轟は自身の試合の為にステージへと向かっていた。
その道中、彼は顔を合わせたくない人物と対面するハメになってしまう
‥‥‥‥そう、言わずもがな『自身の父親だ』
「邪魔だ。」
「醜態ばかりだな焦凍」
焦凍は無視して進もうとするが、親父の方はそれだけでは止まらない
「左の力を使えば障害物も、騎馬戦も、もっと上手く立ち回れたはずだろ。」
「いい加減子供じみた反抗はやめろ。
お前にはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ」
「わかってるのか?兄さんらとは違うおまえは______」
そこから先の言葉は焦凍は言われなくても散々言い聞かせられたことだから嫌でも分かる
察せれる
だからこそ苛立ちが収まらない。
‥‥‥だが、父親の言葉は何故かそこで止まる
唐突に言葉を止めた親父の様子に違和感を覚えた焦凍は振りかえる、するとそこには見知らぬ男性が親父の肩を掴み止めていた
「‥‥‥‥誰だ貴様」
「自分の子にそんなもん押し付けてんじゃねえよ。」
見知らぬ男性は親父に真剣な眼差しでそう言ってきた
唐突な展開に流石の焦凍も驚いた表情を隠しきれずにいた
そんな様子を見た男性は親父へ向けた眼差しとは打って変わった柔らかな表情をしながら焦凍へ近づいてくる
「オメェ、焦凍って言うんだよな?」
「え‥‥‥‥まあ‥‥‥」
「とっとと行ってこい。もうすぐ試合始まんだろ?
『自分のやりてえようにやってこい。』」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
そう言われた焦凍はそのままステージへと向かう
もちろん、親父の方はそうはいかないのだが
「待て焦凍!!まだ話は終わってないぞ!?」
「お前の父ちゃんは抑えとっから、な?」
そう言って彼は俺の頭を撫で、送り出してくれた
不思議な男性だ。
見ず知らずの男性が、第三者で無関係のはずの男性が知り合いでも何でもないはずの自分を助けてくれた
‥‥‥‥正直言って余計なお世話だ。
親父の言うようにこれは『俺と親父の問題』
‥‥本来ならば俺もこの人を怪訝するべき対象なのだろう‥‥‥‥そのはずなのに
「‥‥‥‥‥‥‥暖かかったな‥‥」
そこには『確かな愛情の篭った温もり』があった。
「いい加減にしろ貴様‥‥!!!俺が誰なのかわかっているのか!?」
「よくは知らねえさ。オールマイトのおっちゃんの次にすげえヒーローなんだろ?」
「それを分かっていて口出ししてきたのか貴様‥!?」
エンデヴァーは目前に居る男性の行動をまるで理解出来ずにいた
それ以上にNo.2である自分に対して堂々とした姿勢を続ける彼に妙な違和感を感じざる負えなかった
「アンタ、オールマイトを超える義務がとかあの子に言ってたけんど‥‥それってあの子が自分でも言ってたんか?『超えてえってよ』」
「焦凍が望む望まないは関係ない。
そもそも、アイツは‥‥『俺の最高傑作はオールマイトを超えるために産まれてきたんだ』」
「‥‥‥この世界じゃその為に子供が産まれんのはよくあることなんかもしんねえしよく分からなねえけんどよ。
これだけは確実に言えっぞ。
‥‥‥『アンタの言う最高傑作じゃオールマイトのおっちゃんを超えることなんか出来やしねえよ』」
その言葉を聞いたエンデヴァーは自身の使う炎を激しく散らし、目を大きく開きながら睨み付けてくる
その眼は正しく『狂気に満ちた目だった』
「貴様ァッ‥‥!」
「‥‥‥‥アンタも父親なら、自分の子のことをちゃんとみてやれ。じゃねえといつか後悔すっぞ。」
睨み付けてくるエンデヴァーにそれだけ伝えると悟空は観客席へと戻って行った
その後ろ姿を眺めながらもエンデヴァーは先程言われた言葉を脳内で復唱する
『じゃねえといつか後悔すっぞ。』
「‥‥‥‥そんなもの‥‥俺には関係ない感情だ。」
エンデヴァーはまだ、自身の抱く野望に炎を燃やしている
その先に見えるものが深淵とも知らずに
続いての試合、第二回戦は轟vs瀬呂の試合だったが
