「よお、待ちくたびれたぜ。着替え凝るタイプか?」
「………は?」
脳が、今目の前にある状況を受け付けない。
乱暴に割られた窓、見知らぬ男、意識を失った壮馬…
現実感が自分の中で音を立てて崩れていくのを感じる。
「お、おま、お前は誰
「悪いがこっちにも時間っつーもんがある。さっさと終わらせるぜ。」
「うぐあゥ!」
「……わりーな。恨むなら恨んでくれ。
だがな、これも俺の仕事なんだよ………ったく、なんで理事長もこんなこと俺に頼むかなぁ…」
「う、ぐ、そう……ま……!」
突然現れた男に弟傷つけられて、何も出来ずに俺もボコられて……俺が前世で何したってんだよ……
……クソが、こんなんで終われるかよ!あの男が何したが知らねえが、こっちにも
「…くらえオラァ!」「うお危ね!ま、
「
ん?なんだ、奴の姿が消え……
「………んあ?なんでこんな体がいてぇんだ?
…って、壮馬!なんで気失って!──がァ!」
(哀れなもんだなぁ、平宮 久遠。
平宮久遠は、認識すらできない存在にタコ殴りにされながら、今起こっていることの整理をしていた。
(身体中が痛てぇ。なんでかわかんねえけど、誰かに殴られてるみたいだ。幽霊ってマジでいるのかよちくしょう。
…ごめん、壮馬、父さん、母さん……このままだともうダメかもしれねぇ。せめて、みんなだけでも無事に─)
(……俺は、ほんの少しでよかったんだ。ほんの少しの幸せさえあれば、それで──)
(───てか、おかしくね?俺別に悪いことなんてしてないし。なんでこんなにボコボコにされなきゃ行けねぇんだ?
そもそも、俺はこんな
(あークソ、ムカついてきた。しかも俺誰に殴られたかもわかんねぇ、心当たりもない。弟に手出したのも許せねえ………!──よし決めた!こうなりゃヤケだ!暴れられるだけ暴れてやる!)
冷静になって自分の受けた理不尽に激情を覚え、折れかけていた心が立ち上がる。
そして、平宮 久遠という男の、超才能《ギフト》が開花する─────
「さて、そろそろしまいにするか。」
叶はそう言って、膝をついて今にも倒れそうな久遠の後頭部に向かって、全力の蹴りを放った。
そして、その一撃は、久遠の意識を奪う
「────────は?」
だが、その未来は訪れなかった。
久遠は、認識できないはずの叶の足を確実に掴んで、止めて見せたのだ。
「な、なんで!俺のことは認識できないはず「こいつか」─!く、離せ!」
「ようやく掴んでやったぜ、幽霊野郎!」
そういうと久遠は、掴んだ叶の足を振り上げて、全力で床にたたきつけた。
「んぐぁ!……は!し、しまった、
「………能力を解いたな、襲撃者。
──いや、藤ノ尾 叶って言ってたっけ?」
衝撃を受けて
勝負は、決しようとしていた。
次回、「箱庭」