境界剣士の最愛精霊《レスティアート》   作:時杜 境

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84 同日、駐車場の説得劇

「あっ、クレア!?」

 

「罠だな」

 

「罠だと思います」

 

「別にいいではありませんか。感動の再会と相成りましょう?」

 

 無言でレティと暗黒聖女の方を見た。邪悪な微笑みを浮かべている。こいつもやはり片しておくべきではないか、と考えたものの、そんなことをしている間に日下部が立ち上がって玄関に向かおうとしている。

 

 後ろからその肩を掴んで止めた。

 

「待て日下部」

 

「だ、大丈夫。分かってるから。向こうにいるのは操られたクレアだよ──いつもそうだから。今回もどうにか説得してみる」

 

「……それで事態が好転するのか?」

 

「クレアの意識に呼びかけて、自分で洗脳を破ってもらう。賭けにはなるけど……実際それで、26回は成功してるから!」

 

 馬鹿の頭を軽くはたいた。あいてっ、と顔にバッテン書いたような日下部がよろける。

 

「お前の! 死に戻り前提のクソギャンブルに付き合ってる暇はねーんだよ!! そのイカサマが成功するまで乗ってやるほどお人好しじゃねーぞ!!」

 

「じゃ、じゃあどうすればいいんだよぉ」

 

「よく見てろ」

 

 やれやれ、と肩をすくめながら手本を見せてやるとする。

 玄関に行って靴を履き直し、右手に得物の刀を現出させてから、

 

「先手必勝」

 

 ──目の前のドアを蹴破った。

 

 

     ◆

 

 

「俺のドアァァァ────!!」

 

 うるせぇなぁ、と後ろからの日下部の絶叫を聞き流しつつ、部屋の外に出、手すりに飛び乗って地上を見下ろす。

 

 そこにはたった今、ドアの前から反射的に飛び退き、下へと着地したらしい一人の少女の姿──クレアというハルバード使いの精霊がいた。

 

「久しぶり、だな。いや深い意味じゃなく、事実として」

 

「……、」

 

「……自我、あるか?」

 

 返事はない。

 その間にも思い出しておくのはクレアという精霊の特徴──

 彼女はレスティアートと同じ、人と精霊を融合した存在。融合精霊を再現する実験に晒された被害者の一人。以前会った時は復讐への強い意志を感じたが、今はそれが微塵もない。

 

 人形。或いは洗脳済みか。

 なんにせよ、敵対者として見るしかなさそうだ。

 

「刈間! クレアはッ……!」

 

「殺しはしねぇよ。──なるべくな」

 

 日下部の声に応えつつ手すりから飛び降り、地上でハルバード使いと相対する。

 向こうの目は虚ろだ。人格、自意識の類は封じられていると仮定しておく。

 問題はこの状態で戦ったところで、そう簡単にやられてくれるか、ということと。

 

(……村雨がいつ出てくるかわからない)

 

 契約を奪うらしい魔法。

 まったくもって意味不明な脅威だ。何かしらの発動条件があると信じたいが……

 

「障害、排除」

 

「考えてる場合じゃねぇか……!」

 

 斧槍を振りかぶったクレアが襲い掛かってくる。初撃をかわしたところで近くのコンクリが飛び散った。おっかねぇ。

 

「日下部! こいつは止めといてやるから呼びかけ続けろ! ついでに対策もっ……!」

 

 機敏な動きで相手が体勢を整え、また飛び込んでくる。

 それに応戦しつつ、

 

「──考えとけ!!」

 

 考える──この状況の突破口を。

 

 

     ◆

 

 

「加勢にいかなくていいのですか?」

 

「……、」

 

 アパート、日下部草紀が住居とする一室。

 そこではまだ、正座したまま食事を続けるドロティアと、その背後で警戒を続けるレスティアートがいた。

 

「敵の能力は未知数。わたくしにかまけていては、愛しい人を失ってしまうやもしれませんよ?」

 

「私がそのような手落ちを許すとお思いですか?」

 

