例年通りであれば試合終了後はすぐに表彰式へと移るのだが、今回は決勝戦で緑谷と爆豪がしでかした被害は尋常ではなく、ステージ上は言うまでもなくボロボロ
それどころか会場の至るところがヒビ割れていたり壊れかけたり、なんなら観客席までその被害が及んでいる
やらかしたという言葉だけでは済まされないほどの影響
その為、ある程度時間を置いた後に表彰式が行われる事になった
決勝戦で激戦を繰り広げた二人は保健室で互いにリカバリーガールの治療を受けて待機中だったが片方の気絶していた爆豪が目を覚ましたとの連絡が入ったので相澤先生は事前に説明等を済ませる為彼らに話を付けようと向かったのだが‥‥‥
扉を開くとそこには試合後にも関わらず元気過ぎる二人がなにやら言い争っていた
「だァかァらァッ!オレはこんなゴミみてえな勝ちは要らねェって言ってンだよッッ!!
闘ってる最中に倒れるヒーローが居るかァッ!?あァッ!?」
「こっちこそ何回言わせる気なんだっ!?
どういう形であれあの試合は僕が場外で君はステージに立ってた!!これは紛れもない事実じゃないかっ!!?」
「‥‥‥‥‥なんだこれは」
決勝戦に至るまで様々な試合や番狂わせを散々見せ付けられた相澤先生は大抵のことでは驚かないと思っていたが、この光景には流石に困惑せざるを得なかったようだ。
決勝戦を終え、次は表彰式に移るはずなのだが‥‥先程繰り広げていた光景の延長線と言うべきだろうか
プレゼントマイクのアナウンスと共に入ってくる一位と二位の表情には明らかな不満が顕になっていた
二位である緑谷出久はしかめっ面のまま入場し、一位である爆豪勝己は鬼の形相をしながら歯ぎしりをしながら歩いてきた
「‥何アレ」
「爆豪が起きてから二人ともあんな調子なんだよ‥‥」
なんとも締まらない一位と二位である。
相澤先生が入ってきた後、彼らの言い争いはもうしばらく続いていた
間に入ろうとしても互いに顔を至近距離にまで近づけ、最終的には互いに自身の額をぶつけ合うほどまで今にも殴り合いになりそうな程までヒートアップしていた為、今すぐ止めようにも難しい状態となってしまっていた
こういう時こそ相澤先生の個性である『抹消』が本来ならば活躍するはずだが、素の状態でそこら辺のヒーローよりもフィジカルが鍛えられてしまっているが故に焼け石に水状態となっていた。
拘束帯を使えばギリギリ抑えられそうでもあるが今手元に無い為それも難しい
そんな中、二人の間に無理矢理入り込んだ人物がメダルを持って登場してくるこの男だ。
「メダル授与!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
「私が_______」
「メダルを持って来た!!!」
「「「我らがオールマイトォッ!!!」」」
決め台詞と共に登場するオールマイトであったが、観客のみんなとかぶってしまい
少ししょんぼりしていたのは置いておこう
メダル授与へと移り、オールマイトがそれぞれの者達にメダルを渡していく
メンバーは下から尾白、耳郎、緑谷、爆豪と行った順だ
尾白と耳郎に関しては同率三位という結果となっている
「尾白少年、耳郎少女!見事な闘いぶりだった!
