共同生活が始まってから数年間は、あっという間だった。
「さぁレナ!ボク渾身の料理の数々!どう?美味しい?」
「……まぁ、マズイって言ったら嘘に、なるわ、ね……クッ…!」
「なんで褒めるのすら苦しそうなの?泣くよ?ボク」
「そーいやレナは自分のこと兵器って言ってたけどさ〜、どこが兵器なの?ただのかわいい女の子じゃん」
「なに急に。……ほら。」
「うわっ!なにそれすごい!めちゃくちゃ強そう!」
「…怖がらないの?結構キモイって自覚してるんだけど。」
「なんでさ、カッコイイじゃん!そんなの、男の子なら誰でも欲しがるよ〜!」
「………あっそ。」
「あ、レナ顔赤〜い。照れてるの〜?」
「うざっ。死ねよクソが」
「海だよレナ!今日は思いっきり遊ぼ〜!」
「はぁ、遊ぶったって何を、ってきゃっ!」
「そりゃあ水遊びに決まってるじゃん!」
「……潰す」
「え?レナさん?それ使うのは卑怯じゃ……アッ」
「あんたさ、誕生日いつ?」
「え?なになに藪から棒に。もしかして惚れちゃった?」
「調子乗んなクソが。ただ、日頃の少し、ほ〜〜〜んの少しの感謝を示してあげよっかなって思っただけ!」
「そうだな〜。ならさ けっこ「それはイヤ」
はやいよ否定が」
「じゃん!花火セット一覧!今日はみに花火大会だ!」
「何?急に。ま、やるけど」
「そんなこと言って嬉しいんでしょ〜?素直になりなって!ほら!」
「あぁウザイ!………………あ、ありがと。」
「………えっ!?あっ、あのレナが僕に感謝!?ウォォォォォ!!!」
「一々大袈裟!あ〜言うんじゃなかった!」
今思えば、この頃から少しずつ、でも確実に彼に惹かれていたのかもしれない。それくらい楽しくて最高な日々だった。
「ごめんレナ!ボク徴兵されちゃったから暫く会えないや!」
だからこそ。この日々に終わりが来るのが、耐えられない。
戦争なんて大嫌いだ。ボクは戦争を心から憎んでいる。
ボクの家庭の家族仲はめちゃくちゃ良好だったと思う。両親と、妹弟が1人ずつ。クソ戦争様のせいで決して裕福な訳では無かったがそれでも幸せだった。
そう、幸せだったのだ。
「ミライ、2人を連れて逃げるんだ!」
「あの子たちをお願いね?長男なんだから!」
敵国の兵が来た。ウチは都市からかなり離れたところで生活していたが、奴らはそんな田舎の方から少しづつ攻め落とすつもりだったらしい。そうしてボクは両親を失った。
僕はそんな悲しみと憎しみを何とか抑えながら、妹と弟を連れて必死に逃げた。
でもそんな簡単に行くわけがなかった。
2人は追手の兵に撃たれてしまった。
その時ボクは、死への恐怖から逃げ出してしまった。
ボクだけが生き延びてしまった。なんとも情けない、ほんとにそう思う。それに、こうして平和に生きてる自分に反吐が出る
「家族の仇を打たなければ!」そう心で思っていても、「どうせ無理だ、それならこの命を大事に生きたい」なんて思いが生まれてしまう。
あぁ、ボクはこのまま中途半端に生きて行くのか。
そんな形容しがたい絶望と無力さがボクの胸を支配していた時だった。
レナと出会ったのは。
第一印象は、可愛い変な子、だった。
結構な豪雨の中1人死にそうな顔と佇まいをしているのを見て、ほっとけなくなった。それにボクも暗い思いを抱えていて気も病んでいて、人肌が恋しいというのもあった。
でも、運命はボクを憎しみから逃がそうとはしてくれなかった。
聞くところによると、彼女はただのかわいい女の子ではなくてよく分からない人達から実験を受けて、特殊な力を得たらしい。なんでも「人間兵器」だとか。
この話を聞いた時、ボクの心の底に眠っていた復讐心が再び目を覚まし始めた。
この子の力があれば、忌々しい戦争を終わらせられる!憎きあの国を滅ぼして家族の仇を打てる!