瀬呂が個性により場外へと無理矢理連れ込もうとしたが、轟はそれを凍らせ更には瀬呂の身体を氷漬けにし戦闘不能という形で試合を終える
緑谷にも引けを取らないほどの圧倒的な力で瀬呂を圧倒し、轟の勝利で試合を終えた
その試合を僕は観客席から眺めていた。
率直な感想を述べるのなら轟の様子が『少し苛立ってるようにも見えた』
とはいえ試合内容は圧倒的な轟君の勝利、周りもそればかりに目が行ってるようだ
「う、うわー‥‥‥凄いな轟君‥‥‥デク君大丈夫なの‥?」
「凍らされても砕けると思うから、注意するなら足場を崩されての強制場外かな‥‥それさえ気を付ければ勝てると思う」
「じょ、常人ならそれすら出来ひんのやけど‥‥‥流石はデク君‥‥」
続く試合は芦戸さんと尾白君の試合
このマッチアップは尾白君にとって厳しい闘いになるかもしれない
尾白君の個性からして近距離での接近戦を望むはず
対する芦戸さんは自身の個性である酸で接近戦を拒否し続けることが出来る
個性だけで見れば圧倒的に尾白君が不利‥‥‥‥だけど
「デク君、どっちが勝つと思う?」
「芦戸さんが個性を上手く使いこなせばそれだけで尾白君を完封することは可能かもしれない‥‥‥‥でも、『尾白君はそこまで甘くない』」
彼は僕と出会う前も武術を学んでいたと聞いていた
その技術は本物
そして何より、僕と修業してきた人達の中でダントツで成長速度が速かった一人でもある
そんな彼が『簡単に負けることは想像しにくい』
「いけぇ!!尾白!格闘ゲームみたいに脱衣KOしろー!!」
「やりにくくなりそうなこと言うんじゃない!!」
「ひでぶっ!」
耳郎と峰田のやり取りを見た尾白は苦笑いを浮かべながらステージへと上がり、芦戸と対峙する。
普通で考えれば最初に緑谷が考えた通り尾白の不利
‥‥‥だが、それは『個性だけで考えればの話だ』
試合結果は『尾白君の勝利で終わった』
序盤、酸で逃げ回る芦戸であったが尾白が自身の尻尾で足場を壊すことでステージの移動に制限を加えた
これにより逃げ回る戦法を封じられた後、尾白が拳を振るう事で『その風圧で芦戸が場外まで押し出される形』で勝負を終えた。
「‥‥流石だ‥‥‥尾白君‥‥!!」
この短期間でここまで気を王道的に使いこなせているのは尾白君くらいじゃないかな。
確かに峰田君や耳郎さん、葉隠さんも気の使い方はとてつもなく上達してると言える
でもそれらはあくまで『個性との組み合わせ』や『技術面』での成長
尾白君の場合は元から備わっていた武術に加え、単純な気を加えた上での『純粋な力』
もしかしたら、今の僕でも苦戦を強いられるかもしれない。
続く第四試合は切島君と葉隠さんの試合
この試合も一見すると透明化するだけの葉隠さんと硬化を駆使する切島君とは不利のように見えるけど‥‥‥
試合が始まるとまたもやその考えはすぐに覆ることとなった
「漢らしく真正面から行かせてもらうぜ‥!!」
切島君は開始早々硬化を使用しながら葉隠さんへと接近
彼の個性から接近戦を望むのは当たり前なのだが、ここで僕も初めて知る葉隠さんの必殺技が炸裂する
「集光屈折ハイチーズ!」
葉隠さんの顔を中心に『光が集まり、閃光が解き放たれた』
それをモロに食らった切島君はもちろん足を止めてしまう
「うお!?なんだこりゃァッ!?」
もちろん、その隙間こそ葉隠さんの狙い。
懐にまですぐに近寄ると切島君の両足を持ち上げる
「ふんぎぃぃぃぃい!!!!」
「うおおおおおおおっ!??」
「よっこいしょぉぉぉぉぉ!!」
そのままぐるぐると回転させた後、勢い良く場外へと投げ飛ばす形で葉隠さんの勝利となった
後から聞いた話だと、僕が悟空さんとの修業の話題になった際に上げた技の一つである
『太陽拳』を聞いて自身の個性だけでも出来るんじゃないかと思って編み出した技らしい
続く試合はBブロックから第五試合、発目さんと飯田君の試合だったんだけど
正直言って試合とは言えない内容だった
発目さんの口車に乗せられて、10分間彼女のガジェットのテスターにされた末に発目さんが自らラインを出ることで試合が終わった
