騎馬戦での激闘を終え、僕らはなんとか一位のまま通過することができた。
峰田君や葉隠さん、それに加えて耳郎さんもとてつもなく厄介な技や立ち回りを覚えていて正直驚いた
かっちゃんの隠し玉もあとほんの少し遅ければ逆転でトップを奪われていた
慢心等は無かったけれど、改めて気合を入れ直すきっかけにもなってとても刺激的な試合だった
「‥‥‥話って何?轟君。」
そして昼休憩、轟君に路地の暗がりへと呼ばれた。
その際に見せる轟君の雰囲気はかっちゃんとはまた違った冷たく近づくものを凍りつかせんばかりの目付き
「‥‥‥」
そんな彼は僕に対し、何かを確かめるように眺めてくる
改めてどうしたんだろうと思っていると彼の口が開いた
「緑谷。お前って『オールマイトの隠し子か何かか?』」
「‥‥‥‥‥‥‥えーっと‥‥‥」
なるほど、そういう捉え方もあるのか。
確かに、僕の戦い方は傍から見ればオールマイトと酷似してる部分もあるし、なんならスマッシュの仕方なんかもほぼ同じだ。
何かしらの関係を察せられても仕方ないとは思ってはいたけれど、そういう発想になるとは‥‥
予想斜め上の勘違いに僕は驚きながらも、冷静に彼の問いに返答する
「隠し子だなんてそんな‥‥‥それに仮に僕とオールマイトが血の繋がった親子だとしたら、『僕とオールマイトで似たような気を感じるはずじゃないかな?』
僕とオールマイトは親子なんていう関係じゃないよ‥‥」
「ならそれ以外の関係ではあるんだな?」
そう切り返すように聞かれた問は流石に言葉を詰まらせてしまう、それを見た轟君はこう続ける
「俺の親父はエンデヴァー‥‥知ってるだろ?『万年No.2のヒーローだ。』
お前がNo.1の何かを持っているなら‥‥現時点で最強に君臨してるお前に尚更勝たなきゃいけねえ‥‥‥‥‥‥」
その時に見せた轟君の眼の奥には深い深い、闇の世界が広がっていた
それを再び目の当たりにした僕は聞かずには居られなかった
「‥‥‥‥‥なんで勝たなきゃいけないの?」
その問いに轟君は少し目を瞑った後、再び僕の方へ向きこう答える
「『‥‥親父を否定する為だ。』」
轟君の口から聞かされたものは、とても形容し難く辛いもの
轟君の家庭内での実態
個性婚によって産まれた轟君。
母親の個性は氷の個性。
彼は父親からオールマイトを越えるヒーローを育て上げる為に産まされた。
そう語っている
「自身の欲求だけを満たそうってこった‥‥鬱陶しいそんな屑の道具には俺はならねぇ‥‥記憶の中の母はずっと泣いている。『お前の左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせてきた。」
そう言って轟君は痛みを思い出すかのように左側の顔を覆い隠す。
こうしてザッと聞いただけでも、彼の抱えてるものがどれだけ闇深いものなのかがよく分かる。
それでいて聞いているだけでもとても痛々しい。
「‥‥‥つまり、俺がお前に固執してんのは、見返す為でもある。クソ親父の個性が無くたって‥‥‥‥いや」
「『使わず一番になる』ことで奴を完全否定する。」
あまりに違う世界の話で正直ビビった。
目指す場所は同じでもこうも違うのか。とも想った
それでもだ。
「‥‥‥‥‥なら、騎馬戦の最後‥‥君はなんで『左側を使ったの?』」
完全否定すると意気込んでる筈の彼はあの時、炎を燃やしてでも僕へと向かってきた
その理由は、きっと‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥わからねぇ。」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥使うつもりもなかった。