尾白少年は、基盤となる技のキレや力を鍛えればきっともっと強くなる。
耳郎少女もスタミナや個性の扱いに慣れれば可能性が広がると感じたよ。
本当に見事な試合だった!二人とも三位おめでとう!」
二人にそれぞれアドバイスを投げかけるオールマイトだが、これから同じように言葉を投げかけるであろう二人の様子を見て思わずギョッとしてしまう
相変わらず‥‥‥‥というより片方に関しては段上に上がってから更に圧が増している。
緑谷に関しては納得行ってなさそうな爆豪に対してしかめっ面をしているし、それに比例するかのように爆豪は鬼の形相の度合いが増して行っていた
今にも暴れ出しそうな勢いだが、‥‥‥‥まあとりあえずは良いだろう。
「ゴホンっ!緑谷少年!!まずはおめでとう。」
「‥‥‥‥はい。」
咳払いの後、オールマイトがメダルを渡すと緑谷は顔を落としながらそのメダルを受け取る
「伏線回収‥‥‥‥とは行かなかったね。
それでもそう宣言するに値する実力を持っていたのもまた事実。
君と爆豪少年の闘いは歴代でも最強と断言出来る。誇っていい。」
慰めの言葉を投げ掛けるオールマイトであったが、緑谷の顔はまだ暗いまま口を開く
「‥‥‥‥僕は、まだまだ未熟です。」
「あの時‥かっちゃんに向けた最後の一撃‥‥‥かっちゃんの爆破が、『僕の放った一撃を上回った』‥‥‥‥‥それが紛れもない事実‥‥これでオールマイトのようなヒーローに近づけたなんて‥‥到底思えない」
「‥この事実をしっかりと受け止めて、未熟者を卒業出来るようにこれからも精進します。
自分を誇るのは、それからにしたいと思います。」
そう言った彼の顔にはいつも以上の決意に満ち溢れた顔付きとなっていた
この少年は決して弱い人間では無いということを改めてオールマイトは再認識させられる。
「強いな君は。‥これからも頑張るんだぞ」
そう言ってオールマイトは緑谷を優しく抱きしめた。
さて、和やかな雰囲気のまま雰囲気のまま彼も済ませることが出来ればいいのだが‥‥
この体育祭一位である爆豪勝己の顔付きは今にも爆発しそうな形相になっていて物凄い歯ぎしり音と共にオールマイトを凝視していた
「さて!爆豪少年!!君も見事な闘いぶりだった!!」
「‥‥‥グギィ‥‥‥‥‥‥」
「(めちゃくちゃ嫌そう‥‥)」
オールマイトがメダルを近付かせると鬼のような形相に引き攣ったような表情も足されてとんでもないことになっていた
明らかな拒否反応なのは傍から見て明らかだ
そんな彼にオールマイト小さく呟く。
「‥‥これは君の"傷"だ。」
そう言われた爆豪は目の前にあるメダルを見ながら数十分前にオールマイトによって止められた言い争いを思い返す。
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「オーケーオーケー!落ち着きなよ二人とも!爆豪少年の言い分も緑谷少年の言い分もよーく理解した
その上で結論を言おう
今回の体育祭決勝戦、爆豪少年の勝ちだ。」
「爆豪少年が対戦相手を前にして気絶してしまったのも事実、
けどね、これは"試合"だ。
試合は決められたルールに則って勝ち負けが決定付けられる。
最後までステージに立っていたのは爆豪少年、君だ。
これは揺るぎない事実。‥‥君は納得いかないかもだけどね」
「‥‥‥‥‥ったりめぇだ‥‥」
「なら、これから受け取るであろう優勝メダルを自身の"傷"として受け取るんだ。
自身の中にある『負けた』という感情をそのメダルに注ぐんだ。
忘れないようにね。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
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爆豪はそれを無言で返事をし、今に至る。
何故爆豪はここまで優勝のメダルを受け取るのが嫌なのか
何故ここまで拒否反応を示し続けるのか___
メダルにそんな想いを込めたくないから?
そりゃあもちろんそんな苦な想いを入れながらメダルなんか受け取りたくない。
でも、そんなこと以上に嫌なものがある。
納得がいかないから?
そりゃあもちろんそうだ。
こんな勝ち方をしてもなんの価値もない。
彼は心の底からそう思ってる
でもそれだけじゃない。
何よりも許せないのは。
何よりも、どんなことよりも、
どんなに周りが持ち上げようと。
どんなに世間が盛り上がろうと
どんなに、"アイツ"が認めようと
________爆豪勝己本人が"この結果"を認めない。
爆豪は引き攣った表情のまま、メダルを受け取る
周りがちゃんと受け取ってくれたと安堵する中、不変の絶対評価を持ち続ける者は声を上げる。
「オイデクッッ!!