「ふふっ……大層な自信。恋は盲目と言いますが、愛に眩んでいる方はなんと言うのでしょう。堕落か陶酔か。貴方様は確かに紛れもない英雄ですけれど……思いも寄らないことで愛が失われるのも、また人生の醍醐味……」

 

 そこで料理を完食したドロティアはスプーンを置く。

 余裕しゃくしゃくに布巾で口元を拭く間も、その首裏には破壊精霊の杖先が突きつけられている。

 

「貴方に信用はありませんが、訊くだけ訊いておきます」

 

「あら、なんでしょう王女様。破滅を回避する方法ならいくらでも──」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 黒い聖女の軽口が、止まる。

 本当にたった一言で、格の違いを悟ったが故に。

 

「……は。何を言い出すかと思えば。わたくしたちの──聖女長の目的を阻んでみせた張本人が、今さら何を気にかけているのですか?」

 

「二つ指摘があります。一つ、これまでの言動からして貴方は所属している組織の中でもアウトロー寄りですね? 長の方針にあまり興味がない。自身の信仰対象、興味に惹かれるものに蛾のように飛んでいく気質がある。二つ、そんな貴方が組織を庇うようなことを口にするということは、()()()()()()()()()()?」

 

「……探偵にでもなったらいかが? きっと天職ですわよ」

 

「情報で得られる生か、死で迎える安寧か。どちらがお好みですか?」

 

 ドロティアはもはや、振り返ることができなかった。

 レスティアートの声はあくまでも平常だ。平坦だ。それが尚更に恐ろしい。

 すぐ後ろにいるのは、きっと英雄や精霊と讃えられるようなモノではない。

 白い髪の悪魔だ。

 

「死、とは……なんと甘美な響きでしょうか。衆生としての苦しみから解放される全生命の終着点。ですが、いいのですか? 貴方の伴侶は、貴方の罪に耐えられると?」

 

「──ええ、まあ。私に見初められてしまったからには、たとえ地獄の底まででも添い遂げていただく予定ですので」

 

「……それはそれは、熱愛なことで。……────ふぅ……」

 

 ドロティアは意識的に息を大きく吐いた。

 少しでも言葉を誤れば、間違いなくこの精霊は己を消しにかかる。

 今さら死に恐れなど抱かないが、ここで現世から退場するのは半端な幕切れだった。

 

「……別にもう、わたくしを尋問したところで面白味のある情報は取れません。なぜなら、それ以上は、アストラルが関わっていることを深く推理すれば、おのずと見えてくる真相ですから」

 

「ではあの魔法使いについては?」

 

「それこそまーったく存じません♪ いやはや、脅威が多きことですねぇ、この世は」

 

 ゴリッ……とドロティアの後頭部に硬い杖先が押し付けられる。

 引きつった喉が妙な音を立てないよう、堪えるのがせいぜいだった。

 

「とりあえず……そうですね。貴方が契約する邪精霊を伝承ごと消しておきましょうか。私の伴侶(ディア)を傷つけた罪。いつか支払っていただこうと思っていた代価ですし」

 

「ちょっ、ちょっと──」

 

「ああ、それからこの問答の記憶も消しておいてあげます。無闇に怖がらせるような真似をしてすみません。サービスで、それ以前の記憶にも干渉してあげてもいいですが──」

 

「結構ですわお断りさせていただきますいやホントに間に合ってるというかそこまで手を煩わせるなんて畏れ多くて死んでしまいますわマジで」

 

「──まぁ、貴方をここで見逃すにはこれくらいが前提条件だったということです。性根や信念や動機はどうあれ、貴方は日下部さんを助けた。その一点によって、私はかつての貴方の罪業を今この一時一度だけ見逃し、貴方の生存を許します」

 

「ぜ、ぜぜ、善行は積んでおくものですねッ……!」

 

「ええ。──本当に」

 

 言葉に含まれた舌打ちは幻聴だろうか。

 かくして聖女・ドロティアは、か細い生存の糸をかろうじて繋ぎ止めた。

 