けど、‥‥‥何故かあの時‥‥『無意識に左から炎が出てた。』‥‥‥‥次はそうならねえように‥‥‥」
「轟君。」
多分彼の問題は今すぐに、僕が言葉を交わすことで解決するような、そんな簡単な問題ではないことは容易に察せれる。
それでも、僕は『僕のなりの言葉を投げ掛ける』
「‥‥‥‥僕は、無個性だったんだ。
弱くて、それでいて泣き虫で‥‥‥どうしようもなくて、それでもヒーローに憧れて‥」
「そんな僕に、手を差し伸べてくれる人が居た。
そしてこう言ってくれた。『ヒーローになれるくらい無個性でも強くなればいい』と
その人から沢山学んだ。
『気の使い方』『武術の心得』『気を応用した技』『修業の仕方』
今じゃ僕の宝物でもあるこれらをもらった。
‥‥‥‥それでも僕は未熟で、まだまだ全然弱かった。」
「そんな僕にまた、手を差し伸べてくれる人が来たんだ。‥‥‥‥その人に救けられて‥‥‥今の僕が居る。
‥‥‥‥僕は、ずっと‥‥‥ずっと『誰かに救われてここに居る。』」
僕は、問われている気がした。
『笑って、人を助けるヒーローになる為』
『オールマイトをも超える最高のヒーロー』
「‥‥‥オールマイトのようになりたい‥‥いや、それ以上の存在になりたい。
その為には一番になるくらい強くならなきゃいけない。
君に比べたら些細なきっかけかもしれないけど‥‥」
「僕だって負けらんない。
僕を救けてくれた人たちに応える為にも。」
さっき受けた宣戦布告改めて、僕からも
________僕も君に勝つ。
言葉では伝え切れない。
僕が抱いているこの想い。
なら、言葉だけでは無く
試合の中で『心でも伝えたい』
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
爆豪勝己は不本意ながらも彼らの会話を聞いてしまっていた
その場で立ち止まり、緑谷や轟に気付かれぬよう気配を消しているようにも見えた
そんな彼をまた眺めている者がそこにはいた
「何してんだ勝己?」
「うお‥!?‥‥ってアンタかよ‥‥‥ビビらせんじゃねえよクソが‥‥」
これでも修業を続けていた爆豪は葉隠クラスではあらずとも気を隠すのは練習していたつもりであったので、見つかったのにビビっていた。
だが、話しかけてきた相手に納得の表情をする
その相手は『孫悟空』だった
「盗み聞きか?何話してたんだ?」
「‥‥アンタには関係ねぇよ‥‥俺にもな」
「関係ねえ‥‥‥か。」
含みのある言葉に、俺は疑問の表情を浮かべる
それを見たこの人はデクの方を顔で指した
「それを言うなら出久にだって関係ねえ話のはずさ。でも、出久は首を突っ込む気満々でいるぞ?」
「‥‥‥‥そりゃあ、宣戦布告されたんだから言い返すに決まってんだろ」
「本当にそれだけか?」
悟空は爆豪と同じように壁に寄りかかりながら話を続ける
「出久は本当にそれだけの理由であんな事を焦凍に言ったんかな?」
テメェも聞いてたんじゃねえか。とツッコミを入れたくなったが、とりあえず大人しくその問いについて考えてみることにする
というより、俺もその事で少し考えてもいた
その結論は出ている。それはとても‥‥‥とても、『余計なお世話』と言わざる負えない事
「‥‥‥‥アイツに、本当の意味で半分野郎の本気を出させようとしてる。
左とか、親父とか、そんなものを抜きにしてな」
「そうだな。
勝己、オメェも『オールマイト』っちゅーヒーローに憧れてここにいるんだろ?出久だって、他の奴らだってそうだ。」
「‥‥‥半分野郎もってか?‥‥」
「あぁ。」
「ハッ‥‥本当に余計なお世話だな。
他人の家庭内事情に首ツッコむほど俺はイカれてねぇ‥‥‥」
それを聞いた悟空は広角を上げながら答える
「その『余計なお世話』って奴がヒーローのすることじゃねえんか?」
それを聞いた俺は硬直してしまった
‥‥‥‥『余計なお世話がヒーローの本質』
それが答えなのだとするならば_____
それがヒーローとしての本質なのであれば____
「‥‥‥そうかよ‥‥」
やっと、‥‥‥やっと気づいたような‥‥
デクとの差。
その全てを。
やっと理解したような気がする
憧れ、目指す場所、恵まれた師匠や、授かったと言われる個性。
それら全て、今の俺と同じ条件だとしても
きっと差は開いていただろう
もしかしたら今以上に離れていたかもしれない
俺と出久にある本当の差って奴は
『そのヒーローとしての本質』って奴だ。
あいつは、
あいつは『無個性な時から手を差し伸べてきた』
そして俺はその手を振り払った。
振り払い続けた。
それが俺と出久の決定的な差だ。
「‥‥‥‥‥なぁ。」
爆豪勝己は自身にもその武術や気について教えてくれた人へと問いを投げる。
