お前余計なこと言うなって!

 

「俺たちはただの通過点だ。そっちの道はそっちで作らねぇと意味がねぇ。故に! 元神格たる俺から、導きとならん神託を告げてやろう──!」

 

 此方を指差し、クロノスは言った。

 

 

「──()()()()()()()()()()。さすれば汝らの新生(新世)は叶えられん」

 

 

 その言葉は、今までで感じたこともない響きがあった。

 神の声を聞く、とはこういうことか。己の知らないところで運命の扉が開いたような、奇妙としか言いようのない感覚だった。

 

「……皇帝陛下の逝去以来、アイオーンの行方は知れないはず……何を言ってるんですか?」

 

 原始の大精霊にして、永劫を司りしアイオーン。

 四大守護精霊を配下に置く王座の精霊が……解決の糸口に繋がるってことか?

 

「さぁ、俺様から言えるのはここまでだ! 言うべき台詞は言ったぞ! “これにて舞台は終幕! 役者は人に戻り、脚本は(たきぎ)と燃える! ()れど時間は我が手にあり!”」

 

「あっ、待ちなさ──」

 

 瞬間、動けなくなる。

 金縛りじみた感覚の直後、パッとその場からクロノスとエアリエルの姿は消えていた。

 

 砂漠にはもう誰もいない。

 境界を行き来する変わり者の二人は、ここから去ったようだった。

 

「……逃げられましたか。一瞬とはいえ、これほどの権能……まさか時間神ですか? 本当に生きていたなんて……」

 

 レティはぶつぶつと何やら思索を巡らせている。

 ……新世。統括者。それにアイオーン。

 俺にも情報を整理する時間が必要だ。

 

(……甘い道のりじゃないと思っていたが……まさか本当にあるなんてな)

 

 都合の良い夢物語。それを叶える方法。

 アイオーンを探す、なんてザックリした目標だし、どこから手をつけていいのかも分からんが──少なくとも、レティには多少でも恩を返せる目途が立ちそうだ。

 

「──さて。それでは説明してもらいましょうか」

 

「ん……ああそうだ。なんでお前ここにいるんだ?」

 

「ディアが勝手に殺されかかってるからじゃないですか! 私、心配したんですよ!!」

 

「……??」

 

「うわっ、全然わかってないお顔を! 本当、本当ですよ!? ディアは悪質な陰謀によって、殺されかけていたのですっ!」

 

「……あー」

 

 ちょっと忘れかけてた。

 しかしもう正直、試験の合否とかどうでもいい。試験官? 誰だったっけそいつ。

 

「……ディア? 大丈夫ですか? やはりどこか具合の悪い所でも……?」

 

「いや、そういうんじゃない。来てくれてありがとな」

 

「! と……当然のことをしたまでです。しかしこれからはより警戒を強め──むっ!?」

 

 とりあえずキスした。

 特に意味はない。

 

「な、なんですかいきなりっ!」

 

「いや、したくなっただけ」

 

「はぁー!? はああー!? なんですかそれっ、なんですそれ!? もうっ、もおお!」

 

 きゃー! と完全に舞い上がってる声を上げつつ、俺に抱き着いてくるレスティアート。

 ……そんな姿を抱き締める。優しく優しく、抱き締める。

 

(やってみるか)

 

 俺たちのハッピーエンディングの条件は見えた。

 実に──やり甲斐のある試練じゃないか?

 

 

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