 

     ◆

 

 

「クレアー! がんばれー! 正気に戻れー! あと、あとは……えーとえーっと、負けるなー! 声届いてる!? と、とにかくどうにか頑張れ! 元のクレアに戻ってくれ──!!」

 

「声援もいいが説得もしろや!! なんか小粋な思い出話とか、心に残った出来事とかねぇのかよ!?」

 

「えっ、クレアとの思い出……? ……ば、罵倒ばっかされてたからなぁ……良い思い出はあんまり」

 

「お前ら精霊士と契約精霊なんだよなぁ!?」

 

 クレアの攻撃をさばくのは訳ないが、予想以上に肩透かしだったのは、日下部草紀とクレアの驚きの絆の低さだった。

 

 お前、パートナーが操られてんだぞ。でもって暴走状態で戦ってんだぞ。見慣れ過ぎてるからって、そんな熱低いことあるか? 冷めすぎだろ……!

 

 ……これがカルチャーショックというものなんだろうか。いくら日下部側の死に戻り気質という特殊事情はあれ、何度も繰り返して助けようとしているからには、相応の思い入れがあったって然るべきだろうに──

 

「いやぁ、ていうか正直なところ、クレアに勢い余って殺されたことも多いからね。六割ぐらいは日常生活の暴力ツッコミで死んでるよ、俺?」

 

「じゃあなんで契約が続いてんだよお前ら……!」

 

「いや、俺以外のトコにこんな問題児を放流すんのはマズイでしょ。人道的に」

 

 圧倒的善意……!

 契約精霊に対するものではなく、社会貢献系の善意……!

 

 そうか……こんな理由で関係が続く精霊士と精霊もあるのか……なんかこう、リアルな事情を垣間見た感じで嫌だな。世にある精霊士のブランドイメージってもんが粉々になっていく気がする。俺はレティと純愛できて幸せ者だなぁ。

 

「はぁ、はぁ……クッソ……」

 

「──……ふー……ふぅ──……」

 

「あ、なんか二人ともバテてきてない? いったん休憩したら!?」

 

「殺し合いに、休憩が、あると、思ってんのか……!!」

 

 戦い始めてかれこれ十分以上は経っている。

 戦場になったコンクリの駐車場は工事が始まってそのまま放棄されのかというぐらい荒れ果て、他の部屋のアパートの住人が出てこないのが不思議なくらいだ。まぁ普通に篭っているだけかもしれない。だとしてもそれが正常な反応だ。

 

 現代社会で刀持つ奴と斧槍振り回す奴が戦ってたら、どう見ても異常である。

 通報されないだけマシなのか、いやいっそ援軍になってくれるなら警官でも来てほしいようなもの──

 

(……いや、おかしくないか?)

 

 早朝とはいえ、こんな派手な剣戟を十分も、だぞ。

 それに警察組織にだって精霊士はいる。そういう特殊部隊がいるはずだ。だから駆けつけてきても何ら不思議ではない。むしろ、

 

 むしろ、それが……当然だ。

 

 では異常なのはどこか。

 

 繰り返しの時空。狂った夏休み。日下部の死に戻り。その自宅。なにが異常なのか挙げれば挙げるほどキリがない。正常、正気なんて、一体どこの誰が保証してくれる……!?

 

「──ァああああアッ!!」

 

「くっ……!!」

 

 再び斧槍と打ち合い、時間だけが流れていく。

 勝負を終わらせるのは簡単だ。そも、やろうと思えば最初の一合でケリはつけられた。

 あの斧槍を断ち割って、彼女の生命活動を終わらせることくらい、可能だ。

 

 だから手を抜いている──ずっと。彼女が正気を取り戻すまで。その心に日下部の声が入り込むまで。少しでも隙が見つかるまで──

 

「──そうか」

 

 村雨は……待っているのか。

 俺が疲弊し、更にレティが出てくるその時を。

 