負けた気でいるンじゃねェぞッ!!」
観客席からも拍手が聞こえ始めた時だった。
雑音を遮るかのように爆豪は大声を上げ、自分の声に観客席含む者達に注目させる
「何度も言うが!俺はなァ!!テメェに勝ったなんて微塵も思ってねェ!!!確かにテメェを場外まで吹き飛ばしたのは俺だ!それでもこンなクソみたいな勝ち方ァ俺は認めねェ!!!」
Aクラスの面々、加えてオールマイトでさえまだそんなことを。と言いたげな顔をする中
爆豪は言葉を続ける
「俺が目指すのは完膚なきまでの勝利‥‥‥‥"こんなの"じゃねえ‥‥!!!だからッ______」
「だからッ!"三回勝負だ!!"デク!!!そンで次の勝負は来年だッ!!!」
その言葉にA組だけでなく観客席の者達も驚きの顕にする
その言葉の意味、それがわからぬほど民衆は頭が固くない。
「三回やって三回とも俺が勝ってやる‥‥!!!そン時に『決着だクソがッ!!』」
「‥‥‥‥かっちゃん‥‥‥」
それを聞いた緑谷はいつの間にか拳を強く握っていた。
改めて爆豪勝己がどういう人間なのかを再認識させられる。
そうだ。彼は‥‥‥‥彼は"こういう人だ"と
だからこそ、"憧れた"と
「______わかったよ、かっちゃん。三回勝負‥‥まずは一本君が取っただけ‥‥そうだ。それだけのことだ」
緑谷は握っていた拳をより力強く握り、爆豪へと向ける。
それは決意の表れでもあり、爆豪へ向ける敬意でもある。
それを向けられた爆豪は口角を上げながら双方同時に告げる。
「次ァ絶対俺が勝つッ!!」
「次は絶対僕が勝つッ!!」
お互い試合中に見せた姿のように目を輝かせながら告げた。
そしてこの放送は全国中で話題になり、海外にまで二人の名は刻まれることとなった。
まさに、伝説の試合だったと言っていいのかもしれない。
恐らく数年後には教科書に乗るほどのビッグイベントと言ってもいいだろう
それほどまで凄まじい試合だった_______
体育祭が終わり2日の休みを彼ら学生達は設けられる
彼らをとりまく環境はここから少しずつ変化を見せ始める。
そんな各々の休み期間、学校からあるお知らせ‥‥‥というより"招待"が届く
それは_______
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
「す、すごい!!こんな豪華なご馳走が沢山‥‥!!!これ!全部食べちゃって良いんですか!?」
「あぁ!もちろん!遠慮無く食べていってくれ!」
雄英高校校長である根津校長からパーティのお誘いが来たのだ。
それも雄英学園に所属する者達や保護者達に向けて
何故これほどまでのパーティを開いたのかと言うと
それもこれも本学年の1年生の部決勝戦にある
改めて彼ら二人の決勝戦は凄まじい試合だった
その反響は国内問わずに海外にも轟かせている
つまり、『話題になりすぎて』今じゃ世界中誰もが知る二人となってしまっていたのだ。
結果雄英体育祭の知名度は一気に跳ね上がり、世界規模で話題性を呼んだ
これほどまでの偉業を成し遂げたことは今までに無い
よって根津校長はパーティを開催することにしたのだ
「うんめえなこれ!!おかわりもう一丁!!」
「相変わらずすごい食べっぷりだな‥‥‥」
そんなパーティに緑谷出久の師匠の一人である彼、孫悟空も招待されていた
オールマイトがパーティを開くんだったら是非彼を呼びたいということで招いたのである
「悟空さんも凄いけど、緑谷少年も凄い食べるね!?これで米何杯目だい!?」
「えっと、10杯目くらいです!」
「すごい食欲!?」
他の者達もこのパーティで出される品物達に皆夢中になりながら雑談をしている様子だった
生徒達とその保護者達で会話を楽しむ者達や、友人同士で体育祭の出来事を話す者たちだったりで溢れかえっている
緑谷は食べ物を飲み込むとふと思ったことを口にする
「オールマイト、そのフォームの維持とか大丈夫なんですか?このパーティ中耐えられるんですか?」
