あーつまんねー。――俺の脳内では、延々とこの言葉がリピートしている。
今月初頭、赤点=退学であることが学校側――担任である佐枝ちゃん先生の口から正式に通達され、それにより、まとまりのない我がクラスもまた、まとまりがないなりに対策を取ることとなった。
と言ったところで、出来ることなど限られている。
カンニングを始め思いつく裏技は幾つかあるにせよ、バレた際のペナルティが怖いし、バレないにせよ毎回通じる保証は無い。学校側だって、監視は厳しくしているのだから。通用しても精々が一回。その場しのぎにしかならないだろう。
結局のところ、地力を上げないことにはどうしようもないのだ。
名実ともに『劣等生』、『不良品』と認められているDクラスだが、単純な学力評価でないだけに、学年でもトップクラスの学力を誇る者がそこそこ在籍している。俺と清隆に至っては、学校でも、という冠に変わるだろう。――それで言うなら、逆の意味でのトップも在籍しているが。むしろ、比率で考えるとこちらの方がよっぽど多い。『劣等生』、『不良品』の二つ名は、伊達や酔狂で付けられているわけではない、ということだ。
そんな不良品集団でも、退学になるのは御免被るらしい。クラスの中でも『優等生』ポジションに立つ男――平田洋介が勉強会の開催を提案し、多数の一致を以て実行と相成った次第である。
そして、小テストで90点以上を叩き出した者たちが教師役に選ばれるのも、また必然のことだった。
それは良いんだ。……良いんだが、『不良品』認定は伊達ではない。うちのクラスの学力優秀勢は、どいつもこいつも勉強会に否定的だった。いや、否定的というよりは、線引きが激しいのだ。
高円寺は言うまでもない。あいつは周りが定めたルールよりも己がルールを優先する。ペナルティなど何のその。学校のルールなど、最低限にしか遵守する気がないし、していない。あいつに言わせれば、最低限にでも遵守している事実そのものが、『協調している』ことになるのだろう。
そんなあいつにしてみれば、Dクラスに己が目を向けるべき生徒などはおらず、いたとしても、テストで赤点を取るようなレベルではない。畢竟、勉強会に参加する意味がない。
次に清隆と幸村と堀北。協調性という点では高円寺よりマシだが、それでもクラスではワーストレベルである。その姿勢を一言で表すなら、バカに付き合う気はない、となるだろう。この『バカ』が=『学力が低い』ではないことが、救いと言えば救いか。生徒側の姿勢が各々の許容範囲を超えない限り、勉強を見ることに否はないのだ。ただ、うちのクラスだと、その対象数が少ないことが問題なだけで。
んで、俺と桔梗と王美雨――通称『みーちゃん』となる。90点こそ取れなかったものの、平田や松下なども教師役だ。
だが、平田は部活を優先しているし、松下は自分のグループを優先している。
必然的に、俺、桔梗、みーちゃんの三人が大多数の面倒を見ているわけだが、やはりそれぞれに許容範囲が存在するのは変わらないのだ。
普通に考えて、三バカやそれに準ずる品性を持つ相手に好感を抱く筈などないのである。女子であれば尚のこと。結果、ゴミ処理と言わんばかりに、俺に男子の大半が押し付けられたわけだ。そりゃねえぜ。
いや、全面的に否定するわけではないのだ。俺が受け持つことになった男子たちは、そりゃあバカばっかりであることに違いはないが、それぞれに良いところもキチンとある。それに、男同士ならではのバカ話だって、女子がいなければこそだ。――ただ、それを認めた上で、なお欠点が酷すぎるだけで。
勉強会に参加する辺り、こいつらも最低限の危機感は抱いているのだろうが、如何せん、『最低限』でしかないのだ。自分の能力不足を棚上げして、不満や文句ばかり言う。『一般的』な観点に当て嵌めると、それも分からんではない。だからその行為を咎めはせんが、それより先にペンを動かせ。頭に詰めろ。
かてて加えて、俺のグループは男ばかりで『華』がない。こいつらじゃないが、どうせ勉強するなら俺だって女の子と一緒に勉強したいっての! これでテスト後にでも女のこと出かけられるとかのご褒美があるならまだしも、そんな話は微塵もない。
おかしくねえ? 普通に考えて、こんなんでモチベーションが上がるわけねえだろ!