「‥‥‥まだ、デクに‥‥‥‥出久に、追いつけっかな‥‥」
それを聞いた孫悟空は答える。
「さぁな。」
__________でも、やってみなきゃ分かんねえぞ?
悟空はあえて曖昧な答えを提示する。
けど、それは彼にとっての『正解でもあった』
そう。やってみなきゃ分からない。
その場で立ち止まって考えていても意味が無い。
それ以上に『彼らしくない』
「‥‥‥‥はっ‥‥本当、アンタ何者なんだよ。」
その意図を爆豪は読み取り、納得する。
彼の強さや異質さはこの身で既に体験済みだ。
体育祭が始まる一ヶ月前
爆豪は孫悟空に勝負を挑んでいた
自身の腕試し、それと同時に『緑谷出久の目指す場所を知りたかった』
その意図を察した悟空もまた、『自身の力を引き出してみせた』
_________なんだ‥‥そりゃ‥‥‥
_________オラの力‥‥‥って言ったところかな?
彼の見せた姿は黄金に輝く金髪に加え、
彼の周りを黄金の炎で覆うようなそんな神々しいようで荒々しいような姿
ド素人な爆豪でも、今の自分と孫悟空には天と地ほどの差があることくらい分かった
それと同時に理解もした
『緑谷出久の目指す場所を』
今目の前にある黄金よりも、もっと先
その更に‥‥‥‥更に向こう側に。
悟空はお腹が空いたようなので腹ごしらえに何か食べに行こうとその場を去ろうとすると
「_______おい」
爆豪が覚悟を決めたかのような表情で悟空を呼び止めた
「なんだ?勝己」
「‥‥‥‥‥‥‥俺が一位になる。デクを超えて、そんで‥‥‥その次は『アンタだ。』」
「‥‥‥待ってやがれ、必ずお前を超えて、デクにも負けねえ‥‥オールマイトにも負けねえ‥‥『最強で‥‥‥最高のヒーローになってやる』」
それを聞いた悟空は嬉しそうに手を上げてニカッと笑ってみせながらこう言った
「おう。いつまでも待ってっぞ。」
昼休憩が終わればいよいよ本戦
その内容は出場者16名にまで絞り込まれたガチバトル
そう、『一対一のタイマンだ。』
『最終競技はガチバトルトーナメント!
今年は場外アウトのガチバトル!
対戦相手を叩きのめしてもオーケーだァ!』
_____遂に来た。
一対一でその人、一人一人の実力が明確に顕になるであろうこの競技
そのトーナメント表は抽選会の結果によって決まる。
結果は
『それじゃあ対戦表を公開していくぜぇ!』
一回戦 Aブロック
緑谷vs心操
瀬呂vs轟
芦戸vs尾白
切島vs葉隠
一回戦 Bブロック
飯田vs発目
上鳴vs耳郎
八百万vs常闇
爆豪vs麗日
一回戦目の相手は、心操君だった。
そのまま順調に勝ち続ければ轟君、そしてきっと勝ち上がってくるだろうかっちゃんとも最終的に当たる
________ワクワクしてきた。
これから起こるであろう数々の闘いに想いを馳せながら試合が始まるのを待つ緑谷だった。
_______おまけ
騎馬戦終了間際
峰田「あれ!?オイラの!!オイラのハチマキがねえ!?なんで!?」
葉隠「よっしゃ!戻るついでに峰田君のハチマキゲット!!」
峰田「ちきしょぉ!!!あの透明女ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
葉隠さんに見事漁夫の利されてしまう峰田君でした
そして騎馬戦の終了後
峰田「くっそぉぉぉ!!!オイラの誘いを断った上にハチマキまで奪いやがってえ!!」
葉隠「えへへ!!悪いね!」
瀬呂「でも、確かになんで峰田の誘い断ったんだ?峰田のもぎもぎ透明化させるのは流石に強くないか?」
葉隠「もぎもぎを透明化させたらこっちも見えなくなるじゃん?地面に置いてるやつ間違えて踏んだらこっちが大惨事だよ
仮に繰気弾の方を透明化させても気を込めてるから緑谷にはあんま効果無いし‥‥‥‥‥なにより」
瀬呂「なにより?」
葉隠「‥‥‥‥峰田君と組むとえっちなことされそうでやだ」
耳郎「あぁ‥‥確かに」
峰田「なんだとてめらぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!こういう時くらいは真面目にやるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」
女性陣からの信用があまり無い峰田君であった
峰田君を出場させるかどうかを最後まで迷ってましたが、こういうオチのが似合いそうだなと思ったのでこういう形にさせてもらいました
描いてませんが峰田君の素行は原作と変わらずなので女性達からの信用は低いです
チアガールの一件も変わらずにやらかしたので耳郎さんにシメられてます
今後、説明不足な所はおまけで描くようにしていきたいと思います。
それではまた