そう、彼オールマイトは今もなおマッスルフォームのまま居続けている
本来ならその姿を保つだけでも制限時間を削られてしまうはずなのだが
「大丈夫!『気のコントロール』を修業したおかげで無駄な力を使わずに済んでいるんだ。
この姿でも戦闘さえしなければ24時間はこれで要られるよ」
そんな会話を繰り広げているとAクラスの面々が緑谷の姿に気がつき近付いてきた
「お、緑谷じゃん!‥ってめっちゃ食ってる!?一人でこんな食ってるやつ初めてみたんだけど!?」
「オイラ見てるだけで胃もたれしそう‥‥」
そんなふうに話しかければ隣にいる彼の姿にも目が行く、緑谷以上の食べっぷりを披露する者の姿を
「あれ?緑谷、その人は?」
「紹介するよ。僕の師匠、孫悟空さんだよ」
「オッフ!オハ悟空!」
悟空は口いっぱいに食べ物を詰め込みながらもしっかりと彼らに目線を合わせて挨拶をする
少しそんな姿に気取られつつも少年少女らは挨拶をする
噂には聞いていたし、緑谷本人からもどんな人物なのかを聞いてはいたのだが‥‥
「‥‥‥‥ここまで来ると逆に冷静になるな‥‥」
轟が見たのは大量に積み重なりまるで山のように君臨している皿の数々
10皿程平らげている緑谷が可愛く見えてくるようなそんな異常なほどの食欲を目前に居る男はこれでもかと見せつけていく
そんな異様な立ち振舞でも彼らのA組の者達は感じ取る。
『この男はとてつもない強者』だと
緑谷と爆豪を間近で見てきたからか、はたまた彼らの気に対する修業の成果なのか‥‥‥はたまた『本能的なものなのか』
どれかはわからないが、とにかく強いことがすぐに分かったのだ
各々様々な感想を述べる面々達であったが、八百万だけは彼の名乗った名前を聞くと表情を変える
「‥‥‥‥ソン‥‥‥ゴクウ‥‥‥‥‥どこかで‥‥‥‥?」
記憶の何処かで引っかかるその名前にどうにか思考を巡らせるがどうしてもその場では思い出せなかったようだった。
その記憶の正体がもう何十年か前に解散されたとされる世界的大企業、その企業を一から設立した男性の娘が遺したとされる本に載っていた名と一緒だということに気が付くのは彼女が家に帰宅してからだそうだった
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そして少年少女らが雄英高校が開催しているパーティを楽しんでいるのと同時刻
ある男は何処かの山に来ていた。
男の名前はエンデヴァー‥‥‥本名 轟炎司
彼が訪れたのは何年か前に山火事が起きたとされる場所であり‥‥
"彼の息子がここで死んだ場所でもあった"
その息子の名は轟燈矢。
10年前 彼の息子はここで死んだ
死因は山の特訓場で、自分の”個性"による暴走で山火事を引き起こしてでの"事故死"
彼は一日中‥‥いや、何日か眠らずに自身の息子を探し回った
それでも見つからなかった
遺体すらも残らなかったそうだ。
前日開催された雄英体育祭での出来事は、今では世界中で知らない者は居ないと言ってもいいほどとてつもない盛り上がりを見せている
そんな大舞台の上で自身の息子の一人である轟焦凍は第二回戦にて敗退
しかもその息子は明らかに現在の自分以上の力を魅せ、緑谷出久に挑んだにも関わらず真正面から叩き潰された
ただでさえその事実だけでも轟炎司の心を折るには充分なはずだった
なのに
見てしまった。
否‥‥‥見せつけられた。
爆豪勝己と緑谷出久の激戦
それはあまりにも明るすぎる光だった
その光は、かつてのオールマイトのように"眩しすぎた"
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
それらの光は彼の中にあるものを影で満たしていき、何かを壊していく
『自分では如何足掻いてもオールマイトを超えることは出来なかった』
『それどころか息子では無い全く別の者達に先を越されてしまった』
それは一体何を意味するのか?