「お願いします! 俺に潤いを! 癒しをください! バカどもの面倒を見るだけだと、俺のやる気が保ちません!」
気付けば、勉強会の最中、俺は教卓の前に立って頭を下げていた。
「誰がバカだ!」
「失礼だぞ!」
「うるっせえ! お前らに決まってんだろうがバカ! お前らとのバカ話を否定はしねえし、悪態吐くのも分からんではないが、時と状況を考えろってんだ! お前らが退学になって一番困んのはお前らだろうが! ――そりゃあ、『連帯責任性』のペナルティを考えれば、こっちにも被害は及ぶかもしれんがな。
テストなんざ、あくまでも個人勝負。楽な解決方法なんざありゃしねえ。それぞれが地力を上げるしかねえんだよ。本当に赤点退学が嫌だってんなら、少なくとも51点が取れるレベルになるまでは死ぬ気で向き合えや! お前らが今苦労してんのは、結局のところ、お前ら自身の努力不足のツケを支払ってるに過ぎねえんだからよ!
とまあ、こんな具合に不満タラタラな野郎ばかりを相手にしてるだけだと、俺のモチベーションがダダ下がりです。正直、勉強見てやる気力が湧きません。ぶっちゃけ、Aクラスとか興味ないですし。俺はまだこいつらとバカ話がしたいし、女の子と遊びたいから勉強見てるだけなんです。ただ、それだけで頑張るにも限度があるんです。……俺の言うこと、間違ってますか?」
俺の言葉に男どもが即座にヤジを飛ばしてきたが、怒りを露わに反論して黙らせた。
ちなみに、俺のグループには須藤もいる。ネタ晴らしを食らい、小テストの結果がワーストトップであるにも拘わらず、変わらず部活に行こうとしていたのだ。俺が面倒を見ることが決まった――決められた時点で、そんなことを許す筈がない。懇切丁寧に説得して、勉強の方を優先させている。
まあ、それ故に不満も溜まっているのだろうが、不満が溜まっているのはこちらも同じである。笑って受け流すにも限度があるのだ。
だから、切実に訴えた。――主に女子に。
俺の言い分は、必ずしも間違っているわけではない。人が頑張れるのは、それが有形であれ無形であれ、その先に何かを期待するからだ。言葉を飾らずに言えば『見返り』である。ならば、その見返りが薄ければ? 当然、努力する気概だって薄まるだろう。
学力が低い奴らは、勉強に費やす努力と時間、その先に待つ見返りを比較して、割に合わない、と判断してきたのが大半だ。それが意識的か無意識的かはともかく、言ってしまえばそういうことなのだ。
勉強よりも刹那的な享楽を、部活を……そんな感じで他を優先した結果の積み重ねが、『今』に響いているのだ。
人によって優先順位は違って然りだ。だから、それを悪いとは言わない。否定もしない。……まあ、退学がかかってるのに、尚もその態度なのはどうかとも思うが。
そんなわけで、俺が男子たちの勉強を見るより他のことを優先したところで、周りも文句など言える筈がないのだ。だって、自分もやっていることなのだから。
しかし、そうやって自分たちのやりたいことばかりやっていると、結局のところ立ち行かなくなる。故に、どこかで折り合いを付ける。それが『社会』というものだ。
そして、俺が男子共の勉強を見なくなると、その先に待つのは何なのか? 須藤を筆頭に、あの入試よりも簡単な小テストで50点以下な奴が大半である。俺が面倒を見てきたとはいえ、そもそもの地力が低い以上、中間でどこまで通用するか分かったものじゃない。最悪の場合、退学者の山である。
それだけなら許容出来る奴もいるかもしれないが、俺は今しがたの訴えの際、幾つかの伏線を張った。一例を挙げると、ペナルティ云々だ。
