ギフテッドの箱庭   作:OK男爵

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時間が、ない!


0-7 「成就」

ある日、ミライとレナは町の市場へとショッピングに来ていた。

「やっぱ、前より景気は良くなってるわね。」

「そりゃあ、戦勝国だもんねぇ〜。」

町での賑わいや、国民の明るい雰囲気から、2人は戦争の勝利を改めて実感する。

「せっかくだし、今日奮発している色々買っちゃおうかな!」

「まぁその金、ボクが稼いだお金なんだけどね……」

「何よ、ケチくさいわね。心配しなくても金銭面についてはもう解決済みよ。」

「……え?それってどういう事?……まさか。」

「それについては後で話すわ。それよりも!今はショッピング!何が売ってるのか、楽しみだわ〜♪」

「………楽しそうでなにより」

 

 

「号外、号外!新しい総理大臣は前代から引き続き、『清川(しかわ) 藤照(ふじてる)』に決まったよ〜!!!」

 

 

いつもの仲の良い掛け合いを続けながら市場を散策していると、若い売り子が号外の新聞を売っていた。どうやら、次のニホンの総理大臣が決まった旨らしい。

 

「あ、総理はまた藤照さんなんだ。 あの人の政策好きなんだよね。戦争に勝ったって言う実績もあるし、まぁ妥当だよね。あと、もうすぐ60代らしいのに、めちゃくちゃ若いよね。30代に見える。」

 

「……そう?私はあの人、あんまり好きじゃない。」

「あらま、そりゃまたなんで?」

「……あの人の眼。あの眼は、人を人と思ってないって感じの、そういうヤバい奴の眼……な気がする。まぁ私見だけどね。」

「何それ、さすがに考えすぎじゃない?」

「……そうだったら、いいけど………」

 

今の総理に言葉で言い表せない不安を覚えるレナ。

だが、そんな心のしこりも、町の喧騒に消えていくのだった……

 

 

~ ~ ~

 

 

 

「いや〜、いっぱい買っちゃった!それにしても、こんだけ買ってもまだお金に余裕アリってあんたってなんの仕事してるの?」

「ん?ボク自体はただの農民だよ。作物作って〜売って、って感じの。今は、昔ボクが家族と暮らしていたときの貯金があるから お金はまだ余裕あるってだけ。」

 

「へぇ〜、そんな事情があったのね。ま、安心しておいて!」

「安心してって何を?………え、もしかして」

 

「ふふん、今日はただショッピングに来たわけじゃないの。この後、あんたに見せたいところがあるから、付いてきて!」

 

自信満々なレナの言い方にミライは一抹の不安が過ぎる

 

(……嘘。もしボクの考えが正しいなら、タイムリミットはもう長くはないぞ……!)

(レナが、家を出て行っちゃう……!)

 

 

レナに案内された先にあったのは、町の端にある、こぢんまりとした居酒屋だった。

 

「着いた!ここがあたしの新しい職場!『GLOW』っていう居酒屋で、ここの店主は、奥さんと経営してたんだけど、奥さん急病で亡くなっちゃったらしくてね……。そこで、私が新しく店員として働こう!って話。……って、聞いてる?」

 

(……やっぱり。これで、レナは手に職を得た。……てことは、あの家から離れるのもそう遠く無いって事……!)

 

 

「………聞いてないらしいわね………」

 

 

(なら、早めに告白しないと。いやでも、そんな急に覚悟なんかできないよ!あ〜どうしよう、終わったかな〜ボクの人生。一体どうすれば──)

 

 

 

「聞けアホッ!」

「あだっ!……イテテ、聞いてるよ、うん。おめでとう。」

「何よ、ホントに祝福する気ある?記念すべき瞬間なのに。」

「……うん。ごめん。」

 

思考がぐるぐると回って負のループになるミライ。そんな状態で、レナとミライは家に帰るのだった。

 

 

 

 

「さて。今日は、私の就職記念に、乾杯!」

「………ねぇ、レナ。」

「……ん?何?」

 

 

「………君に、言いたいことがあるんだ。」

 

「……言いたいこと?」

 

 

 

「……………この家に残ってくれないか?」

 

「……は?」

 

「キモイって言うのもわかるし、約束破ってるって自覚もある!でも、ボクはまだ君と過ごしていたい!ボクは──!!!」

 

「……何言ってるの?そんなの言われなくてもここで住むに決まってるじゃない!なんならこっちから頼みたいところよ。」

 

「……へ?いや、でも、手に職ついて、安定してきたら、この家から離れるって………」

 

「ん?あぁ、そんなことも言ってたわね。あんなのその場のノリよ!……それに今は、あんたとの生活も、この家での生活も、その、結構好き、だし……。」

 

 

「………なぁ〜んだぁ!!!ホント、心配して損したぁ!ずっと不安だったんだよ〜!」

「……へぇ〜?心配?不安?そんなに私と暮らしたかったの〜?いつもは飄々としてるくせに、こういう所は純情なのね〜♪」

 

「────うん。そうだよ。

 

 

「……え」

 

 

「君が、好きだ。

ずっと、好きだった。」

「君の顔が好きだ。君のその人形みたいに綺麗で可愛い顔を見るだけで、胸が高まる。」

「君の声が好きだ。聞いてると、安心出来るその優しい声。」

「君の喋り方が好きだ。素直になれなくて、言葉遣い乱暴になっちゃってるのも可愛い。」

「君の全てが好きだ。……君の全部が。」

 

「……何よ、急に。

それにそもそも、私は化け物だし……。誰かに愛される資格なんて………」

 

「化け物?何言ってるんだ、ボクの前にいるのはただの天使だよ。」

「……そういう調子のいいところは変わってないのね。」

 

「……レナ。ボクは、君と一緒に生きたい。

君の見る世界を一緒に見ていたい。

 

君の生きる未来に、ボクも生きていたい。

 

 

 

だから、レナ。ボクと、

 

 

 

結婚してください。ほんの少しでいい。 君の未来を、ボクに分けてください。」

 

 

 

 

 

「…………ハァ。そこまで言ったからには、責任、取りなさいよ?……幸せにしないと、許さないから。」

…………………じゃあ、その、これからもよろしく。

 

 

「…………………うん! うん!」

 

2人の未来は、開かれた。

 




次回、「生命の重み」
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