息子達にしてきた仕打ちは?
母親に与えた苦しみは?
家族に与えた地獄は?
今まで積み上げてきた年月は?
________轟燈矢が死んだ意味は?
「何も‥‥‥‥‥‥無いじゃないか‥‥‥‥」
執念のみで動いていた彼の思考が、見ないフリをしていた事実を、押さえ込んでいた罪悪感を、無駄ではないと考え、突き進んだこの意思も
彼らの光によって照らされ、直視せざるを得なかった。
轟炎司の心は、壊れかけていた。
「‥‥‥‥あ?てめぇは‥」
不意に聞こえてきたのは男の声であり、轟炎司にとっては聞き覚えのない声だった。
だが顔を見た途端誰なのかがすぐに理解した
「貴様は‥‥‥‥『パーツ!?』」
彼は雄英高校を襲撃した主戦力の一人、『パーツ』と呼ばれている男だった
そんな敵と遭遇してしまった炎司はすかさず自身の炎を咄嗟に吹き出させながら臨戦態勢を取る
だが、そんな様子を見せても目の前に立つ敵は何も反応を見せなかった。それどころか
「ハァ‥‥テメェなんかとじゃれ合う気はねえんだよ。興味すら湧かない、オールマイトや緑谷ならともかく」
「‥‥‥‥‥‥なら、何しにここへ来た」
普段ならば敵と見なせば一撃を問答無用で食らわそうとするのだろうが、今のエンデヴァーは精神的にも参って来ている状態でもあり相手が本気で闘うつもりが無いことを長年のヒーロー経験で察した彼は真っ当な問を投げる。
「墓参り的な奴だよ。どうせテメェも様子からして同じようなもんなんだろ?」
「‥‥‥‥‥‥そんな偉いものではない。」
「あっそ」
明らかに何か事情がありそうな様子を見せるエンデヴァーだったが目の前に居る敵は本当に興味すらわ湧いてなさそうな反応を示す。
それもそうだろう。
本来であれば対立する者同士なのだから
「‥‥‥ヴィランでも死者に対して想うことがあるのだな。」
「ヴィランでも人だ。
それなりに情があんのは当たり前だろ。それがその人のおかげで『俺が存在出来てる』って考えれば尚更だ」
「‥‥‥なら、何故恩義を返そうと思わない‥‥‥何故ヴィランとして振る舞っているんだ貴様は‥‥‥」
口ぶりからしてその命を落としたであろう者に助けられた彼が何故今ヒーローである我々と敵対する立場に居るのか、エンデヴァーは理解が出来なかった。
「そんなの決まってるだろ『俺の為だ』」
だが、その返答はシンプルであり、エンデヴァーには突き刺さる返しだった。
「自分の‥‥‥為‥‥‥?」
「あぁ、俺は俺の欲望の為に生きてる。
テメェらヒーローだって似たようなもんだろ?『人を助けたいから助ける』ヒーロー共、俺らヴィランは『人を殺したいから殺す』
その過程がどうであれそこに行き着く。
たったそれだけの違いだ。
テメェも『自分の欲望の為にヒーローやってんだろ?』」
心臓を鷲掴みにされるかのような感覚に男は陥る。
同じ。
そう、同じなのだ。
ヒーローかヴィランか。
名前の違いでしかない
エンデヴァーがヒーローじゃなければ、それ以外の何かの存在であれば
ヴィランと呼んでも差し支えないほどの悪行を彼はしてきたことを自覚してしまった
「‥‥‥‥‥‥やはり、貴様はここで捕まえるべきだな‥‥‥‥」
エンデヴァーは‥‥‥‥‥否、轟炎司は目の前に立つヴィランに対して戦闘態勢に入りながらそう告げるが、パーツはその様子を見るやいなや呆れたように溜め息を吐いた
「あのなァ‥‥俺は保健室の先生じゃねぇんだぜ?