クラス評価を採用している学校だ。退学者を出したクラスにペナルティを科す可能性は否定出来ない。しかも、それが一人ではなく複数だったら? CPが減少する可能性は否めず、負債として積み重なる可能性も否めない。……Aクラスでの卒業特典を目当てにしている者にとっては、どうしたって避けたい事態だろう。
これにより、彼ら彼女らの頭の中では幾つかの計算が働く。ハッキリと言えば『損得勘定』だ。
そして――
「ん~。じゃあ、私がそっちに合流しよっか」
「私も手伝うわ」
俺は賭けに勝った。
声を上げたのは松下と堀北。どちらも女子である。それも美少女だ。松下はともかく堀北は態度がきついが、そんなのは些細な問題だ。
「感謝するぜ!」
だから、俺は声を大にして礼を言った。
「ちょ、松下さん!?」
「え~、教師役にいなくなられると、私たちも困るんだけど!」
しかし、松下も堀北もグループを組んでいるのは確かである。許容範囲の傾向故か、清隆に幸村とグループを組んでいる――なんという人材の無駄遣い!――堀北は特に反対されることもなかったが、松下はそうもいかなかった。
普段から一緒に行動している、クラスでもイケイケ派な女子グループのメンバーに反対されていた。声を出したのは佐藤麻耶に篠原さつき……だったか? あと、声は出してないが、前園――フルネームは忘れた。――もそうだったような?
「なら、皆も一緒にくれば? 或いは、私じゃなくても他の人に教えてもらうとか。
正直、私もAクラスを目指しているからさ。ここで全総君に潰れられたり、退学者続出、なんて事態は困るわけ。そりゃあ、私は全総君ほどに頭が良いわけじゃないけど、中学生――下手すりゃ小学生――相当の学力の持ち主が相手であれば、勉強を見るくらいは出来ると思うのよ。
また、全総君が求めているのは癒しであり、潤い。つまりは女子。教師側じゃなく、生徒側でも問題ないわけ。私だけじゃなく皆も合流することで全総君が更にやる気を出してくれて、結果、退学者が出なくなるなら、それに越したことはないわ。
私個人としても、『デキるイケメン』とお近付きになれるなら、男子との合流も……まあ許容範囲だしね」
「全面的に、とはいかないけど私も同意見ね。目的意識についてはともかく、綾小路君と全総君は先の小テストで百点を取った。あの問題で百点を取るとなれば、ちょっとやそっとの予習で出来ることじゃないわ。その時点で高学力は保証されている。……オマケに、水泳の授業で好タイムを叩き出したことで、運動能力も保証されている。
クラス全体でのまとまりに欠け、個人で見ても、目立った長所が無いか、能力が凄くても明確な欠点があるか、そういう生徒ばかりが配属されている。……気に食わなかろうと何だろうと、これがうちのクラスの実情なのよ。
だからこそ、悔しいけれど、私たちのクラスがAクラスに上がろうと思ったら、個人の努力は当然として、綾小路君に全総君、そして櫛田さんの協力を得ることが最低条件なのよ。欲を言えば高円寺君の協力も欲しいところだけど、それは望み薄でしょうしね」
松下に続き堀北が言った。……正直、堀北については驚きである。いや、考えそうではあるけど、実際に口に出して言うかと問われると、首を傾げざるを得ないのだ。
ともあれ、二人の言うことは尤もである。たとえ全面的な同意は出来なくても、完全な否定は難しい。結果、むさ苦しい野郎どもの中に、見目麗しい女子たちが加わることになったのだ。……松下に堀北、ありがとう!
