「あんな手紙をよこしてくるなんて、冗談じゃ済まされないわよ……!」
手紙を読み終わると同時に、急いで目的の場所へと向かうレナ。
そうして、平和な日常は音を立てて崩れ始めるのだった──
「……ハァ、ハァ。ようやく着いた。私を呼んだのは誰なのか、確かめるのしましょうか……まぁ、十中八九友好的なやつじゃないと思うけど。」
山に到着したレナは、その奥へと足を踏み入れていく。
しばらくすると、レナはあることに気づく。
(───人の気配!それも、数人とかそういうレベルじゃない!……大体分かった。さしづめ化け物殺しってところね、上等じゃない。)
レナは闘志を燃やし、未だ姿を見せない資格に留意する。
すると───
「──こんにちは、平宮 レナさん。あなたのことをお待ちしておりましたよ。」
黒いスーツを着た男が1人、レナの前に姿を現す。
「……あんたが、ここに私を呼び出した張本人?」
「いかにも。私は、国から貴方の処分を命じられた者でして。非常に残念ですが、その命、頂戴します。」
男はレナに自身の目的を告げる。
「あら、そっちからわざわざ出てきてくれるだなんて、親切な事ね。なら………周りにいる有象無象共のことも、ご紹介していただけるかしら?」
「……さすがに気付いていますか。ならば……
総員、目標の駆除を開始せよ!全ては国の為、その命を賭けて見せろ!」
「「「了解!!!」」」
男の掛け声と共に、今まで姿を見せなかった兵士達が森の至る所から現れ、レナに向けて攻撃を始める。
彼らの銃の引き金が引かれたのが、その戦いの合図となった。
レナは、四方八方から撃たれながらも、高い再生力を駆使して、周囲の兵士を倒していく。
だが、戦場が森であることと、兵士の数の多さにレナは苦戦を強いられていた。
(あぁ隠れるな!数が多い!めんどくさい!
……でも、今のところ敵に私への有効打は見えてない。
おかしいわね、相手は国のトップからの刺客。なら、私の
レナは、攻撃に参加しない男に目星をつけ、攻撃に向かう。
「──!!総員、攻撃中断!援護射撃をメインに、私の守護に回れ!」
すると男は、兵士全員に、自身を守らせ始めた。
「……その様子は、ビンゴって感じかしらね!」
「……だが、君とてこの人数をどうにかするのも容易ではないだろう。」
「そうかしら?やってみないと、分からないわ、よ!」
そう言うと、レナは兵士に向かって突進していく。
「「ぐぁぁぁ!」」「……何!なんだあの突進力は!奴の力は体の一部を他の動物へと変貌させる力では無いのか!?」
「認識不足、ね。
私の
凄まじい突進力で兵士を蹴散らしていくレナ。
だが、そんな力を目の当たりにした兵士たちは、怯えながらも逃げようとはしない。
「ぐっ……!しかし、ここで退く訳には行かない!貴様のようなバケモノを今の時代に生かしてはおけない!全ては国のため、平和のために!」
「平和だと……?ただ好きな人と、大事な我が子と、一緒に生きてるだけで!ただ日常を過ごしてるだけで、平和を脅かすバケモノなんて言われなきゃいけないの?
──巫山戯んな!私の、私たちの未来は、誰にも奪わせやしない!」
そう言ってレナは、残りの兵士をまとめて吹き飛ばす。
「「「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「──命までは取らないわよ。……さて、残りはあんただけね。なんだかやけに疲れたし、何考えてんのか知らないけど、さっさとお家に帰って貰うわよ。さもないと、怪我じゃすまなくなるわよ。」
「……フフっ。フハハハハ!」
「……何。気でもおかしくなった?」
脅しをかけるレナに対して、余裕の表情で応じる男。
男は、レナの問いに答える。
「気などおかしくなってはいないさ。ただ、何とか間に合ったな、と思ってね。」
「………間に合う、だと?」
「あぁ、まだ気づいていないのか。
君は今、全身から血が流れているよ。
もう全身に私の毒が回った証拠だ。」
「……何、だと?……グッ、これ、は……!」
「ようやく効果が出たところか。後、先程君は、私の兵の命は取らない、と言ったね。
だがそれは無駄なことだ。この毒によって、彼らの命も直に潰える。」
「私も、君のように体に細工を施して貰ってね。所謂『ギフテッド』と言うやつだよ。
私の力は毒、だ。ただの毒ガスなどでは、君に気づかれたり、免疫を得るなんて芸当をされてしまうかもしれない。」
「だが、この私の血液由来の猛毒を、霧のように薄く空気中に撒いておけば、君を殺すことが可能だ。」
「
レナが森に到着する数分前
「レナ〜、帰ったよ〜!クレイさんに伝えに行ったら、そのついでで今日の夜ご飯の食材も貰っちゃってさ〜、一石二鳥とはこのこと──って、レナ?」
「……2人は、寝てるか。でもレナは、」
「……あれ?こんな所に、手紙?」
「……レナ宛てなのかな?
……読んでみても、いいよね、うん。」
「………なに、これ。」
私の人生に、『希望』なんてないと思っていた。
生まれてからすぐに親に見放され、化け物にされて。
なんのために生きているのか、なぜ産まれて来てしまったのか、そんな事ばかり考えていた。
ミライに会うまでは。
ミライと会ってから、日常が少しづつ変わり始めていった。
ミライといる時間が、ちょっとずつ好きになっていた。
生きてて良かったって、そう思えるようになれていった。
子どもだって産まれた。可愛い可愛いミラナとレイ。
私の人生は、確実に色づいていた。
だから、そんな生活を、終わりにしたくない。
まだ、生きていたい。まだ、ミライと一緒にいたい。
あの子たちの成長していく様を、見届けていたい。
でも、その願いは叶いそうにない。
私自身の体だ、自分の状態はわかる。
この毒はヤバい。現に、今にでも死んでもおかしくないの感じだ。
……結局、一回もミライに『愛してる』って言葉にできなかったな……
──ここまで、頑張った方かな。ごめん、ミライ、クレイさん、ミラナ、レイ……
………でも、ここで私が倒れたら、ミラナやレイ、ミライにも被害が行くかもしれない。それは、それだけは、嫌だ。
こんな化け物の私に残された最後の希望を、失わせない。それだけは絶対に──。
死ぬぐらい辛いし、痛い。けど、まだ立てる。
あの男だけは、止めないと、絶対に。
まだ、私は────!!!
「……動かなくなったな。これで任務は完了だ。
………これで私も、総理に認めて──!!!」
レナが動かなくなったのを見て、任務の完了を確信する男。
安心しきっている男に、レナは、最後の力を振り絞り、突撃する。
「ガアァァァァァ!!!」
「………なっ!まだ生きて
彼の言葉が最後まで紡がれることは無かった。
彼の頭は、レナの渾身の一撃によって吹き飛ばされてしまった。
レナは、朦朧とした意識の中で、家族のことを考える。
(……………ミライ。
ミラナとレイのこと、頼ん、だ、よ───)
「………レナ?」
次回、「残された想い」