 ただ待つだけでいい。

 弱った獲物をかっさらうだけで、奴は勝てるのだから。

 

 問題はそこを……どう切り崩すか。

 

『──ディア。此方は済みました。お加減いかがですか?』

 

『お前の声聞いて超回復した』

 

 レティの念話に応えつつ──クレアとの戦闘を再開していく。

 向こうも汗だくになってきたが、それでも洗脳で休みなしで戦わされるってのは酷だな。しかもこの夏日に。

 

『済んだって、あの聖女か? なんか知ってたか』

 

『目ぼしい情報はあまり。確証が得られただけ収穫でした。おそらく此度の戦い、たとえアストラルをなんとかしても、更にその次があります』

 

『……あのー、可愛い声で恐ろしい話すんのはホラーだぜ?』

 

 なにその怖いニュース。

 笑う元気も消えていくんですが?

 

『残念ですが、ディアはループしても記憶が継続されるので先に情報を共有しておきますね? まず忘れてるだろう前提の認識ですが……そもそもアストラルは大精霊。人類側の味方なのです』

 

『……うん。そういやそうだな!?』

 

 記憶喪失になってたり、なんか敵方が呼び出したりしてたせいで、かなり敵の認識が強ぇけど!

 そういえば四大精霊の一角だった。それにしては、まぁ、味方という印象が全然ないが……

 

『つーかアストラルの役割って……ぶっちゃけナニ? 星の大守護者、って異名だが、いまいち掴めねぇ』

 

『彼の存在は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んですよ』

 

『それは──紛うことなく大守護者だなぁッ!?』

 

 宇宙て!

 支配領域:宇宙て!

 ……ちょ、ちょっと地球人類には想定しづらいスケールの話だ。ははは、あの暗黒の海にまで侵蝕してくる界域? そこで戦う? 魔獣と? ああ、そりゃあ──

 

()()()()()()()()()()()()()()()()! 地球!!』

 

『そうなのです。物凄い存在なのです。だから星の大守護者、なんですね。宇宙を侵す脅威から、数々の惑星を守っている。私は地球上での英雄ですが、その活動範囲が宇宙になったのがアストラル様です』

 

 人類の味方以外の何者でもねぇ!

 だが地球に降臨したらヤバイのは先日、身をもって知ったばかりだ──なんで?

 

『……なんで大守護者なのに、地球人類と相性悪いんだ?』

 

『そういうものだから、としか。精霊でありながら、人類の中に契約者がいないのがその証左です。地球の存亡になくてはならないものであると同時に、この世にはいてはならないモノでもある──その矛盾性こそが大精霊・アストラルの最大の特徴ですから』

 

『ってことは──そうか。上の連中がアストラルを「討伐」じゃなくて「撃退」だっつってたのも……』

 

『はい。万が一にもアストラルを倒してしまうと、宇宙に何億といるかもしれない、観測局でさえ把握していない規模の魔獣が、地球を目指して侵攻することになる。アストラルを倒した次、とはそういうことです』

 

『本命の敵は宇宙からの魔獣か……』

 

 だったら尚更、このループ事象やら魔法使いやらといった問題を片さなくてはならない。

 問題が山積みだ。だがまぁ、正しい最終地点が見えたのは良いことだ。

 

 ループをなんとかして、アストラルも片付けて、どうにか世界の滅亡を回避する。

 ならば今は──その第一歩目となるだろう。

 

「──オイ、復讐女!」

 

「……!」

 

「さっきから動きが鈍いな。もうダレたか? それとも所詮は三流、洗脳状態のぬるま湯で生きてく方が楽だって気付いたのか」

 

「え、ちょ、斬世、なにを──」

 

 アパートの上から日下部の困惑した声が聞こえてくるが知ったこっちゃない。

 神経を逆撫でするような言葉でもないと、こいつ本来の気性は出てこない。

 

「前に会った時、手を組んで復讐手伝え的なこと言ってたよな──アレ、願い下げだわ。自分の意志も貫けない、見失うようなヤツとは協力できない」

 