そんな一幕がありつつ、改めて勉強を再開しようとしたその時だった。教室の扉が開かれる。……ちなみに、俺たちは図書館での勉強をしていない。意見は出たが、俺に清隆、桔梗が全面的に否定したことで却下となった。理由? 改めて言うまでもない。他のクラスとの不要なトラブルを避けるためだ。須藤を筆頭に、うちのクラスは気の短い奴が多いのだ。それで能力が伴っているならまだしも、そうでないから最悪である。これでは、ちょっとした挑発に乗りかねないし、暴力沙汰にまで行きかねない。その点を懇切丁寧に説明すれば、結果的に受け入れられた。
「良かった。皆、まだいてくれた」
教室に入って来たのは平田であった。少しばかり息が荒く、恰好も運動着のままだ。
「よお、お疲れ平田。部活はもう終わったのか? ――それとも、何か面倒事か?」
代表して声をかける。まあ、十中八九に後者だとは思うが。
「後者の方だね。部活中、Bクラスの柴田君と雑談をしていたんだけど、その時に彼が言ったんだ。『それにしても、いきなりテスト範囲を変えられるなんて困るよな?』ってさ」
「え? ちょ、それって……」
平田の発言内容は、爆弾にも等しかった。勉強にヒイコラと言っている奴ほど、容易には受け止められない。
何せ、基礎が覚束ないのだ。教科にもよるが、本来なら範囲を勉強する以前の問題なのである。――だというのに範囲の変更を食らってしまえば、赤点の危機はなお高まるのが道理だ。
「まあCP然り、騙し討ちが好きそうなこの学校だからね。そういうこともあり得るかとは、少しだけど思ってはいたんだ。まさか、本当にされるとは思わなかったけど。
とにかく、そんなわけで部活を切り上げてきたんだ。そこで、他クラスに友人がいる人にお願いしたい。テスト範囲が変更されたかどうか、変更されたとしたらその範囲、この二点を訊いてほしいんだ。
僕が訊けたら良かったんだけど、部活以外だと親密な相手はいなくてね。それでも、柴田君からBクラスに伝えられた分は聞いてきたけどね」
「……なるほど。テスト範囲の変更がされていたとしても、クラス毎に変更後の範囲が異なっている可能性を、貴方は疑っているのね?」
「そうなる。だから、先生に尋ねる前に、調べられることは調べておきたい」
平田と堀北のやり取りを耳にしながら、道場仲間にチャットを送る。
全総刃:うちの平田がBクラスの柴田って奴から、テスト範囲の変更があったって聞いたらしいんだけど、マジ? うちのクラス、んなことちっとも聞いてねえんだよな。マジだったら、変更後の範囲教えてくんね?
鐘鳴響:マジだな。今日のホームルームで言われた。ちな、範囲はこれ。(写真)
白浜翔:柴田君から聞いてるんなら不要だとは思うけど。(写真)
坂柳有栖:では、私も便乗して貼らせてもらいますが、龍園君が面倒なので幾らかポイント振り込んでください。(写真)
全総刃:丁重にお断る。結果的に他クラスの変更後範囲を知れたんだから、それで良しとしてくれ。
坂柳有栖:やれやれ、仕方ありませんね。私たちの仲ですし、その言い分を認めてあげましょう。
即座に返事が返って来た。そんな余裕がある辺り、流石の学力上位勢である。
「どのクラスも変更されてるな。貼られた画像を見る限り、どのクラスも変更後の範囲は同じだ」
言いつつ、平田に端末の画面を見せる。グループチャットなため、清隆と桔梗のグループも情報を共有していた。
「ありがとう。これから茶柱先生にも確認に行くけど、全総君たち三人の中から誰かついてきてもらって良いかな? やり取りを見た限りうちのクラスのも貼る必要があるけど、早い方が良いでしょ」
「オレが行こう。三人の中だと、オレが一番手が空いている」
平田の言い分は尤もなものであり、清隆がついていくことになった。
そうして、勉強しながら待つこと暫し。……如何にテスト範囲が変わったところで、その前段階が覚束ない奴にとっては大した違いが無いのである。そして俺の受け持ちは、まさにそんな奴らの集まりだ。俺が教えている以上、時間の無駄遣いなど許さん。小中の内容を少しでも叩き込む。