要はこの大舞台で自身のベイビー、基サポートアイテムの良さを観客の人達にアピールしたのだ
「あっはは、飯田君の真面目な所を逆手に取られちゃったね。」
「真面目過ぎるのも考えもんだねえ〜‥‥」
とはいえ飯田の勝ちには変わりない
飯田君の個性も応用を効かせればかなり強力な個性になる
これからの事を思うととても楽しみな一人でもある
「‥‥‥っし‥‥‥そろそろ控え室行ってくるね」
そう言って控室へと向かった彼女の後ろ姿が、僕は少し気になった
しばらく考えた後、僕もその後を追うことにした
深い溜め息と共に飯田は控室へと入っていく、すると目の前には控室の椅子に腰掛けている麗日の姿があった
もちろん声を掛けようとするが、彼女の表情を見て思わず驚いた声を上げる
「うらら‥‥‥‥かじゃないな!?シワシワだぞ眉間!!」
彼女の表情はとても固く、第三者から見ても分かりやすいくらい緊張していることがわかる
それもそのはずだ。彼女の相手はあの『爆豪勝己なのだから』
緊張等もあるだろうが、何より
「そうか‥‥君の相手はあの爆豪君だものな‥‥」
「‥‥うん、超恐い‥‥」
相手は恐らく、この学園でトップを張る緑谷に一番近いと思われる人物
一番追いつこうと必死にしがみついて来る人物の一人でもある。
そんな人物が相手‥‥‥恐くないはずがない
「‥‥‥でも、‥‥‥飯田君のヤツとか‥‥峰田君、葉隠ちゃんだったり耳郎ちゃんだったり‥‥‥」
そこまで話すと控室に緑谷が入ってくる
「麗日さん!」
「デクくん!アレ?皆の試合見なくていいの?」
「うん、耳郎さんと上鳴君の試合もすぐに終わっちゃって‥‥‥今常闇君と八百万さんの試合が始まるところかな」
上鳴君と耳郎さんの試合は上鳴君が先手必勝で200万ボルトを放ったけど、耳郎さんの個性による技『心音壁』によって難無く防がれて、上鳴君も負けじと何回も放電した末に動けなくなっちゃって
そこを耳郎さんが笑いながら場外へと運んで決着。
「多分今回の試合も常闇君が勝つと思う。彼の個性は接近戦がかなり強いから、創造するのに時間が掛かる八百万さんはかなり不利だと思うしね」
「じゃ、じゃあ‥‥‥もう、次‥‥すぐ‥‥」
「うん」
麗日お茶子に、改めて緊張が走る
あの爆破を駆使して闘ってくる彼ともうすぐ闘う事になる
‥‥‥‥‥‥やはり、恐い。
身体が若干竦んでしまう‥‥‥‥
‥‥‥‥‥それでも、
それでも、彼女は、皆のように全力で勝ちに行きたかった。
_______飯田君も、峰田君も、葉隠ちゃんも、耳郎ちゃんも、みんな‥‥みんな全力で『デクくんに追いつこうと必死になっていた』
その姿が、とても羨ましくて
私も、私も『そんなふうに夢を追い掛けたくて』‥‥‥‥
「‥‥‥ねえ、デクくん。
私、勝てるかな‥‥‥‥爆豪君に‥‥‥」
思わず麗日は聞いてしまった。
不安からなのか、それともいっその事諦めが付くように聞いたのか。
‥‥‥恐らく両方だろう
不安や恐怖‥‥‥そこから安心を得る為に、諦めが付くように、一番強いであろう彼に諭して貰おうとそんな考えで聞いてしまったのだと思う
だが、目の前に居る『最強を目指す者の回答は違かった』
「‥‥‥‥確かに、今のかっちゃんに麗日さんが勝つのは難しいかもしれない。」
「‥‥‥‥そ、そう‥‥だよね________」
「でも、僕は麗日さんに勝ってほしいとも思ってる」
「‥‥‥‥え」
「その、付け焼き刃だけど、麗日さんの個性でかっちゃんに対抗する策を考えてきた!」
‥‥‥‥デクくんは本当に凄い。
こうして側にいるだけで凄いとこがどんどんどんどん見えてくる
ただ強いだけじゃない
それに見合うだけの『肉体的以外の強さも持ち合わせてる』
「ありがとう、デクくん。
‥‥‥‥‥‥でも、いい。」
「私もさ、『デクくんに挑戦したい。』
‥だから大丈夫‥!!」
___________決勝で会おうぜ!
そう言って麗日さんは試合会場へと向かった。
第八試合、一回戦最後の試合。
麗日お茶子vs爆豪勝己の戦いが幕を開ける。