「──」

 

「だがまぁ、実験体にされた苦痛は理解できる。憎悪、怨念、恩讐、俺にだって心当たりがないわけじゃない。けど──悪いな。俺の復讐は始まる前に終わっちまったし、相手もとっくに死んだ。機会を失った以上、それに固執する気はない。そっちはそっちで勝手にやれ」

 

「……!」

 

「だからこれは知り合った縁、知人の義理ってやつだ──」

 

 激しさを増す相手の猛攻を打ち払う。

 ──その斧槍の切っ先を、斬り飛ばした。

 

「さっきから戦い方がなってねぇんだよ、ガキ。殺し合う覚悟がないなら戦場に出るんじゃねぇ、ド素人」

 

「ぁ──」

 

 がら空きになった鳩尾の辺り。

 蹴りを叩き込んだ。

 軽い少女の体が、固いコンクリの上を飛んで、派手に転がっていく。

 

 絵面、最悪……!

 これでも加減したが、向こうに与えた心的外傷は推して知るべし。荒療治という建前でも覆い切れない加害現場だ。

 

 二度とやりたくねー。ってかこれで正気に戻ってろよ? 頼むから。

 

「……っぅ、ううぅぅぅ……!!」

 

 ……やがて向こうからすすり泣きが聞こえてきた。

 アパートの上から、日下部が走ってくる。

 

「クレア……!」

 

「来るな、来るなぁ……!! うるさい、うるさいのよ、なんなのよ……! なんで全然届かないのよ、ガキじゃないもん、いっぱい鍛錬してきたの、素人なんかじゃないんだからぁ……ッ!!」

 

「あ、えっと、クレア、ハンカチ、いる?」

 

 臆せず話しかける日下部の度胸を今だけはスゲーと思った。ギャン泣きしてる相手によくもまぁ。ってか向こうも差し出されたモンを奪い取っている。

 

「戦うのが怖くてなにが悪いのよぉッ……! だって私が、私だけが生き残ったんだもん、だったら、あの子たちのぶんまで、みんなみんな殺さないと、やっていけないじゃない……! 私が生き残った意味、どこにもないじゃないぃぃ……!!」

 

 ……俺はそれ以上の泣き言を聞く気にはなれなかった。

 向こうの人生、向こうの地獄だ。それに付き合うべきなのは、

 

「そんなこと、ないんだよ。クレア」

 

 ──契約者の日下部だけだ。

 

「辛いことは忘れても、逃げてもいいんだ。恨みたいなら恨めばいいし、憎みたいなら憎んだままでもいい。でもさ、ほどほどに肩の力は抜かなきゃ、息が詰まるよ。人生も復讐も一回しかできないんだから、上手くできるように普段から気を付けなきゃ」

 

「…………アンタ。やっぱり変なヤツ……ズレてるのよ、慰めが……」

 

「そりゃあ俺はクレアに復讐したいこととか、恨みとかちゃんとあるからね。こんなところで正論に言い負かされて、くたばってるなんて、ちょっとガッカリなまである」

 

「……うるさいのよ……!! 馬鹿、バカ!! いっつも意味わかんないのよ!」

 

 ……あれがあいつらなりの普段通り、ってやつなんだろうか。

 憎み合ってる者同士、お似合いってやつか? 別に知ったこっちゃねぇが。

 

 

「──かくて復讐の雛は現実を知り、挫折から立ち上がる、か。人形にもなれない道化。舞台にいる意味があるのかしら?」

 

 

 観客気分の感想が駐車場に零される。

 声の主は当然──白衣を着た、眼鏡の女。

 

「村雨式実……」

 

「ああ、これって黒幕っぽい登場よね。それらしい台詞を言うべきかしら。言うわね?」

 

 気だるげな無表情。

 覇気のない声色。状況を実験観察気分でしか見ていない目で、

 

「それでは検証を始めましょう、刈間斬世という変数。()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──宣戦布告に等しい言葉を吐いた。

 

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