「うん。僕たちのクラスも変更になってたよ。茶柱先生によると『すまんな、言い忘れていた』だってさ。まあ、十中八九わざとだろうけど――おかげで、僕の考えている裏技が使えそうだと分かった。ただ、裏技が使えるのは良くて今回限り。それに、地力が無いことにはどうしようもないのは間違いないから、皆には変わらず勉強を頑張ってほしい。裏技の準備にも時間がかかるしね」
そう言って、平田は踵を返して教室を出ていこうとする。
その背中に『待った』をかける。流石に、このまま黙って行かせるわけにはいかない。
「ちょい待ち、平田。肝心な部分を言い忘れてるぜ。裏技を使うにはある程度のポイントが必要だ、ってな。
優しくするのと甘やかすのは違うぜ。裏技の希望者からは、必要なポイントを徴収するべきだ。少ないながら、今月の頭にもポイントは振り込まれてんだ。正確なところは分からねえが、割り勘だったら一人頭は少なくなるし、払えねえ道理はねえ筈だろ。
仮に裏技を希望するのに払えねえ奴がいたとするなら――どの道そいつは、この学校生活を長く生き抜くことなんざ出来ねえよ」
俺の言葉を聞いた平田は、余計なことを! と言わんばかりに表情を歪めて睨みつけてきた。
「……僕は、クラスメイトには笑顔でいてほしいんだ。それがいけないことなのかい」
「いけなくはねえさ。――だが、甘やかされるばかりで苦労をしない奴は、成長もしない。一時の安寧を得ても、負債は後に降り積もる」
言いつつ、俺もまた平田を睨み返す。
そして、睨むのを止めて続けた。
「とはいえ、だ。猶予が出来ることに違いはないし、その猶予の間に成長出来れば、結局のところ問題は無い。
お前がクラスの奴を甘やかすのは自由だし、クラスの奴がそれを甘受するのも自由だ。しかし、互いに危機感は持っとかなきゃいけねえだろ。そうでなきゃ、互いに待ってるのは不幸だけだ。
笑顔が一番だというお前の言い分を、嗤う気も無ければ否定する気もねえよ。だがな? 万人全員が笑顔でいるなんて、人が人である以上、不可能に等しいのも事実だ。一時ならまだしもな。
だから、『理想』ってんだ。お前がその理想を貫くってんなら、待ち受ける苦しみも覚悟しておかなくちゃならねえ。……後悔をするにしても、納得出来る理由のある方がまだマシだろ?」
そう、性別の壁なんてものがあって、才能の違いなんてものがあって、環境の違いなんてものがあって、嗜好の違いなんてものがあって……どれだけ『平等』を謳ったところで、人が真に『平等』になれることなど有り得ないのだ。
そんなことがあるとすれば、それはもはや『人間』ではなく『人形』である。
「まったく、耳に痛いね。とてもじゃないけど、同い年の言うこととは思えないよ。
確かに君の言う通りだ。頭では分かってるんだ。――ただ、過去の情景が、どうしようもなく僕を責め立てるんだ。……教えてくれ、全総君。僕はいったい、どうすれば良かったんだ?」
暫し俯き、やがて顔を上げた平田は、その表情を涙と笑顔で歪めていた。そのまま静かに、ポツポツと言葉を発し、不意に脱力した。
倒れ落ちる身体を、横に立っていた清隆が押さえた。
「……気絶しているな。セリフから察するに、原因は感情の高ぶりによる記憶のフラッシュバック。一種のトラウマを抱えているようだな。……平田がDクラスにいる理由、見えてきたな」
「やれやれ、厄介なこった。ま、放っとくわけにもいかねえだろ。……そんなわけだから、お前らもあんま平田を困らせるんじゃねえぞ」
俺の言葉に、クラスメイト達は戸惑いながらも頷く。
平田がこの状態では、周りも気になって勉強に集中出来ないだろう。そう判断した俺たちは、今日のところは勉強会を中断することにした。……確認しても反対意見はない。
俺は平田を背負い、俺と平田の荷物は清隆に持たせる。その上で帰路につく。
道中、空を仰いで思った。――全く以て、うちのクラスは前途多難である。
言うまでもないとは思いますが、刃のイメージCVは杉田智和氏です。