……なら、この子とはなんとしてでも仲良くなっておきたいな……よし。
「君、ボクのところで住まない?」
この子、レナさえいればボクの目的は達成される。レナを利用するんだ!……可哀想だけどね。
そう、初めはそんな最低な理由で接していた。でも、一緒に住み始めて数年で、そんな思いも消え失せることになる。
まずわかったことは、レナはただの女の子、ということである。自分では兵器、化け物なんて言うが、全くそんなことは無い。人より辛い経験をしただけの、自分の感情に素直になれなくて口下手だけど、超絶可愛い女の子!
そんなレナを、ボクの醜い欲望のために戦いに巻き込むなんてできない。
それに、僕は自分で思っているより平和なまま生きていたい、復讐なんてしたい訳では無い、と感じていたということだ。
戦争の最中にこんなに楽しく暮らしているということに後ろめたさがない訳では無いし、戦争への憎しみが消えた訳ではなかったが、それ以上に争いに関わりたくなかった。
でも、やっぱり運命様っていうのは残酷で……
「……は?徴兵ってどういうこと?」
「今のうちの国の状況が結構苦しいらしくってさ、特に兵士の数が足りなくって国民からかき集めないといけないんだとさ。ま、心配しないでよ!サクッと勝って帰ってくるからさ!」
「……なんであんたはそんな平然としてられるの?なんでそんな簡単に受け入れられるの?あんたもわかってるんでしょ?そんな状況で徴兵される兵士なんて、どうせ捨て駒としか扱われない!生きて帰ってこられる可能性なんて!」
「まぁ〜かなり低いだろうね!でも大丈夫!」
「そんなの、何を根拠に!」
「だって、レナが帰りを待ってくれるのに、死ねるもんか。いいや、死んでやるもんか!
……だからさ、レナ。ボクを信じて。そんでこの家を守っていてくれない?ボクの、ボクらの帰る場所を」
「……もしも!もしも生きて帰ってこなかったら!許さない!ガチ泣きする!古崎ミライって奴は女泣かせのクソ野郎って国中に言って回る!」
「なんて脅しだ!?……こりゃほんとに死ねないな。」
「当たり前でしょ!とにかく死なないで!命最優先!わかった!?」
「ハイハイ。了解ですよお姫様。」
あぁ。この生活だけは絶対に奪わせない。何があっても。
私はなんのために化け物になったんだ?なんのために辛い思いをしてきたんだ?大事な人1人の力にすらなれないで。もしミライになにかあって、帰ってこなかったら。また、私は生きる意味を失うの?
…嫌だ。そんなのゴメンだ。散々奪われてきたんだ。もう誰にも、何一つだって、奪わせてなんかやらない!そのためなら………
「えぇ、この力だって、使ってやる。」
「ハァ〜、この戦争はうちの国の勝利になりそうだな!あっちは人間兵器?とやらを作ってると聞いていたが、とんだ杞憂だったな!ま、最後まで気を抜かずにーーー」
「大尉!大変です!南方から何かが飛来してきています!」
「なんだいきなり!それに何か?何かとはなんだ!」
「それが分からないのです!人型なのですが!翼や大きな腕、足に鋭利な爪も確認出来まして!」
「お前は何を言っている?最近、寝れているか?休みを「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」んなっ!何事だ!」
「大尉!もしかして先程のガッ」
「ひいっ!なっ何が!」
も、もしかして例の人間へい
~ ~ ~
なぜだろう。今はこの力にさほど嫌悪感を感じない。
自分のために、自分の意思で、使っているからだろうか。まぁそんなことは重要では無い。さっさとミライを見つけて助けないと。
……あぁ、そういえば、彼との約束を破ってしまったな。
でもね、ミライ。私は1人で過ごす明日よりも、あなたと過ごす「未来」が欲しい。
私からミライを、「未来」を奪おうとするクズ共。
私がお前たちに
絶望にまみれた死ってやつを
書き溜め死亡!書き溜め貯蓄期間に突入する!
次回、「Chimera」