テメェがどういう経緯でそういうふうになったのか知らねぇけどよ。死ぬなら勝手に死んでくれ」
「わざわざ自殺志願者を殺してやるほど俺は『優しくねえんだわ』
相談事なら他当たれ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
正に図星を突かれたかような、それでいて絶望するような顔をしていた。
せめてヒーローらしくヴィランに殺されてしまおうと思ったのだろうがそれすら叶わなかったようだ
目の前のヴィランには相手すらされない。それは彼にとってどれほど屈辱的であり、どれほどの絶望だろうか‥‥‥
「それじゃあな。俺の用は済んだ。」
そう言いながら立ち去ろうとするパーツであったが、少しの間をあけた後轟炎司の方へと向き直る
「多少強くなったらまた俺の前に現われろ。
そしたらヒーローとして殺してやる。
それも華々しくな」
それだけ言い残し、パーツは立ち去っていった。
彼が居た足元には置いていったであろう花が添えられており、エンデヴァーはただただその花を見つめることしか出来なかった
「‥‥‥‥‥エンデヴァー‥‥‥『オリジナルの父親か』‥‥」
「捉え方によってはあいつは『俺の親父ってことになんのか?』‥‥‥
‥‥‥まあ、んなことはどうでもいいか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
場所は戻り雄英高校のパーティ会場内
そこには今回のパーティの主役と言ってもいい二人が同じ席で食事をしていた。
最初こそは堅苦しいような挨拶に駆り出されていた二人だが、今でもフランクな様子で食事を楽しんで_________
「あれ?かっちゃんこれ食べないなら貰っちゃうよ。んむ!」
「あ?‥‥‥‥あァッ!?デクッ!?テメェまさか俺が最後に食おうとしてた寿司を食いやがったなァッ!?!?」
「え?ごめんごめん、最後に食べようとしてたなんて思わなくてさ」
「チィッ!!ングっ!!ングッ!!」
「あァーッ!!?かっちゃん!!それ僕が次食べようと思ってたカツ丼ッ!!??」
「テメェが先に食ったンだろうがァッ!!!」
「もう残ってないんだぞそのカツ丼ッ!!!それを食べちゃうなんて!!」
「もう散々食ったろォがッ!!!」
「僕とかっちゃんの仲じゃないか!!別にいいだろこれくらいさッ!!!」
「たべもんの恨みは恐ろしいンだよクソがァッ!!!」
______いたはずなのだが、何故かいつの間にか二人の取っ組み合いが始まっていた
「‥‥‥‥‥‥なにあれ?本当に主役の二人?」
「ま、まあ‥一応?」
そんなやり取りを隣のテーブルから眺めていた耳郎がそんなことをボヤき、尾白がそれに続くように声を返す
とはいえだ、そんな二人を見ながら思うこともある
「緑谷と爆豪、結構仲良くなったよなぁ〜」
「んね!前までは結構険悪そうな感じだったのに今じゃあんなだし!」
「仲‥‥‥よろしいでしょうか?あれは‥‥‥」
切島と芦戸は何処かの微笑ましい様子を見守るかのような反応を示すが八百万は不安に仕方ない様子だった。
耳郎が「そういうもん」と言うと渋々納得したようだった
これ以上騒ぐのは頂けないと判断した上鳴が2つの品を持ちながら近寄る
「おーい!緑谷!爆豪!俺らのとこにカツ丼と寿司あっからやるよ!だからじゃれ合いもそこまでにしとけー!」
「‥‥‥‥ッチ!!クソがッ!!あんがとよッ!!!」
「いいの!?ありがとう!!」
なんとも分かりやすい二人であった。
その場を収めたのは良かったものの、またもや爆豪と緑谷が同じようなことで揉めてフルカウルと爆殺神モードを発動しての取っ組み合いをしてしまい、相澤先生にこっぴどく叱られるのはまた別のお話である
次回は職場体験‥‥と言いたいところですがそこまで原作と相違が無さそうなので飛ばし気味になると思います